2019. 2月 奥のおじさん(60)

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奥のおじさん さすらい月報(60)


寒いことは寒いが、例年と比べれば楽。洗濯物干しや仕事中に手がしびれるほどの寒さ・冷たさは感じない。
2月のトップニュースは、「トンカ書店」改め「花森書林」オープン決定の知らせ。全国的に知られる店名から新たに再出発する。店舗の場所は元町通3丁目の1本北側。私には近くなるので、うれしい。
周防大島みずのわ一徳から新刊案内あり。イタリアの映画監督で詩人・パゾリーニ評論、みずのわとイタリアがどうしても結びつかないけど、注文。おまけに
2.3《朝日歌壇》より本の歌2首。
〈知を守る灯台のごとく夜(よ)の街に間口の狭き古本屋あり (観音寺市)篠原俊則〉
〈半間(はんげん)のガラス戸あけて客を待つ三月書房に真冬の日射し (西宮市)佐竹由利子〉
 小幡欣治『評伝 菊田一夫』(岩波書店、2008年)読了。昭和商業演劇を代表する作家・プロデューサー。菊田は詩人を志しサトウハチローに師事、その紹介で浅草作家修業。喜劇、人情劇が得意だが、戦中は戦争劇も書かざるを得なかった。戦後はラジオドラマで人気を博し、その後東宝の重役に招かれ興業も担当、「がめつい奴」「放浪記」他、ミュージカルも手がけた。不幸な境遇で、あちこち養子に出され、台湾育ち。大阪の薬種問屋、元町の美術商で丁稚奉公した。元町生活は約6年だが、自伝小説『がしんたれ』に大正当時の元町風景を書いている。
 井伏鱒二関連でフランス文学者・河盛好蔵の随筆、『回想の本棚』(中公文庫、1982年)。著者が愛読した明治大正の著者・作品の数々。河盛は井伏と親しく住まいも近所、井伏全集の編集もした。名著『パリの憂愁 ボードレールとその時代』(河出書房新社、1978年)を地下の倉庫から掘り出す。
 『ビッグイシュー』1.15号(映画「ボヘミアン・ラブソディ」特集)が売れ行き好調で久々の増刷と新聞記事あり。ネットで高額になった由。この雑誌は販売者支援。どうか小遣い稼ぎに利用しないでほしい。
 ひとり留守番の週末、横浜から娘が気遣ってくれて電話、孫に「ヂヂ」と言うよう促す。ありがとう、大丈夫です、孤独死してません。
 「トンカ書店」改め「花森書林」訪問。我が家の不要本を押し付ける。ご近所や取引先からお花がいっぱい、私がいた時、著名な作家からも届いた(店主は送り主の名札をさりげなくはずした)。前のトアウエストの店とはガラッと雰囲気変わった。皆さん、ぜひ寄ってください。私は探していた神戸本文庫1冊。
 中央図書館で調べ物。新聞マイクロフィルムを閲覧するのに機械がうまく作動しなくて、しばらくゴソゴソしていたら隣の紳士が親切に見てくれた。やっぱり動かなくて、司書さんを呼ぶが、作動せず、別の機械に移動。私は大正時代の元町商店の広告探し。無事見つかりました。河盛好蔵『河岸の古本屋』(毎日新聞社、1972年)を借りる。
 2.10《朝日歌壇》《朝日俳壇》より本の歌・句。
〈結婚を反対してた母なのに黙って呉れた料理本二冊 (広島市)岡山礼子〉
〈『孤独力』『孤独のすすめ』『極上の孤独』と並ぶ書店の孤独 (匝瑳市)木村順子〉
〈見つけたる古書読み耽る冬の夜 (熊本市)金場貞子〉
 落語家・桂南光さんは美術ファン、高座のマクラでは浮世絵蒐集を始めて云々、御茶漬海苔のおまけですがね、と笑わせる。これに倣って、私は葛飾北斎の版画46枚セットで購入したのだよ、文庫本ですがね。研究者が『北斎 富嶽三十六景』一枚一枚を丁寧に解説してくれる。「三十六景」なのに46枚とはこれいかに? 
 寒くなったり、暖かくなったり。ヂヂは変化についていけるか?
 仙台荒蝦夷社主が取材で大阪、神戸に。これ幸いと神戸呑兵衛たちがプチ宴会。社主多忙の中お付き合いくださりありがとう。
 『ほんまに20号』5月発行に向け会議。本屋さん特集の予定。
 女商人物語『あきない世傳 金と銀』、1年ぶりに刊行。サディスト著者はいきなり夫を病死させる。あんたは死神か?! 不幸・逆境から主人公は周囲に助けられて立ち上がるんやけどね。
 24日、亡母十七回忌法事。兄妹3人揃うのは久しぶりのこと。これも亡母の引き合わせ。私は母19歳の時の子。だんだん母の年齢に近づいている。はよ死んでもたなあ、とつくづく思う不孝者である。
 また一人留守番ヂヂ。娘から孫の写真・動画が届く。読み聞かせの会で大はしゃぎ、公園で土いじり、ご近所の犬となかよしタッチ、楽しいことをたくさん見つけている。
 子どもたちが小さい頃花壇に植えたさくらんぼの木。暴風雨で折れて枯れていたのだけれど、脇から枝が出たので伐採しなかった。その枝から何年ぶりかで蕾が膨らんできている。開くのを待っている。
 電車本は『へんちくりん江戸挿絵本』。物語の挿絵ではなく、文字通り変な挿絵。権威や正統をパロディにして、茶化す。文学、学問でも実用書でも神仏さえもターゲットにする。身分・階層を越えて広く文化教養が共有されていたからこその出版。江戸の豊かな出版文化の現われでもある。春画も出てきて、周囲に高校生がいたのでヂヂは慌てて本を閉じる。

電話口「ヂヂ、ヂヂ」の声春近し  よーまる

(奥のおじさん)


今月買った本
日野原健司編 『北斎 富嶽三十六景』 岩波文庫
田中千世子 『ジョヴェントゥ ピエル・パオロ・パゾリーニの青春』 みずのわ出版
髙田郁 『あきない世傳 金と銀(六)本流篇』 ハルキ文庫
小林ふみ子 『へんちくりん江戸挿絵本』 集英社インターナショナル新書
瀬戸内寂聴 『余白の春 金子文子』 岩波現代文庫
小池昌代編 『吉野弘詩集』 岩波文庫
古本1冊

献本感謝
『季刊書評誌 足跡』第131号 同編集部
『時代を駆けるⅡ 吉田得子日記戦後編1946-1974』 みずのわ出版
同じくみずのわ出版より、『柱島群島ライブラリー』1~3(岩国市教育委員会)もいただく。皆さんに感謝。

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2019. 1月 奥のおじさん(59)

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奥のおじさん さすらい月報(59)

 寒いながら晴れた空で清々しい元旦。氏神さん八宮神社に初詣。良き年を願う。娘一家からスマホ映像テレホン年賀、まんまるふくよかな孫の顔見てヂヂババは幸せ。ブログとフェイスブックに新年挨拶投稿。年々投稿が少なくなってきている。読んでくださる方への「生存確認」と考え、もう少し増やしましょ。
 1.3「朝日新聞」記事から本の話題。宝塚の図書館が企画した新年児童書「福袋」貸し出し。袋にテーマだけ表示してセットし、本との出会いを演出。各地に広がっている。もうひとつは、1968年川端康成ノーベル文学賞受賞時の選考裏話。当時の候補者は、W・H・オーデン、アンドレ・マルロー、サミュエル・ベケットら世界的文豪ばかり。どなたの本も読んだことございません、ごめんなさい。
 初夢は2日夜から3日にかけて見る夢、と子どもの頃に教わった。なんで2日かと思っていた。辞書には元日夜から2日の夢も「初夢」と。初夢には孫に出てきてほしい、と年賀状にも書いた。私はたいがい起きたとたん夢の内容を忘れているが、今年の初夢はおぼえていた。本屋でF店長に売り上げが悪いとネチネチ叱られて(実際の店長はあっさりした人)、さらに客注品が遅いというクレーム、であった。未だに本屋悪夢、気の小さい爺さん。
 年末購入した、碧野圭『書店ガール7』読了。第三巻で登場した「櫂文堂書店」(作品中で海文堂閉店を惜しんでくださった、感謝)が再び存続の危機。名前だけだが、「山形店平野」が出てくる。意味はないと思う。
 7日、兵庫区の古書片岡で古本初買い。新年挨拶と同人誌を毎回いただくお礼を申し上げる。区内で古本屋開業されたばかりのナカムラさんがいらして紹介していただく。井伏鱒二の文庫本をめくっていたら、海文堂のレシート(1990年2月28日)が挟まっていた。これもご縁、購入。そのページに作家「平野零児」の名。知らない人、帰宅して調べる。丹波篠山出身、御影町(現在神戸市東灘区)平野家の養子に。米騒動、川崎三菱大争議当時、毎日新聞神戸支局記者。井伏と親交があり、井伏直木賞作品『ジョン万次郎漂流記』に資料を提供。井伏は共に旅行したときの「平野」災難の数々を書いている。
 8日、三宮ブックス村田社長、竹さんとランチ。多忙のなか時間を割いて下さる。帰り道で島清さんと遭遇、間もなく弁護士事務所開設。私が未だに携帯電話を所持していないことに散々嫌味と警告。
 9日、仕事帰りに(株)くとうてんで『ほんまに』編集会議。特集「神戸のまちの本屋さん」(仮題)ラインアップと新連載検討。近々取材開始。
 13日、友人夫妻とランチ。楽しくて、はしゃぎすぎ、早寝。翌朝起きたら、新聞に著名学者・俳優訃報あり、テレビでは歌舞伎大名跡襲名ニュースあり、横綱稀勢の里残念。
 15日、ギャラリー島田DM発送作業。
 17日震災忌。震災経験者が高齢化して、追悼イベントは寂しくなる。もう干支をふたまわりしたのだ。記憶の継承と次への備えは継続しなければならないこと。
 孫がカゼでしばらく写真・動画が中断していた。回復してメール動画復活、家人誕生日に何よりのプレゼント。
睡眠薬代わり寝床読書、『鶴見俊輔伝』読了。行動・実践を伴う思想の人である。昼間の本はそれなりに進む。蓮實重彦『伯爵夫人』、原民喜『夏の花』。どういう読書志向や? 自分では納得している。『伯爵夫人』はポルノ的表現につい目が行くが、戦争に向かいつつある現代への警鐘である。つづいて『原民喜全詩集』。
 24日、『ほんまに』取材開始で東灘区の本屋さん巡り、せ~ら編集長とゴローちゃんに同行。目当ての老舗の本屋さんは外商だけになっていていた。沖縄の新刊・古書専門店「まめ書房」でくつろいでしまう。山之口貘と陳舜臣の本見つける。
 今年は恒例出版社・書店新年会がなくなって寂しく思っていたところ。出版ドットコム・糸さん(仮名)から、大阪出張で会いましょうのお誘いあり。しろやぎさんにあちこち声をかけてもらって新年昼飲み会開催。26日、蔦屋梅田にまず4名集合、アカヘル・キタムラの仕事をジャマする。彼にブックソムリエ姿が似合うかどうか心配していたが、馬子にも衣装、余計なお世話であった。元気そう。堂島「本は人生のおやつです!!」に移動。それぞれ「本おや」店主との話を楽しむ。新刊文庫1冊購入、今年最初の新刊本。客船ポストカードをいただく。梅田の居酒屋で昼酒宴会、計7名。年末本屋退職しろやぎさんが母校事務局に就職決定、よかったよかった。帰宅するとイギリス大狸教授から古い三宮元町の手書きマップが届いていた。ちょうど「本おや」でそのマップが掲載されている本を見ていた(私には高価で買えず)。教授はすべてお見通しなのか、感謝。
 読書は俵万智『牧水の恋』。有名人はプライバシーを全部暴かれる。ご本人が自分の恋・失恋を題材にしているから仕方がない。
 作家・橋本治さんの訃報。PR誌『ちくま』連載エッセイで闘病のことを書いていらしたが、最新号は休載。ご冥福を。
 27日「朝日歌壇」より。
〈文庫本黙々と読む運転手バス出発の十秒前まで (多摩市)栗田恵利子〉。
何の本だろう、他人の本が気になる。
 新潮社PR誌『波』2月号の表紙写真は文学者の父と並んだ若き日の数学者の姿、それに「書店こそ教養の拠点である 藤原正彦」の筆蹟。書店の頑張りだけで「教養の拠点」は維持できない、読者の応援があってこそ。まちの本屋がどんどんなくなり、都心の大型書店さえ撤退やら縮小やら。大阪の老舗「天牛堺書店」破産のニュース。
 元町原稿のため図書館。大正期、少年時代約5年元町の商店に勤めた劇作家のこと。

今月買った本は、新刊文庫1冊、古本4冊のみでありました。

 冬の床二度寝して見た孫の夢  よーまる

(奥のおじさん)


2018. 12月 奥のおじさん(58)

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奥のおじさん さすらい月報(58)

 いい年してぼーっと生きて、もう師走。ヂヂは走れん。今年はなんだか喪中はがきが多い。
 1日、前の週から始まっているギャラリー島田《石井和男展》《須飼秀和展》に。ここのところDMお手伝いできず、久しぶりにスタッフやすさん(仮名)に会う。ハンター坂を下って本屋さん。
 娘から孫の動画。絵本『こぐまちゃんのほっとけーき』(こぐま社)を読んでもらって、ピチピチ、ブッブッなど擬音語を繰り返している。「ほっとけーき」に聞こえるところがある。私にははっきりそう聞こえる。でもね、家人や娘はちがう、と言う。空耳か、ただのヂヂバカか?
 2日《朝日歌壇》より。
〈ただ「ボーッと生きてんじゃねえよ」長生きに読書が一番と統計に出た (鎌倉市 鈴木栄次さん)〉
 私は読書してもぼーっと生きている。
〈ぽっかりと空いた時間は海沿いの駅のホームのベンチで本読む (川崎市 小林冬海さん)〉
 私は職場帰りの電車待ち時間、ホームで寒さ堪えて読んでいる。 もうひとつ、
〈過去問の答えがなくて空欄を確かめるため書店に向かう (大津市 佐々木敦史さん)〉
 試験済んだら楽しく本を読んでちょうだい。
 KIITO(旧神戸生糸検査所)で開催中の《GHQと神戸のまち》。気鋭の都市史研究者企画監修のイベント。同氏の著書『神戸 闇市からの復興』(本文・索引他 全360ページ超の労作)を買ったばかり。戦後史研究の空白、GHQ占領下の神戸のまちと民衆の暮らしを掘り起こす。会場で立派な冊子をいただく。
 寝床で読んでいた長谷川郁夫著『編集者 漱石』(新潮社)やっと読了、よくぞ涎を垂らさなかった。いまさらだが、漱石の文学者生活はたった12年と知る。その間、作品を発表しながら、正岡子規の志を受け継いで、次世代の書き手を発掘し、文学の可能性を探り続けた。《編集者》としての漱石評伝。
 職場で私が元書店員と知っている人は数人いる。今までほとんど関わりのなかった人から「ひょっとして海の本屋の?」と訊かれた。本を読んでくださったそう、恐縮する。
 書店員先輩牧師さんからのメールで読めない漢字や不明のことばがあり辞書を探す。机の近くに古い広辞苑と漢和辞典を置いているが、他の辞典は積んだ本の一番下になっていた。環境を整えなければって、これもいまさらだが。
 6日、ギャラリー島田に届け物。ちょうど次回の準備で林哲夫さん(8~19日開催)がいらして、ご挨拶。ペンチやスパナ、農具などを展示。ご実家の納屋を整理、父上の仕事道具の他、鳥の巣も発見。巣を絵に、道具類はオブジェ作品に。もちろんお得意の文人肖像やコラージュ、ブックカバー作品(本もついている)もある。
 7日、仕事終了後、職場の忘年会で垂水。ついでに須磨区名谷から店舗移転したばかりの流泉書房を訪ねる。児童書読み聞かせイベントをずっと続けておられる。ちょうどレジに社長とクロキ君(元海文堂)がいらしてご挨拶。岡山ジミッチーからお祝いの花が届いていた。
 9日、改めて林哲夫個展に。ブックカバー(林蔵書古書付き)を買う。林さんと周防大島のみずのわ一徳話で盛り上がる。かの地は今年いろいろ話題になった。その一徳から松江のミニコミ『Book在月』(同実行委員会)が届く。一徳と南陀楼綾繁さんの対談トーク(2017.10)掲載。
 18日、明日本会開催。しろやぎさん退職慰労も兼ねた忘年会、24名参加。しろやぎさんの人柄で、退職を惜しみ、今後の活動を支えようという人たちが集まった。楽しく賑やかな会で、私は元町商店街を千鳥足で帰宅。翌日も心地良い二日酔い。
 雨が多い12月。図書館で調べ物、賀川豊彦と縁ある今井弁護士のこと。スケールの大きな人物ながらあまり知られていない。夏目漱石の教え子で、辛亥革命に関係し、吉野作造と並ぶ大正デモクラシー牽引者。午後、灘区ワールドエンズ・ガーデン、予約していた『次の本へV3しごと編』(苦楽堂)受け取り。帰宅すると東京荻窪の本屋さんから注文品が届いていた。鬱陶しい天気でも気持ちは晴れる。妹から電話、来年亡母17回忌、法要の日を決める。
 老夫婦のクリスマスイヴは落語、「桂文珍独演会」(兵庫県立芸術文化センター)。当日お客のリクエストで演目を決める。新作2本、古典1本。現代世相を取り入れるセンスは抜群、爆笑。終了後、近くのショッピングセンターで家人が絵本キャラクター雑貨を探すのに後をついて歩く。彼女が前回(いつ来たか不明)見つけていたらしいが、店・売り場失念。ぐるぐる歩き回って、ようやく発見。執念?
 27日、年末だからと言ってあわてて本を買うこともないのだけれど、本屋さんに行く。雑誌のついでに単行本、新書、文庫。これで今年はおしまい、のつもり。年賀状完成、親戚用と友人用の2種、投函。28日仕事納め。
 29日、家人実家の墓参りして、親戚たちとお茶。本屋巡り「今年はおしまい」のはずがデパート内の本屋さんを覗くと、書店員小説シリーズ最新作が出ていた。それも9月のことで、やっぱり本感度が錆びている。ぺらぺらめくると「櫂文堂書店」という文字が目に入った。著者・碧野圭さんは仙台の老舗本屋が危機という設定(第3巻)で、「海文堂」閉店を惜しんでくださったのだが、その本屋がまたも……という話になるよう。寝正月に読もう。
 30日は我が家の墓参り。枯葉落ち葉下草が凍っている。
 災害が多かった2018年。我が家は雨漏りくらいで、家族皆健康に暮らせた。孫の成長という喜びも得た。前期高齢者の仲間入りをした。友との付き合いは継続し、良い本にも恵まれた。(株)くとうてんのおかげでWEB海文堂書店アーカイブ公開が実現した。個人的には平穏無事。来る年の平和を重ねて願う。

 吹き溜まる枯れ葉は父か落ち葉は母か よーまる

(奥のおじさん)


今月買った本
村上しほり 『神戸 闇市からの復興』 慶應義塾大学出版会
日本近代文学会関西支部編集委員会編 『〈異(い)〉なる関西』 田畑書店
黒川創 『鶴見俊輔伝』 新潮社
原民喜 『小説集 夏の花』 岩波文庫
『原民喜全詩集』 岩波文庫
『次の本へV3しごと編』 苦楽堂
辻山良雄 文 nakaban 絵 『ことばの生まれる景色』 ナナロク社
蓮實重彦 『伯爵夫人』 新潮文庫
俵万智 『牧水の恋』 文藝春秋
小佐田定雄 『上方らくごの舞台裏』 ちくま新書
碧野圭 『書店ガール7』 PHP文芸文庫
古本1冊
贈呈感謝
『Book在月 6』(同実行委員会発行)



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2018. 11月 奥のおじさん(57)

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奥のおじさん さすらい月報(57)

秋冷、10月末から一気に冷えてきて、毛布やストーブ、厚めのセーターを出したところ、また気温上がる。
寝床で読んでいる本は、長谷川郁夫『編集者 漱石』(新潮社)。本の神様には失礼なこと、眠り薬以外何ものでもない、数分で眠りにつく。栞を挟む間もないから同じ所を何度も読んで、しばらくして気づく。これも熟読。読み終わるのには数ヵ月かかろう。漱石を診断した精神科医・呉秀三の名が出てくる。入院患者の処遇改善に努めた人物。ちょうど新聞にこの人の生涯を追う記録映画が神戸でも公開予定と出ていた。
 1日から忙しい、当原稿10月分送信して、コープ宅配受け取って、外出。元町駅前で『ビッグイシュー』、高架下にできた古本屋さんに寄って、本屋さんで注文品と雑誌、スーパーで食料買って、ご飯の用意をして、図書館。
 3日京都に。連休、行楽日和ゆえ、阪急電車超満員を覚悟したが、思ったほどでもなく。大谷本廟お参りして、バスで京都大学前、構内通り抜けて知恩寺古本市、古本強者たちのジャマをせぬよう探す。戦前海文堂が出版した本を見つける。先月図書館で借りた本だが、これも縁、図書館本よりも状態良し。バスで岡崎公園、細見美術館《春画・妖怪画の世界》、国際日本文化研究センター所蔵の春画・妖怪画コレクション展示。中世から近世の日本美術、「わらい」と「こわい」がつながる。観賞者は圧倒的に女性グループ。カルチャーは女性の方が熱心。三月書房を覗いて、丸善。

4日、三宮生田新道で《青山大介鳥瞰図展》と下町レトロ《おかんアート展》コラボ、それから三宮周辺の古い写真展も同時開催。おかんアートは趣味の域を超えた工芸手芸品数々展示。レトロ山下隊長と久々に会えた。
 野崎歓『水の匂いがするようだ』(集英社)は井伏鱒二文芸評論。フランス文学者が井伏の多様な作品群にある抵抗の精神と、水・魚――生命のテーマを読み取る。「鱒」の字は魚を尊ぶと書くという指摘に納得。
 自分でやばいと思う。大呆けが進んでいる。14時開始の職場の会議、自分は時間通りに行動して13時半に到着したと思い込んでいた。実際の到着時間は12時半。待っている時間も気にならず、会議が始まる時間になってようやく気づく。
 10日14時から中央区東川崎で《横溝正史生誕地碑建立記念講演会》。探偵小説愛好會主催のこの時期恒例イベントで作家や編集者他、横溝正史縁の人たちを招く。今年は横溝短篇作品アンソロジーを企画編集した日下三蔵さん。かつては角川文庫や他社の文庫でほとんどの作品が読めたが、品切で読めないものが増えている。次世代読者に横溝作品を継承してもらえるよう、漏れてしまった作品を残していく仕事。愛好會代表・野村さんが資料の横溝作品刊行年譜を見ながら、ある年(高校入学)からは自分の日記を読むような感覚、と感想を述べた。横溝作品と氏の半生が重なる。
 同日17時、三宮で鳥瞰図絵師・青山大介トーク「都市を見る目」。現在函館の鳥瞰図を制作中。鳥瞰図絵師の視点で、建物や地形から神戸と函館の町の特色、歴史、今後の課題を語る。「ブラタモリ」ならぬ「ブラ青山」で、想像も交えた楽しい解説。欲を申せば、建築・土木・歴史など研究者の専門的知見を加えてもらいたい。会場で苦楽堂社主から神戸で出版社を立ち上げた若者を紹介してもらう。第一作は坂口安吾作品復刻。社主からは神戸本の新刊も教えてもらった。
 11日《朝日俳壇》より。〈古書店に初版見つけし文化の日 (摂津市 中尾久美)〉。愛好家のささやかで大きな喜び。
 読書は原民喜幼少期の記憶に基づく連作『幼年画』。美しい物語だが、作者の生涯を思うと切ない。
 家人職場用の買い物に付き合って北野町のムスリム食品店をまわる。乙仲通の《WAKKUN作品展「月舟」》。帰宅したら、娘から赤ん坊一歳記念写真集が届いていた。おまけは神田古本まつりの冊子。赤ん坊はますます元気、まん丸。夜、しろやぎさんからメールあり、年内で退職決断。そこにいたるまでいろいろあったことでしょう。会社も業界も大きな損失だと思う。
 北村薫『太宰治の辞書』(新潮社、2015年)。主人公は編集者、本を作り、読書しながら、書き手の謎を探っていく。
 しろやぎさん退職ニュースは瞬く間に広がる。すぐに慰労会計画。新聞・雑誌・ウエブと連載を持つから衝撃は大きい。《ほんまにWEB》だって困る、すぐに会議。アカヘル君はブックコンセルジュ就職したそうだし、須磨名谷の本屋さんは垂水に移転すると聞いた。

18日、《1003》で仙台イラストレーター・ジュンコさんと鳥瞰図絵師・青山さんのトーク会、「まちをながめる、まちを描く」。「描く」を仕事にしているふたり。各地を旅して見たまちの歴史・風俗、食、人と仕事など楽しいお話を聴く。ジュンコさんと久々乾杯。
 22日、赤ん坊に会うため、プラス出版社の人に会うため、プラスあちこちウロウロのため、江戸に。旅の友は井伏鱒二文庫本。家人は直接娘の家に向い、私は夕方まで自由行動。
 まずは日本近代文学館「矢来町のたからもの」(新潮社元会長旧蔵資料)見学に行くが、またも休館日確認もれ(第4木曜日休館)。詰めが甘い、というより、迂闊粗忽。
 次の目的地、国立国会図書館。時間はたっぷりあるので、利用者登録に並ぶ。30分ほどでカードを発行してもらって、開館70周年記念展示「本の玉手箱」を観る。1872(明治5)年湯島聖堂「書籍館」に始まり、1897(明治30)年帝国図書館設立。戦争中、一部蔵書は疎開した。1948(昭和23)国立国会図書館開館。国立国会図書館法は「日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として」と宣言する。同館のあゆみを資料・蔵書とともに展示。同食堂名物「図書館カレー」昼食。

本郷NR出版会事務局を訪ねる。版元諸氏は多忙なので、くららさんと二人でお茶。話題はしろやぎさん問題と各地の書店関係者のこと。神保町をうろついて、家人と合流。
 23日午前中、家人と上野。「フェルメール展」(上野の森美術館)は観覧事前予約制、それでも20分ほど待った。列から銀杏の黄葉と並んで桜の開花が見える。普通の展覧会より料金は高いけど、音声ガイド無料。女性グループ、若いカップルが多い。フェルメールは20年くらい前に大阪にも来て、家族で見に行った。続けて「ムンク展」(東京都美術館)を見ようと思ったが、こちらは入場50分待ち。あきらめて「ルーベンス展」(国立西洋美術館)、来場者のおじさん度かなり高い、何となく納得。

日本橋で子どもたちとランチ、みんな息災。赤ん坊はますます可愛く元気いっぱい、トットコトットコ歩いて目が離せない。夕方、名残を惜しみつつ別れて、私たちはまた上野「ムンク展」リベンジ、10分待ち。有名な「叫び」など数点の作品前は歩きながらの観覧を促される。やっぱり女性とカップルが多く、お子さん含めた家族連れも。ムンク作品とポケモンのコラボグッズが完売との案内あり。他のグッズもムンク作品をゆるキャラにしている。ムンクの陰影とは合わないように思うが、この展覧会はそういう売り方なのね。

24日も家人と別行動。私は近代文学館再挑戦、「矢来町~」と「小川国夫展」(没後10年記念)。夏目漱石「猫」一筆箋購入。渋谷、持ち合わせ時間まで古本屋さん探し。地図なしうろ覚え、見当をつけて歩くが、見つからず徘徊。ふた周り目にちょっと範囲を広げたら、あった、よかった、「中村書店」。古い詩集がたくさん。井伏の友・河盛好蔵の文庫購入。ビルに囲まれた宮益御嶽神社(みやますみたけ)参拝。

家人と江戸最後はいつもの銀座おのぼりさん、すっかりクリスマスムード。教文館《ナルニア国》で『わたしのワンピース』人形見つける。千疋屋でお茶して帰神。
 元町原稿に苦戦して、中央図書館で古い新聞マイクロフィルム閲覧。近所の小学生たちが図書館見学で新聞コーナーにやって来た。司書さんの質問「おうちで新聞とってる?」に、「とってなーい」の声多数。男子ひとりが私の画面を覗きに来た。「おっちゃん、100年前の新聞見てんねん」。川崎・三菱大争議記事を探す。午後買い物、元町古本市を覗いたらトンカさんが店番。夜、元町原稿ようやく。

 小春日やトットコ歩く孫を追う  よーまる

(奥のおじさん)


今月買った本
『小村雪岱挿繪集』 幻戯書房
原民喜 『幼年画』 瀬戸内人
坂口安吾 『安吾巷談』 三田産業
古本6冊

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2018. 10月 奥のおじさん(56)

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奥のおじさん さすらい月報(56)

 海文堂書店閉店して丸5年。あの時すぐ失業者(私)に何か書けと、声をかけてくださったのは『みなと元町タウンニュース』(月刊、みなと元町タウン協議会発行。元町商店街と近隣自治会、企業で構成)。連載「海という名の本屋が消えた」が10月末発行の号で60回を迎える。元町はじめ港、居留地、トアロード、三宮周辺と縁ある作家・芸術家や事件のことを書いている。まちの歴史を調べ直して、海文堂でこんな神戸本をもっと並べたかったという意味もある。何の計画性もなく、思いついたこと、見つけた資料で自由に書かせてもらっている。今は神戸にあった総合商社・鈴木商店のこと。個人商店が財閥系商社と競うも、米騒動で大きな被害を受け、昭和恐慌で破綻した。海文堂が出版した『海事大辞書 全3巻』(1925~26年)には鈴木大番頭・金子直吉の支援に感謝する記述がある。編著者・住田正一は海商法・海運史の研究者だが、当時鈴木の現役社員で金子の側近だったことを知る。神戸市立中央図書館で住田が海文堂から出版した随筆集『桃園雜記』(1939年)を借りる。
 同じく失業者に場所を提供してくれたのは、(株)くとうてんのウエブサイト「WEBほんまに」(当ブログと「ほんまに日記」)、ひょうご部落解放・人権研究所機関誌『ひょうご部落解放』(季刊)「おじさん読書ノート」。すべて本屋時代のご縁で、現在も継続中。誠にありがたく、関係皆様に改めて御礼を申し上げる。

 ノンフィクション作家・梯久美子のエッセイ集『好きになった人』(ちくま文庫)、同じく『原民喜』(岩波新書)を読む。評伝を書くことは対象人物に寄り添いつつ、切り込み抉らなければならない。作家の業。
 大阪高等裁判所内の本屋さんで働くハラミノさん(仮名)が同僚オカムラさんの著書『人文書担当者のための日本史概説』(歴史書懇話会、非売品)を送ってくださる。オカムラさんは大手書店で長く日本史棚を担当された。その経験を後輩書店員に伝える重要な仕事。引退した私には難しいけど、読もう。
 刊行を待っている本があって、本屋さんに注文に行った。小出版社の少部数本で、まだ取次会社の取り扱いデータに上がっておらず、注文不可。仕方がないので、数日待って、データ掲載を確認して再度注文に行く。出版社に直接注文してもいいのだけれど、やっぱり本屋さんで買う。

 6日、落語、《桂米團治独演会》(県民会館)。古い会場なので、席番号手書き、テープで貼り付けはご愛嬌としても、高座の毛氈がシワシワ。それでも米團治は見事に高座で宙に飛んだ。「猫の忠信」。
 7日《朝日俳壇》入選句。〈もう一度読む本あまた夜ぞ長き 東京都・藤森荘吉〉。私は未読本あまた。
 8日墓参り。お彼岸は台風接近を言い訳にしてさぼった。家人は友だちとバス旅行、私は墓園内巡回バス、家庭内格差(?)。家人のみやげ地ビールもらって、ひねくれない。娘から赤ん坊写真メールあり。ヘアスタイルに変化、お姉さんぽくなったけど、泣き顔。うそ泣きらしい。
 家人は子どもらと孫の様子を見に上京。じいさんひとりぼっち無言生活。特に外出する予定はないけど、食料は調達、スリッパでペタペタ出かける。
 空犬さんのブログで、冊子『神保町が好きだ! 2018』(本の街・神保町を元気にする会)が出版社PR誌特集だと知って、ほしいなあと思っていたらムコ殿が送ってくれた。ええムコ殿。
 日記のように本稿を書いていて、気づいた。10月に入ってから私は家と職場と徒歩圏内の買い物や図書館にしか行っていない。お墓には行ったが、どっこもさすらっていない。用事を済ませたら大阪に行くことを決めた。
 翌日堂島古本屋《本は人生のおやつです!!》。ブックフェア「本のヌード展」に間に合った(10月10日まで)。店主と共通の友だちの近況やら噂話(いい話?)をして、神戸の本屋さんでは売り切れていた復刊文庫を見つけ、関連本も購入。いいことがあった。神戸に戻って買い物すませて元町商店街をぼーっと歩いていたら、ごぶさたしている古本屋さんが声かけてくれて、来月のイベント案内。いいことが続く。でもね、帰宅して気づく。堂島で買った本のうち1冊は単行本で持っていた。未読であった。私にはよくあること。
 梅崎春生『怠惰の美徳』(中公文庫)読了。自らを「ナマケモノ」と言う。私には戦後派作家の印象が強い。戦争体験からくる虚無感であり、含羞だと思う。

 20日、本屋さんで注文品受け取る。棚には現役書店員さんや退職した方々の本が並んでいるけど、こっちも引退した身だし、5年も経つし、などと買わない理由を考えて、別の本。先日《本おや!!》店主と話題になった文芸評論を買う。赤ん坊誕生日のプレゼント選ぶ。
 三宮ブックス村田社長とお話。80歳超えても現役、休日なしで外商に駆け回る。我が身の怠けを思い知る。
 21日、《朝日歌壇・俳壇》に本を詠う二首二句あり。絵本、古本、蔵書のことなど。
〈名月や絵本閉じれば子の寝息 (小城市 福地子道)〉
 赤ん坊も寝る時本を持ってきて、母親は何回も読まされるらしい。

 ギャラリー島田社長が長野県上田市「信濃デッサン館」「無言館」の冊子『繪の眸(えのめ)』を送ってくださる。拙著『海の本屋の話 海文堂書店の記憶と記録』(苦楽堂)の紹介記事あり。感謝いたします。

 調べ物で中央図書館。目当ては昭和戦中・戦後活躍した劇作家の自伝小説。元町の商店で丁稚奉公し、大正末頃の商店街描写がある。残念ながら、館内閲覧のみ。気長に通わねば。

 ごぶさたしている古本屋さんに行くと、急用外出で臨時休業とか営業時間変更になっていること多々。当方気まぐれのバチが当たる。用もないのに足繁く通うのは憚られるが、行けば良い本に当たるし、いろいろお話できる。
 名古屋老舗の書店員さんがイベントパンフを送ってくださる。昨秋めでたく創業100周年を迎え、記念イベントを継続中。ブックフェア「一人一冊入魂おすすめ本!」に音楽コンサートとスタッフ朗読の会など。皆さんの意気込みが伝わる。

 大阪の文芸出版社社主がゆかりの文人たちを追悼した本、『やちまたのひと 編集工房ノア著者追悼記続』(編集工房ノア)を読む。敬愛する著者たちの本を手がける喜びは何にも代え難い。苦行もある。闘病生活を見守り、不幸があれば、通夜、葬儀、マスコミへの連絡、それに追悼記執筆。

 赤ん坊が満1歳を迎えた。プレゼントした絵本をめくっている動画に、にっこり。神田神保町ブックフェスティバルの写真もあり、おとなしくお話会に参加している。じいちゃんは今年も行けず。来年お手手つないで行けるか。

 カレンダー残りが少なくなる。「もうすぐお正月よ~、早いわね~」とおっしゃる人も。いや、それはまだです。

もみじの手ブルーナーをひらいてとじて……  よーまる

(奥のおじさん)



今月買った本
梅崎春生 『怠惰の美徳』 中公文庫
梯久美子 『原民喜 死と愛と孤独の肖像』 岩波新書
『井伏鱒二全詩集』 岩波文庫
小沼丹 『清水町先生』 ちくま文庫
涸沢純平 『やちまたの人 編集工房ノア追悼記続』 編集工房ノア
野崎歓 『水の匂いがするようだ 井伏鱒二のほうへ』 集英社
コミック1冊 古本2冊

献本感謝 
『映画批評 第17号』 同編集部
岡村正純 『人文書担当者のための日本史概説(中世史中心)』 歴史書懇話会


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2018. 9月 奥のおじさん(55)

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奥のおじさん さすらい月報(55)

 9月1日は防災の日、関東大震災。今夏は酷暑のうえ、大阪北部地震があり、豪雨、台風が続いた。台風シーズンはまだまだこれから。日本列島の宿命、皆様ご注意を。

 JR元町駅前で『ビッグイシュー』。創刊15周年記念、著名作家7名が「ホーム」をテーマにショートストーリーを執筆。文芸雑誌並のメンバーが揃う。本屋さんで出版本、本屋本計3冊購入。
 先日研究者にもらった《ZINE》を参考にして、赤ん坊私家版写真集作成。パソコンにある写真から何枚か取り出す。A4コピー紙裏表に折目をつけて冊子にする。まだまだ工夫しなければ。
 メールやらツイッターで出版イベント案内あり、参加申し込み。大阪の有名本屋さん閉店のニュースもあった。

 4日、また強力な台風が近畿上陸。被害は神戸東部から阪神間・大阪が大きい。関西国際空港連絡橋タンカー衝突に驚いていたら、6日未明北海道で大きな地震。自然の牙と爪には勝てない。弱い人間はへこたれず何度も立ち上がるしかない。

 南陀楼綾繁『蒐める人』(皓星社)は出版物コレクターや記録者・販売者ら9人にインタビュー。書誌学、ある作家のスクラップブック復刻、B級昭和文化史研究、古書蒐集・研究など、「ひたすら集め、しつこく調べ、記録する」人たち。

 時代小説の髙田郁は本屋をとても大事にしてくれる作家のひとり。海文堂書店もたいへんお世話になった。彼女が作家生活10周年を迎え、記念作品として『花だより みをつくし料理帖特別巻』(ハルキ文庫)を上梓。同シリーズ完結から4年、物語も4年後の登場人物たちを描く。彼女は眼の手術をして療養中の由。ファンは次作をじっと待つ。お大事に。忘れていました、10周年おめでとうございます。

 本の虫という言葉がある。本の紙を食べる紙魚から、本なしでは生きていけない読書家・愛書家を意味する。その虫5人が本の世界にまつわる話を自由に書く。『本の虫の本』(創元社)、出版、本屋、読書家の習性・苦悩、 そして本への愛など。著者代表・林哲夫の虫名は「ハヤシウンチククサイムシ」。うんちがくさい、じゃありません。

 14日、姫路のブックカフェ《Quiet Holiday》で南陀楼綾繁さんトークショー。お相手は伊丹の《みつづみ書房》店主三鼓由希子さん。当日見学してきた《小沼丹生誕100年祭(たつの市・九濃文庫)》から話が始まった。本屋でも文学館でもなく、主宰者が蒐集した資料を展示していて、お二人は書庫まで見せてもらえたそう。たつのにも「蒐める人」がいらした。南陀楼がかつてインタビューした「蒐める人」たちのこと、インタビュー手法のこと、各地のブックイベントや本に関わる人たちのことなどを語った。参加は若い人たちが多く、福岡さんと私はちょっと場違いな感じであった。終了後、南陀楼さん福岡さん平野で乾杯。イベント前にお隣の古本店《おひさまゆうびん舎》を覗く。児童書がいっぱい、夏葉社フェアも開催。孫が翌日来るし、絵本を選ぶ。孫と同じ愛称の書名を見つけてニッコリ、100円。

 落語「薮入り」というのがある。父親は奉公先から久しぶりに帰ってくる息子を迎えるために早起きして、母親にあれこれ準備をさせる。待ち遠しくて仕方がない。古谷三敏の『寄席芸人伝』で、元はパワハラセクハラ噺だったものを改作して子を思う親の噺になった、と読んだ。ジジババは首を長くして孫を待つ。友人の結婚式出席のため家族でやって来る。ブログも原稿もみんな休んで孫と遊ぶ、とサボる言い訳。ちょうどパソコンも故障。

 古山高麗雄『編集者冥利の生活』(中公文庫)読了。太平洋戦争後、ベトナムで戦犯容疑のため抑留経験あり。旧制高校を退学しルンペン生活、軍隊ではダメ下級兵、サラリーマンになってもダメ社員と自戒を込めて語る。しかし、「編集者冥利というのは、人との出会いの冥利」と誇る。解説は荻原魚雷。今月は書物雑誌『sumus』同人関係多し。

 2カ月ほど前に買ったままの長谷川郁夫『編集者 漱石』(新潮社)を読み始める。漱石は作家、英文学者、教育者、漢詩人、俳人とさまざまな活躍をしたが、編集者という顔もある。

 21日、勁版会参加。同会創立発起人メンバー・川口御大が講師、「古希じじいの遺言話」というテーマで、勁版会小史、さらに出版業界の今後、それから自分史と蔵書整理の困難さを語った。私は御大若き日の失恋話に食いつく。東京からぼっと舎大西さん、姫路から福岡さんも参加。勁版会は1982年創立、御大は長年にわたり事務局として会を支え、現在も会の記録・資料整理を続けている。「勁く、しぶとく生き残る出版人の集い」という会の趣旨を具現。

 孫と遊ぶと言いつつ、ジジはトーク会や落語会に行っている。それはそれ、これはこれ。

 北海道札幌に元気な本屋のオヤジさんがいらした。売り上げ不振の中、独自のフェアを次々企画して業界の注目を集めた。書店組合の理事長も勤められていた。経営危機に陥り、資金集めに奔走しておられた。ちょうど海文堂が閉店する頃だった。2015年、ついに閉店を決断された。昨年病気で亡くなった。私はもちろん面識はない。業界ニュースで知るだけ。一周忌、遺稿が出版され、病床で本屋再開の構想を立てておられたことを知った。最後の最後まで本屋のオヤジを貫かれた。

 29日、またも大型で非常に強い台風が来るというのに、家人と大阪。今月で閉店する本屋さん《心斎橋アセンス》。明るくておしゃれな雰囲気、美術書・洋書が得意の本屋さん。縁ある作家たちがメッセージを贈っている。若いお客さんが多いが、静かなお店だ。市内にあるもう1店舗も閉店する。特徴のある本屋さんがまた消える。記念に文庫1冊。
 それにしてもミナミの街は外国人観光客でいっぱい。台風の影響で日本人が少ないこともあろうが。インバウンドとやらで、デパートもドラッグストアも外国語表記で掲示をしている。それでも関空台風被害の影響で観光客は以前の半分くらいらしい。
 法善寺、秋の夜の酒は一人呑むのがよい、と歌った人の名を店名にする酒場で友人夫妻と呑む。



秋の蝶赤子と爺が指で追う   よーまる

(奥のおじさん)



今月買った本
南陀楼綾繁 『蒐める人』 皓星社
林哲夫他 『本の虫の本』 創元社
久住邦晴 『奇跡の本屋をつくりたい くすみ書房のオヤジが残したもの』 ミシマ社
髙田郁 『花だより みをつくし料理帖 特別巻』 ハルキ文庫
古山高麗雄 『編集者冥利の生活』 中公文庫
山川直人 『ハモニカ文庫と詩の漫画』 ちくま文庫
梯久美子 『好きになった人』 ちくま文庫
コミック1冊、古本2冊
献本感謝 『足跡』第129号


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2018. 8月 奥のおじさん(54)

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奥のおじさん さすらい月報(54)

 メガネの下にかく汗がうっとうしい。目に滲みる。目の周りの皮膚はデリケートと聞いた記憶がある。じいさんには関係ない。
職場の庭木に野鳥が巣づくりしていたが、鳥の姿を見なくなった。長雨を嫌って移動したのか、それとも自然の摂理か。未完成の巣が枝に残る。

 1日、《ほんまにWEB》のしろやぎさんこと、喜久屋書店阿倍野店・市岡陽子さんがFM OH!「MUKOJOラジオ」出演。武庫川学院のOG、関係者にインタビューする番組。市岡さんは書店員の仕事、本のこと、学生時代の活動など終始落ちついて話し、貫禄(?)を感じる。海文堂のことまで紹介してくださった。深謝。

 皓星社(こうせいしゃ)という出版社がある。「ハンセン病文学全集」で知られる。ここから古本女子マンガが出て、本屋さんで見つけて購入。もう1冊同社の本で買わなければならない本があり、それも発見したが、次回にする。いっしょに買えばいいものだが、また本屋に来る理由にする。
 娘から赤ん坊動画。絵本を読んでもらってご機嫌。本は西巻茅子『わたしのワンピース』(こぐま社)。ワンピースの模様が変わるたびによだれ垂らして歓声をあげる。母親の声の調子でわかるのだろう。自分でページをめくろうとして、手でうまくできないと足も使って、母親に怒られている。何回見てもあきない。

 5日、松原隆一郎『頼介伝』(苦楽堂)出版記念トーク(神戸三宮シアター・エートー)。聴衆約100名で会場満員。松原は神戸生まれの経済学者。「頼介」は祖父、世間的には無名の企業家だが、何度も会社を興し繁栄と没落を繰り返した。その人生をたどって見えてきた近代都市・神戸について、鳥瞰図絵師、地元新聞記者、都市史研究者と共に語り合った。開港から始まる都市の発展、重工業化、戦争景気、水害、敗戦、復興から高度成長、それに大震災……、激動する時代を背景に、リスクを恐れず不確実性に挑んだ企業家たちがいた。しかし、その多くが一代で富と財産をなくしてしまう。終了後、三宮ブックス村田社長と会食。

 7日、お盆前早めの墓参り。草刈り一汗二汗。帰りはいつもどおり湊川の喫茶店に行こうと思ったが定休日。南京町赤松酒店に呑み会予約に行かねばならないから、ついでに精進落とし(?)で昼酒、一杯で満足。

 9日、明日本会呑み会、南京町赤松酒店。旅行やら先約ありやらで参加者少ない、それでも20名。元同僚アカヘルもやって来て、会場は大盛り上がり。というのは、彼は勤めている本屋を退職するので業界人一部が心配していた。みんなに愛されている。今後のことは未定らしいが、元気な顔を見せてくれて一同安心。私は本屋資料を島清さん(仮名)から拝借し、川正さん(仮名)からはいただいた。しろやぎさんからヨーロッパ旅行土産の絵ハガキ。皆さまに感謝感謝。
 65歳になった証明か、介護保険支払い通知届く。トホホな金額。

 11日、子どもたちに会うために上京する。今年は孫もいるし。珍道中はいつものことだが、私は新神戸駅の改札入ったところで、部分入れ歯装着していないと気づく。何か忘れていると家からずっと思っていた話にならない歯なしじいさん。旅の友は、仙台編集者の即身仏探訪本と、山本周五郎随筆。
 まず、谷中墓参りして、日暮里駅東側のひぐらしガーデン、パン屋さんと本屋さんが同居する商業施設。去年は定休日に当たってしまった。パン屋さん盛況。本屋さんの店名は「パン屋の本屋」。入り口のガラス戸に注意の文言。
〈OKです ●ベビーカーでのご入店 ●小さなお客さまの泣き声や大きな声
NGです ●パンやコーヒーを手に持ったままでのご入店〉
 お子さん連れにやさしい。食の本、旅の本、児童書充実。来年も日にちに注意して来ようと思う。
 上野《藤田嗣治展》(東京都美術館)、没後50年の回顧展。65歳以上料金で入る。他の人に悪いと思う。昼食後、家人と別行動。私は渋谷《詩人吉増剛造展》(渋谷区立松濤美術館)、ここは60歳以上料金で。1960年代から現在までの代表的詩、写真他、詩人が敬愛する人物たちの作品・資料も展示。宿泊は赤坂。
 12日、渋谷で家族集合。待ち合わせ前にデパートの古書市を覗くが、本購入なし。長女一家(婿、孫)、長男と昼食。皆息災。赤ん坊はますます可愛く、活発になっている。ジジババを覚えてくれているのか、愛想をしてくれているのか、不明。私の扇子でいないないばあをしてくれる。じいちゃん喜ぶ。
 13日は二子玉川で娘・孫と昼食。私は時間まで荻窪本屋巡り駆け足。新刊の文禄堂は街に根づいた本屋さん、人気歌人の最新歌集サイン本を見つける。古書の岩森書店、ここの書皮が素晴らしい。山本周五郎の随筆購入。荻窪から西荻窪にはたくさん本屋さんがある。次の機会にゆっくりと回りたい。今は本より孫。
 14日、♪お江戸日本橋♪の地下鉄の改札前(三越前駅)にあるタロー書房で井伏鱒二文庫。周辺はアートアクアリウムというイベント入場を待つ人でいっぱい。日本橋の地べたに初めて上がった。橋も渡った。銀座に出て、家人買い物。私はいつもどおりお江戸締めの教文館、吉田篤弘買って帰途に。いつものことながら、おのぼりさんは何度も電車の乗り間違えして、ターミナルで右往左往。旅の恥かき続く。

 18日、ギャラリー島田で《WAKKUN展 種》開幕。「ボクに種をまいてくださった多くの方々、出来事に感謝を込めて、今後も絵を描いてゆきます」という展覧会。海文堂の顧客さんに会えた。まもなく卒業のギャラリースタッフうりぼうにお別れの挨拶。常設展ではギャラリー整理処分のフリーマーケット開催。古本、ポスター、ポストカードなど持ち帰り自由、私は神戸画家の本を3冊、お代は自由意思で芸術支援基金に寄付。

 娘から赤ん坊10ヵ月の記念写真。大きな足型。下の歯1本生えてきた。

 朝日新聞より。8.26《朝日歌壇》〈おおきくはしなくていいと祖父はいい父もまもったちいさな書店 東京都 高橋千絵〉 
どんな商売も維持するのはたいへんなご苦労と思う。
 同上8.28《折々のことば》〈読書は、人生の全てが、決して単純でないことを教えてくれました。私たちは、複雑さに耐えて生きていかなければならないということ。(皇后美智子さま)〉

 仕事ない日、暑くても読書快調。井伏と太宰、師弟愛と別離。歌人の時空を超えた旅。大都会の真夜中に人と人がつながっていく幸せな物語。

 三宮うろうろしていたら、女性史研究家で映画・音楽・出版にも詳しい潔先生(仮名)に出会う。ジン・カルチャーについての講義やイベント記録をいただく。2ヵ月ぶりにトンカ書店。豪雨と台風で雨漏り被害あったそう。有名な現代美術アーティストがいらして紹介してもらう。想像していた印象とはまったく違う。入れ替わるように来店した別のアーティスト(この人はよく知っている人)が差し入れのパンと飲み物をお客さんたちにおすそ分け。ざっくばらんがキャッチフレーズの古本屋そのまま。トンカさんにも京都古本屋さんの印刷物いただく。店主の魅力で人が集まる。

(奥のおじさん)



今月買った本
山本周五郎 『暗がりの弁当』 河出文庫
土方正志 『新編 日本のミイラ仏をたずねて』 天夢人発行 山と渓谷社発売
カラサキ・アユミ 『古本乙女の日々是好日』 皓星社
とみさわ昭仁 『無限の本棚 手放す時代の蒐集論』 ちくま文庫
穂村弘 『水中翼船炎上中』 講談社
井伏鱒二 『太宰治』 中公文庫
吉田篤弘 『おやすみ、東京』 角川春樹事務所
コミック1冊、古本2冊

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2018. 7月 奥のおじさん(53)

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奥のおじさん さすらい月報(53)

 関東地方は梅雨明けの様子。こっちは台風が直撃してきそうだ。
 本がもう入荷しているだろうなと予想して確認せずに灘のワールドエンズ・ガーデン訪問するも、アウト。次回の楽しみにして、古本1冊だけ購入。三宮の本屋さんでPR誌2冊もらって、文庫1冊。

 先月周防大島みずのわ出版から案内をもらっていた新刊のうち1冊を注文。予算の問題。『堀江芳介壬午軍乱日記』、明治15年朝鮮で起きた軍乱で公使の護衛にあたった長州出身兵士の日記。おまけは宮本常一を特集した冊子。一徳社主に感謝。

 《みなともとまちタウンニュース》連載原稿、次回からは鈴木商店・米騒動焼打ち事件。1918年8月、100年前のできごと。元町商店街も火の海になりかねなかった事件。

 新聞に山本周五郎未発表作品発見記事。戦時中、雑誌に掲載予定だったものが、紙不足でお蔵入り、そのままになっていた。周五郎死後50年以上が経つ。お楽しみはまだまだこれからかもしれない。

 台風7号はしぼんだものの、梅雨の雨は降り止まぬ。買い物なんかに出なくても、と思うが、家事担当は出かけにゃならぬ。ついでに本屋さん。頼まれ雑誌に、文豪評伝に、エンタメ「疫病神」。評伝はいつ読めるかわからない。

 7.5「朝日新聞」夕刊《一語一会》は人形作家・四谷シモン。1987年、澁澤龍彦が亡くなる前の言葉。
〈この世は夢で、玉ねぎの皮をむいていくと最後は何もなくなるような、そんなものなんだよ〉

 長雨は豪雨に。文句を言うても仕方がないけど、同僚・上司は電車不通で身動きとれず。私は通常どおり帰宅できた。土砂降り空を見上げて。

 ぬれ烏仲間を呼んでゴミつつく
 雨宿り先客雀がチュンと鳴く  よーまる

 帰ってみれば家は雨漏り。読書は、黒川博行『泥濘(ぬかるみ)』(文藝春秋)。現実世界は泥流。日本雨季大災害が当たり前になってきた。「最悪」「想定外」「記録的」「未曾有」とは言えない。

 7.8「朝日俳壇」に本の句2点。
〈青春を曝すが如く書を曝す (横須賀市)佐藤博一〉
〈黴の香に鼻の慣れたる古書店主 (神戸市)池田雅かず〉

 出版・書店を取材するライター・石橋毅史の新刊『本屋な日々 青春篇』(トランスビュー)。書店員、店主、古本屋さん、ブックカフェ経営者らにインタビューする。書店員たちは本の魅力を発信し、売る努力をしている。だから、石橋の取材の旅は終わらない。

 電車内や休憩時間に読むPR誌が手元になく、本棚から文庫本。安野光雅『手品師の帽子』(ちくま文庫、1992年、初版は76年童心社)。ストーン・ブレイン(石頭)博士が作った物語の登場人物=放浪詩人が猿からもらった小鳥の羽根(詩の種)と手品師の帽子とを交換。博士に作られた詩人が作り手の博士を確かめようと、帽子の中に入っていくというファンタジー。

 『大江健三郎全小説』(全15巻、講談社)の第1回配本のうち第3巻だけ購入。全集刊行は作家の業績をまとめ後世に遺す事業であること、作家への大きな敬意でもあること、読者として作家の作品をまとめて読むことの重要さも、十分承知している。でもね、全巻購入はちと難しい。いろいろ言い訳はあるのだけれど、とりあえず予算とスペースで断念。3巻は初期短篇。雑誌発表だけで本になっていない「政治少年死す」収録。

 神戸出身の経済学者が、一枚の写真と未知の地名から祖父の生い立ち・経済活動の全貌を明らかにしていく『頼介伝』(苦楽堂)。約100年間の日本と神戸の社会と経済を背景に企業家の波瀾の人生(戦争、国策、災害に翻弄された)を甦らせる。灘ワールドエンズ・ガーデンで購入。店主が来月著者のトークショーがあると教えてくれる。

 連休のうち2日は落語会。桂南光独演会(新神戸オリエンタル劇場)、桂米團治独演会(サンケイホールブリーゼ)。笑って、ちょっとしんみり。

 家人は横浜の孫に会いに行った。留守番じいさん自分用のカレーを作る。熱中症・孤独死・不審死を心配(?)してか生存確認メール着信。孫の写真は、鼻に絆創膏、おでこに頭突き跡やら引っかき傷。暴れん坊。

 20日の新聞より。横溝正史が戦時中疎開していた倉敷市真備町は豪雨被害の大きかった地域。横溝疎開宅は管理組合が管理。関係者も被災したが、片付けのかたわら開館している。「全国の横溝ファンをお迎えできる状況になるまでは、地元の人やボランティアのみなさんの休憩所として立ち寄ってもらえれば」。(朝日新聞夕刊)
 20日、恥ずかしながら65歳の誕生日。娘がプレゼントしてくれたビールで祝う。ほとんど投稿しないフェイスブックにメッセージをいただく。生存確認と考えて、たまには投稿しよう。

 「命の危険」を伴う暑さ、もう緊急避難命令段階? 職場で水仕事をしていると、宅配ドライバーさんが「水ください」と俯いて頭からかぶり、帽子にもかけて、「すぐ乾きます」。日射しが私の後頭部から首・肩・背中にヒリヒリ突き刺さる。帽子にタオルを挟んで後ろに垂らす。影はロン毛じいさん。

 柏倉康夫『今宵はなんという夢見る夜』(左右社)は詩人・金子光晴と妻・三千代の評伝。1928年、売れない詩人夫婦は幼い子どもを親に預けて、中国、東南アジア、ヨーロッパを旅する。足かけ4年放浪。国内での貧しい暮らしから逃れるためだが、もうひとつワケがある。三千代には恋人がいた。金子が絵を売って旅費を工面する。シンガポールから三千代だけ船に乗せ、金子が後を追う。ヨーロッパでも離れて暮らし、一旦離婚。帰国の便も別だったが、共に軍国主義の時代を乗り越えた。

 神戸にも縁ある山本周五郎の未発表作品収録、『戦国武士道物語 死處』(講談社文庫)。名も無き無数の戦士たちの死の意味を考えさせられる。戦時中の作品なのに、「命を惜しむ」と書く。

 ギャラリー島田DM発送作業手伝いに行く。少女が歩道に面した展示を見て、お母さんに、「ここ、らくがきやさん?」と訊ねている。この子に好きなだけ落書きさせてあげたい。画家の名は内緒。DM宛先にお笑い芸人さんの名前を発見して、スタッフ・うりぼうに確認すると、現代アートに詳しい人と教えてくれる。来月そのうりぼうがギャラリーを卒業する。じいさんの相手を親切にしてくださり、感謝。でもね、最後にしたお話が水虫なんて、あんまりな若者。良い旅を。

(奥のおじさん)


今月買った本(読んだ本は本文に)

『野呂邦暢小説集成9 夜の船』 文遊社
西村榮雄編 『堀江芳介壬午軍乱日記』 みずのわ出版
山田英生編 『貧乏まんが』 ちくま文庫
長谷川郁夫 『編集者漱石』 新潮社
黒川博行 『泥濘(ぬかるみ)』 文藝春秋
『大江健三郎全小説3』 講談社
松原隆一郎 『頼介伝』 苦楽堂
山本周五郎 『戦国武士道物語 死處』 講談社文庫
コミック1冊、古本1冊
 献本感謝
『多摩のあゆみ 第127号 宮本常一と多摩』 (財)たましん地域文化財団

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2018. 6月 奥のおじさん(52)

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奥のおじさん さすらい月報(52)


雲ひとつない青空、心地よい風は今のうち。もうすぐ梅雨入り。
娘一家帰省。4ヵ月ぶりに赤ん坊を抱っこ、やっぱり泣かれる。けど、すぐ慣れる。彼女から目が離せない。ハイハイして何処に行くやら、何を口に入れるやら。目が早く獲物に突進する猛獣。娘や息子もそうだったか、思い出せないジジババ。
6.3「朝日新聞」《加藤登紀子のひらり一言》より。
〈私の本棚は本が湧き出てくる温泉。/とても読み(飲み)干せないけど、心はワクワク!〉
 いつでもワクワクして本を読みたい。
 自分で言うのも何だが、私は寡黙だ。火曜日と木曜日は家にいるが、そういう意味ではない。書店員時代は「いらん事言い」だったが、今や職場でも家でも無駄口なし。赤ん坊の相手をしているとずっとしゃべっていることに気づく。
 職場の昼休み読書中、ついうつらうつら。それでも目は活字を追っていて、頭はまったく違うストーリーを読んでいることがある。ハッとして、いまの話は何だ、と思う。夢。内容はすぐ忘れる。それでね、吉田篤弘『あること、ないこと』(平凡社)には読んでいて話がつながらない章がある。「とはいえ」「そのことからもわかるように」「一方」「そして」「その結果」……、前の文章から続いているはずと思っているのに、別の話が次々展開される。私の理解力の問題か、寝惚けているのか、アッタマおかしくなりそう。
 PR誌『熱風(ジブリ)』6月号、特集は「追悼 高畑勲」。盟友たちの弔辞を読んで、映画人・高畑勲が優れたクリエーターで思想家だと改めて知る。
 私は来月65歳になる。役所から高齢者福祉の案内や介護保険証が来た。もう立派な高齢者。家人や子にはしょっちゅう叱られているが、孫には叱られないよう生きていこう。続けて福祉手帳「すこやかカード」が届く。市内(一部県下)の施設入場に特典あり。
 夢で書店員に戻る。有名芸術家の豪華本広告持参のお客さん、私は喜んで応対して、美術本担当者に入荷予定を尋ねたりしている。でもね、お客さんはよく似た名前の別人のエッセイだと思っていて、「違うかった、ごめんごめん」と謝る。「それはないよ~!」と叫んで目が覚める。
 赤ん坊が私の坐っている場所まで這って来て、手につかまって立ち、屈伸し、歩を進める。机の脚や柱に手をつき自力で踏ん張って立つ。「這えば立て、立てば歩め」の気持ちになる。でもね、「屈伸」は抱いてジャンプさせろという意思表示。抱っこすると立て、立てばもっと高く、の合図をする。いつの間にか赤ん坊に命令されている。これもコミュニケーション。松谷みよ子の『いないないばあ』(童心社)で赤ん坊といっしょに「ばあ、ばあ」している。
 安野光雅『旅の絵本 Ⅸ』(福音館書店)。1977年以来シリーズ9冊目。文章のない絵本(最近は安野の解説があるが)だから「翻訳」というのは変だけれど、13ヵ国・地域のことばで読まれている。だまし絵や隠し絵を探そうと目と肩に力を入れて見てしまうが、それは駄目。素直に楽しみたい。
 北摂から親戚老若男女6名(10代から70代)が赤ん坊に会いに来る。別の日には私の妹も。赤ん坊が親戚付き合いを繋いでくれている。
 6.18大阪北部地震、皆さんお怪我はありませんか。お家は大丈夫でしょうか。前日来訪の親戚たちは無事。私は通勤の電車内で遭遇、ちょうど駅に入るところで、あちこちで緊急地震速報が鳴った。電車は動けず駅で停車したまま。1時間余り車内で読書していたら、次の駅から姫路まで普通電車が往復運転する案内があり、ひと駅歩く。職場で居住者皆さんに伺うと、「怖かった、思い出したわー」とおっしゃる。多くの人が阪神淡路大震災を経験。エレベーターが停止したままだが、被害はなし。会社に安全点検報告手間取る。帰宅すると、家人に「あんたの本が崩れへんのが不思議」と呆れられる。壁の額は落ちた。前夜のテレビ番組「孤独のグルメ」の録画を見ていると、頻繁に地震速報が入っていた。予兆はあった。新聞に、自宅本棚の下敷きになった読書家の記事あり。ご冥福をお祈りする。
 娘と赤ん坊が横浜に帰る。家人が付き添う。別れは寂しい。次に会う時、彼女はきっと歩いているだろう。ジイちゃん体力維持せねば。地震の時、電車内で読んでいた本は、安野光雅『かんがえる子ども』(福音館書店)。 「考える」とは普通に暮らすことで、晩ご飯を考えるのは「たいしたこと」、子育ても「大事業」。私は毎日晩ご飯を考えているし、赤ん坊と半月暮らして子育て(?)もした。立派な「考える」人だと思っておく。
大阪の方から手紙で『海の本屋のはなし 海文堂書店の記憶と記録』(苦楽堂)の感想を頂戴した。大阪堂島《本は人生のおやつです!!》店主がお世話してくださったらしい。負け犬じいさん感激。
 吉田篤弘の本、先月末から3冊目。『雲と鉛筆』(ちくまプリマー新書)、寓話形式で人生観と書くこと・描くことの本質を語る小説。
 マンガ『ドカベン』(水島新司、秋田書店)が連載終了のニュース。週刊誌で読んでいたのはほんの一時期だが、単行本は全巻ある(はず)。最後のシリーズは水島マンガオールスターズ登場。その分ドカベンオリジナルキャラクターズの出番が少なかった。
 ギャラリー島田は海文堂ギャラリーから数えて40周年。初の有料展覧会、現代美術家・榎忠[MADE IN KOBE]を開催。金属スクラップを使った作品、己の身体で表現する作品で知られる。全身の体毛右半分剃り、生え伸びた時点で左側をまた剃る「半刈り」は40年前。その恰好でハンガリーに行った。「半刈りでハンガリー」。前衛はダジャレ好き。23日、大砲と大量の薬莢(戦場で実際に使われたもの)作品の前で作家と画廊主のトークが行われた。屋外の大きな薬莢残骸に花が一輪、二輪。
 6.24「朝日歌壇」より。〈絵本から好きなもの出る魔法あり「父さんがいい」と子の声小さき (小諸市)小泉博夫さん〉。愛されているお父さん。
 元町「こうべまちづくり会館」の古本市最終日。神戸詩人ふたりの詩集購入。1冊は著者サイン入り、もう1冊には詩人たちの呑み会写真3葉挟まれていた。
 都合のついた時間にギャラリー島田《榎忠展》で受付じいさん。平日でも熱心な美術愛好家が汗かきながらハンター坂を上がって来られる。《芸術家》らしき年配の方がちらほら見える。女性ファン多数。
 大岡信と谷川俊太郎『詩の誕生』(岩波文庫)は40数年前の対話。詩とは、詩が生まれ死ぬとは、を語り合う。その時点で20年の交友があった二人だが、文中に「三十秒近く沈黙」「十五秒ほど沈黙」という記録があり、緊迫した対話だったとわかる。

赤ん坊、這え、立て、歩め、雨上がれ  
梅雨晴れ間縁者に囲まれ赤子大泣き   よーまる

(奥のおじさん)


今月買った本(読んだ本は本文に)

吉田篤弘 『雲と鉛筆』 ちくまプリマー新書
安野光雅 『旅の絵本 Ⅸ』 福音館書店
安野光雅 『かんがえる子ども』 福音館書店
大岡信 谷川俊太郎 『詩の誕生』 岩波文庫
石橋毅史 『本屋な日々 青春篇』 トランスビュー
柏倉康夫 『今宵はなんという夢見る夜 金子光晴と森千代』 左右社
古本2冊
献本感謝
『足跡 第128号』 同編集部



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2018. 5月 奥のおじさん(51)

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奥のおじさん さすらい月報(51)

 花壇の小さなさくらんぼの木がかわいい実をつけた。鳥の餌になるだろうと思いつつ、一つ二つ口に入れる。上前はねる爺さん、いやしい。
明治歌人たちの九州旅行をたどる本、森まゆみ『「五足の靴」をゆく』(平凡社)。与謝野寛と『明星』の若き歌人4名(北原白秋、太田正雄、平野萬里、吉井勇)、彼らは森鴎外訳「即興詩人」やゲーテ「イタリア紀行」に大きな影響を受け、西洋に憧れた。西洋文明の、その根っこの精神=キリスト教に興味を持った。南蛮文化の香りを遺す長崎・平戸・島原・天草を中心に九州各地を旅し、地元の歌人たちと交流する。私は《森まゆみ》を信頼しているので本書を手に取ったが、やはり彼らの原文、岩波文庫も。
連休は仕事べったり休み、ダラダラ生活をしていると読書も集中できないことは経験でわかっている。PR誌や短いエッセイ集を手に取る、怠け者の知恵? 読んだのは『小村雪岱随筆集』(幻戯書房)。明治末から昭和にかけて活躍した日本画家・装幀家・舞台美術家。泉鏡花に認められ、その縁で活動が広がった。江戸情緒の伝統プラス化粧品広告・商品デザインを経験したモダンな感覚。
5.6《朝日俳壇》より。〈春愁や街にひとつの書店消え (東京都)青木千禾子〉
 図書館で調べ物。大正時代、神戸の造船所労働争議――日本で初めて労働側がサボタージュ戦術を展開――をルポした本がある。村嶋歸之『サボタージュ』(梅津書店、1920年)、ページをめくれば破れるというよりポロっと剥がれそうな感じ。膨大な本の中に、疑問の答えや求めている事柄の手がかりがある。私たちは先人の努力を受け取っている。
 長崎・天草の潜伏キリシタン関連遺跡がユネスコ世界遺産に登録の見通し。「五足の靴」は天草大江村の宣教師を訪ね、北原白秋が詩にしている。
 5.12「朝日新聞」より。本を万引きした警官「支払いがもったいなかった」、『愛と誠』原画無断販売、他も政官の碌でもないニュースばかり。その中、広島県高校生の投書「本を買いに行く時は夢心地」に癒される。彼女は、あまり外出しないし、人混みも嫌いだが、「大好きな作家さんの本を買いに行く時は別」。本屋に行く喜び、読書の楽しみを語って、読んでうれしい投書。
 15日は会社の会議終わって、小林さん福岡さんと呑み会。埼玉の音楽好き・本好き岩和さん(仮名)が年に一度の出張仕事来神で参加。某古本屋店主も早めに店じまい(?)して合流。話題は仕事の愚痴、政治社会問題、テレビドラマ、持病のことなど。話は尽きないが、どの話もすぐに脱線。酔っ払いの会話は長いが内容はない。今、読んでいる本の話は割合真面目であった。
 朝、パンに噛み付いてボロボロ前歯の固定が外れる。仕事のない日。いつもの歯医者さんに電話したら、混んでいるのに、「すぐ来てください」と言ってくれる。帰り道、元町からハーバーランドに向かう。松方幸次郎ゆかりの《八時間労働発祥之地》の碑を見学。
 自分が中高生の頃から映画・音楽のスターだった人たちの訃報は、自分もそういう年齢なんだという思いになる。でもね、年下のアイドルスターが亡くなるのは、言うて詮無いことながら、儚い。
 フランス文学者・詩人の生誕100周年記念出版、『言葉の木蔭』(港の人)を読む。本屋時代みすず書房の棚にこの人の本あったなあ、くらいの認識。神戸にもゆかりのある人と知る。読んでいて思い出した。画家の林哲夫さんにこの人の本『夢の口』(湯川書房、1980年)をいただき、棚の奥に突っ込んだままだった。罰当たり。早速読む。美術評論、詩論、戦場体験、友のこと。
 娘一家里帰りの連絡あり。知らせだけでジジババはソワソワ、ウキウキ。赤ん坊とは4ヵ月ぶりだから泣かれるだろうけど、それでもいい。指折り数えて待つ。娘からの動画では、赤ん坊はもうハイハイしている。ヨダレ垂らしてドシンズシンと這う、ミニ恐竜!?
 岩和さんが同人誌寄稿の原稿を送ってくれる。亡き母上の思い出、母校ゆかりの著名人のこと、同窓生のことなど青春の思い出から母上の話に返る。私もたまには両親のことを思い出してあげねば、と思う。
 元町事務局に原稿《松方コレクション》最終回を届ける。次のネタなし。買い物ついでの本屋さんで久々に映画屋ウツミッチーと遭遇、近況報告しあい、ついでに共通の知り合いをネタに冗談・悪口言い合う、とっても悪趣味、蜜の味。続いてトンカ書店、ここでも共通の友人の噂話。
 世の中には親切な方がおられる。何年か前に私がブログで読みたいと書いた古い書店PR誌『落丁』(大阪・青泉社)を見せてくださると、《くとうてん》経由で連絡あり。山口県のタカさん(仮名)は見ず知らずの方。私が厚かましくお願いすると、すぐにWeb上で閲覧できるようにしてくださった。タカさんに心よりお礼申し上げます。私はこの「贈与」にどんなお返しをすべきか。直接タカさんにお返しをできなくても、別の人・次の人にできることをすればいいのだろう。
 本の歌、5.27《朝日歌壇》より。
〈文庫本、缶コーヒーはちょうど手に収まってくれる手の恋人だ (神奈川県)九螺ささら〉
〈ノックせず部屋に入り来し者のごと書込みのあり図書館の本 (守山市)沢井栄子〉
 昨年、ギャラリー島田社長が代表理事を務める《公益財団法人 神戸文化支援基金》が設立25周年を迎えた。このたび記念の冊子『志の縁をつないで そして未来へ』を刊行。29日、その報告会に出席。1992年、島田社長が友人から託された「遺志」を受け、その人の名前を冠した文化基金が生まれ、芸術活動を支援してきた。市民の寄付によって累計5千万円超を助成している。今年、海文堂書店OGの「遺志」が寄せられ、基金は新たな構想に取り組む。
 雲行き怪しい中、用事で出かけて大雨に降られる。傘は持っている。でもね、こういう日に限ってドジを踏む。私は期待を裏切らない(意味不明)。銀行ATMに一部入金してお釣りを買い物費用に使う予定なのに全額入金ボタンを押してしまう。すぐ必要分をおろせばいいことなのだが、キャッシュカード不携帯。家に取りに戻る。雨はさらに強くなり、服も靴も靴下もびしょ濡れ。再度、でもね、楽しみにしていた仙台イラストレーターの本を買ったから、落ち込まない。ピッチピッチチャップチャップラララララン。

  五月雨にオヤジ濡れても本濡れず  よーまる

(奥のおじさん)


今月買った本(読んだ本は本文に)

宇佐見英治 『言葉の木蔭 詩から詩へ』 港の人
五人づれ 『五足の靴』 岩波文庫
吉田篤弘 『あること、ないこと』 平凡社
『佐藤ジュンコのおなか福福日記』 ミシマ社
コミック2冊、古本1冊。

 贈呈感謝
『海鳴り 30』 編集工房ノア
『志の縁をつないで そして未来へ』 神戸文化支援基金


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2018. 4月 奥のおじさん(50)

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奥のおじさん さすらい月報(50)

 4月新年度、勤務先の住宅には新一年生(小、中、高)が5人いらっしゃる。皆さんに直接おめでとうを言えた。当サイトの《くろやぎさん》は育児休暇を終えて出社の由、公私ともたいへんでしょうが、これもめでたい。
 海文堂書店の古い誌紙WEB公開。4月1日、《神戸元町「海の本屋」アーカイブ》が出航した。(株)くとうてんとWEBデザイナーさんのお世話になった。関係者の皆さんに感謝と祝福。1970年代後半から小林良宣元店長が制作してきた数々の誌紙――読者向けPR冊子、ブックフェア資料、読書ガイド、無料配布したもの、販売したもの、社内ミーティングレジメ――をまとめて掲載。今後も少しずつ加えていく。「消えた本屋のことをいつまでも~」というご批判もありましょう。でもね、古いものから発見できることがある。これを拠点に新しいことも始められる。
 宮城県盛岡市に《さわや書店》という本屋さんがある。ここの書店員さんは既刊本から独自のロングセラーを掘り起こす。《さわや》から全国に波及してベストセラーになった本が多々ある。同店・松本大介著、『本屋という「物語」を終わらせるわけにはいかない』(筑摩書房)が出た。出版業界全体の状態は厳しい。書店員は日々情熱を持って仕事をしているものの、危機感がある。ベテランは業務以外の雑務に追われ、若手は将来に展望が持てず、本を買って読む余裕もない。本屋と本のこれからについて提言と覚悟を綴る。
 毎月読んでいる出版社PR誌は5冊。そのうち3冊に連載するライターがいる。ロンドン在住の保育士。イギリス政治社会問題、アナーキスト評伝など、私はどれも最後に読む。一般誌はじめウエブでも連載し、単行本執筆と、他人事ながら忙しすぎる。
 ドイツ文学者・池内紀による芸術家、作家、学者ら15人の人物評伝、『みんな昔は子どもだった』(講談社)。大きな個性的な仕事を成した人たちの幼少期に焦点を当てる。
 ギャラリー島田「ダッシュ――藤本由紀夫展」。藤本は音楽家・美術家、同ギャラリー3会場で稲垣足穂をテーマに音と光で表現する。7日、藤本のトーク「タルホについて」、足穂の著作から受けた影響と足穂芸術を語る。1970年にラジオ放送から録音した足穂の声も公開してくれた。ダミ声早口の関西弁で、こんな爺さんおるおる、という感じ。足穂が青年期に闊歩したのは北野町山本通トアロード元町通、ギャラリー島田と海文堂書店はそのルート上にある(あった)。
 職場休憩時間の本は、『〆切本2』(左右社)。作家たちの原稿〆切間際の大足掻きエピソード数々。言い訳、泣き落し、居直り、大嘘、逃亡。仮病などへっちゃらで、突然妻出産もある。真剣なのかおふざけなのか、苦しんでいるのか楽しんでいるのか、一筋縄ではいかない人たち。編集者も並みの神経では務まらない。『1』で遅筆代表とされた井上さん向田さんは『2』でも存在感あり。
 他人の夢の話は退屈だろうなと思いつつ書く。最近よく本屋の夢を見る。ほとんどトラブル物だが、ある日はいい夢。探していた本が古本屋さんの均一棚で次々見つかって両手に抱える。どこの本屋さんか不明。
 4.15の新聞から。《朝日歌壇》に本屋の歌。〈手編みだったなあ前を通りてふと想う三月書房の主の帽子 京都府・島多尋子〉。
 PR誌『熱風(ジブリ)』(スタジオジブリ)4月号の巻頭は若手講談師《神田松之丞ロングインタビュー》。FMラジオで放送予定あり、楽しみ。。
 4.16の新聞から「〆切」話。朝日新聞文化・文芸欄《語る――人生の贈りもの―― 山藤章二(1)》。80歳を超えても週刊誌連載を持つ。半年入院して仕事を休む。〈あんなに長いあいだ、休んだことはありません。世間から忘れられるんじゃないか。病院にいると、恋しくなったのは、締め切りのある暮らし。ホンネです。〉
 週一ペースで娘が赤ん坊のビデオを送ってくれる。1分くらいのものを繰り返し見ている春の夜。
 4.17は久しぶりの明日本会の呑み会。いつものメンバー20名強。会員に、「おいしいビールが飲める、《かいうんどう》関係者の会」と誘われて初参加した人。《かいうんどう》はその人の頭の中でどう漢字変換されていたのか。《海運堂》か《開運堂》か。海文堂創業者はもともと海運業だったが、店は結局開運しなかったというオチ?
 黒岩比佐子『歴史のかげに美食あり』(講談社学術文庫)、日本近代外交史の裏舞台=饗応をめぐる政治的駆け引きを描く。2010年著者は急逝し、多くの読書家・古書愛好家が悲しんだ。
 半藤一利「昭和史」三部作完結篇、『世界史のなかの昭和史』(平凡社)読了。著者は繰り返し日本近現代史を書いて、平和の尊さを訴える。ゴミみたいな風潮が次々わいてくるから、誰かが根気よくしなければならない仕事。
 書店員浪人中のミホさん(仮名)が就職決定の連絡くれる。活躍を祈って一句。
〈新天地女傑迎える若葉かな  よーまる〉
 4.22新聞《朝日歌壇》に本の歌3首。ひとつ紹介。〈「本棚は人生だ」なんてたぶんさう息子の私のそれぞれ偏る (埼玉県)大久保知代子〉。私の本棚も間違いなく私の分身、ぐっちゃぐちゃ。
 『西東三鬼全句集』(角川ソフィア文庫)をめくる。戦前、三鬼は京大俳句事件(治安維持法による新興俳句弾圧)に連座して執筆禁止。落ちぶれて、家族からも愛人からも逃げて、神戸に移り住む。戦争が終わって俳句再開、焼け跡の感傷、空腹、それに堂々溌剌とした女性たちの美しさを句に凝縮。〈おそるべき君等の乳房夏来る〉。私が紹介するとセクハラか。
 目的の本を買いに本屋さんに向かう行程中ずっとわくわく。吉田篤弘『神様のいる街』(夏葉社)。吉田の言う《街》とは、神田神保町と神戸。吉田の青春と重なる街。吉田が神戸好きというのは以前の著書で知っていたが、まさか本になるとは想像していなかった。読んでいる最中もわくわく。海文堂書店のことも書いてくださっている。吉田さん、ありがとう。夏葉社・島田さん、ありがとう。
 4.29、昼は落語《桂吉弥独演会》(兵庫県民会館)。夜はラジオFMOH!《ジブリ汗まみれ》で講談師・神田松之丞インタビュー後半。

(奥のおじさん)


今月買った本(読んだ本は本文に)

池内紀 『みんな昔は子どもだった』 講談社
黒岩比佐子 『歴史のかげに美食あり』 講談社学術文庫
Q.Q.B. 『古本屋台』 集英社
森まゆみ 『「五足の靴」をゆく』 平凡社 
『小村雪岱随筆集』 幻戯書房
吉田篤弘 『神様のいる街』 夏葉社

献本感謝
『六甲山物語5 六甲山をさらに知る 続12話』 六甲山を活用する会

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2018. 3月 奥のおじさん(49)

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奥のおじさん さすらい月報(49)

 ジジイの春一番の行動は冬用下着を脱ぐこと。天気予報のお兄さんが、今年は「激しい三寒四温」と話していた。脱ぎ時が難しい。春が待ち遠しい人から「呑み会」開催伺いがちらほら。春と関係あるかどうか、ゴロー画伯が『ほんまに』第19号の表紙を《ほんまにサイト》で公開して刊行予告。でもね、内容表記に間違いがあり、現物は大丈夫か確認する。大丈夫の返事。
 お江戸私鉄駅前の本屋さんが2月に閉店。閉じるにあたって店主が本を書いた。《幸福書房》、20坪、家族4人で朝8時から夜11時まで営業、休みは元旦だけ。私は本屋ガイド本で、書籍の売上比率が高い硬派の本屋さん、と知るだけの野次馬。閉店について店主は、「ピカピカでなくなった」と語る。「ピカピカ」とは、売り上げを上げていって自主的に仕入れをしてお薦めできる本を並べる、という矜持。それが困難になった。最終日、贔屓の作家が隣の喫茶店でサイン会を開いた。偉いぞ、真理子!
 『ビッグイシュー』VOL.330の特集は「8年目の福島 ふくしまの8人」。東日本大震災から丸7年、震災、津波、原発爆発という震災後を前向きに過ごしてきた人たち。その中の一人、遠藤由美子さん(奥会津書房代表)は地域図書館「ふくしま本の森」を開設し、地域の人たちが寄り合う場を作っている。海文堂時代に東北応援ブックフェアを開催、第2回目に福島県の出版社(歴史春秋社と奥会津書房)にお願いをした。いきなりの電話にもかかわらず、遠藤さんは喜んでくださった。本屋冥利。
 転居した書店員さんに手紙を書いていて、新住所に驚く。小字名が「本森」。
「春嵐女は勁し本の森」
「本の森魔女と妖精花咲かす」
 15人の作家たちが本屋と本の思い出を語る本屋本、『この星の忘れられない本屋の話』(ポプラ社)。多くの作家たちが街の本屋で文学に出会い、背中を押され、生き方を決めた。世界中で本屋が少なくなっている。作家たちも危機感。
 我が家の花壇、さくらんぼの苗が開花。普通の桜より早く咲く。プティットフルール、天使のような可愛い花、孫……、お決まりの連想。
「さくらんぼ咲けば実を待つジジ心」
「桜桃花一輪一輪孫の顔 笑い顔あり泣きっ面あり」
 《くとうてん》エリカ嬢より『ほんまに』第19号完成の連絡をもらう。社に伺うと、セ~ラ編集長がかしこまって私を見つめる。いつものおちゃらけジジイ対応とは違う。私はドキドキしながら居ずまいを正し、「すでに孫もいる身で……」と訳のわからん反応。編集長曰く、『ほんまに』目次の私のところがミスプリ。やっぱり、ゴローの「大丈夫」は何だった。ゲストや外部執筆陣ならおおごとですが、まあ影響ありません。社長・編集長に呑み会他相談事。トンカ書店に本誌持参パシリして、ここでも相談。今号の特集は《わたしたちの少女文化》、洋画壇と少女漫画界のカリスマ初対談、そしてタカラヅカ歌劇。これまでのおっさん臭い特集とは一味違う。読んでいたら、《神戸元町「海の本屋」アーカイブWeb版 4月1日より公開》の予告あり。私、まだ聞いてないよ~。こっちは大丈夫?
 仕事終わって新大阪に向かう。勁版会例会、編集工房ノア社主・涸沢純平さん『遅れ時計の詩人』刊行記念トークに参加。同社45年の歴史と著者たちとの熱く濃い関係を語ってくださった。本書とノアをリスペクトして出版された冊子『淀川左岸』をいただく。「左岸」とはノア所在地大阪市北区中津。《遅れ時計の詩人》は「右岸」の十三に住まいしていた。
 大江健三郎・古井由吉『文学の淵を渡る』(新潮文庫)、現代日本文学二大知性対談。私の読書量や能力では理解難しいが、古今東西の作家たちが文学・言葉に立ち向かい、新しい文学・言葉を作り出してきたことはわかる。
 お彼岸の間、天候悪い。墓参りできない理由を見つけた罰当たり。雨が止んだら行くきますと先祖に言い訳。『ほんまに』を知人に手渡し、取り扱い先に配達し、《くとうてん》で《明日本会》相談や海文堂アーカイブの話、三宮ブックス村田社長に業界話聞いて日が暮れる。
 家人は孫に会いに行った。ジジイは行くところなし、一人留守番で干からびてしまうかと思っていた。東北《古本屋の女房》から雪が溶けそうなアツアツメールあり。島根の団塊牧師さんからもメール、用件の最後「ところで今度結婚します」に驚愕呆然。正直に言えば、「このおっさん何しよんねん!」。きっと良い魂と巡り会えたのでしょう。めでたいこと。天気回復し、善男善女にまじって墓掃除。帰り道、一杯のコーヒーで身も心も満足。
 『ほんまに』を贈呈した方々から連絡いただく。M社ミキさん(仮名)の手紙はタカラヅカに関する苦い思い出。コアなヅカファンとトラブル、逃げず慌てず冷静に対応、解決した。京都ミホさん(仮名)から絵ハガキで返句、
〈さくらんぼ分け前欲しいいやしん坊〉
 《荒地》の詩人評伝、『鮎川信夫、橋上の詩学』(思潮社)読了。書名は詩「橋上の人」から。橋の上から彼岸と此岸、戦前と戦後を見つめた詩人。
 調べ物、《松方コレクション》関連で職場近くにある松方幸次郎別邸跡。現在は《須磨寺町公園》、松方邸云々の説明や碑などはない。幸次郎は1928年川崎造船所社長を辞任、長男の病死もあった。失意の中、約2年ここに住んだ。地域の人たちと気さくに付き合ったが、再び表舞台に立つことになる。
 通勤電車内の読書は出版社PR誌。『本』(講談社)連載で、歌人が「百人一首」の一首ずつを解説している。在原行平の歌、〈立ち別れいなばの山の峰に生ふる まつとし聞かば今帰り来む〉がある。行平は権力者に疎まれ、都から須磨に流された。「源氏物語」のモデルの一人と言われている。貴種流離譚、須磨の美しい姉妹との悲しい物語は能「松風」になった。ゆかりの遺跡、伝説が残る。
 勤務休憩時間読書、今は、渡辺京二『日本詩歌思出草』(平凡社)。在野の思想家が若き日から親しんだ詩歌を語る。それは昭和の歴史と自らのこれまでを語ること。詩歌は心の拠りどころだった。
 海文堂書店アーカイブ《神戸元町「海の本屋」アーカイブweb版》のテスト版がアップされた。ある冊子に欠番があるので手直しお願い。最初からうまくはいかないし、あとから直せるものは直せばいい。《くとうてん》に丸投げですが。4月1日一般公開できる由。
 知人にハガキで、「こちらの桜はまだ咲き始め」と書いたとたん、陽気は夏日になり、一気に満開。よいこたちの入学・入園式には散ってしまうと心配。別の知人は「ふぜいもなにもあったもんじゃござんせん」と書いてきた。この憤りをどこにぶつけるか。
 本日のPR誌は『scripta』(紀伊國屋書店)、国内外を飛び回る編集者の日記に神戸のパフォーマーのこと。ネットで調べればどんな芸かわかるだろうが、んー、今更興味を広げても、と思って探していない。

(奥のおじさん)


今月買った本(読んだ本は本文に)

岩楯幸雄 『幸福書房の四十年』 左右社
『〆切本2』 左右社
半藤一利 『世界史のなかの昭和史』 平凡社
松本大介 『本屋という「物語」を終わらせるわけにはいかない』 筑摩書房
コミック1冊
贈呈本感謝
『淀川左岸』 ぽかん編集室
『ほんまに』第19号 くとうてん
『足跡』第127号 同編集部


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2018. 2月 奥のおじさん(48)

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奥のおじさん さすらい月報(48)

 私が「さすらい」と言っても、一人旅に出るわけではない。買い物とたまの散歩くらい。厳しい寒さの中、もし万一私が行き倒れになったら、身分証明書はないし、ケータイもないし、身元照会に時間がかかるだろう。世間には多少迷惑をかけるでしょう。
 孫誕生100日記念の写真が届く。まだそんな日数かと思う。連休会いに行く。
 休日、家人は実家親戚と約束、私は内科診療後、西宮大谷美術館《藤田嗣治 本の仕事》展。この美術館には子どもたちが小さい頃絵本原画展で何回か来た。名士の旧邸宅、昔は靴脱いで畳敷きの部屋を観覧したと記憶する。立派な庭園がある。藤田展は一昨年兵庫県立近代美術館で生誕130年記念展覧会があったが、今年は没後50年、大規模な回顧展も東京と京都で開催予定。有名人は死後も忙しい。藤田は《乳白色の肌》の美人画で知られ、1920年代パリで高い評価を受けた。今回は本の挿絵や装幀などの仕事に焦点を当てる。画家仲間だけではなく、コクトー、アポリネールら文学者とも交流し、豪華限定本に絵を提供した。ハガキや絵手紙が公開されていて、コミカルな絵もあり意外。帰り道、霙、濡れて帰る。
 読書は柔らかく川柳・都々逸本、坂崎重盛『浮き世離れの哲学よりも憂き世楽しむ川柳都々逸』(中央公論新社)。正月明けに買ったままだった。著者は神保町古書店本や岩波文庫解説本など硬派のイメージ。川柳・都々逸は《豊かな日本語の宝庫》と語る。
 ジジババ、心うきうきして早朝の新幹線で東に向かう。満席。旅の友は葉室麟と藤沢周平。まず銀座で《平野甲賀と晶文社展》(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)。昨年京都で開催されたが、見逃していた。装丁やポスターをリトグラフで再現。
 旅のメインイベントは孫娘食べ初めの集まり。彼女のおかげで長女嫁ぎ先の方々にも会える。皆さんが彼女を暖かく育ててくださっている。長男は姪と初対面、うれしそうに抱っこしている。彼女は一段と重く丸くなって、ときどき声を上げ、元気に泣く。泣き声はすでに横浜言葉(?)、彼女に神戸ジジババの記憶はあるだろうか。
 宿泊場所近くの本屋さんに海文堂ゆかりのキタヒロさん(仮名)が勤めていて訪問。カフェ、電化製品に文房具、各種雑貨、観葉植物、イベントスペースなどと本を融合させている現代的な本屋さん。棚移動作業の最中にも関わらず案内してくれる。
 翌日は珍道中、目的の展覧会会場が休館日だった。事前にお江戸のイベント情報を見たが、そこにはこの休館日表示はなかった。会場のウエブサイトを確認していなかった失敗。連休の真ん中に休むんや。私たちの他にもたくさんの人が来ていた。出直すことにして、家人と別行動、私は神楽坂の本屋さん(ブックカフェ)2軒に向かう。 神楽坂の駅を出るとシャンソンが流れる歩行者天国。目当ての本屋さんを探す。1軒はすぐわかったが、もう1軒を見つけられない。あっちウロウロこっちキョロキョロして小一時間、駅入口真向かいの2階だった。何で路上の看板が目に入らなかったのか。間違いなく徘徊。家族との待ち合わせ時間を気にしながら表参道、《会田誠展 GROUND NO PLAN》(青山クリスタルビル)。アーティストの立場から行政と大企業の都市計画・開発を批判し、提言を行う。真面目にからかう、それが持ち味だが、大手ゼネコンの財団がスポンサーで笑ってしまう。宿泊地に戻って、長女夫婦・孫と夕食。2日連続で会うのはうれしいことながら、ジジババは「あえばわかれがこんなにつらい」。
 最終日、前日振られた《谷川俊太郎展》(東京オペラシティ)。入場したとたん、「わらべうた」のカッパとイルカの詩が響く。「自己紹介」の詩一行ずつが柱や棚に貼り付けられ、その一行をテーマに小さな展示がされている。例えば「私は背の低い禿頭の老人です」には等身大の写真が貼られている。映像や音楽を駆使し、趣味のコレクション、書簡、家族写真も展示。お年寄りから幼児まで、幅広いファンが集まる。会場で本を買うとレシートに谷川の詩が記載されていた。ガチャガチャ(豆本)の自動販売機もある。銀座に出て教文館。今回の本屋めぐりはブックカフェばかりで、ジジイは場違いの感強かった。やっぱり昔ながらの正統派本屋さんは居心地良し。『みすず 読書アンケート特集』あり。神戸では買えない。これを以て今回の旅終了。私は孫孫と言いつつ、要領よく(但し効率悪く)好きな場所に行けた。
 洗濯3回して、旅行の後片付け。午後ジュンク三宮店行ってコミック。昔(1978年)完結した少年野球漫画の続編を別の漫画家さんが後を継いで描く。スーパーヒーローはいない、ひたすらにひたむきに野球に取り組む、努力と根性と友情。元の著者はこの後の作品を連載中に自死した。レジに知人、おお恥ずかしい!
 髙田郁新刊『あきない世傳 金と銀(五)転流篇』(ハルキ文庫)、読書中の本、中断。主人公を中心に商いは紆余曲折あるものの順調。でもね、彼女の身辺に起きる事件は切なさ・哀しさを超えて、余りに酷。著者相変わらずのサディストぶり。
 名古屋の和さん(仮名)からありがたいプレゼント届く。お勤めの老舗書店100周年記念のオリジナルブックカバーとお菓子、うきうきのジジイ。大事に使います。
 一人の休日、灘区神戸文学館から古書ワールドエンズ・ガーデン。店主と『ほんまに』の話、地元出身版元営業さん訪問予告など。足穂本発見。
 若い時から人の名前がなかなか覚えられない。親しい人の名も思い出せないことがある。ついこの間まで調べていた美術蒐集家の姓が出てこない。「イなんとかハジメ」と半日ブツブツ思い出そうと試みるも結局ダメで、本をめくる。情けない。
 京都《ゴッホ展》。平日でも超満員、ほとんど中高年女性グループ。男性も若いカップルもいるにはいるけど、彼女たちはパワフルにカルチャーしている。展覧会のテーマは、ゴッホの日本。ゴッホをはじめ印象派の画家たちはジャポニズムに心酔した。ゴッホ美術館所蔵の「寝室」(ゴッホは同じ題材で3枚描き、その1枚目)が出展されている。3枚目は《松方コレクション》にあった。戦争中フランス政府がコレクションを敵性財産として没収した。戦後多くが日本に返還されたものの、残念ながら3枚目「寝室」は戻らなかった(3枚目はオルセ美術館蔵、2枚目はアメリカシカゴ美術館蔵)。絵ハガキ購入。小さな市場の食堂で昼ご飯、丸善でコーヒー。
 孫に会う旅に持参した藤沢周平の人物評伝『白き瓶 小説長塚節』、ようやく読了。時代小説を読むようには進まないが、途中でほおり出すことはできない。藤沢の筆力に引っ張られてなんとか。藤沢は膨大な資料を読み込み、決して有名とは言えない歌人の37年の生涯を綴った。前衛俳句の金子兜太さん逝去。
 長男が友人結婚式で帰神、一泊で帰京。
 金沢の出版社・龜鳴屋からグレゴリ青山『コンパス綺譚』が届く。1927年大連から一つのコンパス(方位磁石)が青島、哈爾濱、上海……といろいろな人物の手から手へ渡っていく。日本人、中国人、ロシア人、朝鮮人、日独ハーフ、詩人、女給、踊り子、俳優、作家、子どもたちが、戦争と動乱の影濃い中国大陸を舞台に生き方を探り、迷う大河ドラマ。
 「朝日新聞」(2.27)に《松方コレクション》記事。松方幸次郎がクロード・モネから直接購入したと言われる「睡蓮――柳の反映」がルーブル美術館で見つかり、松方家に戻った。《松方コレクション》を所蔵している国立西洋美術館に寄贈。遅れて帰ってきた《松方コレクション》。
 梅田で出版関係者と呑み会。まもなく退職する京都書店員・ミホさん(仮名)激励会、出版社営業さん4名、書店員4名、部外者おっさん(私)集まる。ミホさんは三宮でデビューして全国を回った。彼女が新宿にいた時に私は知り合い、ペンフレンドで呑み仲間。
 会の前に古本屋さん《本は人生のおやつです!!》、「昭和なモダンライフ」をテーマにパネル展と10店舗参加古本市開催中。店主が初来店のお客さんと話している。お客さんは受け上手で「へー、ホー」と頷いて、さらに店主の話を引き出す。見習おう。新刊文庫と孫娘雛祭り用に夢二ポストカード購入。

初節句おめかし赤子もすまし顔  よーまる

(奥のおじさん)


2月買った本

葉室麟 『玄鳥さりて』 新潮社
渡辺京二 『日本詩歌思出草』 平凡社
谷川俊太郎 『こんにちは』 ナナロク社
『みすず 1.2月合併号 読書アンケート特集』 みすず書房
髙田郁 『あきない世傳 金と銀(五) 転流篇』 ハルキ文庫
林洋子 『藤田嗣治 手紙の森へ』 集英社新書
『西東三鬼全句集』 角川文庫ソフィア
グレゴリ青山 『コンパス綺譚』 龜鳴屋
ヘンリー・ヒッチング編 『この星の忘れられない本屋の話』 ポプラ社
古井由吉・大江健三郎 『文学の淵を渡る』 新潮文庫
コミック2冊
古本2冊


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2018. 1月 奥のおじさん(47)

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奥のおじさん さすらい月報(47)

 元日午後、長男は持って帰ってきたタッパーに食べ物入れて戻って行った。ジジババふたりっきり正月は例年通り。家人と初詣、荷物持ち兼杖がわり、両者とも足元が危うい。
 私は暮れから持ち越しの新書を読み終えて、桐野夏生『デンジャラス』(中央公論新社)に取りかかる。谷崎潤一郎晩年、家族(女)たちとの生活を『細雪』三女モデルの視点で描く。平穏な《家族王国》に新しく嫁が参入、谷崎は心奪われる。文豪は変態じいさん? 私は女性崇拝者だと思うが、やっぱり女性が好きで好きでしようがないじいさん、ということか。続いて女性アナキストの手記『何が私をこうさせたか』(岩波文庫)。1926年、皇太子暗殺(爆弾入手計画を立てた)の罪で死刑判決。転向も恩赦も拒否し、獄中で首をくくる。まだ23歳だった。
 業界先輩が年賀状で、世間とのつき合いを縮小し賀状も最後と、決意を述べられている。蔵書整理など終活を始めていることは聞いていた。スポーツを楽しみ健康、元気。まだまだ萎むはずはないと思う。
 家人がパソコンの壁紙を赤ん坊の写真にしてくれる。長女が赤ん坊の写真や動画を送ってくる。表情豊かになっている。赤ん坊はありがたい、写真だけでジジババを幸せにしてくれる。長男は近々異動があるらしい。
 仕事帰りに大阪難波まで足を伸ばして出版業界新年会。なんで部外者が今更と思いながら、イベントや呑み会に誘ってもらうと毎回ホイホイ参加する。皆さんが暖かく迎えてくださるので甘える。他にもOB・OGさんがいらっしゃるので、いいことにしよう。2年ぶりの方、5年ぶりくらいの方、呑み会たびに会う方もいる。転職した人、辞める人、大書店の縮小や撤退など、出版業界の厳しさは相変わらず。引退者は昔話や泥酔失敗自慢話で盛り上がる。ある人から「ほんとうに楽しそうですねえ」と言われて、私はほんまに楽しんでいると実感。
 『デンジャラス』に続いて《谷崎本》『瘋癲老人日記』(中公文庫)。老人は若嫁の足に執着し、死んでも踏まれていたいと思う。墓に設置する仏足石のために嫁の足型を取る。マゾ老人フェチ小説。老人は谷崎自身。事実、谷崎は若嫁に頭を踏ませた。谷崎、危ない爺さん!
 中央図書館で《松方コレクション》資料借りて、家で『ほんまに』原稿用の本。締め切り迫っているのに、まだこういう状態。シロヤギさんは書き上げて提出したと昨日宴席で聞いた。買い物に出て、そごう紀伊國屋とジュンク三宮。
 時代小説「国芳一門浮世絵草紙」シリーズ(河治和香、小学館文庫全5巻)、第1巻を読んだまま保存(放置)していた。歌川国芳と娘登鯉(とり)を中心に弟子たちや歴史上の有名人が躍動。幕末の世相も描かれている。読み出したら止まらない。『ほんまに』原稿書かなければいけないし、元町原稿《松方》も煮詰まって進まない。
《松方コレクション》は第一次世界大戦終結後の経済状況激変で銀行に押さえられ、その売り立てのために展覧会が何度も開かれた。資料にこの展覧会のことを書いている野上弥生子の小説が紹介されている。新刊本では手に入らない。図書館にはあるのだけれど、買い物ついでに古本屋さんを覗いたら、文学全集の端本が見つかる、100円。
年賀状お年玉くじで3等切手当選3枚は自己最高記録。これまで数年に1枚当たれば良いほうだった。幸運か、運を使い果たしたか。我ながらスケールが小さいと思う。『ほんまに』原稿送信。
 『BIG ISSUE VOL.326』で路上の落し物「片手袋」を撮影している人の記事を読んだ翌朝、私は手袋両手共落としてしまった。影響されやすい、暗示にかかりやすい、ただのボケ。でもね、道端に落ちているもの、ハンカチやタオルより圧倒的に手袋が多い。
 現役書店員で出版もしているキタヒロさん(仮名)から新刊本をいただく。純文学作家の短篇集、若い作家に出会える良い機会。ありがとうございます。
 ジジババちゃんりん京都雛人形探し。家人はスマホで娘と連絡しあいながら選んで決める。私は久しぶりに三月書房。老夫婦、京都徘徊。暖かい日でよかった。
 《ギャラリー島田》DM作業。1978年、島田社長が海文堂書店社長室を模様替えして《海文堂ギャラリー》スタート。改装・増築を重ね、最終的に2階のギャラリースペースになった。2000年、いろいろあって社長が退任、独立して山本通で開廊。現在40年記念の展示が2期にわたって開催されている。《ギャラリー島田》ではビル内3つのスペースで毎回別の展示をし、それぞれ1週間ないし2週間で入れ替えている。スタッフさんたちが9月や12月の打ち合わせをしていて、今年のスケジュールはほぼ埋まっている模様。
 寒波、職場では雑巾やモップが干したとたん凍る。
 元町商店街事務局に原稿渡す。テル編集長(仮名)が神戸の本屋史を連載中で、私のわかることを話す。その他雑用すませて、元町を歩いていたら《うみねこ堂》店主と遭遇してお店までついて行く。続いてほんまに久しぶりに《1003》の階段を上がる。店主は積極的に新刊本(直ルート)を仕入れ、前述のキタヒロさん出版の本も並んでいる。1.24現在、神戸ではここしかない、独占販売。辞書をテーマにした掌編小説集購入。
 頼まれ原稿進まず、ブログは更新が滞っている。書店員時代は何が何でもやっていたことなのに、義務感が薄れている。話題も集中力も、本に対する感度も鈍っている。
 孫が横浜に帰って、まだ1ヵ月しか経っていない。元気でいるか、ハマには慣れたか、と余計な心配。数日おきに来る写真は寝顔、笑顔、泣き顔、指しゃぶり、おめかし。何度見ても飽きない。泣き顔はちょっとブチャクなるけど、やっぱりかわいい。気に入っているのは、大泣きしたあと寝て笑い顔になったという写真。見せびらかしたいが、自重。
 山本義隆『近代日本一五〇年――科学技術総力戦体制の破綻』(岩波新書)、著者は科学史研究者、予備校教師、というよりも東大全共闘代表の肩書きが有名かも知れない。近代日本の科学技術の発展と国家150年の歩みを検証。西洋のエネルギー革命と軍事技術は幕末・明治の日本に衝撃を与えた。富国強兵、国防国家建設、敗戦、そして原子力開発とその破綻。読み進めるのが恐ろしい。

年賀くじ3等3枚運の尽き  よーまる

(奥のおじさん)



1月買った本

谷崎潤一郎『瘋癲老人日記』 中公文庫
坂崎重盛『浮き世離れの哲学よりも憂き世楽しむ川柳都々逸』 中央公論新社
『鶴見俊輔さんの仕事2 兵士の人権を守る活動』
『同3 編集とはどういう行為か?』
『同4 雜誌「朝鮮人」と、その周辺」
『同5 なぜ非暴力直接行動に踏みだしたか』 編集グループSURE
山本義隆『近代日本一五〇年――科学技術総力戦体制の破綻』 岩波新書
『小辞譚』 猿江商會 
コミック1冊、古本1冊
献本感謝 横田創『落としもの』 書肆汽水域


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2017. 12月 奥のおじさん(46)

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奥のおじさん さすらい月報(46)


 いつものようにメールをあけ、愛の言葉を探す私に、届いた知らせは、右ストレート顔面直撃でありました。ちあきなおみ「喝采」(吉田旺作詞、中村泰士作曲)のように始めたが、こっちはめでたい知らせ。東北GFが古本屋の女房になるらしい。祝福の返信して、ついでに『ほんまに』原稿依頼。
外は寒くても、じいさんの懐は寂しくても、赤ん坊は育つ。抱っこして作詩。
《まんまるまんまるあかちゃん まんまるまんまる~》
「あかちゃん」のところは赤ん坊の名前にして「まんまるまんまる」とあやす。母親(娘)に「まんまるまんまるって、失礼やわ!」と怒られる。でもね、ほんまにまんまる。
 南蛮美術蒐集家《池長孟》に続いて、フランス近代絵画コレクターについて調べる。造船会社・新聞社経営者《松方幸次郎》。壮大な美術館構想を持っていたが、残念ながら実現せず。第二次世界大戦中、フランスで保管していた蒐集品は敵性財産として没収された。戦後、日本政府が交渉し、フランス政府の好意により返還されたが、美術館創設が条件だった。できたのが東京上野の国立西洋美術館。
『ほんまに』第19号に向けてゴローちゃん始動、執筆者に依頼。私も分担、先述のGF他、古書愛好家と古書店店主にお願いする。
 今年4月亡くなった詩人・大岡信が1994年95年にフランスの高等教育機関で行った講義録、『日本の詩歌』(岩波文庫)購入。古典詩歌を論じながら、日本文化・芸術の根源を明らかにしてくれる。
 時代小説作家・安住洋子の新刊を新聞広告で発見、3年ぶりの本『み仏のかんばせ』(小学館文庫)。この人は人情物が得意だが、本書は修羅場が何度もある。主人公女性は過去を隠して男と偽り首斬り役人の中間になる。夫婦になる男性は盗賊の一味で、かつて彼女から主家の貴重品を強奪した。すごい設定で、これがどう人情物になるのか? そこは著者の腕。1冊完結では物足りない。長篇で読みたいと思う。
 ゴローちゃん、もといゴロー画伯がFMラジオにゲストで登場。前もって時間と番組名を教えてもらっておきながら、当日その時間の記憶がない。酔っ払って居眠りしていた。放送後でもネットで聞けると教えられて、翌朝に。ゴローちゃんが「画家」としてメディアに登場することはその覚悟と自負を持ったのだと解釈。今後の活動を楽しみに。
 そのゴローちゃんに会ったとき、「赤ちゃんの匂いがする」と言われたが、自分ではわからない。ジジ臭いと言われるよりはずっといい、と思う。
 「朝日新聞」土曜日別刷の《みちのものがたり》、16日は「藤沢周平を生んだ道」。藤沢は故郷(山形県鶴岡市)を舞台にした時代小説をたくさん書いた。架空の藩「海坂藩」もの。没後20年になる。地元中学教師時代に結核を発症し療養生活。教職復帰叶わず上京、業界新聞に勤めながら作家を目指した。長男、妻を相次いで亡くし自死も考えた。小説を書くことで乗り越えた。「藤沢」は故郷の隣の地名で、そこは妻の出身地でもある。藤沢は故郷に拒まれた形だが、故郷への愛は失わなかった。私の悔いはこの人が亡くなってから著書を読み始めたこと。9日の同記事は「横溝正史が歩いた畦道」だった。横溝が戦時中疎開した岡山県倉敷郊外の散歩道。後年の大ブームとなる作品はここで練られた。
 今読んでいるのは、中川右介『江戸川乱歩と横溝正史』(集英社)。探偵小説界の二大巨星は、互いに認め合い、切磋琢磨、叱咤激励、時に反目、また支援し合った。その友情は終生変わらなかった。ふたりの「交友」を中心にして、日本探偵小説出版史を丹念に綴る。
 人文書版元・幹さん(仮名)から『人文会ニュース』届く。私が引退して4年あまり経つのに、未だに送ってくださる。感謝。
 23日赤ん坊の父親が迎えに来て、24日一家は横浜に帰って行った。じいさんばあさんは朝から墓参り。ジジババだけのクリスマス・イヴ。
 仕事終わっていそいそ帰る。赤ん坊沐浴せねばと思えど、もういないのだった。寂しがってはいられない。娘から赤ん坊の写真が次々送られてくる。エエ顔選んで年賀状作成。例年元旦にならないと着手しないのに、ちょっとだけやる気を出す。
 26日、歯医者さん行って、元町商店街事務局と《くとうてん》年末挨拶。トボトボ歩いていたら、若い女性に声をかけられた。元海文堂バイト・タケさん(仮名)、母上とご一緒。「結婚間近」とうれしい報告。お幸せに。ジュンク堂駅前店で注文品受け取り、レジによく知るシュクさんとイケさん(両者とも仮名)がいらして挨拶。その他用事すませて帰宅。娘に宅配便送って、図書館。
 年内に年賀状を書いて投函するなんて、何年ぶりだろう。信念(新年)を曲げる行為! 早く赤ん坊のことを書きたいのだよ。でもね、印刷失敗。
 家人の雑誌を買うついでに自分の本もまとめて。休みに読めるか? 無理無理。
 30日、家人義姉と墓参り。別の親戚家族に会ってお茶、元旦のサッカー観戦に向けて出発の由。神戸に戻って三宮ブックス村田社長に挨拶。長男帰省、家人が食品を入れて送ったタッパー類をレジ袋に入れて持って来た。若い男がそんなん持って新幹線乗るか~? 
 大晦日、家族3人で湊川神社にお参り。戌の絵馬の前で長男に夫婦写真取ってもらう。のどかな年末。



エンジェルはクリスマス・イヴ東(ひんがし)へ
きよしこの夜静かに過ごす

バイバイ、ジジババ寒風墓参り
線香煙が目にしみる

木枯らし無情赤ん坊の匂い消す
ジジの鼻までツンツンと刺す

ジジババの腕に重たい4.3キロ
思い出抱いて会える日を待つ


初夢に孫の笑顔をリクエスト夢で会えたら素敵なことね(盗作?)  よーまる

(奥のおじさん)



12月買った本
大岡信 『日本の詩歌』 岩波文庫
安住洋子 『み仏のかんばせ』 小学館文庫
寺山修司・宇野亜喜良 『五月よ、僕の少年よ、さようなら』 アリエスブックス
ICP ロバート・キャパ・アーカイブ編 『ロバート・キャパ写真集』 岩波文庫
金子文子 『何が私をこうさせたか 獄中手記』 岩波文庫
原田信男 『義経伝説と為朝伝説 日本史の北と南』 岩波新書
桐野夏生 『デンジャラス』 中央公論新社
古本3冊



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2017. 11月 奥のおじさん(45)

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奥のおじさん さすらい月報(45)


 10月末からお江戸の古本まつり、11月初めは神保町ブックフェスティバル、京の古本、尾張名古屋の老舗本屋さんの創業記念イベント、12月中旬までの東京での文学展……、爺さんは趣味より赤ん坊と一緒にいることにする。
 そう言いつつ、7日は大阪肥後橋《book&café calo》の《イシサカゴロウ個展》、梅田《ブックエキスポ》とその後の呑み会に出かける。《ブックエキスポ》は出版社と書店の商談会。会場に入る前に日本図書普及(図書カードの会社)の芋さん(仮名)に会って軽くご挨拶。続いて大阪版元・稲社長(仮名)とエスカレーター上り下りですれ違う。ふたり共呑み会で会える。入口で係りの人に、「業界人ではないのですが」とお願いしていたら、ちょうど旧知の書店店主がいらして、「入れたってー」と助けてくださった。営業さん、取次さん、よく知るお顔があっちにもこっちにも。数人の方と旧交を温める。続いてゴロウ個展、《calo》曲がり角目印のケータイ屋さんがなくなっている。私のあと、すぐゴロウ画伯到着。私は画伯の美人画や渋いおじさん画が好み。しばらくしたら神戸女子古本屋さん来店、《ブックエキスポ》に行って、商談をまとめてきたそう。買い逃していた『ぽかん06』(同編集室)を購入して、画伯と梅田に戻り、解散。私は呑み会突入。初めて会う人もいらっしゃるのに、稲社長から乾杯音頭に指名される。孫誕生が理由らしいが、それとこれとはどうつながるのか。断わるのは大人の態度ではないし、たぶん誕生を祝ってくれるということと解釈して、挨拶、乾杯。書店員時代からお世話になった営業さんと今回初対面、熱烈な地元サッカーチームサポーター(サッカーは彼にとって精神世界)で話題豊富な楽しい人。旧知の営業さん、書店員さんたちと歓談。シロヤギさんと芋さんに孫写真を見せる。
 神大医学部生協で本を受け取って、元町で雑誌買って、ギャラリー島田DM作業。ギャラリー内は展示入れ替えでてんわやんわ、インターンさんと私はバックヤード。休憩時間のスタッフさんと育児談義。DMは、例年大人気の〈石井一男展〉〈須飼秀和展〉があるのでいつもより量が多い。片付けて家路を急ぐ。爺さんの役目、赤ん坊沐浴タイムが待っている。赤ん坊抱っこは、手洗い・うがい励行のうえ手を暖めておかないとババさん・母親に叱られる。
 休日、散髪、本屋さんのあと、家人と待ち合わせて買い物。デパート赤ちゃん用品売り場を回遊して元町商店街。旧ヤマハはドラッグストア開店準備中、洋菓子店跡はホテルになる予定。
 14日、会社の会議終了後、小林さん、福岡さん、それに海文堂OG萬さん(仮名、後輩3名を今の職に導いてくれた恩人)と一緒に《竹内明久 モトコー切り絵展》(高架下商店街、プラネットEartH)。竹内さんは故成田一徹さんの弟子にあたる。「個性豊か」のことばでは表現できない店主たちと店を切り抜いている。高架下店舗は再開発のため撤退を迫られている。野郎ども3名で呑み会。話題は本のことよりも仕事の話の方が多くなったのは仕方ないか。書店員時代は本の話が仕事の話だった。
 《くとうてん》で『ほんまに』次号の会議。セーラ編集長念願の乙女的浪曼満載で、少女漫画界のビッグネームが登場する。これまでのおっさん路線と訣別? 来春刊行。
 高槻の親戚一家が赤ん坊のお祝いに来てくれる。半年ぶりに会う中学生は背が一段と伸びて、私は見上げなければならない。
 読書は谷川俊太郎、北村太郎と、詩人さんが続いている。新聞では「池袋モンパルナス」のプロレタリア詩人が紹介されている。この人の本は何冊か持っている(若い時に読んだ)。『ぽかん』で知った詩人の文庫本(未読)がどっかにあるはずだが、見つからない。気になっていた詩人評伝をジュンク堂三宮店で購入。
 灘ワールドエンズ・ガーデンで久禮亮太『スリップの技法』(苦楽堂)。著者が神戸でトーク会、それまでに読まねば、って翌日に迫っている。ギリギリになるまで行動しない。そごうの紀伊國屋で来年の手帳。
 23日、赤ん坊の父来神。もう赤ん坊にべったり。気持ちはよくわかる。
 24日、仕事すんで、赤ん坊沐浴して、勁版会例会《『スリップの技法』著者・久禮亮太さんトーク》に参加。本を前夜と通勤電車内・休憩時間で読み終わるつもりが数ページ残り、会場に入る前に近くのデパート入口のベンチで何とか読了。久禮さんはフリーランス書店員、選書や社員研修を請け負う。POSレジ・オンライン検索・発注が当たり前の時代に売上スリップを在庫管理から発注に利用し、関連本探し、スタッフへのアドバイス・伝言メモに使う他、読者の動きや嗜好を読み取ることで次の本へつなげていく。想像、時に妄想もある。久禮さんが実際の売上スリップでその作業を見せてくれる。スリップを触ること、検証することが楽しくて仕方がない様子。司会者が途中でストップをかけなければずっとやってしまうところ。本を売ることを毎日一生懸命考えている人。私たち旧世代の書店員はスリップなしでは仕事ができなかった。しかし、そのノウハウを伝えていないし、伝える前に業界から退場せざるを得なかった。会場で拙著もどさくさ販売、参加者が買ってくださった、感謝。打ち上げではまたも乾杯音頭に指名される。京都・大阪方面の人たちは終電を気にしながら追加注文。
 26日ギャラリー島田、《須飼秀和展》と《石井一男展》。須飼会場で海文堂児童書担当がお手伝い、約1年ぶりに会う。両会場とも観覧者多数。
 「朝日新聞」27日《朝日歌壇》から。〈狐鳴く村の本屋のありし跡今日も振り積むいちょうの落ち葉〉(杵築市・長野さん)。人が狐に化かされた時代があった、村に本屋があった、子狐が人間に化けて落ち葉のお金で本を買いに来たろうか、今狐はいても本屋はもうない、ただ落ち葉が舞い散り積もる……。メルヘンチックになっている場合ではない。過疎、個人商店存続は深刻。
 我が家に赤ん坊が生まれて一月。体重は日に日に増え、抱っこするとズシリと重い。表情も感情も豊かになったと感じる。短い秋だったが、私たち家族は素晴らしい恵みを授かっている。母親(娘)の検診に付き添う。途中家人は買い物、私は待合室で赤ん坊抱っこ、おとなしく寝ているいい子。


 孫抱っこ秋の恵みがここにあり  よーまる

(奥のおじさん)



11月買った本
『ぽかん 06』 同編集室
色川武大 『戦争育ちの放埒病』 幻戯書房
北村太郎 『港の人 付単行本未収録』 港の人
中川裕介「江戸川乱歩と横溝正史」 集英社
久禮亮太 『スリップの技法』 苦楽堂
樋口良澄 『鮎川信夫、橋上の詩学』 思潮社


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2017. 10月 奥のおじさん(44)

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奥のおじさん さすらい月報(44)

 島清さん(仮名)の国家試験合格お祝い会で10月が始まる。福岡さんと平野と3人で乾杯。自分の周りでは今後絶対に現れない合格者と言っていいだろう。快挙をどう褒めて、労っていいのか皆目わからない。一緒に呑むことでお祝いとしよう。島清さんが本を1冊推奨せよというので、本棚から文庫本を持って行く。
 連休で婿が来る。江戸みやげは、今月末から開催される神保町の古本まつりとブックフェスティバル冊子、日程はちょうど娘のお産にぶつかるので行けない。冊子見て、雰囲気だけ味あわせてもらう。
 10月9日付「朝日新聞」の〈朝日歌壇〉より、茂出木雪穂さん(8歳)の作品。
《本読むとゆめを見ているみたいだよゆめがさめるとのどがかわくよ》
本を書く人、作る人、売る人、読む人、本に関わる人にとってうれしい歌だと思う。
 ギャラリー島田のDM発送作業は作品入れ替え日と重なって、スタッフさんはそっちの仕事。DM作業は助っ人3名、美術ファン藤さん(仮名)、島清さん、私。島清さんは単純作業嫌いのよう、私は大好きですけどね。
 元町原稿〈池長孟〉のため、中央図書館で彼の著書『南蛮美術総目録』(市立神戸美術館、1955年)を借りる。彼の著作はほとんどが館内閲覧のみなのだが、本書は貸し出し可能。美術目録・解説書ながら図版なし、全375ページ、粗末な紙。池長が情熱をかけて蒐集品について細やかな心で詳細に厳密に分類、考証している。表紙の絵は南蛮船。海文堂書店の書皮を思い浮かべる。池長は先祖代々の資産を投じて南蛮美術を蒐集し、池長美術館を建て、公開した。神戸に取って大切な文化人であるが、戦後莫大な税金を課せられ、蒐集品は散逸の危機に陥った。神戸市に委譲することで何とか残った。この目録は戦中から準備しており、委譲後本格的に作成に取りかかった。完成の3ヵ月後池長は息を引き取る。池長美術館は神戸市立美術館(のち市立南蛮美術館)となり、82年に市立考古館と統合され、神戸市立博物館として開館した。
 月半ばになってじんわり思う。今月まだコミックしか買っていなかった。気になる本は注文しているし、もうすぐ出る本もある。通勤電車用に積ん読本から選んで読む。
 国会は開かないのに、また選挙。この政権はやることが姑息。緑の女性もボロを出した。
 娘のお産に合わせた訳ではないのだけれど、家の補修工事をしてもらっている。大震災後に修繕して以来ほったらかしで、だいぶガタがきている。秋の長雨で作業遅れるし、22日の台風21号で壊れたところもあり、職人さん泣かせ。
 10月25日未明、娘産気づく。妻と元町駅北側のパルモア病院に付き添って行く。助産師さんのお話では、今日中に産まれるだろうが、まだまだ時間がある由。陣痛の間隔が短くなって耐えている娘の顔を見るのが辛いが、何もできない。小一時間いて、娘に促されて妻とふたり一旦帰宅。夜明け前の街はそろそろ活動を開始している。それぞれ職場に向かう。妻は仕事の段取りをつけてまた病院。私は勤務場所で知らせを待つだけ。ありゃまあ、入れ歯をつけ忘れている、締まらない爺さん。妻から連絡、午前10時39分女児誕生。娘にすがりついている赤ん坊の写メール。婿は早朝の新幹線で駆けつけ立ち会った。母子共元気。私はうきうきして仕事、頭の中の音楽は井上陽水の「ハローハローお元気?」という歌。後で調べたら曲名は「女神」(作詞・井上陽水)。うちは天使やもんね。替え歌の詞が浮かんでくる。「♪ハローハローあかちゃん~」。
 職場の休憩時間に高見順『昭和文学盛衰史』(文春文庫、1987年)ようやく読了。〈最後の文人〉と呼ばれた作家・詩人。この人が亡くなった時(1965年8月)新聞が大きく報道していたことを覚えている。学校で先生が話題にしたことも。夏休み中なのになぜ学校だったのか、登校日だったのだろう。当時、もちろんこの人の本は読んでいない。この人の娘さんが芸能活動をしていると知るのはずっと後。
 仕事終えて病院、赤ちゃんと初対面。授乳している娘は正真正銘の母親。婿はもうメロメロ父親で病院に付き添い宿泊。帰り道、元町で妻とふたり祝杯。
 赤ん坊の父方祖父母、伯父夫妻続けて来神、祝福。親戚、ご近所さん、友人、多くの人たちが新しい命の誕生を祝ってくれ、喜んでくださる。
 赤ん坊のことばかりになりそうなので、いつものおふざけおじさんに戻る。母子がお世話になったパルモア病院の玄関前に彫刻が飾られている。和田真澄〈父と子〉、「父」は〈股間若衆〉。なんでそんなところに目が行くのか?!
 ようやく新刊書を買う。野坂暘子『うそつき 夫・野坂昭如との53年』(新潮社)。野坂は無頼派作家と思われがちだが、家族に対しては「です・ます」で会話していたし、お行儀の良い人だった。ただよく嘘を吐いた。ほんとうは小心で、戦争体験・生い立ちに後ろめたさを感じて生きていた人だった。アルコール中毒もそのせいだろうし、社会問題に積極的に発言・行動したこともそれによる。そんな夫を妻は献身的に介護した。門井慶喜『銀河鉄道の父』(講談社)は宮沢賢治の父親を主人公にした小説。これまで封建的・厳格な父親のイメージだったが、賢治に愛情を注いだ包容力ある人。
 古本愛好家・輝さん(仮名)に本屋時代からお世話になっている。おハガキをいただき、大阪堂島にあった書店〈書肆 青泉社〉のPR誌『落丁』(欠号あり)を譲ってくださるとのこと。以前、古本屋さん〈本は人生のおやつです!!〉店主と〈青泉社〉のことを話していた。〈青泉社〉は1996年に閉店、『落丁』は63年から76年まで計29号発行、社主は書店経営の傍ら環境保護運動に尽力した。後日〈本おや〉店主と輝さんもその話になり、平野も云々ということで連絡くださった。早速送っていただいた。
 高見順の本に戦争末期の文学報国会の話があった。歌人・民俗学者の折口信夫が海軍報道部長や愛国者ぶる編集者に異論を唱える。本屋さんで、植村和秀『折口信夫 日本の保守主義者』(中公新書)を見つけて購入。それから谷川俊太郎の評伝プラスインタビュー、『詩人なんて呼ばれて』(新潮社)も。新米書店員時代(40年以上前)、講演会後のサイン会でお側に立って雑用係をしたことがある。そのずっと前からこれまでも、これからも、この人は第一線の詩人である。
 老夫婦にとって、孫の誕生は未来につながる光のようなもの。この小さな命は亡き父母たち祖父母たちからつながっているのだと、しみじみ思う。

誕生歌
陣痛を耐える娘よ母勁し
陣痛の娘に行ってと促され夫婦いつもの暮らしに戻る
神無月神戸元町天使降臨
誕生を待つ爺入れ歯つけ忘れ
爺ちゃんは何の役にも立たないぞただ赤ん坊を見ているだけ
赤ん坊の寝顔を見ている秋の夜 
垂乳根の母にすがる真っ赤な女(め)の子珠の女(め)の子 
あきのこあかごなまえはまだない
乳飲んでうんちを垂れて泣いて寝てそれだけのことがうれしいいとしい

(奥のおじさん)



10月買った本
野坂暘子 『うそつき 夫・野坂昭如との53年』 新潮社
門井慶喜 『銀河鉄道の父』 講談社
植村和秀 『折口信夫 日本の保守主義者』 中公新書
谷川俊太郎・尾崎真理子 『詩人なんて呼ばれて』 新潮社
コミック2冊
古本21冊(冊子含む)

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2017. 9月 奥のおじさん(43)

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奥のおじさん さすらい月報(43)

 秋の訪れは朝夕の気温や風で感じる。我が家の場合まずトイレ、便座の暖房スイッチを入れる。
 2日、神戸市立まちづくり会館でNR出版会〈『書店員の仕事』出版記念トークショーin神戸〉開催。関西の書店員、出版社の人たちの他、東京、愛知、岡山から計50名超が参加。トーク登壇者4名はすべて女性。本書〈東日本大震災特別篇〉の話を皮切りに、他の執筆者から受けた影響・感動を語った。刊行後、新聞書評に取り上げられ、SNSで好意的な感想がある一方、現役書店員から一般向けではないという批判もあった。登壇者たちは皆、否定意見があってもそれは当然ととらえ、自分たちの仕事に誇りと生きがいも持っている。ひるむことはない。頼もしい存在である。執筆者でイラストレーターに転身した方がこの会のためにビデオメッセージを届けてくれて、恥ずかし嬉し、私に呼びかけてくださり光栄。参加者とNRスタッフの嫉妬を買った。私も登壇者の脇に座って少しだけ話した。夜の部は南京町赤松酒店に移動。こちらにも夜のみ参加者、NRスタッフ含めて30名あまりが集まった。参加者が多すぎて他のお客さんとお店に迷惑をかけた。会場で苦楽堂新刊予定、フリー書店員の本紹介あり、楽しみ。それと拙著『海の本屋のはなし』の読者カードが出てきたと、いただく。仕事で参加できなかった大狸教授が参加者のために資料を送ってくださった。感謝申し上げます。
 ベストセラー作家・西村京太郎の平和論を読む。8月にテレビニュース番組でも紹介されていた。私は彼のミステリーを読んでおらず、テレビの2時間ドラマを見るだけで、陸軍幼年学校出身という経歴を知らなかった。空襲の恐怖と空腹を抱えて西村少年はどうするのが一番トクか考えた。どうせ19歳になれば兵隊にとられる。初年兵は殴られるらしいから早く兵隊になった方がいい。少年飛行兵は飯がたっぷり食えるらしいが、すぐに戦場に行かされる。陸軍幼年学校ならさらに進学して大将にもなれかもしれない……。入学すると、この学年から学費免除、給料支給。本土決戦のため、即兵隊に組み入れられたのだ。沖縄、広島、長崎、戦況は悪化して8月15日玉音放送。29日帰宅。5ヵ月だけの兵隊だった。西村は戦争時代・戦後を振り返り、「日本人は戦争に向かない」と断言する。現代戦は総力戦で、生き残った人数が多い方が勝利。日本は精神主義で戦争に突っ込み、人命軽視の作戦を遂行した。私たちは忠義とか大義のため云々と、人の死を美化しがちだ。私も楠木正成やら忠臣蔵に涙する。でもね、生きなければ。
 海文堂元店長・小林さんからOGさんの訃報あり。故人は37年間海文堂に勤め、阪神・淡路大震災後に退職。私は彼女と海文堂で一緒に働いておらず、お客さんとして接していた。ちょうど海文堂の閉店が決まった頃、ギャラリー島田社長と施設入居中の彼女をお見舞いした。今春入院と聞いていた。ゴローちゃんとの会議をキャンセルして葬儀参列。そう、やっぱり女性の方が大事。海文堂OB・OG、施設職員さんで見送った。
 仕事終わって、くとうてん。『ほんまに』第19号の特集考え中。宝塚歌劇の話題で、ヅカファン社員が乱入、机から雑誌やパンフレット出してきて説明してくれる。それで一度みんなで公演を見に行こう、となる。でもね、私、いっこも興味ない。おじさんには残された時間は長くないのだよ。
 海文堂の顧客で、閉店後のイベントにも協力してくれる島清(仮名)さんから超難関国家試験合格の知らせ。彼は仕事をしながら、勉強を続けて目標突破。試験終了後に会ったとき、「あかん!」と諦めていた。新聞記事で彼の大学院から「社会人を含む6名合格」とあったので、もしやと思っていたら、夜に電話をくれた。私は支援応援したわけではないが、よかったよかった。
 16日、娘夫婦がやって来る。18日、婿だけ帰る。くれぐれもご承知おきをいただきたい。離縁ではないので。
 19日、新大阪駅近くで京阪神の出版社・書店有志の月例勉強会〈勁版会〉。東京荻窪〈本屋Title〉辻山さんがトーク。辻山さんの『本屋、はじめました』(苦楽堂)を読んで、仕事を辞めて本屋開業に踏み出した人、八百屋開業を目指している人も参加。懇親会で、『週刊奥の院』を知ってくださっている本屋さんがいて、驚く。
 私は会の前に堂島〈本は人生のおやつです!!〉で店主とひとしゃべりふたしゃべり……。8月に同店で勧められたシリーズの続き、河治和香「国芳一門浮世絵草紙」4冊購入。
 21日、元町駅前で『BIG ISSUE』買って、ジュンク堂駅前店で注文の本受け取り。注文時は古い付き合いの畑さん(仮名)で、受け取り時はこれもよく知る口さん(仮名)、何やら因縁を感じる。ギャラリー島田DM発送作業。画家さんの双子男児、スタッフのお嬢ちゃんで賑やかなところに、次回の画家さん一家も男児連れ。みんな同じ年頃(2~3歳)で、ギャラリーは保育園状態。島田社長と先だっての葬儀の話、それに孫に連れられての散歩の話。やっぱり保育園。
 ジュンク堂三宮店に本を買いに行ったら、レジに三宮ブックス村田社長がいらして、近況報告。私の目当ての本は東京の書店員・鈴さん(仮名)お推めの文庫2冊。この人がSNSで紹介する本は私には難解すぎて入れ歯が立たない。今回は何とか読めるのではないかな? この書店員さん経由で旧知の編集者健太さんから連絡あり。お元気で活躍中。
 24日昼、近所の神戸文化ホール落語会。隣席のご婦人ふたり連れ、昼の部と夜の部で出演者が違うとご不満。お目当ての人は夜だけの出演で、「出えへんの分かってたら来えへんのに!」とお怒り。聞き耳を立てていたわけではないのだけれど、招待でお越しらしい。「まあそうおっしゃらずに、すっごいメンバーですから楽しんでください」と私の心の声。本音は、「黙って聞けえ!」。江戸から、柳家三三、柳家さん喬、柳家小三治。上方は、笑福亭仁智、月亭八方、桂福団治。夜、婿が出張帰りに来て一泊。
 娘と散歩中、ご老人が娘に話しかけてきた。「どっちかわかってんの?」と、娘のお腹を見て性別やら苗字を質問。「ほんなら名前の画数は云々」とご教示くださる。占い師さんだそうで、名刺を見せてくれる。今秋、私共にも孫が出現する。
 お盆もお彼岸も墓参りをしなかった不孝者、重い腰を上げる。案の定、草ぼうぼうだが、作業しても汗は流れない。先祖に家族が増える報告をして、無沙汰を詫びる。帰りはいつもどおり湊川でコーヒー。


 孫は栗? じゃじゃ馬娘の腹の中  よーまる

(奥のおじさん)



9月買った本など
西村京太郎 『十五歳の戦争 陸軍幼年学校最後の生徒』 集英社新書
涸沢純平 『遅れ時計の詩人 編集工房ノア著者追悼記』 編集工房ノア
河合和香 『国芳一問浮世絵草紙』 (2)~(5) 小学館文庫
村上一郎 『幕末 非命の維新者』 中公文庫
橋川文三 『幕末明治人物誌』 中公文庫

 いただいた冊子 深謝
『映画批評』 2017年・夏[第16号] 同編集部

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2017. 8月 奥のおじさん(42)

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奥のおじさん さすらい月報(42)

 ベッドで泣くと涙が耳に入る、という歌謡曲があるが、私は働いていると汗が目に入る。汗を拭うたびに作業用手袋とメガネをはずすのがめんどくさい。シャツは着替えるが、パンツ(下着)は我慢。猛暑なり。
 JR元町駅前で『ビッグイシュー』を購入、販売員さんが〈熱中症予防で私たちが気をつけていること〉という冊子をくださる。最も熱中症の危険がある人たちが経験から心遣い、ありがたく思う。
ギャラリー島田でDM発送手伝いして、スタッフさんたち(わが子と同世代)の夏休み予定を聞いて参考にする。帰りにジュンク堂を覗く。社会学の先生が書いた探偵小説評論、内田隆三『乱歩と正史』(講談社メチエ)。ふたりを中心に探偵小説作家たちが「殺人」=「冷血のかたち」をどのように構想したかを検証する。それは彼らが当時の日本社会をどう捉え、作品に書いたか、また社会にどのような影響を受けたか、ということでもある。著者は探偵小説の熱烈な読者でしょうが、それさえも研究対象にして膨大な本を読んでおられる。難解だけれど、ワクワクしながら読んだ。
 図書館で神戸の美術蒐集家・池長孟と植物学者・牧野富太郎のこと。
 ジュンク堂で、70年代文化人たちが絶賛した人形作家・四谷シモンの自伝。アングラ劇団の女形の活躍、一時はロカビリーでステージに立った。文化人の多くはすでに鬼籍に入った。シモンは歳をとっても男前。
 神大医学部生協で本受け取り。神戸でも大阪でも見かけなかった(見つけられなかったのかも)紀田順一郎の新刊など3冊。紀田が蔵書を見送る場面はまるで恋人との別れ。
 市役所で交通局100年記念写真展あり。市電の走る町並みが懐かしい。ついでに市庁舎最上階に昇り、市内眺望。
 東京の本好き氏が同人誌寄稿文章を送ってくださった。亡き母上のことを書かれていて、背筋を伸ばして拝読。私と言えば、ただ義務だけの墓参りしかしていない、反省。時々父母祖父母のことを思い出してあげねば。
 元町を歩いていたら、〈こうべまちづくり会館〉で「豊田和子『記憶のなかの神戸 私の育ったまちと戦争』原画展」が始まっていた。アメリカ軍撮影の占領下の写真展示、ビデオ上映も。見逃すところだった。
 娘夫婦が都内から横浜に引っ越し。息子も盆休みなしで、帰って来ない。よって、こっちから会いに行く。11日、新横浜駅から桜木町駅。ポケモンイベントにぶつかる。ピカチュウお面をかぶっている子どもたちがいっぱいで、スタンプラリーや着ぐるみショーのイベントあり。ところがどっこい、にいちゃん・ねえちゃん・おっさん・おばはんが「ポケモンgo」しながら大行進。歩道や広場にウジャウジャ。雨にも負けず残暑にも負けず〈みなとしんみらい〉を歩き回っている。自動車も大渋滞。私たちの目当てはギャラリー島田スタッフ推薦の現代美術展、横浜美術館〈ヨコハマトリエンナーレ2017〉。この展覧会を目的の人たちも多数いる。豪華客船飛鳥Ⅱの姿を見ることができた。近隣には歴史的建造物が数多くある。昼食中華美味しい。横浜スタジアムにファンが集まっている。イベントだけではない街と市民の力を感じる。
 12日、谷中霊園。曇り空の向こうにスカイツリーが見える。妻の母方の墓前に到着したら雨、すぐやんだ。上野公園、老若男女でいっぱい。子どもたちが夏休み自由研究で美術館・博物館を巡回している。私たちは東京都美術館の〈ボストン美術館の至宝展〉。ボストン市民有志によって設立され、所蔵品もコレクターの寄贈によるもの。国や州の援助を受けない美術館。文化に対する意識のスケールが違う。古代エジプト美術、中国美術、フランス印象派、現代美術、日本の作品も多数ある。新宿に出て娘夫婦と合流、神保町で息子も加わり晩ご飯、全員揃うのは1年ぶり。東京堂書店で髙田郁新刊購入。
 13日、乃木坂、国立新美術館〈ジャコメッティ展〉。瘦身像の数々は彫刻家が捉えた人間の姿。銀座で夫婦しばし別行動。私は教文館で〈ナルニア国〉と2階1階を見て回る。東京駅周辺で時間待ちして帰途につく。今回は古本市覗かず、古本屋さん店頭を数軒、新刊本屋さんも2軒のみ。またの機会にしましょ。
 休み終わって出勤の駅、逆方向の電車によく知る書店員さん発見。お勤めご苦労さんのアイコンタクト。
 元町商店街の〈神戸古書倶楽部〉を覗く。各棚とも以前より散乱度強化。探していた古い展覧会図録2冊発見。
古本ライターさんの独身時代生活の知恵エッセイを読む。お金はなくても無理せず好きな本やレコードに囲まれてのんびり生きていきたい。当然質素な生活を余儀なくされるが、より快適に過ごすための実践的生活術を披露。自炊はお茶をいれることからなど食について、換気・掃除・ゴミ出し・洗濯ネットなど清潔で健康な住まいについてなど。お金の話もしなければならない。貧しくても清らかに、これこそ清貧。
 家人と昼ご飯食べて別行動。灘区ワールドエンズ・ガーデン、山本善行撰の〈埴原一亟(はにはら・いちじょう)〉という人の作品集。初めて目にする作家、名前も読めなかったが、善行堂と夏葉社を信じて読もう。
 名古屋の老舗書店員さんで仲良しの清さん(仮称)がいて(お会いしたことがないのだが)、その書店が本年創業100年を迎える。清さんは企画の中心になって、100年を盛り上げている。11月一箱古本市と目黒考二さん・小山力也さんのトーク会、それに記念のブックカバー作成など。清さんは『本の雑誌』の常連寄稿者、同社の協力はうれしいこと。それに岐阜の女子古本屋〈徒然舎〉も支援。清さんの人徳です。
 ギャラリー島田に寄る。画家で歌人さんが私に歌集と歌誌を預けてくださっていた。お名前だけ存じ上げている人。ある本で懐かしい出版人のことを書いておられたことを覚えている。『WAR IS OVER! 百首』(ながらみ書房)、平和を祈る歌100首。そして、敗戦後外地で犠牲になった父を含む53体の遺骨発掘のこと、「骨骨骨骨骨骨……」と書き連ね、彼らの慟哭を伝える。
 朝の気温、昼間の汗の量で秋の気配を感じる。仕事中空を見上げる余裕がある。空青く、白い雲が風に流れて行く。


 天高し「おうい雲よ」の心持ち  よーまる

(奥のおじさん)



8月買った本など

内田隆三 『乱歩と正史 人はなぜ死の夢を見るのか』 講談社メチエ
四谷シモン 『人形作家』 中公文庫
荻原魚雷 『日常学事始』 本の雑誌社
紀田順一郎 『蔵書一代 なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか』 松籟社
『茂田井武画集 古い旅の絵本』 JULA出版局
山田英生編 『ビブリオ漫画文庫』 ちくま文庫
髙田郁 『あきない世傳 金と銀(四)貫流篇』 ハルキ文庫
『プレヴェール詩集』 岩波文庫
山本善行撰 『埴原一亟 古本小説集』 夏葉社
佐々木幹郎 『中原中也 沈黙の音楽』 岩波新書
コミック1冊、古本2冊
いただいた本
南輝子 『WAR IS OVER! 百首』 ながらみ書房
辰己佳寿子編 『俵山を歩いて暮らしの伝承を学ぶ』 福岡大学経済学部辰己研究室(みずのわ出版製作)
冊子、歌誌など。感謝。

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2017. 7月 奥のおじさん(41)

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奥のおじさん さすらい月報(41)

 大雨もしくは猛暑の梅雨。毎年列島のどこかで大きな災害が起きる。被災地の皆様にお見舞い申し上げます。
古本屋さん〈1003〉で、ずっと図書館閲覧していた本を見つけ、遅ればせながら入手。古本強者・高橋輝次さんの冊子は売り切れで注文お願い。「トンカさんはいつから?」の問い合わせ多数あるそう。おじさん・おじいちゃんたちであろうが、そんなこと聞かれてもねえ~、店主に同情。ファンたちがトンカ産休明け復活を待っている。ついでに(失礼)うみねこ堂書林に寄る。いつもどおり本でいっぱいの通路で上半身を横に倒して本探し。知らなかった〈楠公〉小説発見。
 神戸大学医学部生協に頼んだ本を受け取りに行く。明治から昭和まで活躍した出版人の評伝と、平成の現在日本中を歩き回っている出版人のルポルタージュ。奮発してしまったので、今月は本買えないかも。
 台風接近前に図書館。司書さんに教えてもらって新聞記事アーカイブからコピー取り。鳥瞰図絵師も調べ物中で遭遇。週末にある彼のトーク会が楽しみ。図書館を出たら、強い雨。
 買い物ついでに本屋さん、定期購読雑誌だけのつもりなのに、本がね、私を呼びよる。ついこの間まで元町原稿で調べていた映画評論家と関わりの深い俳優を題材にした小説、買わねばならない。
 仕事終わって、鳥瞰図絵師・青山大介と経済史学者・神木哲男のトークイベント、〈鳥瞰図を歩く――150年前の神戸めぐり――〉、くとうてん主催、こうべまちづくり会館にて。聴衆満員盛況、福岡さんはじめ顔見知りたくさん。トークは、1868年神戸開港当時の絵図絵を作成した〈大ちゃん〉とその歴史監修をした〈哲ちゃん〉がタイムトリップする演出。〈大ちゃん〉は古文書や古地図をもとに絵図を作成したが、遊び心で想像と創作も加えている。〈哲ちゃん〉は学問的考証をして現在につながる神戸の歴史を解説。楽しいお話でした。
 先述の平成出版人ルポを読んでいたら、海文堂のことに言及して、閉店後の神戸本屋状況にも触れてくださっている。今更ながらありがたい。そのルポに登場する古本屋さんでいろいろお話して、海文堂で出会った高橋輝次さんの自費出版冊子、サイン入り購入。高橋さんは京阪神の古本屋さんを渉猟して、文献を発掘。そこから発見した文学史を次々書き加えている。
 日曜日、どこの誰だか言えないけれど、ランチ昼酒会の召集。梅田紀伊國屋書店前集合、明日本会メンバーの大阪版。現役書店員4名、出版社営業3名、隠居2名。
 NR出版会から〈『書店員の仕事』トークイベントin神戸〉の案内。9月2日(土)こうべまちづくり会館にて。凄腕現役書店員4名(すべて女子)が登壇予定。
 読みたい本はいっぱい出る。またも定期雑誌だけのつもりなのに、本が「おいでおいで」する。本屋小説と現役書店員の本。前者は、書店員が仕事と私生活の悩みを解決していく過程と、作家・編集者が作品のコミック化・アニメ化で関係者と衝突するという話が同時並行。後者は、書名・著者名を隠し、手書きカバーでその本を読んでほしいと訴えた「文庫X」発案者。なぜこんな方法を考えついたのか? 著者は何よりもこの本に動かされ、多くの人に読んでもらいたいと考えた。彼はこれまでの経歴を明らかにして、訴えたいことがある。
 古本イベントや俳句吟行などを不定期で開催している〈百窓文庫〉と〈コリノズ〉による『百窓の半分――ジョセフ・コーネルへのオマージュ』展(ギャラリーAo)を覗く。箱を使ったコラージュ。アメリカ人コーネル(1903~72)に捧げる作品が国内外から50点。よく知る人の作品の前で記念写真。出品作品カタログは切り貼りして豆本にできる。家に帰って制作、コラージュも真似したが、美的センスなし。
 学生時代からの友人と会食。ひとりは1年に数回会う。もうひとりは年賀状つきあいのみになり、会うのは7~8年ぶり。その前に、幕末明治の絵師・河鍋暁斎の〈これぞ暁斎!〉展(美術館「えき」KYOTO)。動物画、植物画、妖怪画、幽霊画、宗教画、戯画に春画。現代の劇画・漫画の魁のような絵もある。鍾馗が鬼を蹴り上げている絵の躍動感に驚き、笑ってしまった。大阪、待ち合わせまでの時間、堂島のジュンク堂書店大阪本店。〈編集工房ノア〉の棚がなくなってバーゲンブックコーナーになっていた。んー。探している新刊見当たらず、検索機で確かめたら、「在庫0」。ここになければしょうがない。古本屋さん〈本は人生のおやつです!!〉、レジに私がいま調べている神戸の美術蒐集家と関係の深い植物学者の写真があって、その話からあれこれ本と本屋の話。小沢信男の旧著を見つけた。店主大推薦の時代小説も購入、ちょうど少年時代の河鍋暁斎が登場。店主がサイズの合わない布製カバー付けている私の本を見つけて、群馬県桐生市の本屋さん〈ふやふや堂〉のカバーをくださる。神戸のブックカフェの人がいらして紹介してもらう。以前行こうとしてたどり着けなかった〈toiro〉さん。わあわあ言うてるうちに時間は過ぎて、友の待つ会場。40年を超える時間は、友の髪を真っ白にし、私の頭を薄くし、それぞれを老いに向かわせているのだけれど、あの頃の思い出は残してくれている。
 ひとりの時間は家事、まち散歩、図書館、たまに彷徨。ある日は兵庫区会下山界隈、静かな住宅街で、楠木正成が足利軍を迎え撃った古戦場。広い公園内に先の美術蒐集家と植物学者による研究所建物跡がある。高台から三線にのせて南の島の歌が聞こえる。別の日、灘区神戸文学館の企画展示「煉瓦色の記憶~100年前の原田の森」、関西学院がこの地にあった時代――今東光、稲垣足穂、竹中郁らを中心に100年前のキャンパスと周辺風景を懐古。 徒歩で神戸文書館(旧南蛮美術館)、バスで元町、買い物して一旦帰宅、中央図書館。散歩にしては老人大汗。仕事の昼休み、須磨綱敷天満宮、菅原道真伝説が残る。須磨に住んだ詩人・竹中郁の詩碑がある。須磨は古来畿内の西端、軍事的要衝であるし、都の貴人が流されてきた場所でもある。史跡が多い。天満宮から須磨寺に向かう道は「智慧の道」と呼ばれている。その道をゆっくり歩いて、午後の仕事場に向かう。そこそこの坂道である。
仕事中、皆さんがいたわってくださる。
「年寄りを大事にしてくれるえー職場やろ」
「ちゃうがな、おっさんにそばで倒れられたら困るからや!」
 雑誌を買うために仕事帰り月1回くらいに寄る神戸駅ショッピングゾーン内の大手チェーンの本屋さん、レジに8月初旬で閉店の案内文あり。棚に「神戸の本」という見出しはあるものの2冊だけで、私が買う本はないのだけれど、レジの人たちはハキハキテキパキしていて好感を持っていた。彼らはパートとかバイトなんだろうなあ、次働く店あるのかなあ、と余計なことを思う。
 家人と「今年もあと半年やなあ」と話していたが、この7月は早く過ぎたと感じる。


 汗っかき過ぎ行く時に身を任せ  よーまる

(奥のおじさん)



7月買った本
川村伸秀 『斎藤昌三 書痴の肖像』 晶文社
南陀楼綾繁 『町を歩いて本のなかへ』 原書房
土橋章宏 『チャップリン暗殺指令』 文藝春秋
高橋輝次 『古本こぼれ話』 書肆艀
碧野圭 『書店ガール6』 PHP文芸文庫
長江貴士 『書店員X』 中公新書ラクレ
古本5冊

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2017. 7月 奥のおじさん(40)

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奥のおじさん さすらい月報(40)

 どうせすぐ梅雨はやって来るだろうが、さわやかな風が吹く日もある6月初旬。娘は里帰りで1週間いたが帰京、ふたりっきりの老夫婦生活に戻る。
 4日、尼崎で開催されている〈柳原良平 アンクル船長の夢〉に出かける。〈アンクルトリス〉のイラストで有名な画家・イラストレーター。この展覧会では〈船の画家〉としての柳原にスポットを当てている。入場時にプレゼントをもらえ、写真撮影可能のコーナーがあり、お子さん用にぬりえ、絵本コーナー、館内スタンプラリーが用意されている。柳原制作の人形アニメも放映。海文堂2階で柳原の著書や〈商船三井〉のオリジナルグッズを販売させてもらった。2015年逝去され、昨年から各地で回顧展が行われているが、どうして〈尼崎〉なのか疑問だった。柳原は1931年東京生まれ、父親の転勤や戦災で京都、西宮、豊中に住まい、兵庫県立尼崎中学校(学制改革で卒業時は県立尼崎高等学校)で美術部に入り、船舶同好会を結成した。船の同人誌を制作し、毎週大阪港にスケッチに通っていた。柳原=〈横浜〉のイメージを強く持っていたが、「そうなんや~」。
 仕事帰り、もうすぐ家というところで中学生時代からの友に会う。彼は夕方の散歩途中。私も付きあってちょっと遠回り。小さな氏神社があり、彼は突然「ここに空襲の痕跡があるらしい」とうろ覚えの情報を披露し、境内に入る。わざわざ社務所に聞きに行き、宮司さんに教えてもらう。敷石にある焼夷弾痕、神木の焼け跡、明治の初めにこの地に移ったことなど、神社の歴史を語ってくださった。近所のことでも知らないことがいっぱいある。
 6日、久々〈くとうてん〉、『ほんまに』集金の書類受け取り。そごう別館5階紀伊國屋書店で本。帰り道、海文堂同僚に遭遇。「どないしてるのん」「こないしてるのん」の会話が往復。元気で何より。午後、神戸大学医学部生協に『ほんまに』精算に行くが担当者急病休み、出直す。有馬道を渡って兵庫区荒田町、湊川の市場に向かう道でよく通る。昔この辺りにコーべブックス編集長が住んでいて、一度おじゃました。本棚には見たこともないフランス文学や俳句の本がズラリ並んでいた。その荒田の古書店〈蚊帳文庫〉、これまで何度か来たけれど、店主と私の行動時間が合わず、今回ようやく店内に入れた。明るい店で、児童書、実用書、美術、映画、音楽中心の品揃え。文庫3冊購入。
 家でも職場でも特に問題なく平穏無事、プラスちょっと良いことが多いのだけれど、その裏で良くないことも進行していた。油断大敵、〈失せ物〉。安全管理上の不注意で、渡すはずの相手にも迷惑をかけてしまっている。
 10日、前述の〈散歩同級生〉が文学座代表・江守徹トーク会に誘ってくれた。尼崎ピッコロシアター。文学座は1937年に文学者3名が創立した劇団。江守は44年生まれ、62年研究所入所、63年舞台デビュー。私は文学座の舞台は見たことがなく、江守のことは映画やテレビで知るのみ。舞台俳優の演技はやはり舞台で見るべき。今回話を聴くだけだが、言葉・表情・動作が直接客席に伝わってくる。
 〈失せ物〉の一部が戻る。私の失敗だから、あきらめていたが、よかった。同じ袋に入れていた古雑誌は出てこず、贈答用品が戻った。イタズラ者には雑誌が貴重だったのか、お祝い贈答品に心を痛めて返してくれたのか? ちょっと不可解。でも、返してくれてありがとう。
 15日、ギャラリー島田でDM発送手伝い。先月は私が日を間違えてスッポカシテしまった。恥ずかしい。スタッフさんたちに謝りながら、留学生インターンさんと作業。おじさんは〈封筒糊づけ指導員〉という称号を名乗ることにする。お気楽。島田社長が海文堂大先輩の近況写真を見せてくれる。終了後、元町駅前で本屋営業帰りの東方出版クッスーと出会って、出版業界新聞コピー依頼。〈くとうてん〉で小林資料公開についての打ち合わせ。鈴田社長、世良編集長、福岡さん。ゴローちゃんは急な仕事で欠席。いよいよ7月アップ、なるか~!?
国会審議のニュースを見るたびに腹が立つ。政府・与党の横柄さと論理・法理無視、野党迫力不足。
前回のスポーツ観戦話の続き、サッカーワールドカップ予選見ていたら、日本チームは先制しながら追いつかれて引き分け。やっぱり私がアカンのか。
 買わないといけない郷土文学史の本がある。ついつい他の新刊を手に取ってしまう。あわてなくてもいい本、限られた資金など、あれこれ自分に言い訳して、次回買おうと思いながら先延ばしにしていた。ようやく購入。今村欣史著『触媒のうた 宮崎修二朗翁の文学史秘話』(神戸新聞総合出版センター)。「兵庫文苑の生き字引」から直接聞いた文学史の記憶と証言をまとめる。
 未明から大雨、ようやく梅雨らしくなるが、老朽わが家はどこから雨漏りするやら心配。朝、案の定、壁にシミが広がっていた。雨止めば蒸し暑い。職場でいただいたアイス、舌とこめかみに凍む。汗引き疲労回復。
留守番週末、梅雨の晴れ間、ひとり鵯越墓園。親不孝者半年ぶりに草刈やっつけて、日陰で巡回バスを待つ。野鳥の囀耳に心地良し、野菊群生目に優し、されどハチ怖し。下山して湊川の商店街でご苦労さんの濃厚アイスコーヒー、うまし! 家の外壁応急処置。
 父の日、娘から派手派手パンツ、息子から菓子届く。素直に喜ぶ。
 乳がん闘病を公表していた歌舞伎役者夫人が逝去。生きたいと強く願ったことだろう。同じ病の人たちの励みになっただろう。縁もゆかりもない人だけれど、ご冥福を祈る。あるジャーナリスト(彼女も乳がんだった)の「よく死ぬことはよく生きることだ」ということばを思う。
 元町原稿のため暇を見つけては中央図書館通い。今は、ある美術蒐集家のことを調べている。美術だけではなくさまざまな社会貢献をした人。昔のお金持ちは額も使い道もスケールが違う。
 ほしい本が次々出るが、全部買えない。すぐに買わないでメモしておいて、しばらく時間を置いて、まだ読みたいか考える。知り合いの書店員引退者は読みたい本を近所の公立図書館にリクエストして、だいたい購入してもらえるそう。余計なことがら心配がある。その図書館の選書、偏っていませんか?


 無精者梅雨の墓参を恩にきせ  よーまる

(奥のおじさん)



6月買った本
村元武 『プレイガイドジャーナルよ 1971~1985』 東方出版
ヨシタケシンスケ 『あるかしら書店』 ポプラ社
今村欣史 『触媒のうた 宮崎修二朗翁の文学史秘話』 神戸新聞総合出版センター
『まど・みちお詩集』 岩波文庫
コミック1冊
古本3冊


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2017. 6月 奥のおじさん(39)

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奥のおじさん さすらい月報(39)

 ゴールデンウィーク、私は勤務なしでべったり休み。予定と言っても、妻の実家の法事と息子が友人結婚式で一泊二日帰省のみ。神戸大学医学部生協に頼んでいた本が届いたし、元同僚が原稿掲載ミニコミを送ってくれたので、読む本はある。外出は、散歩ついでにWAKKUN個展〈小雨まじりの福井の朝〉やら、メリケンパーク。メリケンでは神戸まつりにむけてサンバ練習中。元町商店街を歩いてちょっと気になることがある。3丁目にフクロウ喫茶があるのだけれど、隣に焼き鳥の店が開店している。お互い気まずくないのだろうか。何より、お客は平気なの? 余計なお世話。
 楽しみに待っていた新刊があって、本屋さんに。レジはよく知る書店員さんで、すいている時間だったので少しおしゃべり。仙台のイラストレーターの本、この人は丸顔でボーダー柄シャツとベレー帽がトレードマーク。翌日仕事場近所のなかよし小2女子がそっくりの恰好で現れて思わず笑ってしまう。
 16日、会社の研修会で小林さん福岡さん。終了後、海文堂のお客さんだった岩田さん(江戸の人)とゴローちゃん交えて一杯。元町の夜は更けて、小林・平野は退散するが、若い(?)3人は闇の向こうに消えて行った。
医学部生協に本を注文。あわてない本はここの島ちゃんに頼む。でも、すぐ来る。『野呂邦暢小説集成8』(文遊社)。毎巻読み終わるのに半年くらいかかる。
 神戸まつりで賑わう三宮を通り過ぎて灘区ワールドエンズ・ガーデン。店主は芦屋イベント出張中、美しい留守番店番さんがいてくれた。店主はずっと外出すべし。神戸出身の92歳現役スポーツジャーナリストのサッカー本購入。私はサッカーファンではないけれど著者に敬意を払いたい。サッカー記憶は、日本チームが1964年東京オリンピックでアルゼンチンに勝ち、68年メキシコで銅メダル、釜本・杉山の頃。それにブラジルから来たネルソン吉村。そこから〈ドーハの悲劇〉に飛ぶ。Jリーグができ、日本チームがワールドカップに出場できるようになり、日本人選手がヨーロッパの名門チームで活躍して、サッカー界が盛り上がる。ところが、私が日本チームの試合をテレビ観戦すると大事な試合で負ける割合が高い。他のスポーツでも応援したろうか~と思うチーム・人がよく敗退する。敗戦率7割くらいの感覚なので、なるべく見ないようにしている。一生懸命の選手と応援している人たちにも悪い。応援するにも大きなエネルギーがいる。私にはそこまでの〈力〉がないのだろうと思う。
NR出版会の出版記念パーチーのため上京予定で、休暇を申請。単独行動の羽伸ばし計画を立てる。方向音痴だからきっと無駄足無駄時間で余計な汗をかくだろう。行き倒れにならないよう注意しよう。現在事情があって公に通用する身分証明書がない。もしものことがあれば身元不明で処理されるかもしれない。
散歩中、外商途中の三宮ブックス村田社長と竹林さんに遭遇。社長は私より17歳上、経営者ながら毎日取引先を回っている生涯現役書店員。
 26日午前江戸着、あいにく小雨。代行勤務の人から留守電あり、会社携帯で返信。傘をバッグに入れたはずと思ったが忘れて来ている。濡れて、上野公園都立美術館〈ブリューゲル「バベルの塔」展〉、国立科学博物館〈大英自然史博物館展〉。雨上がる。鈴本演芸場昼席、音楽漫談、紙切り、曲独楽、落語4席。トリは柳家さん喬「井戸の茶碗」。神戸では味わえない日常の寄席。
宿とパーチー会場は水道橋、何度か降りている駅だけど、東西どっちへ降りたらいいか迷う。宿も行き過ぎてしまう。
『書店員の仕事』(NR出版会発行・新泉社発売)出版記念会。NR加盟出版社の皆さん、執筆者だけではなく、人文・社会系版元営業さん、取材陣、業界関係者多数出席。ペンネーム〈空犬〉さんは本名ではなく〈空犬〉で出席。亜紀書房とインパクト出版会ボスの挨拶の後、あっちこっちで歓談の輪ができる。仙台・五十嵐さんとゆっくりお話。書店員代表の市岡陽子(しろやぎ)さんと伊藤美保子(丸善京都)さん、NRくららさん、新泉社・安喜さんが壇上で話。順番に執筆者もスピーチ。くららさんが登壇拒む平野を促すが、知らない人が見たら危ない男女の修羅場みたいなので、平野降参してちょっとしゃべる。結局しゃべるんやん!
 おつきあい「ンじゅうねん」の現代書館金岩さんとは今度いつ会えるか、これが最後かと〈今生の暇乞〉涙の盃。でもね、GFたちとは大はしゃぎで乾杯している変なおっさん。現役時代連載させていただいた〈全国書店新聞〉白石編集長と初対面ご挨拶。名物営業コバケンと久々再会。現役バリバリの書店員さんたちにもお会いできてうれしい。二次会三次会、江戸の暗夜あわや明けそうな時間、東夷と上方贅六沈没。宿で仮眠。
 27日、娘と待ち合わせ時間まで自由行動。とはいえ、寝不足二日酔い。まず表参道の本屋を目指すが、この街はおっさんには場違いなおしゃれでハイソな雰囲気。開店時間まで間があり、向かい側の青山学院大学キャンパス。小さなお子さん連れが多く来られているのは説明会でもあるのかな? 門の警備員さんに、見学いいですかと、ことわって入る。立派な教会と歴史ある建物、美しいキャンパス。お目当ての〈「学生時代」歌碑〉は歌詞にある「蔦のからまるチャペル」の前。
〈青山ブックセンター〉はビルの地下部分、地上から店舗が見え、陽が入る。昔からデザイン・アート系の品揃えで知られるが、私は初めて来た。宇野亜喜良『定本 薔薇の記憶』(立東舎)購入。この日午後著者イベントがあるそう、残念。
 昨夏来た時はお休みだった〈山陽堂書店〉、谷内六郎壁画健在。1891(明治24)年創業。ギャラリースペースでは、戦前戦後の青山表参道周辺を写真・新聞・地図で紹介。店主と親御さんが当地に住んでいたという見学者の話が盛り上がっている。山の手大空襲の記録『表参道が燃えた日』(正・続)を購入。和田誠のブックカバーをつけてくださった。
 足を伸ばして江東区の〈古書ドリス〉。幻想文学・アートが集まる。古本2冊。足腰ふらついている。
 待ち合わせの東京駅に早めに着いて〈八重洲ブックセンター〉、ここも初めて来た。いよいよ歩行危ない。娘夫婦とお茶して、弁当買って、娘連れて(娘に連れられて)帰神。単なる里帰り、離縁とちゃう!


 本の友乾杯乾杯夏は来ぬ  よーまる



5月買った本
佐藤ジュンコ 『仕事場のちょっと奥までよろしいですか?』 ポプラ社
『野呂邦暢小説集成8』 文遊社
賀川浩 『このくにのサッカー』 苦楽堂
『雲遊天下 126』 ビレッジプレス
宇野亜喜良 『定本 薔薇の記憶』 立東舎
『表参道が燃えた日』(正・続) 同編集員会制作・発行
古本2冊

[いただいた本]
久禮亮太 『普通の本屋を続けるために』 明日香出版社(非売品)

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2017. 5月 奥のおじさん(38)

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奥のおじさん さすらい月報(38)

 4月に入り、近所の公園や氏神さんの桜が綻んできた。春はゆっくり。 
 NR出版会から『書店員の仕事』(新泉社発売)が届く。同会が毎月書店・図書館向けて発信している出版情報紙に7年半連載。59名の書店員さんたちが寄稿、本のこと、本屋のこと、読者のこと、仕事のことを率直に語っている。業界の人だけではなく本好きの人にも読んでいただきたい。連載期間中に、東日本大震災があり、熊本地震があり、それぞれの書店員にも「転機」があった。プロのイラストレーターに転身した人、フリーランス書店員になった人、異動になった人、引退した人、廃業した人もいる。私はただのおっさんになった。私は現役書店員時代から引退した後も寄稿しているお調子者だけれど、ある寄稿者が私の書いた文言を覚えていてくれていた。弱っちい運動部の掛け声、「ガンバロナ、ファイトやで」。
 私が三宮ブックス勤務時代から親しくしてくださっていたお客〈初〉さんから、本を探してほしいと電話あり。どこの本屋さんでも注文できる本だが、私に声をかけてくれたのは会おうという意味でしょう。我が家最近距離の神戸大学医学部生協で取り寄せてもらう。ここは「医学部」だから医学書中心なのだが、中公・ちくま・河出文庫など担当者の好み(?)の本が並んでいる。佐々涼子『紙つなげ!』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)購入。東日本大震災壊滅的被害から立ち上がった製紙工場の人たちの記録。2014年に単行本出版。引退したとはいえ業界の隅っこのハシクレにいたのだから「単行本出た時に買えよ!」と我ながら思う。
 6日、新聞に詩人・大岡信訃報。「朝は 白い服を着た少女である」。
 勤務日昼休み、雨模様の中、須磨寺ひとり花見。境内に一の谷合戦の平敦盛・熊谷直実一騎打ちの像があり、像の周りを桜が彩る。源平の兵(つはもの)たちを弔う桜もじきに散る宿命。寺の東側は公園で、大きな池の周囲が桜並木の散歩道になっている。
 サンボーホールの〈ひょうご大古本市〉、雨は上がるのかと思ったら、またしとしと。雨粒と湿気と汗で曇るメガネを拭いて会場ウロウロ。顔見知りの店主さんと冗談言い合い、神戸本2冊購入。
 9日の〈朝日歌壇〉。「小冊子を本店にまで問い合わせ探してくれし本屋みせ閉ず」(盛岡市山内さん)。同日〈読書〉欄では、新刊本屋経営者、大井実『ローカルブックストアである』(晶文社)と辻山良雄『本屋、はじめました』(苦楽堂)2冊いっしょに書評掲載。「本と町と人を結ぶきっかけに」。家人と落語〈桂吉弥独演会〉朝日ホール。
 10日、〈2日間だけの「海の本屋」復活スペシャル〉実行委員集まり、「振り返り会」という名の食事会、香港食館。売り上げ報告、小林誌紙アーカイブのことなど。トンカさんは出産を控え、お店は休みに入る。実行委メンバーのご家族が小林・福岡・平野と同じ会社・同じ身分で働いていることがわかる。私たちの世間は狭くて、袖すり合うどころか密着している。
 11日、ギャラリー島田でDM発送作業。いつもより封入物多く、作業者少ない。おやつ楽しみに、無駄口たたかず。
 古本愛好家でフリー編集者・高橋輝次さんから新刊案内が届く。『編集者の生きた空間 東京・神戸の文芸史探検』、今月下旬論創社より出版。古本コレクションからどんな話で語られるか楽しみ。海文堂のことも書いてくださっているそう。
 職場にいると小学生や幼稚園児が話しかけてくれる。彼らにしてみれば、私はいっぱいある遊び場所や通り道にいる近所のおじさんなのでしょうが、こっちは無邪気に相手をしてもらえてうれしい。子どもが犠牲になる事件がまた起きた。私は子どもたちの役に立たないけど、安心無害なおじさんでいたい。
 トンカさんがお休みに入ったからというわけではなく、ご無沙汰していた新刊本屋さん、古本屋さんをうろつく。
 18日、〈初〉さんに頼まれていた本を手渡す。元町駅で待ち合わせたのだけれど、30分前に着いていたそうで、時間通りに着いた私は恐縮。海文堂閉店後は電話とハガキだけになってしまって、顔を合わせるのは4年ぶりくらい。再会をお約束する。医学部生協で本注文。
 未來社水谷さんが「人文会ニュース」を毎回送ってくださる。今回は「書物復権」(読者のリクエストで品切れ本を復刊)冊子も同封。大きな本屋さんに行ってもなかなか人文書売り場に足が向かない。私には海文堂くらいのスペースが合っていたので、広い売り場と高い棚に目が回ってしまう。いかんと思う。冊子に研究者の推薦文があり、「やっぱり本は触れないといけない」の文言に納得、得心、反省。
 24日〈朝日俳壇〉、「西行も大岡信も花の下」(埼玉県鈴木さん)。
 25日、うれしいめでたいメールあり。女子の古本屋さんご出産、母子健康。祝いの戯れ句を贈る。
 元書店員の牧師さんが今春から島根県益田市に赴任している。ご当地の新聞「山陰中央新報」書評に『書店員の仕事』が掲載されていると、わざわざ送ってくださった。共同通信配信で、他地域のブロック紙にも掲載されている模様。評者が戯れに私の名を出して、本書をまとめた事務局嬢を賞賛しているのだが、それが目に止まったそう。講話コピー他、益田市の観光パンフレットもたくさん、観光大使?
 勤務先の庭木に野鳥が巣作り開始。去年巣立った鳥が戻って来たのだろう。26日に枝にビニール紐がぶら下がっているのを見て、そろそろと思っていたら、28日には小枝と紐が組み合わされて巣の形ができ上がっている。
 ゴールデンウィーク始まるも、取り立てて予定なし。29日は灘のワールドエンズ・ガーデン、目当ての本がある。昼過ぎに伺うと、ファミリー客数組がいらしている。看板猫は春の日差しを受けて寝台で居眠りしては欠伸、店主は黙々と仕事、どっちが偉いか一目瞭然。30日は古書うみねこ堂書林、我が貧相な蔵書からミステリーを引き取ってもらう。同店は26日に開業3周年を迎えたばかりで、記念のお菓子をいただく。一日一日、一冊一冊の積み重ね。

 招き猫春眠ときどき本を売り  よーまる



4月買った本
森元斎 『アナキズム入門』 ちくま新書
佐々涼子 『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』 ハヤカワ・ノンフィクション文庫
『神戸市史紀要 神戸の歴史 第26号』 神戸市文書館
木下直之 『せいきの大問題』 新潮社
『東京の編集者 山高登さんに話を聞く』 夏葉社
他、コミック1冊、古本4冊。
 贈呈感謝
NR出版会編・発行 『書店員の仕事』 新泉社発売


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2017. 4月 奥のおじさん(37)

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奥のおじさん さすらい月報(37)

 テレビ情報番組で気象予報士さんが、この冬は平均すると暖冬だったと解説。降雨量も例年より少なかったそう。予報士さんたちの〈お天気姉さん・お兄さん〉という呼び名もすっかり定着してタレント並みの人気者もいる。ゆるい感じの〈おじさん〉がいて司会者のツッコミに面白い受け答えをする。暖冬は私も実感。職場の水仕事や家事の洗濯干しで手先に痺れるような冷たさを感じる日は少なかった。
 3月に入り、いよいよ本のイベント〈2日間だけの元町「海の本屋」復活スペシャル〉が迫ってきて、くとうてん制作宣伝ちらし完成、おかんアート山下隊長によるイベント専用フェイスブックページもできた。あとはトンカ・野村・平野の「神戸の本」リスト。
 2日、宣伝ちらしをセ~ラ編集長、ゴローちゃんと手分けして関係各所と新聞社に持っていく。ギャラリー島田はお休みだった。神戸新聞社を訪問、同総合出版センター今井さんに面会、本販売のこと改めてお願い。平松記者と島京子さん講演の聞き手・山崎さんに面会して打ち合わせ。旧知の大加戸さんにも会えて挨拶。トンカ書店に行って相談。中央区西部(旧生田区)をあっちこっち歩いて、まあまあそこそこの移動距離。
 4日、JR京都駅の美術館〈安野光雅の仕事〉展、大谷本廟お参りして、三月書房、ここでないと買えない本がある。
 先月島尾敏雄夫妻の「狂気」の物語『狂う人』(梯久美子、新潮社)を読み、このたび子息の告白を読んだ。子息は著者の取材に何度も応じていた。著者が礼儀正しく接してくれても、
《……嫌な事を次から次へと思い出さなければならなくなったので、ぼくの不機嫌は益々悪化して気持ちを重いものにしていました。(中略)あんなにぼくや妹に失礼極まりないことをやっておきながら、おとうさんとおかあさんは死んでからも、生前そうであったようにぼくのお金や精神や肉体を奴隷のようにこき使います。いいえ、そんなことが負担になっている訳ではありません。彼らはまだ死んでいないかのように不気味です。》(島尾伸三「おかあさんの謎」『脈』92号、脈発行所)
 新潮社のPR誌『波』2月号・3月号で、著名作家を父に持つ人たちの公開座談会「文士の子ども被害者の会」を掲載されている。阿川弘之、遠藤周作、北杜夫、矢代静一の子女たち。文学ファンには作家たちの一面を知る良い機会。父親の唯我独尊の暴君ぶり、奇行などなど、近親者のご苦労は察するにあまりある。家族の悲喜こもごもの思い出話は他人には笑い話。この子女たちに生命の危険や精神崩壊の危機はなかっただろう。
 NR出版会事務局から近刊『書店員の仕事』(新泉社)の感想文を依頼される。同会が書店に毎月送る出版案内に7年半書店員たちが寄稿した連載をまとめる。私も何度か寄稿しているが、今更引退者の出る幕ではないと断わるも、承知してもらえない。おだてられると嫌と言えないダメな私ね~、と書いてしまう。
 イベント準備でトンカ、くとうてん、山下隊長は大忙し。実務のできない平野はただ右往左往。仕事のない日はくとうてんとトンカさんを行ったり来たり。みんな本業をこなしたうえで協力してくれる。山崎さんから島さん講演用の詳細なレジメが届き、私も小林良宣さんとのトークレジメを見直し。
 14日はギャラーリー島田でDM作業してから書籍とポストカードを預かって、苦楽堂に集品に行く。16日は拙著『海の本屋のはなし』をくとうてんまで3回に分けて運ぶ。頭が役に立たない分、身体を使わねば。17日、仕事終了後、イベント会場〈まちづくり会館〉。昼からくとうてんメンバーと福岡さんが準備作業をしてくれて、私はすることなし。古本屋さんも続々搬入、イマヨシ書店、あさかぜ書店、やまだ書店、一栄堂書店の〈元町古書波止場〉看板も復活。神戸新聞総合出版センター、苦楽堂、みずのわ出版、編集工房ノアなど新刊本のコーナーができ、青山大介〈港町神戸鳥瞰図〉初版、第2版、最新版、1868年版が展示され、くとうてんのグッズ、海文堂ポストカードも並ぶ。あとは本番、お客さんを待つだけ。
 18日、〈2日間だけの元町「海の本屋」復活スペシャル〉開幕、主催は『海の本屋のはなし』刊行会。下町レトロに首ったけの会・伊藤会長が〈おかんアート〉作品と駄菓子セット搬入、また売り場が活気づく。〈おかんアート〉は技術が上がって、本物から怒られそうな域に達している。
 まちづくり会館は休憩所・図書閲覧・トイレなど市民に開放されている。お客さんがどれだけ来てくれるのか不安のなか、9時半開場と同時に数人入って来られ、〈古書波止場〉コーナーから売れ始める。トンカさんとふたりでレジ作業開始。時間とともに来場者は増加、主催者の気持ちが落ち着くのだが、講演はどうなるだろうかとまた不安。島京子さんの到着がちょっと遅れて、平松記者がそわそわ。タクシーで来られるはずが、電車で花隈駅から徒歩、どうやら降り口を間違えたみたい。早速、聞き手の山崎さんと打ち合わせ。参加者は30名を超えて、一安心。山崎さんが万全の準備で島さんの話を引き出してくれた。「神戸の戦後文学」のテーマで、島さんの出生からデビューまで、『VIKING』同人との交友、さらに作家活動の話など戦後文学者のエピソードを交え語ってくれた。父親のこと、富士正晴と島尾敏雄、久坂葉子のこと、親友・川野彰子のこと、田辺聖子のこと、司馬遼太郎の薫陶など、興味深い話(大きな声では言えない話も)がたくさん出てきた。島さんと山崎さんにお願いしてよかった。仲介してくれた平松さんにも感謝。午前中、神戸市長さん視察あり、写真をごいっしょしたが、我々と写って公務と名誉に支障はないか心配。夕方、宝塚在住著名作家さんが覗いてくれ、激励をいただく。神戸新聞社、産経新聞社、ケーブルテレビJ:COM、取材感謝。古書波止場・有馬さん差し入れありがとう。
 19日、下町レトロ商品追加。朝一からお客さん続々、古本も新刊もグッズも順調な売り上げ。11時半に小林さん来場して打ち合わせ。その間に1階売り場は益々繁盛。柿本、熊木、吉井の海文堂ガールズが来てくれてレジ手伝い、ありがとう。2階講演会場にも人が集まる。最前列にクッスーとcozueちゃん夫妻、資料映像係ゴローちゃん、司会セ~ラ編集長がいてくれて、安心。懐かしいお顔がちらほら見えて、まだまだ海文堂は皆さんに愛されていると深く感じる。小林さんが制作してきた「海文堂書店誌紙」を中心に、海文堂のこと、小林さんの仕事のこと、誌紙づくりで関わった著者・文化人たちの思い出を語ってもらった。そもそも小林さんに登場してもらったのは、今夏〈小林制作誌紙〉をネット上で公開することをお披露目するため。私は誌紙を読んで彼がどれほど本を愛し、海文堂を愛し、出版界を大切にしてきたかを知った。トークでも彼の思いを皆さんに伝えられたと思う。なぜこれほど海文堂を愛した小林さんが書店員を続けられなかったのか。最後の最後、話をまとめる段になって、私は絶句してしまった。感情を抑えきれず、醜態を晒してしまった。聴衆の皆さんと小林さんに申し訳ないこと。逃げたいような気持ちだった。今までも恥の上に恥を重ねてきたのだからしようがない。そうこうしているうちに店じまいの時間。片付けられるところから作業。書籍もグッズもかなり減った。2日間だけの〈本屋ごっこ〉だったが、次の催しに繋げたい。〈の〉さま、手作りお菓子おいしゅうございました。
 新刊書籍の売り上げでは、みずのわ出版が神戸新聞総合出版センターを抑えてトップ。硬い本を買っていただけた。
 ご来場の皆皆様、古書波止場、協力出版社、「刊行会」メンバー、それに応援してくださった皆様、感謝申し上げます。木下さん、『ユリイカ、アリス特集』いただきありがとうございます。
 21日、返品処理、支払いなど残務作業。イベント来場の海文堂顧客さんがみずのわ出版の本を他の人に紹介してくださり、くとうてん事務所まで問い合わせに来られた。読者はいる、まだまだ紙の本は大丈夫だと確信。26日、トンカさんに寄ると、同じくイベント来場の三宮ブックス時代からのお客さん(男性)がトンカさんと私の似顔絵を描いて額装してくださっていた。細部まで凝っていて、ありがたいこと。トンカさんから渡されても、失礼なことに、私、この方の顔と名前が一致しなかった。トンカさんから「あんだけしゃべってたやんか! 女の人しか覚えてへんのか!」と呆れられ、叱られる。そういうおっさんでございます。

雛仕舞う届いた便りに笑い泣き  よーまる


3月買った本など。
鶴見俊輔 『もうろく帖(2)』 編集グループSURE
『脈 92号』(島尾敏雄生誕100年・ミホ没後10年) 脈発行所
『SIGHT 65』(電力が足りているのに原発を再稼働。その欲望が怖い) ロッキング・オン・ジャパン
山前譲編 『落語推理迷宮亭』 光文社文庫
小沢信男 『ぼくの東京全集』 ちくま文庫
小沢信男 『私のつづりかた』 筑摩書房
鹿島茂 『神田神保町書肆街考』 筑摩書房
森本アリ 『旧グッゲンハイム邸』 ぴあ
 トンカ書店、ワールドエンズ・ガーデン、古書波止場で古本4冊。
 戴いた本
『ユリイカ』2015年3月臨時増刊号(150年目の『不思議のアリス』) 青土社


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2017. 3月 奥のおじさん(36)

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奥のおじさん さすらい月報(36)

 朝寒くても、陽がさすと幾分和らいで油断していると、夕方また冷えてくる。まだ2月、春は先。
 勤務先の居住者でいつも気さくに声をかけてくれる方が「本を作った」と、私にくださったのは詰碁の問題集。これまでにも数冊出版して、囲碁で国際交流もしておられている。残念ながら私は碁がわからない。問題と解答を見て、「そういうもんか~」の人間。
 トンカさんは3月元町の本イベントの立役者。店と育児・家事の合間をぬって奮闘。〈下町レトロに首っ丈の会〉山下さんと二人で、関係各所と交渉してくれている。私は彼女たちの後ろからコソコソついて行っているだけ。
 2日、毎日新聞木田さんが本イベントについて取材してくださる。海文堂でもお世話になった。
 6日〈朝日歌壇〉に元町商店街を題材にした入選歌。
《元町で今年最後のショッピング新しい靴明日おろそう》 芦屋市・室さん
 同日夜、甲子園の牧師・元正章(はじめ・まさあき)さんが島根県に転任で、お別れ呑み会。阪神淡路大震災後、書店員から転身した人。川口さん、寒川さん、小林さん、福岡さん。出版業界の今昔話を聞く。亡くなった方々の話が多かったか。
 7日、イベント会場・こうべまちづくり会館担当さんと打ち合わせ、セ~ラ編集長とトンカさんいっしょ。会館にとっては実験的なイベントになるが、私たちに親切丁寧な配慮をしてくださる。ありがたいこと。続いて、トンカさんと元町商店街の役員さんたちの前でイベント概要説明。
 この日は鳥瞰図絵師・青山大介さんの新作『港町神戸 今昔鳥瞰図』(くとうてん)発売日、本屋さんに走る。神戸開港150年記念出版、1868年1月1日当日と現在の神戸の姿を描く。本イベントでも主力・目玉商品。過去の作品と比較して神戸の街並みの変化を読み取っていただきたい。

 みすず書房の『みすず 1.2月合併号 読書アンケート特集』が届く。研究者、作家、芸術家ら日本の知性たち(外国の方も数名)が昨年読んだ本から印象に残った本を紹介する。私の知能では難しい本が並ぶ。アメリカ大統領選挙結果に代表される国際政治事問題の衝撃は出版・読書にも大きな影響を与えたようだ。回答者常連に書店員が2名おられるが、今回新しく〈Title〉辻山さん登場、しかもトップバッター。
 コミックを読ま(め?)なくなってしまったものの、『ドカベン』ともうひとつ買っているのが『プリニウス』(ヤマザキマリ、とり・みき、新潮社)。新刊第5巻を手にしたが、4巻未読であったことに気づき、散らかる本棚から発掘する。古代ローマ博物学者評伝、皇帝とそのとりまきの暴政、謀略から逃れて、冒険と研究の旅。5巻で一行は大地震直後のポンペイに立ち寄る。ここの権力者が横暴・独善・女性蔑視であの新大統領そっくりに描かれている。対立する女性実業家も登場。雑誌発表時はまだ「候補者」だったが、ヤマザキは予見していたのか。いずれにしても、あの怪物の登場は政治社会だけではなく、表現する人、鑑賞する人にも、私たちの日常生活にも大きな影を落としてくる。
 私の聖なるヴァレンタインはギャラリー島田でイノッチとDM発送作業。その前に近所の米屋さんに宅配便をお願いしたら、おかみさんがチョコをくださり、ギャラリーではおやつにチョコ食べ、赤ちゃんおんぶ新米ママからチョコいただく。インターン学生さんの母上は海外の方で、日本のヴァレンタイン狂騒は理解できないそう。島田社長執筆の通信にはどこよりも早く3月元町本イベント紹介。帰宅したら名古屋の和子ちゃんからチョコ届く。彼女は地元新聞で『ほんまに』を紹介してくれている。うれしいありがたい、が、私まだ会ったことがないのだよ。

 髙田郁『あきない世傳 金と銀(三)奔流篇』(ハルキ文庫)を買って一気に読む。著者は「これでもかっ!」と主人公・幸(さち)を苦難に追い込む。はっきり言う、「このサディストめ!」。放蕩者の四代目が亡くなり、商才ある弟が幸を妻にすることを条件に五代目につく。彼は人格的に問題があるが、大きな目標をもつ。幸の才能を理解し、彼女の意見も取り入れて、柔らかくなった様子。店のムードが良くなり、商売が上向いてきたのに、彼の性根は変わらず、取引先に酷い仕打ちをしてしまう。幸は困難を打開できるのか? 読者は著者の手のひらで読者は弄ばれている。私が面白がっているのは、著者が夫婦の夜の営みの場面を書くこと。いままで「純愛」ばっかりやったもんね。
 週末、家人が子どもたちの様子を見に上京して、私は留守番。18日は美術館行って、本屋さんめぐり。19日は鳥瞰図絵師・青山大介の新作記念トーク。絵師は延々続く緻密な作業で、精魂使い果たすだろう。彼は気分転換の妄想を脳内で展開し、絵図の中に隠れた物語を創作する。1868年の開港当日の図では、西国街道に追い剥ぎが出没して仙台出身の女絵師が襲われるし、三宮神社境内では行き倒れた薩摩の女性が茶店働くことになるなど。そんな遊びやイタズラが仕掛けられている。会場で私の東京堂トークにも来てくれた海文堂ファンご夫婦に会い記念写真、ニコッ!。

 20日、苦楽堂社主がイベント用「神戸の本100冊」リストを整理入力してくれる。新刊発行で多忙の中、煩雑な作業に時間を割いてくださり、感謝。これをもとに資料を完成させなければならない。トンカさん、うみねこ堂書林店主に頑張ってもらおう。 
 21日は三宮で荻窪〈本屋 Title〉辻山さんの『本屋、はじめました』(苦楽堂)刊行記念トーク。聞き手は出版ジャーナリスト・石橋毅史さん。辻山さんは神戸市須磨区出身、大手書店を退職し、開業準備から現在までを経営数字を含め書いた。石橋さんの質問に答え、本と本屋に対する愛、本屋で生きていく気持ちを述べた。出版不況で出版社も取次会社も本屋も明日どうなるかわからない不安の中、個人で開業した辻山さんは注目の人。彼としては特別なことをしているという気負いはないと思う。彼は毎朝ウエブサイトで「毎日のほん」を更新している。彼の矜持だ。
 司会者が講演の前に、「いま、本販売の職業についている人は?」など参加者の職業を尋ねた。「以前に本を販売していた人?」のイタズラ質問に、福岡さんと私の二人手を挙げた。それ、訊く? でもね、3月イベントでは本売りに復帰する。

本を売る老いぼれたちの春間近  よーまる


2月買った本など。
大井実『ローカルブックストアである 福岡ブックスキューブリック』 晶文社
青山大介『港町神戸 今昔鳥瞰図』 くとうてん
『みすず 1.2月合併号 読書アンケート特集』 みすず書房
ヤマザキマリ、とり・みき『プリニウス Ⅴ』
髙田郁『あきない世傳 金と銀(三) 奔流篇』 ハルキ文庫
『尾形亀之助詩集 美しい街』 夏葉社
瀬戸内寂聴『諧調は偽りなり 上・下』 岩波現代文庫
古本屋さんで文庫4冊。

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2017. 2月 奥のおじさん(35)

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奥のおじさん さすらい月報(35)

 年末は娘夫婦が来てくれて、それなりに賑やかだった。息子は帰省せず、正月三が日は夫婦二人、私は例年通り寝正月。正月くらい世間と隔絶するのもいいかと思うが、いずれ年中引きこもり老人になるのだろう。早々、自主的に年賀状を書いた。「自主的」というのは、例年いただいた方に返信するだけだから。これも世間とのつながり維持のためかもしれない。

「朝日新聞」1月1日〈天声人語〉は、科学技術進歩と私たちの暮らしの変化・不安を取り上げている。例として本屋をあげている。
《「十年後存在しないかもしれない本と言葉と職種と我と」。書店に勤める若き歌人、佐佐木定綱氏の作品である。紙の本という存在、書店員という仕事はこの先どうなっていくのか。似たような不安は程度の差はあれ多くの仕事に当てはまるのではないか》
 佐佐木さんは、名前からわかるように短歌結社主宰者の家系に連なる人。昨年角川短歌賞を受賞している。歌人が本屋で働いていることに興味がわくが、それよりも、まず本は、本屋はどうなるのか? ということ。書店員さんたちは皆、大きな不安の中で仕事をしている。本が好きだから、本屋が好きだから、働いている。
 今更だが、2010年『ほんまに』第11号で〈非カリスマ書店員座談会 10年後も本屋でメシが食えるのか〉を特集した。出版不況に加え、ネット販売普及、電子書籍出現の中、若手書店員6名が毎日どんなことを考えながら働いているのか、本音を語り合った。10年後どころか3年後に海文堂は廃業した。

 4日初出勤。勤務先から徒歩数分、須磨寺に初詣。真言宗の古刹、広い境内には源平の史跡、シベリア抑留者の慰霊碑、阪神淡路大震災犠牲者追悼碑の他、文学碑が多数ある。本堂脇に自由律の俳人・尾崎放哉の句碑が立つ。
〈こんな良い月を一人で見て寝る〉
師・荻原井泉水による筆。
大正末期、放哉は流れ流れて須磨寺で寺男として働いたが、僧侶の権力争いのとばっちりで追い出されてしまう。放哉には気の毒だったが、彼は遅かれ早かれ酒で失敗しただろう。放哉の放浪は自らの意思というより、その酒癖の悪さが災いのもと。放浪俳人でも種田山頭火は積極的放浪者と言える。彼も酒癖悪いが。
咳をして寺男ひとり立っている  よーまる

年末読んだ本、安水稔和『一行の詩のためには』(沖積舎)に、「……旅とはもともと楽しいものではなく、つらい苦しいものだった。……」とあった。
《生まれた時が旅立ちの時。生きていることが旅、避けられぬ異郷の旅。生きる旅の終りが旅の終りではではあるまい。次の新しい旅が始まるのだ、避けられぬ新しい今日の旅が。》
小沢信男は『俳句世がたり』(岩波新書)で、芭蕉「野ざらし紀行」の句を引く。
〈猿を聞(きく)人捨子に秋の風いかに 芭蕉〉
芭蕉は旅の途中捨て子を見かけた。
《だんこ見捨ててゆく。このさいやむをえないか。俳諧点者の安穏を捨てた草庵住まいから、さらに行き倒れも覚悟の乞食旅へ。猿の鳴き声の悲痛は芭蕉自身にも重なり、せめて袂の喰物をそっくり置いていった。》
〈しにもせぬ旅寝の果と秋の暮 芭蕉〉
 芭蕉も漂白の人。
凄絶な「旅」がある。幕末、長崎浦上の隠れキリシタンたちが異国から来た神父に信仰を告白。彼らは幕府に捕らえられ、拷問される。明治政府になってもキリシタン迫害は続く。殉教する者、流罪になる者。1873年、信教の自由が認められて、生き残った流刑者たちが帰郷。
《……自分たちの経験した取扱い、加えられた拷問などを繰り返し語り始めます。非常に興味深いことに、彼らはその経験の総体を『旅』と呼ぶのです。》(梨木香歩「名前をつけること、『旅』の話のこと」『図書』2017.1月号岩波書店所収)。
 戦争の最中に南の島で出会った男女。男は特攻隊の隊長。島娘は約束の時間に遅れたことを詫びる手紙を書き、有間皇子の歌を末尾に引く。
〈磐代(いはしろ)の浜松が枝(え)を引き結び真(ま)幸(さき)くあらばまたかへり見む〉
娘は別れ=男の死を覚悟している。ここまでは悲恋、しかし、戦争が終わって恋が実ると、二人に新たな悲劇が始まる。梯久美子『狂うひと「死の棘」の妻・島尾ミホ』(新潮社)より。
 上記有間皇子の「旅」は、謀反の罪で処刑場に護送される「旅」だった。
〈家にあれば笥に盛る飯を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る〉
物見遊山、観光の旅の歴史は浅い。

 10日、東京荻窪の〈本屋Title〉店主・辻山良雄さんの本、『本屋、はじめました』(苦楽堂)が届く。おまけの冊子は、辻山さんがWEBサイトで毎朝1冊紹介している「毎日のほん」紙版。

〈1.17〉から22年。あのときウチは半壊、実家は全壊だったが、親類縁者、ご近所さんもケガはなかった。勤め先はすぐに営業再開できた。次、地震が来たらウチはダメだろうと毎年思う。

26日、作家主宰の「カレーの会」にゴローちゃんと参加、なかよしの新聞記者さんに仲介いただいた。『海の本屋のはなし』(苦楽堂)刊行に協力してくれた人たちと一緒に、3月元町商店街で本のイベントを開催する(詳細はおってお知らせ)。講演会も予定しており、作家さんにお会いしてお願い。お友だちの美淑女が集まる。平均年齢70歳を立派に超えるだろう。御年90歳の作家曰く「加齢会言われてるけど、華麗会や!」。皆さんお元気、二次会はカラオケ。選曲が渋い、作家は「島のブルース」(吉川静夫作詞)、美淑女たちはロシア民謡やシャンソン、ゴローちゃんは堺正章の歌。私も何年ぶりかでマイクを持って細川たかしのド演歌、なんとも場違い。


1月買った本
水島新司『ドカベン ドリームトーナメント編25』(秋田書店)
色川武大『離婚』(文春文庫)
辻山良雄『本屋、はじめました』(苦楽堂)
梯久美子『狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ』(新潮社)
和田誠『もう一度倫敦巴里』(ナナロク社)
瀬戸内寂聴『美は乱調にあり 伊藤野枝と大杉栄』(岩波現代文庫)

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2017. 1月 奥のおじさん(34)

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奥のおじさん さすらい月報(34)

 エヘン虫が喉にいる。「貧乏人は風邪ひかん」がモットーだが、ひくと長引く。
 12月1日、ギャラリー島田DM作業、人気の〈石井一男展〉と〈須飼秀和展〉開催中。スタッフいのっち休みで、松浦さん、尾崎さんと作業、いろいろアクシデントを乗り越え無事終了。育児休暇中やすこさんと赤ちゃんに会えた。決め台詞、否、決まり文句、「もう60歳若かったらボーイフレンドにしてもらうのに」。〈須飼展〉会場を覗くと海文堂児童書担当が手伝い。相変わらず行動活発多忙の様子。彼女と会うはずの場所が複数あるのに、ずっとすれ違い状態だった。
 4日、『ひょうご部落解放』と〈WEBほんまに〉原稿をやっつけて、雨の中家人と元町散歩。「神戸新聞」読書欄に拙文、安水稔和『神戸 わが街』(神戸新聞総合出版センター)書評掲載。同欄に井戸書店森さんの文章もあり。
 6日、家事片づけて紀伊國屋書店三宮店で雑誌。中央図書館で元町原稿資料借りる。昭和初め、山本禾太郎(のぎたろう・かたろう、両説あり)、戸田巽、酒井嘉七、九鬼澹(たん)ら、神戸探偵倶楽部に集まった作家たちを調べる。この分野は古書うみねこ堂書林店主『探偵小説の街・神戸』(エレガントライフ)が詳しいのだけれど、私は彼らの〈元町〉に焦点を当てる。くとうてんで「川西英カレンダー」購入。
 8日、トンカ書店〈さとうゆうすけ作品展 アニマルズ〉、針金アート展示。販売用の大型ポストカードは緻密で幻想的な画風、多才なアーティスト。
 9日、職場の会議(須磨区JR鷹取駅)から忘年会(垂水駅)。同僚たちは皆真面目な仕事人で会議は熱い。でもね、酒席になると愉快な人ばっかり。それぞれ山あり谷ありの経験を重ねてきたのだろうと推察する。
 10日、紀伊國屋三宮店、レジ行列。雑誌と黒川博行『喧嘩(すてごろ)』(角川書店)、ずっと読んでいる「疫病神シリーズ」、主人公二人は腐れ縁、離れられない。ギャラリー島田で林哲夫トーク。林さんが編集に加わり、装釘・デザインもした『花森安治装釘集成』(みずのわ出版)完成記念。装釘者として、また本業の画家の視点から花森装釘術・編集術を分析。花森に刺激を与えたであろう絵やデザイン、戦前の神戸や東京銀座の街並みなどをスライドと共に解説してくれた。会場には海文堂顧客のお顔がチラホラ。
 11日、元町商店街事務局、「神戸人形」を復活し制作販売している人形師さんと会う。私が『みなと元町TOWN NEWS』の連載で「神戸人形」と江戸川乱歩を取り上げたことで、わざわざ連絡をくださった。終了後、家人とギャラリー島田、早めの年末ご挨拶。夕方、近所の藤本あんちゃんから電話。孤独な老人を慮って話し相手になってくれる。図体も態度もでかいけど、優しい気持ちがうれしい。
 13日、ジュンク駅前店で高橋源一郎『丘の上のバカ』(朝日新書)、同三宮店で吉田篤弘『という、はなし』と佐藤ジュンコ『月刊佐藤純子』(共にちくま文庫)。
 15日、福岡さんと〈口笛文庫とトンカ書店の冬の古本市〉会場で待ち合わせ。「なんでおっさんとデートせなあかんねん!」。長谷川郁夫『われ発見せり 書肆ユリイカ・伊達得夫』(書肆山田、1992年)。おっさん二人連れ立って〈明日の本屋をテキト~に考える会〉呑み会会場へ。途中川口長老から福岡さんに「まだか~」の電話。毎回20数名が赤松酒店に寄って来る。ゆる~い集まりで、遅刻者がいようが、欠席者がいようが、気にするのは最初の30分くらい。久しぶりの桃子さんと岡さん、初参加の千さん、翌日海外に行くお正さん、元気書店員しろやぎさん、大学生協(ゆ)さん、営業多忙(か)さん、詩人ののさま、求職活動中(み)さん、会計担当クッスーら、私はGFたちのことしか考えていない。お正さんに来春のイベント相談、酔っ払って覚えていてくれるだろうか? おっさんたちも楽しく呑んでいる。
 20日、元町原稿届けて、事務局岩田さんとランチ。海文堂閉店後すぐに岩田さんが原稿を依頼してくださって、拙い原稿がもう3年半になる。
 22日、午前中用事がてらジュンク堂三宮店、小沢信男『俳句世がたり』(岩波新書)、『みすず』連載で岩波新書というのは、考えたらすごい。午後、中央図書館。
 23日、申し訳にちょこっと大掃除。
 24日、鵯越墓園。雑草が枯れて刈りやすいものの、一通りやると汗ばむ。墓は平野家と祖母実家の二区画。祖母方は絶えてしまった。帰り道、湊川の喫茶店で飲むコーヒーが楽しみ。そう言えば、子どもの頃、墓は兵庫区菊水町にあって、昼食の東山市場食堂が楽しみだった。50年以上経っても同じことをしている。午後、図書館に予約本を借りに行く。林哲夫『喫茶店の時代』(編集工房ノア、2002年)。
 25日、言い訳の掃除。夜、〈海文堂100年誌刊行会〉会議という名の食事会。皆、家でクリスマスせんのかい? 静かに祈るとか? 自分にはね返る。来春、〈神戸港開港150年〉に合わせ元町で本のイベント計画。
 27日、格好だけの大掃除。雨が上がって、雑誌を買いに出る。今年は大晦日も新刊や雑誌の発売があるそう。販売業流通業外食産業従事者は働け働けの時代。未來社水谷さんから『人文会ニュース NO.125』届く、BOOKS隆文堂鈴木さんが書店現場報告寄稿。続いて、神戸の〈詩人さん〉からプレゼントいただく。『一行の詩のためには』(沖積舎)。駄文を書き散らす我が身を反省。詩人は身も心も磨り減らして、一行・一句・一語を詠む。
 28日、仕事終了。娘と婿がバラバラにやって来た。息子は金欠で帰省断念。29日、トンカさん共にお正さんと面談、イベント応援依頼、元町のマンガ喫茶ポエム。午後、娘夫婦と家人引き連れ三宮ブックス訪問、年末ご挨拶。それぞれがおまけをもらって帰る。30日、親戚と息子に宅配便。31日、4人で昼食年越しそば。娘夫婦は帰京。妹と姪に年末挨拶。三宮に出てジュンク堂三宮店、平井嬢のレジに当たって久々おしゃべり。京極夏彦『書楼弔堂 炎昼』(集英社)、寝正月用。家人と落ち合って大丸。元町商店街から湊川神社除夜まいり。たった二人っきりの夫婦年末年始。夜、FBに挑戦するも、うまくいかん。

 楠公の鎮まれる杜除夜まいり  よーまる
 皆々様、良いお年を。

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2016. 12月 奥のおじさん(33)

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奥のおじさん さすらい月報(33)

 11月になってようやく秋の深まりを感じ、寒さも身にしむ。で、結局秋はどこに?
 1日午前中、中央図書館で元町原稿。午後は買い物ウロウロ。相変わらず人と話す機会なし。
 2日、東京の書店員・北田博充さん(『これからの本屋』(書肆汽水域)著者で学生時代海文堂バイト君)が『まだまだ知らない夢の本屋ガイド』(朝日出版社)を送ってくださる。現役書店員、古書店主、取次人、出版人、印刷人たちが執筆した〈現実には存在しない架空の書店=「夢の本屋」案内〉。北田さんも執筆、というより彼が制作した「夢の本屋ガイド」(著書にも収録)に多くの人が刺激を受け、本書出版。執筆者たちは楽しんで書いている。夢や空想からアイデアが出て具体化するかもしれない。それに、現実に存在してまだ知られていない面白い本屋がいっぱいあるはず。
 3日、娘が二週連続で友人結婚式帰神。おみやげに得地直美『神保町』(夏葉社)サイン本と神保町ブックフェスティバルの紙ものたくさん。ジュンク堂書店三宮店で小山力也『古本屋ツアー・イン・京阪神』(本の雑誌社)。ギャラリー島田でDM発送、レギュラースタッフに加えインターンの学生さんたちとバックヤードで作業。終了間際に海文堂顧客の島田さんがいらしてお話しながら帰る。
 5日、〈芦屋川一箱古本市〉阪急芦屋川駅近くの浄土宗安楽寺境内、良い天気。出店者、よく知るお顔がちらりほらり。カップル参加者、父子の絵本屋さんも。児童書が多めのなかで、文芸書一本、詩集好き、ちくま文庫中心の人たちに目を引かれる。古本猛者高橋輝次さん来場で境内に緊張(?)が走るが、温和な人柄と博識で誤解はすぐ解ける。安岡章太郎『戦後文学放浪記』(岩波新書、2000年)、色川武大『虫喰仙次』(福武文庫、1989年)、岩阪恵子『淀川にちかい町から』(講談社、1993年)。帰りは阪急王子公園駅下車、神戸文学館〈横溝正史 金田一耕助の神戸を探偵する〉。JRで三宮に出て、神戸駅まで買い物がてら歩く。
 8日、中央図書館で元町原稿。クッスーから明日本会日程相談、世間は忘年会準備モード。
 10日、ジュンク堂三宮店で雑誌買って、食料品買い物しながら戻って、図書館で元町原稿。
 12日、『ひょうご部落解放』夏号が届く。私は『山之口貘詩集』(岩波文庫)を紹介した。夕刻大阪天満宮近くで友人夫妻と会食。待ち合わせ前に天神橋商店街の古本屋さんをめぐるつもりが、1軒覗いただけ。
 13日、家事の合間にジュンク堂三宮店、コミック『ドカベン』(秋田書店)と『谷崎万華鏡』(中央公論新社)。PR誌『熱風』(スタジオジブリ)の特集は「渡辺京二ロング・インタビュー」。
 15日、職場の会議で小林さん、福岡さんと一緒、帰りに高架下プラネットEarthで開催中の〈竹内明久切り絵展〉に寄って、松屋からBAR・Abuはち、元町ほろ酔いコース。小林さんに資料ネット公開が進まないので呆れられる。じわじわ始まる予定。
 17日、元町原稿届けて、ジュンク堂三宮店、森山優『日米開戦と情報戦』(講談社現代新書)。久々に平井嬢と顔を合わせるも、違うレジで話をする機会なし。大丸でパン買って、くとうてん、ゴローちゃんとセ~ラ編集長と海文堂資料公開の話。
 19日、主治医の勧めで胃カメラと腹部エコー検査、胃カメラは63歳にして初。終了後おとなしく家にいたら久方ぶりに地震体感、和歌山・三重で震度4。午後、トンカ書店〈ザックバランな古本のみの市〉が始まっているのを思い出して出かける。7店舗(個人含む)出店、皆さんそれぞれ個性豊か。プロレス中心あり、自然科学専門あり、見ていて飽きない。ミニコミ、フリーペーパーに加え、オリジナル雑貨や手芸用品も出品。三木卓『わが青春の詩人たち』(岩波書店、2002年)。帰宅したら、神戸新聞生活文化部から新刊安水稔和『神戸 わが街』(神戸新聞総合出版センター)、西宮登尾先生から月刊通信「パンの木」、NR出版会「新刊重版情報」が届く。安水本は60年にわたる神戸についての詩とエッセイをまとめたもの。安水の神戸「原風景」と「現風景」。登尾連載定時制高校教師たちの人権教育実践記録「湊川高校九十年の軌跡」は貴重。NR情報には毎号書店員の現場報告が載る。「明日の本屋をテキト~に考える会呑み会」案内を会員に送信。毎回英文学教授から即返信あり。
 20日、晩ご飯の買い物に出て、うみねこ堂書林。『ハイカラ神戸幻視考』(神戸新聞総合出版センター)著者西秋生さんは店主の同級生で、昨年西さん逝去後、蔵書を引き取ったそう。ちょうど近くの1003で故人のブックフェアが開催されているので覗く。店主が灘と元町に古本屋さんができたと教えてくれる。うみねこ堂で高見順『昭和文学盛衰史』(文春文庫、1987年)。1003で井伏鱒二『さざなみ軍記/ジョン万次郎漂流記』(新潮文庫、1986年)。
 21日、職場の大阪勤務の人から同期入社京都勤務の人の訃報。研修だけのお付き合いだが、同年輩の死はショック。ご冥福を祈る。
 22日、東北で大きな地震、津波警報も。神戸新聞に書評原稿送信。夜のニュースで鳥瞰図絵師青山さんが取り上げられている。
 24日夜、海文堂小林元店長作成のPR誌紙等を公開するにあたり第1回会議、くとうてんにて。〈海文堂100年誌刊行会〉の事業。資料アーカイブ化し、WEBで公開、公共の場所でも閲覧してもらえるようにする計画。読者向けPR誌紙の他、店内連絡用のペーパー、出版・販売した目録や読書情報など。ただの「記念」「記録」ではなく、現役の書店員さんにも役立つはず。しろやぎさん、苦楽堂社主も参加してくれ、貴重なアドバイザー。まず、分担して著作権や肖像権など公開の問題点をチェックすることに。
 26日、周防大島みずのわ出版から『花森安治装釘集成』が届く。花森は朝のドラマでも取り上げられた名編集者で装釘家。なんで「装丁」「装幀」ではなくて「装釘」かというと、花森の考え、「文章はことばの建築だ。だから本は釘でしっかりとめなくてはならない」から。本書は6年がかりの出版。版元、編者の唐澤平吉・南陀楼綾繁・林哲夫(装釘・デザインも担当)はじめ、関係各位の尽力に敬意を表したい。花森は神戸出身、神戸に縁あるみずのわ社主が出版してうれしい。
 27日、雨の中、食料買い物のついでにジュンク堂三宮店、目当ては髙村薫『土の記 (上・下)』(新潮社)。他にも買いたいけど、手元大いに不如意。ネットのニュースで神保町の本屋・信山社倒産知る。代表者が10月に亡くなったばかりなのに。
 29日、かなり久しぶりに乙仲通の苦楽堂事務所。来年1月発行〈新刊本屋開業本〉の束見本が届いたばかりで持たせてもらう。未来の希望がある本。帰り道、定休日なのにうみねこ堂書林が開いていた。隣の喫茶店でコーヒー飲んでから覗く心づもりだったが、出たら閉まっていた。残念でした。仕方がないのでくとうてんに寄ってから帰る。

 木枯らしや本作る人凛として


(奥のおじさん)

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2016. 11月 奥のおじさん(32)

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奥のおじさん さすらい月報(32)

 10月になったというのに暑さが続く。
〈ほんまにWEB〉連載更新が滞っているので、(株)くとうてんに苦情。毎月更新をお願いする。
 2日、トンカさんに『ほんまに』訂正表を届けに行くと、永田收写真展〈神戸、撮ってどうなるのか〉開催中、永田さん(『ほんまに』連載中)にご挨拶。トンカさんとイベントの話。
 4日、〈六甲山を活用する会〉でのお話会(私が話す)が迫っていて、事務局で打ち合わせ。会は土地所有者の了解を得て自然歩道と森の環境整備を行っている。
 6日、台風一過、暑いくらいの好天。ギャラリー島田DM発送。スタッフいのっちと松浦さんが映画「君の名は。」の話をしていて、気を遣って私にも話を振ってくれたので、どんなストーリーを予測しているかを明かした。主人公男女の身体が時空を超えて入れ替わるらしいことは知っている。きっと二人は世界征服を企む異星人と闘い、同志愛から恋になり、どちらかが犠牲に……、というもの。当然、笑われた。じゅんこ母子が手伝いに来てくれて和む。社長から『ほんまに』に注文もらって、ジュンク堂三宮店で雑誌買って、くとうてんに寄るとゆみちゃんが「火垂るの墓」DVD(実写版)を貸してくれる。
 9日、急に秋らしい気温。夜、トンカ書店でイベント〈安田謙一×永田收 SANPO、そして神戸〉。永田收写真展記念トークで、安田のエッセイ集『神戸、書いてどうなるのか』(ぴあ)には永田の神戸風景写真が数多く掲載されている。昭和50年代の神戸の懐かしい風景(観光名所ではなく、日常の人と風景をとらえる)とその思い出を語る。当時三宮からよく見えたラブホテルの写真がある。ホテルの麓には現在の北野町とは思えない古い文化住宅が並んでいた。ホテルの場所は〈風見鶏の館〉前の広場。北野=エキゾチックな観光地というのは勝手な思い込みで、まちは昔からそこにそのまま存在していた。個人個人にとって懐かしい場所が探せばまだ残っている。トンカ常連さん、永田ファンで超満員。シンガーソングライター〈よお〉さんと久しぶりにお会いでき、山上たつひこのポストカードをいただく。
 10日、落語〈桂米團治独演会〉朝日ホール、「青菜」「子は鎹」「地獄八景亡者戯」。枕で新開地に地元有志が常設の寄席をつくるという話、上方落語協会でも賛否を問うそう。
 11日、六甲山用原稿。飽きて、くとうてんで息抜き。会場で販売する『ほんまに』を預かって帰る。夜、親戚が出張ついでに宿泊。
 12日、みんな朝早くから仕事なので慌ただしい。親戚に忘れ物注意を言っていたのに、忘れて行ったので、駅まで走る。出勤前に疲れてしまった、とサボリの言い訳ができる。
 13日、六甲原稿また飽きて、雑誌求めてジュンク堂三宮駅前店まで。
 15日、いよいよ〈六甲山を活用する会〉セミナー、県立自然保護センターにて。山上は暑いくらいの行楽日和。午前中、会員の皆さんは自然歩道草刈作業で汗を流しておられる。私は堂馬代表の案内で自然歩道散策グループ森林浴。別荘や企業の保養所がたくさんあるのだが、使われていない建物が多い。自然歩道に隣接する私有地は荒れていて、会が井戸や境界柵を補修している。歩道沿いに石仏たちが鎮座。センターに戻り昼食後、私の出番。10人くらいと思っていたら20数名来てくださる。どれだけの人が海文堂や本に興味を持ってくださっているのか不明(顧客おひとり)だが、私ができる話をするしかない。海文堂小史と『ほんまに』で取り上げた六甲ゆかりの陳舜臣・野坂昭如について話す。彼らの神戸描写から、小さな歴史を大切にしようという結びに。帰り道、JR六甲道駅と阪急六甲駅の間にある口笛文庫に寄る。店内はあちこち本の山がそびえ立ち、店主は埋まっているみたい。ちょうど大学生、主婦、小学生が本を見ていて、地域に根づいている古本屋さん。井伏鱒二『鶏肋集・半生記』(講談社文芸文庫、1990年)、平野威馬雄『隠者の告白』(ちくま文庫、1994年)、木内昇『漂砂のうたう』(集英社文庫、2013年)、足立巻一『学芸の大阪』(編集工房ノア、1986年)。
 16日、兵庫区平野町祇園さんの縁日。出店も参拝者も昨年より一段と多くなっている。近くの古本屋〈蚊帳文庫〉が出店。スタッフのじゅんこ母子に挨拶。一日だけ・雨天順延なしのイベントなので、関係者の天候への願いは切実でしょう。幸いの好天、モロッコビールが美味しい、野菜カレーが美味い。海文堂の顧客さんに会えた。帰りに古書片岡、店主が優しい笑顔で迎えてくださる。先月TV番組で絵本作家が神戸八社めぐり来店したことで、北側にある五宮神社参拝者が増えて、近所の郵便局が案内板を設置したそう。井伏鱒二『鞆ノ津茶会記』(福武文庫、1989年)、『井伏鱒二対談集』(新潮文庫、1996年)買って500円なのに、柿を2個おまけにいただいた。
 手の上に鱒二が二冊柿二つ
 散歩道鱒二のような笑顔の古書肆鱒二みたいな柿二個くれる  よーまる

 18日、くとうてんに売り上げ金納入と返品。セ~ラ編集長、ゴローちゃんとイベントやら海文堂資料公開の話。
 20日、何を思ったか、風呂で一日を振り返る。家人以外と話したのは、コープ宅配の人、その時たまたま通った訪問販売の人、元町事務局の担当さん、『BIG ISSUE』販売員さん、ジュンク堂駅前店のレジの人、大丸パン売り場の人、近所のスーパーのレジの人。元町とBIG以外は接客用語に「はい」「ありがとう」と答えただけ。こうして孤独な老人になっていくのでしょう。外出にバカ話できる場所と人を組み込んでおかなければ。ジュンク堂で雑誌『SIGHT』64号(ロッキング・オン)。
 22日、家人と買い物。また夜思い出して、誰と話をしたか数えてみた。家人以外では、ご近所さん二人に挨拶、ジュンク堂駅前店でレジの人に問い合わせして知り合いの池さんにアイコンタクト、電話アンケートがあって対象年齢確認に「残念、該当者なし」と答えたのみ。外出しても私は荷物持ちだからほぼ無言。ジュンク堂で津野海太郎『読書と日本人』(岩波新書)。
 23日、トンカ書店に行ったら臨時休業、うみねこ堂も休み。でもね、最後に1003があるというおじさんには贅沢な元町界隈古本コース。出久根達郎『古書法楽』(中公文庫、1996年)。この日私が家人以外で話をしたのは、1003店主と同ビル内にある喫茶店から顔を出していた可愛いお嬢ちゃんのみ。
 24日、仕事すんで阪急春日野道駅のギャラリー〈神戸天昇堂〉のトークイベント。新潟を拠点にひとりでインタビューマガジン『Life-mag.(ライフマグ)』を発行している小林弘樹さん。聞き手は南陀楼綾繁さん。企画したのはWAKKUN(神戸の名物アーティスト、新潟で個展をして小林と知り合う)とトンカ書店(同誌販売店)。小林は2008年20代半ばで全くの素人状態から雑誌づくりを志した。最新号は今年5月発行の第9号『寺泊・弥彦・岩室・巻編』。文章、写真、デザイン、とてもひとりとは思えないほどの内容と質、記事も硬派、しかも900円+税。取材はもちろん広告取り、販売店営業もひとり。遠い新潟出版人トークに、それも月曜日の夜に、50名近い人が集まった。南陀楼が話を引き出し、小林が朴訥ながら熱く語った。参加のおじいちゃんが「文章に根性がある!」と評した。
 27日、神戸市立博物館〈松方コレクション展〉、川崎造船所社長・松方幸次郎は第一次世界大戦で得た利益で、「日本人に本物の西洋絵画を見せたい。西洋の全てを理解するために、全てを購入したい」と美術品を買い集めた。しかし、昭和に入ると金融恐慌でコレクションを手放さねばならなかった。また、パリに保管していた美術品もフランス政府に接収されてしまう。後に返還され、東京上野の国立西洋美術館に所蔵されている。松方ゆかりの神戸に101点の作品が集まった。夜、久々に〈海文堂100年誌刊行会〉の集まり、来年のイベントと小林店長資料のデジタル化について相談。
 29日、京都。観光客を避けるように、大谷さん墓参りして、京都大学生協食堂で昼ご飯。家人と別行動で、私は古本まつり知恩寺。古本強者のジャマにならぬよう本探し。薄田泣菫『完本茶話』全3冊(冨山房百科文庫、1983~84年)、高見澤たか子『金箔の港 コレクター池長孟の生涯』(筑摩書房、1989年)。寺町の喫茶店で家人と合流、丹波のマッタケを横目で見て、漬物と菓子買って帰る。
 30日、トンカ書店に行くと海文堂顧客で呑み仲間島田さんに遭遇。私はトンカさんと相談事してヨーグルトいただく。予約していた一箱古本市をテーマにした雑誌『ヒトハコ』創刊号(書肆ヒトハコ発行、ビレッジプレス発売)。

(奥のおじさん)

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2016. 10月 奥のおじさん(31)

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奥のおじさん さすらい月報(31)

 台風の影響でしのぎやすくなっているが、まだまだ暑い。
 2日、退職した書店員〈み〉さんから挨拶状が届く。再出発の決意表明。
 3日、朝のTVで阪神電鉄沿線散歩の番組、尼崎、西宮、大石、三宮、元町下車、町の人とその活動を紹介。海文堂でお世話になった樽職人と鳥瞰図絵師が登場。昼前に家を出てジュンク堂書店駅前店で野坂昭如『俺はNOSAKAだ ほか傑作撰』(新潮社)、PR誌を3冊いただく。午後、中央図書館。横溝正史『恐ろしき四月馬鹿(エイプリル・フール)』(1976年、角川書店)、「広告人形」他投稿時代の神戸を舞台にした短篇は、後年のおどろおどろしい殺人事件作者と同一人物とは思えない軽快な作風。『横溝正史探偵小説選Ⅲ』(2008年、論創社、『新青年』編集者時代の文章掲載)も借りる。
 5日、会社が休めという休日。家事を終えて、夕方時代小説作家さんと交歓会と言う名の呑み会。編集さんに記者さんにファンの方、福岡さん、しろやぎさん、ナンバさん。遅れてゴローちゃん。新刊にサインをしていただき、サイン会の話や取材相手との話で、笑ったり、しんみりしたり。作家はいつもどおり小さな会でも参加者を楽しませてくれる。作品の裏話も聞けて、贅沢な時間。私は主人公を次々艱難辛苦に陥れる作家に、「このサディスト!」と叫んでしまった。しろやぎさんから仙台イラストレーター登場のPR誌をいただく。
 8日、くとうてん、本日『ほんまに』第18号印刷所に。元町と南京町の間にあるNGO団体主宰同級生を訪ねる。タイや東北に本を贈るなど、熱心な社会活動家。先輩活動家に和気清麻呂子孫と長曽我部氏子孫がいるらしい、ホンマかいな? トンカさんで相談事、花房観音『神さま、お願い』(2014年、角川書店)。
 9日、留守中に古書片岡さんが書評誌『足跡』を届けてくださる。創刊30年の同人誌。小さくても、継続は力なり。
 11日、家人は旅で、孤老は灘の県立美術館「藤田嗣治展」。乳白色の美人画が有名だが、時代によって作風が変化していく。戦争犯罪とも言われた戦争画迫力あり一歩引く。私は戦意高揚・鼓舞と受け取れない。戦場の悲惨を描いていると感じた。帰りに、ほんまに久々、ワールドエンズ・ガーデン、棚を一通り見ているだけで時間が経ってしまう。夏葉社の復刊本、前川恒雄『移動図書館ひまわり号』。
 13日、これも久々、ギャラリー島田でDM発送お手伝い。新スタッフさん、いのっち、じゅんこさんと楽しく作業。社長から療養中の元海文堂スタッフの近況を聞く。
 15日、元町原稿届けて、くとうてん、いよいよ『ほんまに』次週出来。ジュンク堂で『ドカベン』新刊2冊。トンカ書店で打ち合わせ。顧客さんに混じってジョン・レノン似自慢話。全国駆け回る古本女子からは、イベント予定やら、一箱古本市の雑誌が出るとか、広島出身池袋ますく堂店主はカープ優勝セールで燃えあがっているなどの話。出久根達郎『御書物同心日記』(2002年、講談社文庫)。
 17日、中央図書館、『横溝正史探偵小説選Ⅰ』(2008年、論創社)と『江戸川乱歩全集』(1979年、講談社)2冊借りる。
PR誌『熱風 ジブリ』(スタジオジブリ)の連載「『ヨイトマケの唄』をめぐる旅~美輪明宏と中村八大、三島由紀夫が生きた時代~」(佐藤剛)を楽しみにしている。懐かしい曲、知らない曲がたくさん出てくる。ネット検索で簡単に聴ける時代だが、物知り人に訊ねたり、古いレコードを探し回ることの楽しみ、遠回りの喜びや思わぬオマケに出会う可能性が狭まる。久世光彦『マイ・ラスト・ソング』(文藝春秋 1995年)は死ぬ間際に聴きたい曲をテーマに、思い出の歌と人を回想する。久世は1935年生まれ、取り上げる曲は昭和初期や大正期のもので、私がメロディを知っているのはわずか。久世は本書でも取り上げている昭和10年代の子守歌を『一九三四年冬――乱歩』(集英社 1993年)に使っている。乱歩が数日間失踪してホテルで過ごした事実から、久世は乱歩の幻の物語を推理、創作。
 19日、台風襲来を気にしながら、映画「怒り」。原作を読んでいないが、映画として堪能。帰り道、センタープラザの清泉堂とブックス・カルボ(海文堂の書棚健在)、ジュンク堂三宮店、手元不如意、のぞくだけ~でご勘弁。
 『ほんまに』18号出来、台風やら祝日やらで受け取りに行けないので、23日仕事帰りにくとうてんまで。知人宛に送ってもらう。急いで帰って夕飯炊事。『ほんまに』を開くと、校正ミスやら、間違い発見、やれやれ、いつも通りにドジをしている。♪いつまでたってもだめなわたしね~♪ 訂正表作成。
 24日、午前中、中央図書館。古書片岡に『ほんまに』に届けるが、まだ開いておらずポストに。ジュンク堂駅前店で、石川桂子編『竹久夢二詩画集』、倉田喜弘篇『近代はやり唄集』(ともに岩波文庫)、西秋生『ハイカラ神戸幻視行 紀行篇 夢の名残り』(神戸新聞総合出版センター)。三宮ブックス村田社長に『ほんまに』を届けて、業界話を聞いて、家事のぼやきまで。社長も同じ主夫の嘆き。
 25日、京都の徳正寺で出版社SUREのイベント、〈鶴見俊輔さんの仕事 第2回 兵士の人権を守る活動〉。1992年の国際平和協力法で自衛隊がカンボジアに派遣された。鶴見たちは京都で「自衛官人権ホットライン」を開設して、自衛官や家族の相談に応じ、活動は20年続いた。単なる反戦活動ではなく、個々の自衛官の人権に寄り添う活動だった。SUREまちこさんに『ほんまに』を渡す。鶴見俊輔『敗北力』、前回イベントの記録『ハンセン病に向きあって』(ともにSURE刊)購入。会場は四条通のすぐ南、作家扉野良人(ペンネーム)さんが住職を勤めるお寺、久しぶりにお会いできた。
 29日、トンカさんと元町事務局岩田さんに会って、本販売の相談。商店街で部外者が参加できる行事は限られているが、お知恵拝借。午後毎日放送「ちちんぷいぷい」を見ていたら、絵本作家・長谷川義史が神戸八社巡り。途中で長谷川の機嫌が悪くなる。目的地を次々移動する旅がつまらないらしい。いつもは目的の場所はどこそこあたりと決めて、周辺で出会う風景や人をスケッチする。兵庫区山手の五宮神社近くで古書片岡や古いアパートを発見してちょっと機嫌直す。

  迷走の台風見上げ秋を待つ  よーまる

(奥のおじさん)

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2016. 9月 奥のおじさん(30)

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奥のおじさん さすらい月報(30)

 勤務先の庭木にツグミが巣作りしていて、観察者の報告では親鳥抱卵中。昨年の巣は小枝を組んだ浅い小物入れのようだったが、今回の巣は毛糸も使って深い花鉢のよう。自然の造形。親鳥を驚かせないように静かに行動する。
 8月4日、くとうてんで『ほんまに』原稿。ゴローちゃん他スタッフは本業も多忙なのに、奮闘中。1003で知人に頼まれた本を受け取って、三宮ブックスでおしゃべり。
 7日、高槻墓参り。親戚たち、若者も同年輩も元気。
 10日、仕事終わって、赤松酒店で「明日の本屋をテキト~に考える会呑み会」。遅刻者や欠席者のことは、はじめの1時間くらい、「遅いな~、もう来るやろ」と気にしているが、呑んでしまえばすっかり忘れている。結局21名出席、うち女子7名。書店員2名、古書店2名、出版社7名、その他いろいろ。終わりかけに海文堂顧客さんが飛び入り、久しぶりにお会いできて福岡・平野感激。呑みすぎて翌日は沈没。
 12日、仕事帰りに足を延ばしてジュンク堂書店駅前店、加藤陽子『戦争まで』(朝日出版社)と文庫。
 13日早朝江戸へ。新幹線車内で前日買った文庫本を開いて、巻数間違いに気づく。これが珍道中の序章。車内販売コーヒーを待つが、混んでいてなかなか来ない、あきらめる。江戸着、まずは谷中、家人の母方先祖墓参り。ミンミン蟬、鳴き声のスピードが関西と違う。著名人・偉人も眠っているが、大きな墓でも参る人がいないと思われる状態のところがたくさんある。かつては一族の象徴的存在だっただろうに。
 銀座に出て、資生堂ギャラリー「石内都展 Frida is」、メキシコの画家フリーダ・カーロ(1907~1954)の遺品を撮影した作品。石内は広島原爆被災者の遺品写真でも有名。午後、上野で娘夫婦と待ち合わせ。その前に、私、腹具合悪く、駅のトイレに飛び込む。上野公園内の東京都美術館「ポンピドゥー・センター傑作展 20世紀の巨匠たち、ぞくぞく。」、ポンピドゥーのコレクションのうち、1906年から77年まで1年ごとに1作家1作品を選んで展示。フランス20世紀の歴史と美術作品が重なる。私の生まれ年1953年はフェルナン・レジェの《自由》。私は唯一の海外旅行でポンピドゥーに行った。30数年前のこと。夕刻、赤坂で息子合流して食事。
 14日、ナイター観戦以外に何の予定も立てておらず、夫婦徘徊。赤坂迎賓館前庭見学。四谷から新宿経由して渋谷に行くのに中央線逆方向に乗ってしまって、東京駅から山手線で渋谷。時間はたっぷりある。東急東横店の古書市、坪内祐三『慶応三年七人の旋毛曲り』(2001年、マガジンハウス)。弁当買って神宮球場で息子と待ち合わせ、スワローズ応援もジャイアンツに惨敗。
 15日、娘夫婦宅訪問、旦那は仕事。昼ご飯食べて、吉祥寺に行く。初めての地、人通り多く賑やかで驚く。BOOKSルーエで地元誌『き・まま №6 本のある風景』(リュエル・スタジオ)、『村上春樹とイラストレーター』(ナナロク社)。穴倉みたいな喫茶店でおやつ。台風の影響か、少し雨。都内に移動、妻子の後をついて陶器屋さんに入る。お店の人は私が興味のないオヤジと見破り、椅子を勧めてくれる。表参道、谷内六郎の壁画で有名な山陽堂書店、お盆休みで残念。ガラス戸を覗いた。
 16日、銀座に出るつもりで家人とメトロに乗ったら、電車内の停車駅案内表示がずっと別の駅で乗り越してしまう。教文館、既に小遣い尽き、見てるだけ~。展覧会案内ハガキと「おすすめ本9月」をいただく。店名も場所もうろ覚えの洋食屋さんを探してウロウロ。意外に早く見つかって、幸運もある。東京駅構内を迷いながら土産や弁当探して歩く。帰宅、植木の水がカラカラ。信州から桃が届く。
 17日、休み明け出勤。ツグミたちは巣立ったよう。12日はまだ親がせっせとエサを運んでいたのに、自然の成長は早い。
 18日、元町原稿を届けて、くとうてん『ほんまに』原稿。ジュンク堂三宮店で髙田郁『あきない世傳 金と銀(2)早瀬篇』(ハルキ文庫)。先週第1巻を間違って買ってしまった。自己嫌悪で加速度ついて一気読み。主人公は辛い運命に立ち向かう。前から思っていたけど、いくら封建時代とはいえ、この著者はサディスト! 今度会ったら文句言おう。
 21日、トンカ書店。姫路のデザイナーで、昨年出版社を立ち上げた伊勢田さんの〈本と仕事展〉。久世光彦『マイ・ラスト・ソング』(1995年、文藝春秋)。
 25日、家の用事であっちこっち行って、くとうてんに行く途中、開店準備の女子の古本屋さんが手を振ってくれてウキウキ。ゴローちゃんからゲラもらう。一足先に読ませてもらえる。執筆メンバー自慢できる。毎回皆さん良い文章を書いてくださる。硬派のミニコミだと思う。
 27日、息子、友人の結婚式で帰神、1泊のみ。うみねこ堂書林に行くと、旅人女子二人が入って来て選書、太っ腹というか大胆というか、たくさん購入。私も思わずお礼を言う。安水稔和『生あるかぎりことばを集め 神戸、この街で』(2013年、神戸新聞総合出版センター)。1003で新刊『〆切本』(左右社)、原稿〆切をめぐる作家と編集者たちの修羅場。
 29日、仕事夏休み消化。10月に六甲山で海文堂のことや『ほんまに』のことを話せと言われていて、準備をそろそろしないといけないけど、ギリギリにならないと動けない質。本を読んだり、落語録画見たり。どこへ行くわけでもないのに台風情報を何回もチェック。結局できない。
 30日、くとうてん。『ほんまに』最終チェック。表紙のモデルと場所は『ほんまに』にぴったり。完成が楽しみ。

江戸っ子の墓にしみ入る蟬の経  よーまる

(奥のおじさん)

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2016. 8月 奥のおじさん(29)

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奥のおじさん さすらい月報(29)


 『海の本屋のはなし』を出版してもう1年。販売を続けてくださっている関係者、本屋さん古本屋さん友人の皆さん、ありがとうございます。まだまだ売ってやると、イベントを計画してくれている方もおられる。ほんまに感謝。
 7月2日、西宮北口兵庫県立芸術文化センターで「立川談春独演会」。「野ざらし」と「紺屋高尾」。
 4日、〈明日の本屋をテキト~に考える会〉呑み会案内をメンバーにメール送信。すぐに返信してくる呑み助諸君、ありがとう。
 5日、苦楽堂社主の声掛けで「神戸の本」リスト作成会議。『海の本屋のはなし』販売促進の一環。うみねこ堂書林、トンカ書店お二人に私も加えてもらう。それぞれ得意分野がある。元書店員としては万遍なくいろんなジャンルから選んだつもり。
 6日、職場の呑み会で垂水。久々に文進堂書店を覗くと売り場が半分に縮小。圧倒的在庫を誇っていたラノベも当然減る。私はチンプンカンプンなのに、あの棚を見て、「ヘ~」とか「ホ~」とか思うのも楽しみなのだけど。
 7日、『ほんまに』〈神戸空襲〉原稿送信。戦争物を読むのは辛い。でも、あの戦争を経験した世代が年々少なくなり、私たちは記憶と記録を継承しなければならない。たとえば空襲、空から爆弾が雨のように降って来る、その理不尽、恐怖、惨劇を想像してみよう。その馬鹿らしさを知らなければならない。
 9日、親戚が吹田阪大病院検査入院でお見舞い。大阪モノレールに初めて乗った。太陽の塔久しぶり、野外コンサート会場準備の様子が見える(翌日「私だけのドリカム」ライブ)。20代の頃、万博公園内の美術館によく来た。病院に小一時間いて、大阪。ジュンク堂書店大阪本店で伊勢田史郎『神戸の詩人たち』(編集工房ノア)。すぐ近くの〈本は人生のおやつです!!〉、店主が尊敬する青空書房店主逝去の話、8月阪神百貨店古書市の話など。井伏鱒二『神屋宗湛の残した日記』(講談社)。毎度のことだが、大書店回遊時間よりここの滞在時間がずっと長い。
 10日トンカ書店、村元武『プレイガイドジャーナルへの道 1968~1973』(東方出版)、『プガジャ』以前に『プガジャ』誕生までの物語があり、著者・関係者の文化運動の記録。うみねこ堂書林、朝日歌壇俳壇編『阪神大震災を詠む』(朝日新聞社)。今日はこれで帰るつもりが、1003の前でエメラルドブックス店主率いる古本ツアーにまた遭遇、運命を感じるのでこのままついて行こうかと思った(何せ古本女子多数)けど、やっぱり1003に寄る。小松左京『ウインク』(角川文庫)、解説が野坂昭如、二人は同学年。県立一中の小松に市立一中の野坂が僻み節。
 12日中央図書館、小松左京の戦争短篇、長篇を求めて、『小松左京全集 完全版』(城西国際大学出版会)3冊と文庫アンソロジー『日本文学100年の名作第6巻』(新潮文庫)。「くだんのはは」という短篇があって、私の単純頭脳漢字変換では「九段の母」になるけど、ちがう。「くだん」は「件」という怪物。他に「日本アパッチ族」「戦争はなかった」「地には平和を」。元町原稿用に横溝正史の盟友西田政治の文章を探す。『ほんまに』〈もっと奥まで~〉原稿送信。
 18日、お中元ビールいただく。まあうれしい。
 ゴローちゃんのツイッターで有名イラストレーターの訃報あり。ご親戚。化粧品会社のイラストや時代劇の挿絵を描いておられた。そういえば、ゴローちゃん先月お見舞い上京していた。
 21日、図書館、『戦争小説短篇名作選』(講談社文芸文庫)、小松左京「召集令状」など。トンカ書店に寄って、くとうてんで『ほんまに』ゲラ、加筆の必要あり。
 23日、甲南大学で久坂部羊さん講演会(NPO法人想像文化研究組織主催、甲南大学地域連携センター協力)、「医療は高齢者をしあわせにするか」。医師の立場から死生観や延命治療を、父上の病と死に対する行動を例にして語る。高齢者を前にしてこの話題は話しにくいと思うのだが、会場は笑い声が何度も起きる。医学はまだまだ発展途上、医師は万能ではない、医師は苦しむ患者にできることをしなければならない、実際やってみなければわからないことも多い、治療には苦痛や消耗が伴う、最期は患者本人の意思で決めるべきこと、医療の進歩は大切だが、死の哲学も重要……。講演が終わってトイレから出てきたら、世話人のゆうせいさんがサイン会手伝えの指令。久坂部さんの横でアシスタント。長蛇の列で、多くの皆さんが久坂部さんに一言相談される。久坂部さんは神戸の病院にも勤務経験があり、海文堂のことをご存じ。スタッフさんの中にも海文堂時代にお世話になった方、それに某版元代表の夫人もおられて、広いようで狭い神戸。そうそう、来る途中で同大学英文学教授(明日本呑み会メンバー)と遭遇、別の集会に向かわれた。キャンパスでは近所の小学生たちがセミ取りをしていて、健全な夏遊び。講演終了後の打ち上げにも飛び入り参加、JR摂津本山駅の変わりように驚く。駅前児童書専門店健在。
 28日、ゴローちゃん『ほんまに』編集作業終盤、本業も忙しい様子で、私もなかなか会えない。8月刊行目指す。みずのわ出版『はっぴーあいらんど祝島通信4』完結。
 30日、さんちか古書市。西尾明澄『「やちまた」ノート』(編集工房ノア)。もう1冊ほしい本を見つけた、が、ちょっと手が出ず、図書館で読めるのであきらめる。知人から本を探していると電話、心当たりの古本屋さんに問い合わせると「売り切れ」で、取り寄せお願いする。新刊本屋のことを書いている本なのに、神戸の新刊本屋で買えない。「直仕入」の本だからと言って、大手も仕入れない。他店との差別化とは考えられないのか? 三宮ブックスで業界話、市内の新刊本屋さんが後継者を探しているそう。1003で〈阪神古書ノ市目録〉(8.10~16)をいただく。同時期京都下鴨神社の古書市もある。
 31日、中央図書館で元町原稿、〈探偵小説作家〉。神戸と探偵小説については、探偵小説研究家・うみねこ堂書林店主の労作があるので、私は元町周辺に絞る。『江戸川乱歩全集』(講談社)2冊、自伝の巻。

箒持つ木偶の帽子に蟬止まる  よーまる

(奥のおじさん)

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2016. 7月 奥のおじさん(28)

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奥のおじさん さすらい月報(28)


 爽やかな季節はあっと言う間に過ぎて梅雨入り。
2日、里帰りの娘含め家人と京都。言い訳の墓参りをちゃっちゃと済ませて、本屋巡り。久々の恵文社一乗寺店、初めての誠光社、必須三月書房。『古本屋がえらぶ気ままにオールタイムベストテン』(恵文社一乗寺店)、栗原康『村に火をつけ、白痴になれ』(岩波書店)、『月刊京都』5月号(白川書院)、足立巻一『日がくれてから道は始まる』(編集工房ノア)、それにPR誌『海鳴り』をいただく。どうも私は方向音痴で地理感覚皆無のおっさんらしい。連れがいないと目的地にたどり着けない。今頃気づくか?
 5日、古書片岡さんが書評誌『足跡』120号が届けてくれる。
 6日、〈WEBほんまに〉の連載3本、一挙に各2ヵ月分更新。ゴローちゃん奮闘、というより2ヵ月更新しておらず帳尻合わせただけ。
 7日、くとうてん『ほんまに』部隊と通販会社フェリシモ訪問。第18号で神戸空襲を特集するが、空襲を書いた野坂昭如について取材。同社が主催する講演会「神戸学校」で野坂さんが話していて(2000年、同社Webサイトで読める)、その紹介の了解をいただける。広報担当の吉川さんが資料を用意し応対してくださり、講演会当日とその後の話を聞かせてもらった。同社の地域貢献の姿勢(入場料はすべて教育基金に寄付し経費一切を負担)と吉川さんのお人柄に触れ、一同は心が洗われた気持ちになる。吉川さんがブログで書いた海文堂閉店記事もいただいた。
 9日、買い物がてらトンカ書店、相変わらずお客さんが途絶えない。家にあるはずなのに見つからない野坂昭如『エロ事師たち』(新潮文庫)と同『四畳半色の濡衣』(文春文庫)、石橋毅史『まっ直に本を売る』(苦楽堂)。石橋本は出版社が本屋に直接納入するトランスビュー方式について。新しく出版社を始める人たちがこの方式に参加している。苦楽堂新刊もう1点は次回にしてもらう。
 11日、中央図書館で元町原稿資料。ジュンク堂三宮店でヤマザキマリ『プリニウスⅣ』(新潮社)。トンカ書店、高田宏『荒ぶる自然 日本列島天変地異録』(苦楽堂)と野坂昭如『ひとでなし』(中公文庫)。前者は1997年新潮社版を復刻するものだが、苦楽堂社主が前職時代に雑誌連載で担当したという縁。全国の自然災害被災地を訪問して、自然の大きな力、悲惨な被害、そしてそこから得た教訓を「言葉に刻む」。トンカさんと高田宏話。
 12日、仙台荒蝦夷の土方さんが電話をくれた。熊本の被災地取材から戻ったばかり。車中泊・テント暮らしの方々がまだまだ大勢おられる。雨と暑さはこれから、衛生面が心配。
 13日、またも仙台から連絡。イラストレーター・ジュンコさんから、鳥瞰図絵師取材で神戸に行くとのメール。仕事終わりの乾杯あり、幹事の女子古本屋さんに参加希望のメール送信。
 14日、中央図書館、元町原稿で三田藩主従のこと。
 16日、元町原稿届けて、幹事古本屋さん訪問、メールのことを伝えると「来てません」の返事。えーえーっ! 調べてくれたら迷惑ボックスに入り。まあ、迷惑でしょう、わかります。でも、出席メンバーには入れてくれていた。玉岡かおる『お家さん 上・下』(新潮文庫)。ジュンク堂三宮店で『山之口貘詩集』(岩波文庫)。岩波が文庫で詩集を次々出してくれてありがたい。夜、ジュンコさん歓迎呑み会、古本女子・男子、鳥瞰図絵師、苦楽堂社主で北方系中華屋さん行って、書庫バー。
 19日、さぼっていた鵯越墓まいり。雑草は想像よりは少なく、先祖に無沙汰を詫びつつ草刈り。園内巡回バスで山の中をドライブ気分、ほぼ満員。墓参り、私がいなくなったらどうなるか、ずっと考えている。湊川の市場で買い物して、コーヒータイム、汗ひく。
 21日、中央図書館で空襲本閲覧。ジュンク堂駅前店に久しぶりに伺ったら、店内改装で配置が大幅に変わり、8階にあった漫画コーナーが降りてきている。
 23日、中央図書館、神戸空襲本閲覧。君本昌久編集『日本の空襲(六)近畿』(三省堂)で足立巻一の文章を見つけるが、出典不明、次回探そう。ジュンク三宮店で久々平井嬢と話。トンカ書店に回るとエメラルドブックスさんがお客さん=古本女子と古本ツアー中。思わずついて行きそうになるが、私はこれから職場の会議。丹波出身トンカさんと丹波伝説の話をして、野坂昭如『夏わかば』(文春文庫)。トンカさん、前回ネタにした高田宏の『言葉の海へ』単行本を手に入れていた。会議は須磨区鷹取の須磨区民センター、須磨図書館も入っていて、しばし棚観察。帰宅すると神大医学部生協から本が届いていた。『そして 谷川俊太郎自選詩集』(銀の鈴社)、関川夏央『人間晩年図巻 1990-94年』(岩波書店)。
 26日、中央図書館で足立巻一の「空襲」文を探す。『戦死ヤアワレ 無名兵士の記録』(新潮社)にあり。足立は本土決戦を前に帰還休暇を与えられた。鹿児島の部隊から列車、途中B29に何度も襲われて、神戸到着は6月6日(神戸大空襲の翌日)、家族から3月空襲の様子も合わせて聞いた。島京子の空襲文も見つける。
 28日、神戸新聞読書欄(24日付)に『これからの本屋』(書肆汽水域)の北田さんが登場。くとうてんセ~ラ編集長が余分にコピーしてくれる。関係者に配れという配慮、ありがたく。こういうところにグッとくる。
 30日、午前中職場の健康診断。小林さん福岡さんも一緒だが、彼らは終了後勤務に戻る。帰りに板宿井戸書店ご主人と遭遇、三宮まで雑誌配達してはる。午後、クッスーが三宮営業まわりすると連絡あり、トンカさんにも納品するので待ち合わせ。トンカさんに海文堂時代にお世話になった方からの伝言をもらう、転職された由。クッスーとは特別用事があるわけでもなく、ランチして「暑気払い呑み会」計画。クッスーからジュンク〈ミ〉さんが今日で退職と聞いて会いに行く。ビジネス書営業さん(コーべブックス先輩の息子さんで学生時代三宮ブックスバイト君)も交えてお別れ。呑み会で会うけど、しばしさよなら。

墓の草いずれおのれの住処なり  よーまる

(奥のおじさん)

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2016. 6月 奥のおじさん(27)

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奥のおじさん さすらい月報(27)


 緑風五月。1日、詩の微風に誘われて、元町まちづくり会館〈季村敏夫の仕事を囲む 『山上の蜘蛛』『窓の微風』を読む〉に。詩人・季村敏夫さんの講演会か、と勝手に勘違い。大学の先生方の勉強会だった。問い合わせも、アポもなし、厚かましく入れていただく。季村さんは「かまへん、かまへん」と言ってくれるが、私は会費も出さず、お茶とお菓子までいただいて、ほんまに厚顔無恥。季村さんは自らの直感を信じ、先人たちの霊性に導かれ、資料を辿り戦前の同人誌を探索し、神戸詩史を切り開いた。その論理と実証を研究者たちも高く評価している。中央図書館、赤松啓介『神戸財界開拓者伝』(太陽出版)を借りる。ずっと閲覧しているのは、明治15年出版、神戸の店舗・会社案内(観光名所の絵もあり、現在の街歩きガイドブック)『豪商神兵湊の魁』(熊谷久栄堂、神戸史学会複刻)。兵庫界隈から神戸駅、元町の有力商家が掲載されていて、絵入りの店もある。広告掲載料金の差。元町だけで約70店舗、私が存在を知る屋号がちらほらあるが、今も当時の屋号のまま継続しているのは「茶商 放香堂」と「古道具売買 播新店」の2店のみ。「神戸凮月堂」のご先祖の名前があるが、当時は足袋を商っていた。
2日、朝日新聞〈歌壇〉に本屋さんの歌あり。
《四十年の本屋のおばさん終えました今日も見ている三段八割 宇都宮市 駒野さん》
 作者は退職だろうか、廃業だろうか。毎日新聞広告をチェックしていた。本屋のルーティーン作業の一つ。
元町駅前で『ビッグイシュー』286号、特集は〈憲法〉だが、短い記事で南アフリカの青年の話、〈路上の本の虫〉。薬物依存から生還した青年が路上で古本を販売、朗読したり、解説する。恵まれない子どもたちに勉強を教え、食事を提供している。
 PR誌を求めてブラブラ、ようやくジュンク堂書店駅前店で入手、三浦佑之『風土記の世界』(岩波新書)。これでは本が目的かPR誌が目的かわからないけど、タダ本もらうだけというのは気が引ける。版元の営業代行ベテランさんに遭遇、本屋状況を話してくださる。古書片岡さんから書評同人誌『足跡』、今月創刊30年を迎える。
 4日、山口県周防大島から『はっぴーあいらんど祝島通信 3』(みずのわ出版)届く。みずのわ一徳はみかん栽培にも取り組んでいるが、自然が相手の農作業は苛酷。
 6日、仕事すんでトンカ書店、〈山下賢二『ガケ書房の頃』刊行記念トーク〉。山下さんは昨年ガケ書房を廃業、現在〈ホホホ座〉という「本の多いお土産屋」を経営。長身長髪男前、会場は9割方女子。おっさん場違い。聴衆者の宝くじに当たったらどうするかという質問に、山下さんは即答「借金返します」。
 8日、書評誌のお礼かたがた兵庫区の古書片岡、兵庫平野と諏訪山・北野を結ぶ山手のバス道沿い。わが家から徒歩20分ほど。店主と話しながら棚を見せてもらう。労働運動・市民運動の本、郷土史、山、鉄道などなど天井までぎっしり詰まっている。『竹中郁少年詩集 子ども闘牛士』(理論社)購入。
 10日、中央図書館、『ほんまに』準備で『コレクション戦争と文学 戦時下の青春』(集英社)借りる。神戸空襲を題材にした作品2点(野坂昭如『火垂るの墓』、井上靖『三ノ宮炎上』)収録。郷土本コーナーで『神戸空襲体験記』(のじぎく文庫)閲覧。ここにも『三ノ宮炎上』他小説作品4点あり。一色次郎『海の聖童女』、武田繁太郎『炎上の街』、久坂葉子『灰色の記憶』、いずれも抜粋なので、本を探さねば。久坂作品は家にある。
 14日、1003で北田博充『これからの本屋』(書肆汽水域)、学生時代海文堂バイト君。お客さんが彼に見とれていたことを思い出す。読書家で本屋大賞選考に参加していた。卒業後取次会社に入って、雑貨・カフェ複合書店立ち上げ、店長も勤めた。今春退職して、まず本書刊行。活躍が楽しみ。
 17日、図書館行って、元町事務局、くとうてん。ゴローちゃんはカゼでダウン。『ほんまに』どうなる? 神大生協から碧野圭『書店ガール5』(PHP文芸文庫)届く、今度はライトノベルスがテーマ。おっさんはラノベのことはちんぷんかんぷんだが、ストーリーは面白く一気読み。いつもながら碧野の本愛・本屋愛・書店員愛が溢れている。
 19日、元町うろちょろ。うみねこ堂はますます本が通路を占拠、棚を見るために、身体を横に倒す(体操の胸・腹側部を伸ばす運動状態)。井伏鱒二『七つの街道』(新潮文庫)。1003、こちらはいつもすっきり整理整頓されている。妹尾河童『少年H(上・下)』(講談社文庫)。
 21日、『ひょうご部落解放』春号届く。私は『ヤマザキマリの偏愛ルネサンス美術論』(集英社新書)を紹介。
 22日、トンカ書店。以前個展を開催した方と関係者が店主と歓談。私はジャマにならぬようしゃがみ読み。「父が海文堂で働いていた」の一言で、私、直立脱帽最敬礼。小林店長のお嬢さん。トンカならではの出会いで、私しどろもどろのご挨拶。「海文堂のことを書いてもらってうれしい」の言葉をいただき、さらに緊張。北康利『レジェンド 伝説の男 白洲次郎』(朝日新聞出版)。
 24日図書館。一色次郎『青幻記 海の聖童女』(けいせい)閲覧。家族の愛情物語。空襲で下敷きになった妻は夫と娘を逃がすために自ら命を絶つ。父娘は列車を乗り継ぎ、熊本から鹿児島まで歩き、闇のルートで故郷の島を目指すが、舟は漂流してしまう。詳しくはブログ「ほんまに日記」を。
http://hiranomegane.blogspot.jp/2016/05/blog-post_28.html
 25日職場の会議で小林さん福岡さんと会うが、娘が里帰りなので帰りに一杯、なし。
 28日、武田繁太郎の『かいしょ女』(東京文芸社)という本を求めて灘区神戸文学館。神戸市立図書館にはなく、全国でも数ヵ所にしか蔵書していないよう。ダメモトで文学館の閲覧室に。ちゃんとありました。ありがたく読ませていただく。兵庫のお家はんの話。西灘に来たのだからワールドエンズ・ガーデンに寄りたいところだが、不義理。三宮ブックス村田社長との約束時間が迫っている。
 29日、中央図書館。青木重雄『青春と冒険 神戸の生んだモダニストたち』(中外書房)、一色次郎『日本空襲記』(文和書房)借りる。月末から図書館は蔵書点検で11日間休館。おっさん、行くところがなくなる。
 31日、神大生協、『野呂邦暢小説集成7 水瓶座の少女』(文遊社)。

緑風に乗っておやじは本探し  よーまる

(奥のおじさん)

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2016. 5月 奥のおじさん(26)

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奥のおじさん さすらい月報(26)


 桜、桜。あんまり仕事のことには触れたくないのだけれど、大失敗やらかしてしまって落ち込む。でもね、呑み会には行ってしまう。
 4月1日、ゴローちゃんと絵のお礼がてら、いっしょにご飯。野郎二人は味気ないし周りが変に思うだろうから誰か来てくれへんかな~とあちこちリクルート。トンカさんが急遽参加してくれてよかったよかった。『ほんまに』次号の相談もできた。セ~ラ編集長にも声かけたが、「何が悲しうてオッサンとご飯食べなあかんねん!」的微笑(あくまで平野の個人的印象です)だったので断念、残念。
 2日、娘の読んだ本が宅配便帰省、吉田篤弘『おるもすと』(世田谷文学館)、山崎ナオコーラ『かわいい夫』(夏葉社)。前者は同文学館20周年記念出版、文学館でしか販売しない。後者は書名見て夫妻のおのろけだと思い自分では買えなかった。夫のこと、家族のこと、作家としての仕事を考えるエッセイ集。夫妻は海文堂閉店前にわざわざ来てくださった。中央図書館で野村喜和夫『証言と抒情 詩人石原吉郎と私たち』(白水社)を借りる。石原は8年に及ぶシベリア抑留生活から生還、その体験・記憶と向き合った詩人。
 3日、ジュンク堂書店三宮店で雑誌『SIGHT 老人が始めた戦争で死ぬのは若者』(ロッキング・オン・ジャパン)、内田樹・高橋源一郎対談がないけど、いしいひさいち「ガラクタの世紀」再開。
 4日、雨で桜ひらひら。仕事の大チョンボ、一応解決、ペナルティ待ち。シロヤギさんからメール、髙村薫さんが『図書』の連載で海文堂のことに触れていること、「web本の雑誌」に木内昇さんが書いていることを教えてくれる。
 6日、出版社営業・岡部さんが退職挨拶で関西書店まわり、本日神戸にいらして、しろやぎさん、苦楽堂石井代表と赤松で呑み会。書店営業(自社の注文取るだけじゃない)を大事にしている営業マン。
 9日、サンボーホールで〈ひょうご大古本市〉、世田谷ピンポンズさん「唄う古書」コンサート。ピンポンズさん高校時代の学生服で登場。トンカ書店にも来てはったお客さん複数発見、お店を一旦閉めてきた女子の古本屋さんもいる。癖になる歌声か。坂本遼詩集『圭よ たつしやか』(大阪出版)、神戸ゆかりの詩人。
 10日、中央図書館で岩阪恵子『わたしの木下杢太郎』(講談社)、白石征『望郷のソネット 寺山修司の原風景』(深夜叢書社)。午後、家の人と〈桂吉弥独演会〉朝日ホール。
 12日、本を探して三宮、元町をうろつくけど見つからない(見つけられない?)。神戸大学医学部生協・島ちゃんに取り寄せ依頼。
 14日21時26分、熊本県でM7の大地震。熊本、大きな余震が続いているが、16日の地震が本震というニュース。
 17日、また別の本を探してウロチョロ。見つからない! 今回は新書。出版社品切れか? 日販の本屋タウンで検索したら在庫あり。また島ちゃんに頼む。安い本ばっかりで恐縮。
 19日、中央図書館で藤脇邦夫『出版アナザーサイド』(本の雑誌社)、坪内祐三他『編集ばか』(彩流社)。元町に原稿を届けて、くとうてん。ゴローちゃんがゴールデンウィーク大阪個展案内くれる。帰り道、元町商店街の古書倶楽部にものすごく久しぶりに入る、週3は前を通っているのに。蒲原有明『有明詩抄』(岩波文庫)と野坂昭如『心中弁天島』(新潮文庫)。
 22日、仕事終わって、くとうてん、『ほんまに』第18号会議、鈴田社長、セ~ラ編集長、永幡さん、岩本さん。毎回ゴローちゃんと私だけで突っ走っていたというか、勝手にやっている状態だったが、営業さんが2名新加入し、会社としても他の商品を販促するうえで、『ほんまに』も活用していく方針。終了後みんなで赤松酒店。
 24日、京都で編集グループSUREのイベント〈鶴見俊輔さんの仕事 第1回 ハンセン病に向きあって〉。鶴見さんは若い頃からハンセン病に関わってきた。会場は京都らしい町家の画廊、約50名参加、研究者や市民活動家の方々のなか、本屋らしき人は私(?)くらい。ゲストは鶴見さんが同志社大学教授時代のゼミ生・湯浅さんと木村さん。鶴見さんが提案したハンセン病快復者が宿泊できる「交流(むすび)の家」(奈良市)建設に参加した。湯浅さんは長年同施設の理事長を勤めている。田中さんはフリーライターで、ハンセン病をテーマにした一人芝居「地面の底がぬけたんです」プロデューサー。まだボランティア活動という用語はなく、「ワークキャンプ」という労働奉仕に学生たちが集まった。古神道・大倭教の協力を得て、1963年から街頭募金、整地、建設、地元との息の長い交渉、調停、建設計画変更を経て、67年7月に完成した。鶴見さんの著作では現れてこない活動の一端を知ることができた。司会は作家で元『思想の科学』編集委員の黒川創さん。会場に入る前に三月書房で『川崎彰彦傑作撰』(同刊行委員会、北海道新聞社製作協力)。京菓子と漬物買って帰る。
 28日、島ちゃんから、山川直人『日常の椅子 菅原克己の風景』(ビレッジプレス)、鎌倉幸子『走れ! 移動図書館』(ちくまプリマー新書)が届く。
 29日、トンカ書店。いつものように接客に忙しいトンカさんが電話を取ってすぐに私に「相手をせい!」と受話器をくれる。誰かと思ったら近所の藤本あんちゃんで、「何しとん?!」「店番や、電話はええから本買いに来い」と掛け合い。彼が来ぬうちに退散。山下賢二『ガケ書房の頃』(夏葉社)、『久坂葉子詩集』(六興出版)。
 30日、高槻墓参りして天神橋で開催中ゴローちゃん個展〈ゴールデンウィークのイシサカゴロウ〉に向かう。南森町から商店街を逆方向に歩いて行くところだった。天満天神繁昌亭、天満宮を覗いて、会場に。あらら、モデルさんみたいな人がいてる! 『ほんまに』表紙モデル最多登場ニッタ嬢がお手伝い。ゆらり流れる大川を眺望しながら、作品見るよりおしゃべり。ゴローちゃんが描く女性はセクシー、おじさんもいい顔している。帰りは商店街を天満駅まで歩く。古本屋さん5軒ほどあり、冷やかして帰る。


ひま人の頭上を急ぐつばくろう  よーまる

(奥のおじさん)

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2016. 4月 奥のおじさん(25)

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奥のおじさん さすらい月報(25)


 2月26日朝、江戸到着して谷中墓参りすませて、娘らの新居訪問。昼ご飯後、家人と別行動。
 今回の旅の友は井伏鱒二の『荻窪風土記』(新潮文庫)。荻窪の新しい本屋さん訪問という目的もあるので。1月に開業したばかりの〈Title〉、青梅街道に面する民家を改造した店舗。個人が新刊本屋を開業するのはたいへんなことだと私は頭の中で考えているだけだが、辻山店主は開業を志し実行した。カフェとイベントスペースもある。『ほんまに』をたくさん販売してくれてありがたい。店内には男女共若い人から年配の方までいらした。児童書、人文書の客層もおられるそう。レジでお客さんが「いつ開店したの?」と訊ねていらしゃる。新しいお客さんを掘り起こしている。店主に挨拶して、やっすーい神戸みやげを渡す。鶴見俊輔『「思想の科学」私史』(SURE)、武井博『泣くのはいやだ、笑っちゃおう 「ひょうたん島」航海記』(アルテスパブリッシング)。手作りのカバーをつけてもらった。
 続いて本郷のNR出版会事務局くららさんを訪ねる。『ほんまに』を大量に販売してもらっている。これまたやっすーい神戸菓子を。インパクト出版会深田さん須藤さん、新泉社安喜さんに挨拶。夕方同出版会の総会があり、あとの懇親会にお誘いいただくが、何せ翌日私は大役「花嫁の父」。せっかくながら辞退。家人と宿泊先で待ち合わせ。
 27日、いよいよメインイベントinリッツカールトン。オヤジの祝婚歌。

如月のお江戸に天女舞い降りる
まんまるの天使変身春光天女
ハレの日に久方ぶりの親戚縁者近況報告記念写真
黒留めの妻に見とれる馬子モーニング
よー爺の涙を拭いてあげるよと小五女子のハンカチ嬉し
新郎に進行役より指導あり誓いのキッスは3秒くらいで
春陽やバージンロードで父揺れる
洟すする音聞こえきてわが鼻もツーン讃美歌312番
春風はブーケトスを押し流し花嫁再度投げ上げりけり
今日まさにお雛様なる新郎新婦
弟が花嫁退場エスコート父母は幼き天使ら憶う
弟は姉の結婚当日に仲間と呑み会約束しており
花嫁の友人席は花畑オヤジご機嫌ゆるみっぱなし
歯が痛い集中できない泣けないと顔上向けて言い訳をする
花嫁が手紙をくれた思わず肩を抱いてしまった

 ずっと前から悪友たちに、「はよ泣け! そら泣け!」とはやし立てられていた。多くの皆さんに祝福していただきました。感謝申し上げます。
 28日、家人と銀座、東京国際マラソンで交通規制。そういえば披露宴出席者で今日走るという人がいた。応援の人たちとボランティアさん、買い物客で歩道も地下道も大混雑。久しぶりに教文館、木内昇サイン本『浮世女房洒落日記』(中公文庫)。タウン誌『銀座百点』をいただく。14時過ぎの新幹線で帰神。
 3月1日、歯医者さん。三宮ブックスに祝電のお礼に伺う。
 3日、ゴローちゃんに結婚の絵のお礼を言って、式の写真を見せる。荒蝦夷・土方代表が新著『震災編集者』(河出書房新社)を送ってくれる。海文堂のことにページを割いてくれている。5年の節目。
 5日、中央図書館、元町原稿準備。6日朝、ずっと痛かった歯が抜けて目覚める。7日、近くの郵便局に行くのに裁判所を通り抜けるのだが、殺人事件裁判取材でテレビ局の中継車とスタッフさんがいっぱい。スリッパ履きの買い物袋ぶらさげたおじさんは場違い。8日、海岸通の華僑博物館に行くが休館日。赤松酒店に呑み会人数確定をしらせに行く。まだ午前中、呑みたいがすぐ失礼。午後中央図書館。
 10日、トンカ書店〈詩人の本棚〉展。著名詩人の蔵書の一部約2000冊を展示販売、500円均一、トンカ太っ腹! 詩人・のの様、古本屋さん、古書愛好家が協力して冊子を作り、盛り上げる。私は村上菊一郎編『佛蘭西詩集』(靑磁社、1943年)と能登秀夫『明治の青年ここにあり』(木犀書房、1970年)をいただく。
 11日、明日本呑み会in赤松酒店、〈3.11〉のこの日に23名の罰当たり者が集まる。そう言えば、私はあの日も出版社の集まりで呑んでいた。あの時一緒に呑んでいた奴ら3名も今日の会で一緒。もう5年。
 休日もおとなしく過ごさざるを得ない金欠空っ穴オヤジは本を読むしか仕方がない。『野呂邦暢小説集成』の「愛についてのデッサン」は昔読んだはずなのに、あちこち忘れている。主人公は若い古本屋主人。本と人を訪ね歩く旅をする連作集。本を愛する著者の姿が投影されている。
 17日、神戸華僑歴史博物館。観覧者と関係者が中国語と日本語で話している。サロンになっているのかもしれない。私にもお菓子をくださった。司馬遼太郎がここで大阪外語学校同窓生(陳舜臣と陳徳仁)、神戸在住の外国人経営者と歓談している写真があった。『街道をゆく 神戸散歩篇』に書いている場面。
 19日、高槻墓参り。親族たちに娘の結婚式の報告。
 24日ギャラリー島田に行くと、社長家に赤ちゃん誕生のニュース。「孫は全員女の子!」と嬉しそう。昨年ギャラリー関係者二人が出産、皆女の子だそう。そんな話をしながらDM作業。ボランティアみなみちゃんが終わりかけに「私も……」と、ご懐妊。めでたいめでたい春でございます。
 25日、トンカ書店で〈世田谷ピンポンズ 唄う古書〉イベント。フォークシンガーソングライターで、小説や詩をモチーフにした作品が多くあり、本のイベントで大人気。「四畳半フォーク」ならぬ「六畳半フォーク」。一番後ろの席で下町レトロかおり隊長、のの様と賑やかに。ピンポンズさんは西に東に大忙しで、どの会場も予約で満席らしい。4月の〈ひょうご大古本市〉にもゲスト出演決定。「詩人の本棚」展から『西條八十童謡全集 新潮社』(ほるぷ出版複刻版)。
 28日、呑み会行きしなに海文堂バイト君・ちさちゃんに出会う。池袋ますく堂店主が関西遠征で呑み会。古本女子会に福岡さんと私が入れてもらう。ますく堂が出たばかりの『岡崎武志 古本屋ツアー・イン・ジャパン 古本屋写真集』(盛林堂書房)を行商。当然ありがたく購入、若き日の〈均一小僧〉と〈古本ソムリエ〉が写っている。福岡さんが神戸新聞書評のコピーをくれる。詩人・季村敏夫さんが土方さんの『震災編集者』(河出)を評する。《土方さんと彼の周辺には、風雨に負けない、しなやかな野草の息吹がある。》
 31日、トンカさん〈詩人の本棚〉落ち穂拾い、桑島玄二『兵士の詩 戦中詩人論』(理論社)。

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2016. 3月 奥のおじさん(24)

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奥のおじさん さすらい月報(24)


 2月は逃げると言うし、ボーッとしてはいられない。我が家は月末に大イベントを控え準備がたいへん、なのは家人で、私は相変わらずお気楽。
 2日、大倉山と三宮の図書館に返却。三宮ブックスにアポなし訪問してお願い事。ジュンク堂三宮店で平井嬢に声かけて、松山巖『乱歩と東京 1920都市の貌』(ちくま文庫、MARUZENジュンク堂書店オリジナル復刊企画の1冊)、乱歩が描いた東京変貌過程を読み解く。乱歩作品の大半が20年代に発表されている。
 4日、高架下のアーティスト宮崎さんを訪ね『ほんまに』の話など。紀伊國屋書店三宮店で雑誌、1003で井伏鱒二『駅前旅館』『遥拝隊長・本日休診』(共に新潮文庫)。1003には今年初めてで無沙汰のお詫び。昨年のワールドエンズ・ガーデンの『海の本屋のはなし』イベントに来てくださった方がいらして、お礼。くとうてんに原稿送信。
 9日、家人が神大医学部生協から『野呂邦暢小説集成6』(文遊社)を持って帰ってくれた。みずのわ出版から新刊、山田晃三『北京彷徨』届く。著者は一徳代表の同級生で、私にとっては大後輩になる。中国での暮らしが長く、今は北京大学で日本語を教えているそう。
 11日、ジュンク堂三宮店で『紙の爆弾』(鹿砦社)を立ち読みしようと手に取ったらデカイ身体が寄ってきて、因縁つけられるのかと思ったら近所の藤本あんちゃんだった。久々に会ったので近況報告しあう。『ドカベン』(秋田書店)の新刊2冊、それにシロヤギさんが教えてくれた久坂部羊『ブラック・ジャックは遠かった』(新潮文庫)。平井嬢に「髙田郁の新刊もうそろそろ?」と訊ねたら、「まだ」の返事。トンカ書店に行くと、お客さんが多いのにイベントの案内をいっぱいしてくれてうれしくありがたいのだけれど、おっさんがジャマしているようで申し訳なく。「ぴあ」の編集さんがいらしていてご挨拶、拙著を読んでくださって、これまたお礼。『みすず 1.2月号 読書アンケート特集』(みすず書房)が届く。海文堂がなくなって神戸の本屋で販売していない(私の探し方が悪い?)。毎年東京住まいの娘に頼んでいたが、今回は出版社に直送してもらった。パラパラめくっていたら『海の本屋のはなし』を取り上げてくださっている方がいらして、びっくり! 感謝いたします。明日本呑み会の日程決まり、よりによって〈3.11〉とは怒られるかも。会員にお知らせ。
 12日、仕事すんで甲子園の元(はじめ)牧師のお宅で呑み会。出版社OB、書店員OB(海文堂3名)ら計7名集まる。元牧師は来春教会を辞し旅に出るそう。福岡さんが髙田新刊たまたま本屋に入ったら見つけたと見せびらかす。『あきない世傳 金と銀 源流篇』(ハルキ文庫)。悔しい。
 13日、髙田本買うぞと雨の中勇んでジュンク堂三宮店。その前にトンカさんに寄って髙田新刊を教えると「ほしいほしい」とおっしゃるので彼女の分も購入。平井嬢に「こうたこうた」と見せる。トアロードで海文堂の仲間なおちゃんと遭遇、わあわあきゃあきゃあ。
 16日、元町原稿を届けてくとうてんに寄ると、海文堂時代にお世話になった「六甲山を活用する会」堂馬代表が連絡せよとの伝言あり。ちょいとこわい予感。
 17日、仕事終って神戸新聞社社員食堂。平松記者が髙田郁さんにインタビューした後の懇親会。現役書店員2名他、ファン含め計8名。私は業界外人だが、『ほんまに』で連載してもらっているからお許し願おう。髙田さん、「あれ連載だった?!」。まあ、年1回だし(目標2回)。トンカさんの分もサインもらう。
 18日、家人の依頼で本探し、ジュンク堂さんちか店で碧野圭『菜の花食堂のささやかな事件簿』(だいわ文庫)。トンカさんにサイン本を渡しに行く。平野がもらったサイン(挿画のちょんまげ姿)と見比べて、「私の方が毛多い!」って、なるほど量が違う。トンカさんにもう一つ渡す物を忘れてきた。拙著を買ってくださったお客さんでトンカさんと一緒に来年の神戸港開港150年イベントを考え中の方を紹介してもらう。トンカ開業10周年記念手作りバッグをいただく。うみねこ堂に行くが臨時休業の貼り紙。堂馬さんに連絡、講演依頼される。後日相談。
 20日、午後から家人は職場の研修、私も雨の中出かける。ジュンク堂駅前店でみのりさんにご機嫌伺い、荷物いっぱいで忙しい。トンカさんに先日の忘れ物を渡す。池袋ますく堂が来月来神のニュースあり、『ほんまに』追加受注。筒井ともみ『月影の市』(新潮社)、江戸川乱歩へのオマージュ。うみねこ堂、今日は開いていた(こういうふうに書くといかにもよく休むみたいで叱られる)、陳舜臣『実録アヘン戦争』(中公新書)。1003、「本と酒器でめぐる酒の世界」展、井伏鱒二『荻窪風土記』(新潮文庫)、出久根達郎『無明の蝶』(講談社文庫)。くとうてんに寄ると、娘がゴローちゃんに頼んでいた披露宴で飾る絵が完成していて、プリントアウトしてボードに貼ってくれた。帰宅して窓に立てかけて一人晩飯。
 23日朝しろやぎさんからメール、「さきほど、荷明けをしていたら土方さんのご本が入荷」の知らせ。仙台荒蝦夷代表『震災編集者』(河出書房新社)、月末予定と聞いていた。しろやぎ働き者、えらい早くから活動してはる。JR六甲道駅近くの「六甲山を活用する会」で堂馬代表と打ち合わせ。年4回六甲山山上で講演会を開いていて、今年10月の会で私に海文堂のことや神戸の作家のことをしゃべれとおっしゃる。ジュンク堂三宮店で半藤一利『B面昭和史』(平凡社)。
 24日、職場の研修で福岡さんと一緒。終了後、ジュンク堂駅前店で知り合いに挨拶してしばし店内散策(立ち読み)。トンカさんは定休日だし、「しょうがないからちんき堂でも行こか~」と穴門筋まで行くが、軽口叩くと因果応報、ちんきさん休み。福岡さんは1003に行ったことがないと言うので、「ほな行こか~」は良いけれど、こちらもお休み。「しゃあないからくとうてん寄ろか~」で、こちらは幸運、セ~ラ編集長もエリカ嬢も在社でしばし歓談。うみねこ堂野村さん訪問、早目に閉店させて赤松酒店。神戸新聞の連載「独酌の供」に赤松さんと海文堂のことが書かれ、ちょうどご主人がお客さんとその話をしているところで、「この人らが海文堂や」と紹介してくれた。福岡さんは髙田本を読み終えるのがもったいないと、じっくり読んでいるそうで、登場人物の丁稚「広吉」は自分のことだと思い込んでいる。確かに髙田さんから「ひろきち」(「ひろやす」だから)と呼ばれていたけれども、かなり厚かましい誤読だと思う。
 25日、ギャラリー島田でDM作業、手伝いは私だけ。
 26日、いよいよ娘の結婚式に出発。悪友たちに会うたび皆「はよ泣け、そら泣け」と囃す。言っちゃあ何ですが、当日泣いていい男は世界で私だけ 。花嫁の父にのみ許された崇高で孤独で我が儘な行為です。涕泣、号泣、滂沱の涙、洟水も涎もすべて出すつもり。バスタオル持参。


めでたやな華燭の灯り春が来た  よーまる

(奥のおじさん)

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2016. 2月 奥のおじさん(23)

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奥のおじさん さすらい月報(23)

 暖かい年末年始。正月1日、怠け者の正月は「食っちゃあ寝、呑んじゃあ寝」で例年どおり。罰当たり初詣後回し。年賀状をいただくが、筆無精。近年は寒中見舞いですましている。昔中田カウス・ボタンの漫才で、年末から「新年おめでとう」と書くのはおかしい、「新年あけましたらおめでとうございます」というネタに、すごくガッテンした。午後、息子は早くも帰って行った。家人らは新春の繁華街に出かけ、私は1冊目の本エミール・ゾラの短篇集。
 4日、家人仕事初出、娘帰京、私は掃除と買い物。ゴローちゃんに「さすらい原稿」送信(当稿12月分、いっつも全員早く入れているのに、ゴローのアップが遅れぎみ)。
 5日、寒中見舞い制作したものの、印刷時にミス。2行で末尾が印字されず。何回も点検したのに、詰めが甘い! と言うか、大ボケ。ボールペンで書き足す。
6日、仕事帰り、神戸駅のキオスクで家人に頼まれて雑誌。レジに男子二人。いまどき本屋でバイトする男子がいて、なんだかうれしい。
7日、〈くとうてん〉に新年ご挨拶。神戸大学医学部生協の島ちゃんが『ほんまに』を置いてくれるというので紹介。ジュンク堂書店三宮店での初買いは高橋輝次編『誤植の文学』(論創社)、校正がテーマで、この仕事をしている人が主人公の小説が8篇とエッセイ8篇。平井嬢に挨拶したいけど、レジで忙しい。うみねこ堂書林、年末から『ほんまに』をたくさん販売してくれていて、感謝。見つけたのは『「新青年」趣味XVI 特集 江戸川乱歩 谷崎潤一郎』(『新青年』研究会)。通販でしか買えないと思っていた。流石のうみねこ堂!! やっぱり本屋めぐりは楽しい。NR・くららさんから年賀状。
9日、三宮ブックス村田社長に新年挨拶して、大阪千日前で新年会。取次大阪屋の新年会の二次会で、出版社営業マンと書店員が多数集まる。世話人の東方出版・稲川社長と本屋業界の重鎮・永井姉さん(昨年現役引退)の力。今年の目玉は喜久屋書店ガールズ(倉敷、神戸、大阪3人娘)出席かな? 今年も私は厚かましく「業界外人」で出席。
11日、娘の不要本をトンカさんに引き取ってもらって、井伏鱒二『珍品堂主人』(中公文庫)。
14日、家事と用事をすませて中央図書館、別の図書館蔵書を取り寄せ依頼。
16日、阪急百貨店のサブカル古本市を覗いて、心斎橋で友人夫妻と食事。競馬で勝つと招待してくれる奇特な友。
17日、ジュンク堂駅前店、原田さんが深刻な顔で〈犯罪モノ〉の棚整理。別の店舗の同僚さんが退職するそう。私もよく知る人で、ショック。『ヤマザキマリの偏愛ルネサンス美術論』(集英社新書)、人気漫画家、イタリアで画家修業をした人、私生活も波瀾万丈。池畑さんにレジしてもらう。
19日、元町事務局、私の連載を読んでくださっている方から問い合わせが来ていて、後日ご本人から直接連絡ある由。
21日、陳舜臣さん一周忌「桃源忌」。読売新聞記者さんから陳舜臣アジア文藝館で集まりがあると聞いたので行ってみた。陳家法要は摩耶山のお寺。文藝館ではセレモニーはなく、ボランティアスタッフの皆さんが集まって歓談。『ほんまに』に資料を提供してくださった前田さん、うみねこ堂書林のイベントでお会いした増田さんとお話。中央図書館で木村毅『財界よもやま史話』(筑土書房)と『司馬遼太郎アジアへの手紙』(集英社)、三宮図書館で『司馬遼太郎の世界』(朝日出版社)を借りる。元町原稿用資料。
22日、昨日の「桃源忌」記事、読売新聞神戸版掲載。前田さんと私の写真、『ほんまに』の紹介も。ありがとうございます。
23日、さんちか古書即売会、オールド・ブックス・ダ・ヴィンチさんとお話。『歴史と神戸 218号 賀川豊彦と神戸』(神戸史学会)、君本昌久編『夢の跡めくれば』(蜘蛛出版社)。夜、灘区ワールドエンズ・ガーデンで『続・次の本へ』(苦楽堂)イベント〈金益見・菱田信也トーク〉。金さんは神戸学院大学講師(現代風俗研究)、菱田さんは劇作家・脚本家(吉本興業所属)。それぞれが1冊目の本から「次の本」に出合うまでの過程を語る。一直線に行くわけではない。それぞれの「仕事」体験、神戸で活動する理由、プロとアマの違いなど内容濃密の2時間。神戸新聞平松記者から『ほんまに』取材の話、締め切り間近で急遽2日後に決定。平岩弓枝『セイロン亭の謎』(新潮文庫)。
25日、仕事終って平松記者の取材を〈くとうてん〉でゴローちゃんと受けて、ちゃっちゃと終って、うみねこ堂冷やかして、ひさびさ〈赤松酒店〉、あとからゴローちゃんも仕事おっぽりっだして来る。ゴローちゃんが〈本おや!!〉イベントで書店員さんから筒井康隆『モナドの領域』(新潮社)が売れていると聞いて、私に読んだかと訊ねるのであらすじ教えて差し上げる。
26日、ジュンク堂三宮店、木内昇『よこみち余話』(中央公論新社)、舞台は大正末か昭和初め東京下町にある路地の長屋、針子の齣江をはじめ地道に生きる市井の人たちの話。この路地はこの世とあの世の境のようで、不思議な場所。人情噺で幻想小説。
28日、倉敷の喜久屋書店ガールから寒中見舞い、あったかい。
30日、高槻の親戚3世帯5人来訪。小5のさきちゃんが娘の結婚祝いに人形を作ってくれた。式当日は花嫁の父(私)のためにタオルを持ってきてお世話してくれるそう。もちろん号泣用。バスタオルにしてもらう。
31日、ギャラリー島田DM手伝い、先月に続いて主婦ボランティアみなみちゃんと並んで作業。ギャラリースタッフいのっちとみなみちゃんが美術論やら美術館の企画・展示の話をしていて、おじさんはチンプンカンプン。美術家さんの子どもたち(双子男子)とギャラリースタッフの子どもさん(女子)が遊んでいて賑やか。皆1歳くらい。いのっちの観察では、双子男子が女子をめぐってケンカして、女子が「私のために争わないで」と二人を説得しているらしい。ホンマかいな?

幼さな子のバイバイバイバイ春は来る  よーまる

(奥のおじさん)

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2016. 1月 奥のおじさん(22)

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奥のおじさん さすらい月報(22)


11月30日「朝日新聞」神戸版〈ひと模様〉欄で『海の本屋のはなし』紹介記事。担当三嶋記者は7月からイベントがあるたびに取材をしてくださっていた。一書店の「記録」で、将来への展開がない本ゆえ記事にするのは苦労されたと思う。「展開」について計画はある! と、エラソー言ってみても、私だけでは無理なこと。海文堂サポーターの皆さんの知恵と能力に頼ることになる。
 師走1日、『ほんまに』〈陳舜臣〉特集、甥御さんに取材できることになった。ゴローちゃんと明石。陳さんは10人兄弟姉妹の2番目で、お会いする方は7番目の男子の子。
 3日は陳兄弟姉妹末っ子の弟さん取材でゴローちゃんと阪急西宮北口。
 陳さんを直接知るお二人に取材できて、『ほんまに』の特集はグレードアップ(?)するだろう。お二人の話から、私が著作を読んで感じた陳さんのイメージ――物静かで読書家・ヒューマニスト――がより強くなった。詳細は『ほんまに』を読んでいただきたい。くとうてんセ~ラ編集長は『ほんまに』営業に回っていて、既に大口受注もあり。
 5日、娘が引っ越しで不要の本を送ってきた。トンカさんに引き取ってもらう。安田謙一『神戸、書いてどうなるのか』(ぴあ)購入。著者の思い出が神戸のまち、それにいろいろな店、人、映画、音楽、本に重なる。海文堂のことも書いてくれている。夕方家人と三宮ブックス、ちょっと早いけれど年末の挨拶。
 8日、図書館で〈陳舜臣〉本3冊借りる。夜、大阪梅田で忘年会、丸善京都の伊藤さんを囲んで出版社の人4名、同OB1名、書店員2名、その他(私)1名。
 10日は本屋さんあっちこっち。ジュンク堂三宮店で『ドカベン』(秋田書店)、『石垣りん詩集』(岩波文庫)、1003で後藤正治『咬ませ犬』(岩波現代文庫)、うみねこ堂書林で陳舜臣『虹の舞台』(角川文庫)。
 11日は職場の研修で大阪、夜は1003で仙台イラストレーター佐藤ジュンコさんイベント。いつもの勤務なら悠々間に合うのに、研修とかち合う不運。イベント遅刻は仕方ないとして、マンが悪いときは重なるもの。JR神戸線が事故で不通、東西線北新地駅で下車して、阪神電車に乗り換えギューギュー詰め。垂水まで帰るご婦人と世間話、袖すり合うも何とやら。イベント終了30分前にようやく到着、駅から走るもすぐに息切れ。ジュンコさんとは7月東京堂書店以来。多くのファンが集まり盛況のなか、ジュンコTシャツ持参の30代(某古書店主、グレー)・50代(某出版社社主、クロ)・60代(私、ミドリ)男子(?)が着替えて記念写真。意外とミドリが目立ってしまった。写真はこちらを。
http://1003books.tumblr.com/post/135186167031/

 12日、トアロードのファッションビルでトンカ書店と口笛文庫の古本市。広い会場で2書店だけだと、搬入作業がたいへんだったでしょう。家族総出。島京子『神戸暮らし』『かわいい兎とマルグレーテ』(共に編集工房ノア)、金子兜太『漂白三人 一茶・放哉・山頭火』(飯塚書店)、森まゆみ『明治東京畸人伝』(新潮文庫)。
 13日は家人と映画「母と暮らせば」、吉永小百合と二宮和也主演。滂沱。
 15日、くとうてんに寄ると『ほんまに』ができあがっていた。年末ギリギリかと思っていたらゴローちゃん大奮闘。仕事も切羽詰っているはずなのに、よくぞ! やるときはやる。
 16日、職場の会議で垂水。ついでに文進堂書店、逢坂店長の姿は見えず。苦楽堂の新刊がちゃんと並んでいて、既刊も揃っている(『海の本屋~』もちろん)。筒井康隆『モナドの領域』(新潮社)はお膝元ゆえ当然サイン本。名古屋の和子ちゃんからクリスマスプレゼント届く。
 17日、古書片岡に『ほんまに』を届けるが生憎の定休日で投函口に。
 21日、『ほんまに』第17号が新聞で紹介される。またも「朝日」三嶋記者、今度は大阪本社版夕刊社会面、《閉店後も心つなぐ冊子》の見出し。海文堂閉店後の活動として紹介してくださった。社会面だから、まわりの記事は「覚醒剤密売」「(製薬会社)毒素無届け運搬」「無免許バイク衝突」などで、刈り上げ平野写真も小者の犯罪者ヅラに見える。記事を見た中学・高校同級生が電話をくれて、「毛、なくなったな~」。
 22日、図書館に返却して、ジュンク堂三宮店で埴谷雄高『酒と戦後派』(講談社文芸文庫)。
 23日、天気を気にしながら鵯越墓園。東山市場で買い物、帰宅して大掃除。
 26日、高槻家人実家墓参り、義兄嫁と姪夫婦。昼食後、神戸に戻ってギャラリー島田、DM発送手伝い。展示はすべて終了してスタッフさんたちは大掃除。年始の震災イベントでお世話になったリーダーみなみちゃんと一緒に作業。
 27日、大阪フェスティバルホール「立川談春独演会」、現地集合。その前にジュンク堂書店大阪本店に目当ての本があるはずと勇んで行くが、残念空振り。本は人生のおやつです!! に寄って年末の挨拶。常連さんが次々来店して店主は忙しい。吉村昭『海も暮れきる』(講談社文庫)、尾崎放哉のこと。落語は、ご本人のテレビ人気ドラマ出演のエピソードや少年時代のことを枕に「蝦蟇の油」と「芝浜」。笑って泣いた。
28日仕事最終日。談春原作のドラマ、これも二宮和也主演。未来社水谷さんから『人文会ニュース』、毎号ありがたく。夜遅く、娘が婚約者連れて帰神。
 29日、家族と昼ご飯、トアウエストの中華屋さんに入ったらトンカさんが令嬢と食事中。休みに入っているが、灯りがついていたので後で挨拶に伺うつもりだった。ちょうど良かった。
 30日、家人と買い物帰りに湊川神社参拝。普段境内を通り道にしているだけの不信心者、初詣もきっとしないだろう。婚約者帰京、入れ替わりに息子帰神。

 2015年は例年以上に多くの方々にお世話になりました。当欄をお借りしましてお礼を申し上げます。


無精者年末参りで良しとする  よーまる

(奥のおじさん)

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奥のおじさん さすらい月報(21)

 10月31日から11月3日までお江戸滞在。
 31日、神田神保町のブックフェスティバルを家人と散歩、東京堂書店前で仏教書総目録刊行会の皆さんが賑やかに歌ってお祭りを盛り上げ中、店内は浅田次郎サイン会行列、7月のイベントでお世話になった河合店長に声かけられず。仏教書といえば法蔵館・木村さんがワゴン販売一人奮戦。夕刻、家族全員京王笹塚駅集合、駅近くの紀伊國屋書店で時間待ちしていたら息子と遭遇してお互い「あ、あー」。
 1日、一人神保町、本日は家族連れが多い。昼に「カレーフェスティバル」というのを覗いたが超満員で挫折して、去年入った明大通りのカレー屋さんに入る。帰りにポイントカードをくださったが、来年のこの時期まで来られませんとお返しする。2日間で入手した神戸本、隅谷三喜男『賀川豊彦』(岩波同時代ライブラリー)、西東三鬼『神戸・続神戸・俳愚伝』(出帆社)、陳舜臣『山河太平記』(ちくま文庫)、計1600円弱。新宿紀伊國屋書店で家人を待って、娘&婚約者と食事。
 2日またまた神保町、歩道のワゴンはすっかり片付いて普段の姿に戻っている。信山社で鶴見俊輔・佐々木マキ『わたしが外人だったころ』(福音館書店)。NRメンバーと韓国の本とカフェ「CHEKCCORI チェッコリ」で待ち合わせ。現代人文社・保月さん、事務局くららさん、新泉社・安喜さん。マッコリをいただいて、お店からプレゼントもらって、NRから沖縄合宿みやげ。タダでおみやげくれるほどNRは甘くない。毎月の「新刊重版情報」に原稿依頼(指令)。くららさんは赤ちゃんお迎えで帰宅。場所を変えて呑み会、新泉社・山田さん、現代書館・須藤さんと中澤さん、七つ森書館・吉岡さんも集まってくれる。
 5日、トンカ書店10周年記念平野トークのため苦楽堂・石井代表と打ち合わせ。代表、新刊編集作業で忙しいのに、あれこれアイデア、スライドも用意してくれる。
 6日、仕事すませてトンカ書店。ネタ切れ平野なのにたくさん来てくださり、ありがたく。トンカ常連さんが昭和30年代海文堂出版物のカラーコピーをくださる。お江戸池袋から古書ますく堂増田さんがはるばる。満員だけど、最前列の真ん中の席に誰も坐らず、代表は噛み付きません、怖くありません。私は高尚に(?)フランス文学失敗物語をしようと思ったのに、代表用意のスライドには「フランス書院文庫」の書影。さまざま工夫(?)を凝らして盛り上げてくれる。打ち上げも楽しく。これにて拙著イベント予定終了。
 7日、トンカさんにお礼、児童書と雑貨を持って行く。
 8日、1003で拙著にサイン入れ、売り切れてまた仕入れてくださり感謝。出久根達郎『むほん物語』(中公文庫)。うみねこ堂書林の前を通ったらシャッター閉まっていて、休み? と思ったら、まちづくり会館で太田治子さんを迎えてトーク「まちの底力――古本屋の魅力」に出演中だった。すっかり忘れていて、会場に向かう。もう終わりかけで、たいへん失礼。何の役にも立たないて手帳メモ。
 12日、くとうてんで読売新聞の取材、『ほんまに 第17号 陳舜臣特集』に興味を持ってくださった。
 13日、大阪梅田。盛岡市のさわや書店フェザン店店長・田口幹人さんと紀伊國屋書店グランフロント大阪店店長・星真一さんのトーク「本屋をあきらめない~これからの本屋について語ろう」。田口さんの『まちの本屋 知を編み 血を継ぎ 地を耕す』(ポプラ社)刊行記念。全国から若い書店員たちが集まっている。今現場で奮闘している田口さんだからこそ本屋の未来を語ることができる。お店の一番目立つ場所にあるのは郷土書。地域に根ざした店づくり、売りたい本を工夫して売る。田口さんの力強くさわやかな話しぶりに、自分たちはこれでやっていくんだという気概と自信があふれている。できればお国の言葉を聞きたかった。打ち上げ呑み会は60名以上参加、大きな居酒屋のワンフロアを占拠。
 16日、トンカ10周年「本は人生のおやつです!! 坂上友紀さんトーク」。大阪堂島女子の古本屋・坂上さんが生い立ちからの読書体験、仕事遍歴、本屋開業までを語る。本のこと、仕事で出会った恩人たち、古本屋の大先輩のことはわかった。でもね、私はパートナーとの馴れ初めを聞きたかった。
 19日、くとうてんで今度は朝日新聞の取材、『ほんまに』の「陳舜臣特集」。新聞の食いつき良し、あとはちゃんと『ほんまに』ができるかどうか。ちょいと心配。記者さんは7月から取材をしてくれている。
 21日、横溝正史生誕地碑建立記念のイベント、「法月綸太郎トーク」、東川崎地域福祉センター。東川崎まちづくり協議会と神戸探偵小説愛好會主催。うみねこ堂・野村店主が司会・進行。毎回ミステリー作家が横溝作品について語る。参加費無料だからすごい。ジュンクの平井さんが出張販売。
 24日、朝日新聞朝刊のコラム「折々のことば」に「青山ゆみこ」の名。著書から引かれている。大阪のホスピス、患者さんが食べたいものをリクエストできる。死を前にして、「食」を通して患者さんたちの記憶が蘇る。検索したら本は9月発行。先日お会いしたときに本のことをまったく知らず、申し訳なく。すぐにジュンク堂書店三宮店で購入、『人生最後のご馳走』(幻冬舎)。同駅前店でエミール・ゾラ『オリヴィエ・べカイユの死』(光文社古典新訳文庫)、フランス書院文庫じゃないです、念のため。
 28日、ギャラリー島田。1Fで須飼秀和展、地下で石井一男展。この時期恒例になった二人同時開催、初日は開廊前に行列ができ、入場制限するほど。私は午後遅くに。ここに来ると、絵を見るよりスタッフさんたちと話をしている時間の方がずっと長い。産休中のスタッフさんも復帰準備も兼ねて出動。
同日19時、灘区ワールドエンズ・ガーデンで鳥瞰図絵師・青山大介トーク。今回『大阪梅田鳥瞰図2013』(くとうてん)を出版。原画展も開催中。お相手は地域づくりコンサルタント・綱本武雄さん、この人も絵を描く。青山作品を買うと綱本さん制作「有馬絵図」をもらえた。青山さんは神戸大好き人間だが、阪急系列会社に勤務経験があり梅田界隈の地形・地質にも詳しい。ヘリコプターチャーターの話や大阪駅地盤のこと、阪急コンコースのこと、繁華街まちづくりなど絵図に表れない話を聞けた。彼は高いビルを見ると何階建てか必ず数えるそう。「みんなそうしません?」「しません!」
 30日、朝日新聞神戸版に強張った笑顔掲載。

 秋深し善男善女が本探し  よーまる

(奥のおじさん)

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2015. 11月 奥のおじさん(20)

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奥のおじさん さすらい月報(20)


 イベントづいていて、10月も『海の本屋のはなし』トークから始まる。
 1日、出版学会関西部会で講演、関西学院大学梅田キャンパス。旧知の大学教授(元書店員)からのお話。私、「学会」とは縁なく、本屋時代は「学会」と名のつく宗教団体とはお付き合いがあった。でもね、7月に東京堂書店トークでゲスト出演してくださった柴野京子上智大学准教授は出版学会会員。「縁」あったやん。ゲストが負け犬元書店員とはいえ、専門家が集まる「学会」だから、厳しいご指摘あり。出版するということは、世の中の人に共有されることであり、当然批判も称賛もあるということ。会員は研究者、図書館員、古書店店主ら。非会員も参加でき、前の席にクッスーが坐っていてくれたので、プレッシャーに耐えられた。「あなたを楽しい人だとは思うが、自分が経営者ならあなたを雇わない」「出版界や書店業界についての展望がない」 ごもっともです。雇う方が選べばいいし、こちらも働く場は選びたい。この本はあくまで「記憶と記録」でして。私たちは敗北して退場したのだから、「展望」など語れる立場ではない。今、現場で働いている人、奮闘している経営者、個人で開業を目指している人たちがエライ。
 母校の〈空手家図書館員〉の知遇を得た。
 4日、トンカ書店10周年企画で〈下町レトロに首っ丈の会10周年〉展。下町とトンカは同い年だった。強烈な(関西弁ではおっとろしい)同級生であることを再確認。NHKで放映した兵庫区の駄菓子屋(伊藤会長の店)ドキュメントがビデオで流されている。
 トンカさんがお客さんにもらったと、林喜芳『神戸文芸雑兵物語』(冬鵲房)を見せてくれる。古本安売り店で108円也。長田弘『詩は友人を数える方法』(講談社文芸文庫)を購入。
 6日、中央図書館から山手のコープに回って、ジュンク堂三宮。高村薫『空海』(新潮社)が売り切れてしまっている。3日前はあったのに、はよ買うとかんかい!そごうの紀伊國屋にあり、ほっとする。
 10日、京都墓参り。鴨川沿いでランチ、初めての店。フランス人経営者がスタッフに大きな声で指示している。 BALの丸善、広くて優雅な感じのお店。GFが江戸から転勤しているはずが見当たらず。三月書房で『鶴見俊輔全詩集』(SURE)。
 11日、買い物に行く途中、〈古書片岡〉店主と遭遇。そう言えばまだお店に行ったことがない。近々と約束。トンカさんで〈10周年〉チラシをもらう。
 13日、兵庫区〈古書片岡〉。兵庫と言っても我が家から10分そこそこ、山手の掘割沿い。近いのに初で恐縮。店主、散歩してくるわ、と私を番台に坐らせてくれる。中島らも『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』(集英社文庫版)、『江戸川乱歩随筆選』(ちくま文庫)購入。書評同人誌『足跡』第117号に拙著が取り上げられていて、1冊くださる。同誌は1985年に店主が中心になって創刊し、我が福岡店長も同人だった。帰り道、今度は〈やまだ書店〉店主と出会う。片岡さんの帰りと言うと、「ウチにも来て」。これまた近々と返事。
 15日、元書店員で現在牧師さんから夫人追悼本が届く。亡くなられて早1年半が経つ。元町事務局に原稿を届け、買い物して〈くとうてん〉で休憩。
 16日、仕事を終えて新大阪。出版社と書店有志の勉強会〈勁版会〉でトーク。出版学会とは違って知人が多く、いわば準本拠地。リラックスして、今までのトークとは別の話題もとり混ぜた。ちゃんと福岡店長を持ち上げておいた。GFたちに囲まれて呑み会も楽しく。
 17日、ジュンク堂駅前店でコミック『ドカベン』(秋田書店、なにせ40年以上読んでいるので)買って、三宮店冷やかして、トンカ書店で出久根達郎『逢わばや見ばや』(講談社文庫)、ギャラリーロイユ「書架彷徨」展、うみねこ堂書林で〈横溝正史イベント〉チラシをもらい(今年は11月21日、法月綸太郎講演)、陳舜臣『割れる』(角川文庫)、1003で『久坂葉子作品集 女』(六興出版)。
 18日、兵庫区平野町祇園神社〈秋の縁日〉、久々に急石段を登る。WAKKUNやギャラリー島田関連のイベントで会うGFたちがいて、トンカ夫妻と赤ちゃんにも会えた。小春日和のもと家族連れやカップルで賑わう境内で、オヤジが一人のんびり過ごす。アフリカ&トルコ料理、調子に乗って昼ビール。帰り道、約束のやまだ書店、足立巻一『評伝竹中郁』(理論社)を見つけて幸せ。祇園さんのご利益に感謝。
 19日、仕事すんで〈トンカ10周年記念 南陀楼綾繁本見せナイト〉。南陀楼蔵書公開、本にまつわる話をしてくれる。珍本・奇書・稀覯書、本人の読書日記やマッチラベルなどが聴衆席に回ってくる。古本女子が大挙参加して満員。オヤジたちは後方に固まる。
 22日、ギャラリー島田DM発送作業おジャマ虫。ジュンク堂三宮店で井上ひさし『初日への手紙Ⅱ』(白水社)。 遅れに遅れの『ほんまに』第17号、そろそろゴローちゃんもエンジンがかかってきて、進み出している。陳舜臣邸に関する資料いただく。図書館で小松益喜画集の陳邸を確認。
 27日、本屋をウロウロして岡崎武志『気まぐれ古本さんぽ』(工作舎)を探す。駅前店で発見。岡崎ライフワークの古書探訪記、『彷書月刊』『日本古書通信』連載9年分をまとめる。海文堂閉店のことも加筆してくれている。


小春日に清盛さんと本探し  よーまる

(奥のおじさん)

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2015. 10月 奥のおじさん(19)

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奥のおじさん さすらい月報(19)


 9月いきなりのイベント。2日、灘区の古本屋さん、ワールドエンズ・ガーデンで〈『海の本屋のはなし』読書感想会〉。書店員の皆さんが語り合ってくれる。進行は苦楽堂・石井代表。当初の予定では、喜久屋書店阿倍野店・市岡さん、垂水区文進堂書店・逢坂さん、リブロ池袋本店を退職して本屋開業予定の辻山さんの3名と聞いていた。仕事を終えて会場に到着すると、大阪〈本は人生のおやつです!〉(以下「本おや」)店主・坂上さんがお店をほったらかして来てくれた。「大サプライズ」。それから異業種のスリランカカレー専門店〈カラピンチャ〉濱田さん(当日カレー出張サービス)も参加くださった。出張サービスといえば、〈書庫バー〉吉田さんもわざわざ。おいしいカレーとお酒でしあわせ。お客さん満杯。皆さんありがとうございます。
 本屋関係者との関わり。
 市岡さん、2009年7月〈NR出版会〉の神戸合宿で会って以来「明日の本屋をテキトーに考える会」呑み会メンバー。新聞・雑誌でコラムを担当、〈ほんまにWEB〉のしろやぎ。商売敵アカヘルのイベントやフェアに協力している。何より、『海の本屋のはなし』想定読者モデルだ。お店では副店長。
 逢坂さん、2006年から神戸新聞夕刊の読書コラム連載で一緒だった。「明日本」呑み会常連。ミステリー、SFに強く、コミック・ライトノベルも詳しい。店長。
 辻山さんには『ほんまに』販売でお世話になっていた。昨年東京の「町には本屋さんが必要です会議」で初めて会って呑んだ。神戸出身、今回は帰省中で参加してくれた。
 みんな、本より酒の間柄と思われるかも。
 坂上さんは古本屋を開いて5年。海文堂が「あまり数字を追っていなかった」という点について、「まず売り上げ!」と一喝。私は覚悟していました。
 濱田さんは、毎日市場に足を運んで食材を選び購入し、作った料理はその日のうちに売り切らなければならない。飲食業から見たら本屋は変わった商売でしょう。
 本屋の人たちもそれぞれ立場が違う。拙著は負け組の「記憶と記録」で、出版業界や書店業界の展望は書いていない。「潰れて当然」の感想があるだろうし、「接客方法をマネしてみよう」と思ってくれる人もいるかもしれない。
ワールドエンズ小沢店主から、「この本を買うお客さんみんなが海文堂について話し出して、商売にならない!」とクレーム。「店主の人柄を見込んで話してくれるんだ、ありがたいと思え」と私が言うのは他人事すぎるか? 辛抱して聞いてあげて。
 3日、石井代表から連絡、〈日本出版学会関西部会〉より講演依頼。続いてクッスーから〈勁版会〉依頼。成田一徹夫人から神戸での作品展案内。ジュンク堂三宮店で古井由吉『仮往生伝試文』(講談社文芸文庫)。
 5日、ゴローちゃんに当原稿8月分送信。清泉堂で、庄野潤三『文学交友録』(新潮文庫)、陳舜臣『ものがたり史記』(朝日文庫)。あかつき書房、『永田耕衣』(春陽文庫)。
 6日、元町商店街3丁目の南側で開業した古本屋〈1003〉(せんさん)訪問。拙著を販売してくれている。次回サインの約束。富士正晴『どうなとなれ』(中公文庫)、田宮虎彦『さまざまな愛のかたち』(暮しの手帖社)。
 8日、中央図書館で『陳舜臣全集 第21巻 枯草の家 三色の家』(講談社)、陳舜臣『三本松伝説』(徳間書店)借りる。神戸が舞台のミステリー。
 10日、〈くとうてん〉で『ほんまに』打ち合わせ。〈1003〉サイン入れ。
 12日、家人と散歩して、途中から別行動。私は海岸通の旧陳家所在地あたりをウロウロ。夕方大阪堂島〈本おや〉で「花房観音」トーク会。彼女の読書体験を聴く。あっち体験は以前聴いた。新刊『黄泉醜女』(扶桑社)にサインをもらう。雑誌『ミーツ・リージョナル』(京阪神エルマガジン社)編集長も参加、10月号の書評(永江朗さん)で拙著を取り上げてくださっているそう。
 13日、図書館に返却してから、また海岸通を歩く。陳作品で、海運会社だけではなく海産物問屋が並んでいたと知る。海運会社の名残りはあるが、海産物の匂いはもはやない。ジュンク堂で『ミーツ』と細見和之『石原吉郎』(中央公論新社)。細見はドイツ思想研究者で詩人、2010年に海文堂で講演をしてくれた。石原はシベリア抑留を体験した詩人、11月に生誕100年を迎える。私が石原作品に出会ったのはコーべブックス時代、お客さんから棚にあった石原の詩集の取り置きを頼まれたこと。引き取りまでにその本を何度も開いた。
 14日、仕事すんで〈くとうてん〉で海文堂サポーターの活動について新聞取材。記者さんは神戸市議会の政務活動費問題で忙しい中、時間を調整。〈くとうてん〉スタッフ他、下町レトロに首っ丈の会、トンカ書店もお疲れのところ参加。トンカさんから海文堂顧客の話が紹介された。海文堂のクーラーで涼むことを「海風にあたる」、中央カウンターを「中突堤」と言っていたそう。また、〈奥の院〉はケータイ電話の圏外になるので、嫌な相手の時は奥に移動していたらしい。本執筆中に聞きたかった話。
 15日、国勢調査に答えて、元町事務局に原稿を届け、散髪。
 16日、『ミーツ』編集長が10月号を送ってくださった。ありがとうございます。
 17日、『ひょうご部落解放』原稿。ジュンク堂で、出久根達郎『万骨伝』(ちくま文庫)、高見順『わが胸の底のここには』(講談社文芸文庫)。
 19日、安全保障法案可決、委員会強行採決がそもそも無効では? 図書館、『陳舜臣全集』を2冊。
 21日、トンカ書店で10周年イベントの打ち合わせ。顔見知りの人たちからの手紙を2通いただく。おひとりは三宮ブックス時代からの顧客、しばらくお会いしていない。もうおひとりは便箋9枚、ありがたく読ませていただく。高見順『死の淵より』(講談社文芸文庫)。WAKKUNに遭遇、髙田郁直筆ハガキを見せてくれる。
 シルバーウィーク、家人は忙しくて一緒に出かけたは23日のみ。「パウル・クレー だれにもないしょ」展(兵庫県立美術館)。
 24日、図書館に行くもまた休館日に当たる。月曜日祝日の代休だった。ウカツ、何度目や?
 26日、近々親戚になるご一家が遠路を神戸まで。食事会、和やかに。
 27日、図書館で調べ物。小松益喜の画集に北野町の旧陳家スケッチがあった。
 29日、神戸市役所内の市民ギャラリーで「成田一徹作品展」始まる。昼休み時だからか観覧者よりソファーで休憩している人のほうが多い。ギャラリーで休憩しているというより、休憩所で絵を展示している感じ。ジュンク堂、『現代思想 総特集 鶴見俊輔』(青土社)、1階雑誌売り場にはなく(『ユリイカ』はあるのに)、5階の人文書棚にあった。ゴローちゃんと『ほんまに』打ち合わせ、かなり進行(?)。私は原稿追加を要求される。新名刺を作ってもらった。
 30日、仕事帰りにお使い、神戸駅のスーパーで豆腐、Books Kioskで雑誌2冊。



辛口のカレーを月と食べている  よーまる

(奥のおじさん)

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2015. 9月 奥のおじさん(18)

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奥のおじさん さすらい月報(18)

 海文堂時代、暑さの日々で一句絞り出した。2006年だったと思う。
  猛暑なり丁稚は上司を選べない
 上司とは福岡店長、きっと私は辛い日々(?)を送っていたはず。今思えば、上司もいろいろ抱えていたのだろう。
 今年の8月も暑かった。昨年は無職だったから家で「あっつー!」などとは言えなかった。そんな立場ではなかった。今年は職場で堂々と「あっつっつーい!」と叫んでいるが、むなしく響くだけ。職場は、叫んでも一人。
 2日昼間、海文堂OB野郎ども6人が集まって元町「松屋」で呑み会。むさくるしくて、余計に暑い。うみねこ堂書林、店外に均一棚ができていて、新潮社『日本詩人全集』2冊、「木下杢太郎・山村暮鳥・日夏耿之介」と「西脇順三郎・尾崎喜八」、表紙の絵は加山又造。
 6日、中央図書館で陳舜臣『道半ば』(集英社)を借りる。
 京都下鴨の「納涼古本まつり」の時期、行きたいものの盆休み江戸に行くので自重。
13日、ジュンク堂三宮店で安野光雅『少年時代』(山川出版社)。
 14日早朝家人は江戸に出立、私は仕事終了して向かう。子どもたちが今年は帰らないと言うので、親の方から出向く。
15日、家人は所用あり。私は東急東横店の古本市、神戸本がよく目について、岩阪恵子『画家 小出楢重の肖像』(新潮社)と『安水稔和詩集』(思潮社現代詩文庫)。南柯書局(コーべブックスの編集長が独立して興した出版社)の本を見つけるが手が出ず。MARUZEN&ジュンク渋谷店、昨年も来たのに、道に迷う徘徊オヤジ。拙著を置いてくださっていて、知り合いの書店員さんを探す(アポなし)がお会いできず。新宿で家族4人ともうひとり集合して食事。
16日、家人らと新宿損保会社の美術館、「安野光雅展」。想像以上に広く、安野作品堪能。ここはゴッホ、セザンヌ、ゴーギャン、東郷青児の作品を所蔵、常設展示している。損保会社は就活学生さん面接日の様子、日曜日でもお盆でも関係なしの就職戦線。前夜に続いて家族4人集合して神宮球場野球観戦。私、球場観戦は子どもたちの小学生時代以来だから10数年ぶり。燕応援は本拠地ゆえ甲子園に比べると当然多いのだが、虎応援も拮抗している。わが燕軍は虎軍に完敗。新競技場工事中のフェンス沿いを一家でトボトボ歩く。
 17日、7月に『海の本屋のはなし』イベントを開催してくれた東京堂書店で店長さんに挨拶(アポなし)。森まゆみ『「谷根千」で時間旅行』(晶文社)。家人と立ち食いそば(マツコの番組で紹介されていたチェーン店)、ラドリオでコーヒー。店を出たが、家人が知人を見かけたと言って、確認しに戻ると、ほんとうにいた。家人と別行動、私は本郷NR出版会訪問(アポあり)、当然昼酒。休みの人もわざわざ来てくれて、この人たちは仕事せんでええのか? と思うが、毎回歓迎してもらえてうれしい。事務局・くららさん、インパクト出版会・深田さん、新泉社・安喜さん、亜紀書房・佐藤さん、ありがとうございます。夕方の新幹線、親の満足盆休み終了。
 18日、元町連合会に原稿を届ける。神戸映画サークルから『映画批評』第14号。近所のデカイ藤本あんちゃん、うみねこ堂書林の「海文堂おっさん座談会」(デタラメ名称)に参加申し込み。
 19日、仕事。巡回指導主任さんが神戸新聞の「うみねこ堂イベント記事」コピーを持ち歩いていて、私ももらう。ふだん指導している部下3名(小林、福岡、私)出演ゆえ。
 20日、中央図書館、陳舜臣『青雲の軸』(集英社)を借り、『出版ニュース』8月中旬号閲覧、拙著紹介記事あり。未来社・水谷さんから『人文会ニュース』121号。トンカ書店で同店10周年記念イベントの相談中、ゴローちゃんも『ほんまに』執筆交渉に来店。日下三蔵『乱歩の幻影』(ちくま文庫)。
 21日、海文堂イベント実行委員が集まって会議という名の食事会。小林元店長の資料類公開について、ファンサイト立ち上げの案あり。
 22日、長田区たかとりカトリック教会(阪神淡路大震災で被災したが、ボランティアの拠点になった)内インターネットラジオ「FMわいわい」に招かれる。海文堂でお世話なった「きかんし協会」の番組「一行詩の広場」収録。ジャーナリスト・林英夫さん、きかんし・畦布哲志さん、FMわいわい・高見かおりさんと「一行詩」や拙著について話をさせてもらう。皆さんのリードでなんとか一時間。自分では比較的落ち着いてしゃべっていたと思うが、ズボンのお尻は汗で濡れている。やっぱり緊張していた。
 23日、ギャラリー島田「鴨居玲と神戸」。詩人・のりっちに渡す本を預けようと思ったら、詩人来廊。摩耶山のブックカフェ帰りで、写真を見せてくれる。拙著が並んでいる。ギャラリーで中井久夫『戦争と平和 ある観察』(人文書院、島田社長も対談で登場)購入。ジュンク堂で雑誌買って、うみねこ堂書林〈『海の本屋のはなし』出版記念トークイベント〉、出演は小林元店長、福岡店長、私。うみねこ堂・野村店主企画、ジャズ喫茶M&Mを借りての有料イベント。多くの海文堂ファンで定員いっぱい。閉店から2年が経とうというのに、まだ皆さんが集まってくださる。参加の方から、他の参加者の海文堂への思いをもっと聞きたいとの声あり。ありがたいことだけれど、私たち関係者は前向きな行動を起こしたいと考えている。
 25日、『週刊朝日』で拙著紹介。書き手は旧知のライター・朝山実(じつ)さん。昔、出版営業の仕事をしてはった。うれしい「エコヒイキ」。
 27日、ギャラリー島田でDM発送お手伝い、ドイツ人留学生と並んで作業。海文堂顧客・島田さんと合流して、苦楽堂。ゴローちゃんも来ていて、小林資料公開について石井代表に相談。著作権の壁が厚いが、アイデアいろいろくださる。
29日、「日本の古本屋メールマガジン」に寄稿した拙文アップ。古本屋さんが積極的に拙著を販売してくれているので感謝をこめて。『ひょうご部落解放』157号(ひょうご部落解放・人権研究所)届く。私は本紹介、高橋源一郎『ぼくらの民主主義なんだぜ』(朝日新書)。家人と神戸国際会館、漫才「オール阪神巨人」40周年。観客年齢高し、私ら若輩者。


  猛暑なり番頭丁稚が語り合い  よーまる

(奥のおじさん)


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2015. 8月 奥のおじさん(17)

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奥のおじさん さすらい月報(17)

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 7月5日、東京神保町の「東京堂書店」で拙著『海の本屋のはなし――海文堂書店の記憶と記録』(苦楽堂)発売前のイベントを開催してもらえる。5月中旬、苦楽堂代表が上京して決めてきた。まだ私が原稿直しで覚醒中唸り、睡眠中魘されている時。この時点で本ができるかどうか危ぶまれていたにもかかわらず、代表自身「退路を断つ」という決意だった。何とか本はできて、東京堂さんに迷惑をかけることはなくなったものの、人が集まるかどうか。タマが悪い、と私自身が思う。
 VIP並みに前日には上京しておくよう代表から言われ、4日朝の新幹線。ちょうど開催中の「東京国際ブックフェア」にみずのわ・柳原一徳が参加しているので、ゆりかもめに乗って行ってみた。出版梓会のブースで小出版社社主たちのトークが始まったばかり、高文研・飯塚さん、あけび書房・久保さんらと並んで、一徳がトレードマークのねじり鉢巻きでしゃべっていた。皆さんにご挨拶して、世話役(秘書というより介護者)の娘と待ち合わせ時間まで一徳と昼飯。午後になると会場は超満員で、本をゆっくり見るどころではない。図書普及・伊元さん、創元社・桃子さんに挨拶、東京堂イベントに来てくれる由。
 娘と世田谷文学館「植草甚一スクラップ・ブック」、最終日前日。来ることができてよかった。植草の映画、文学、ミステリー、音楽などに関する膨大なスクラップ、ノート、原稿、日記などが展示されている。植草は多ジャンルの文化についてただ「雑学」を持っていた人ではない。多ジャンルの一つ一つを深く追求したうえで、膨大な知識の一端を読者がわかるように「雑学」として披露していた。
 5日13時、神保町で代表と待ち合わせ、事前注文をいただいている三省堂書店神保町本店と信山社にご挨拶に伺う。東京堂に入り今回のイベントに尽力くださった河合店長にご挨拶、事前の情報では申込者50名超だったのが80名と聞き驚愕。店長みずから会場準備をしてくださる。私は業界新聞記者のインタビューを受け、イベントで聞き役をしてくださる柴野京子さん(上智大学文学部准教授、著書に『書棚と平台』弘文堂刊)、公式カメラマン・キッチンミノルさん、公式イラストレーター・佐藤ジュンコさんらとお話。16時、イベント開始。顔見知りの版元営業さん、関西出身の業界人の皆さんが来てくださっている。代表の司会で、私はあんまりしゃべらずにすむ。スライドで海文堂の古い写真を映し、私に話を振るのだけれど、私の知らない時代ばっかりで説明足りず、ごめんなさい。柴野さんがゲラを読んで感想を述べながら、私に質問する形式で進むが、ここでも私はシドロモドロ。夏葉社・島田潤一郎さん、キッチンさん、ジュンコさんが話をしてくれて、私を助けてくださった。海文堂の顧客で東京に住まいを移された方にお会いできた。神戸、大阪、京都からお見えの方、仙台の五十嵐さん、ありがとう。MJ渋谷の樽井さんが雑誌『北と南』をくださる。お花やプレゼントをくださる方も。忙しい日曜日の午後に集まっていただいた皆さんに感謝。打ち上げも賑やかに、神保町の夜がふけました。
 6日、新宿で南陀楼綾繁さんが『サンデー毎日』の「著者インタビュー」取材。南陀楼さんには海文堂時代イベントでお世話になった。この取材もありがたい応援。終了後、お江戸営業挨拶。紀伊國屋書店新宿本店、ジュンク堂書店池袋本店、リブロ池袋本店と大どころをまわり、どういう訳か古書ますく堂にたどり着く。日本橋のタロー書房も。
 リブロ池袋は20日で閉店するのに注文をしてくれている。詩の〈ぽえむ・ぱろうる〉が限定復活していて、『竹中郁詩集』(思潮社現代詩文庫)と『寺山修司未発表詩集 秋たちぬ』(岩波書店)を購入。レジで「返品了解書」が目に入った。スタッフの皆さんは最後の販売努力をしながら閉店準備も進めている。
古書ますく堂、雨の中、遠いぞ。店主・増田さんと久々。南陀楼さんの『ほんほん本の旅あるき』(産業編集センター)サイン本があったのでいただく。それと富士正晴『大河内傳次郎』(中公文庫)。
タロー書房は地下鉄駅そばだが、落ち着いた雰囲気で“大人”の客層とわかる。担当の白木さんは初対面と思っていたら、前は西宮の本屋にいて、「明日本呑み会」初期の参加者だった。私、オオボケ。白木さん「いつ気づいてくれるかと」。先に言うてよ、という話。熱い抱擁ならぬ握手。こんなところに流れ着いていたとは、うれしい再会。
 東京駅で代表、娘と別れて17時過ぎの新幹線乗車。
 7日、拙著をお送りした創業者のお孫さんから礼状が届く。ギャラリー島田でサイン本つくりをしていると、地元タウン誌の取材あり。
 9日、代表とJ堂三宮店でサイン本つくり。明日本メンバー平井さん他、文芸担当の皆さん、現在本部勤務で元店長の難波さんに会えた。文芸社虎キチ河野さんと遭遇、久々の営業そっちのけ野球談議。
トンカさんに行くとカウンターにタワー積み。元ギャラリースタッフ藤墳さんと再会。
代表から、読者返信ハガキをもらう。皆さん切手代を負担して、ありがたい感想をしたためてくださっている。
代表と別れてJ堂駅前店、顔見知りに挨拶。児童書池畑さんは顧客に勧めてくれ、ご自分用にサインご所望、ありがとう。
うみねこ堂書林・野村店主もイベント計画中。ヴァレリー『文学論』(堀口大學訳、角川文庫)。のりっち様主宰「百窓文庫」のイベントが20日にあるのだけれど、この日はヴァレリーさんの命日なんだそう。
10日、仕事帰りに板宿途中下車して井戸書店に寄るも店主お留守。拙著が入口の目立つところに平積みされていて、ありがたく。足を伸ばして乙仲通「書肆スウイートヒアアフター」、ここもたくさん注文してくれている。安水稔和『杉山平一 青をめざして』(編集工房ノア)を発見。
11日、京都メリーゴーランド、林哲夫作品展。岡崎武志さん、南陀楼さんに会う。この日は〈SUMUS〉のトーク会があるのだった。林蔵書販売から、足立巻一『虹滅記』(朝日文庫)他文庫4冊。立命館大学の村上さんが教えてくれた喫茶店を探す。覚えているのは三月書房の1本東の道というだけ。店名や目印もちゃんと教わったのに、いつものおボケ徘徊。目印の会社を見て「そうそう聞いてた」、お店の看板を発見して「そう、こここここの名前」、〈Hifi〉。「オーディオのハイファイと同じ名前」と言われたのに、すべて忘れている。町家がそのまま喫茶店で、靴を脱いで座敷に上がる。本、レコード多数。ゆっくりした時間が流れていく。
12日、販売してくれているお店まわり。ギャラリー島田、トンカ書店。電車で灘区ワールドエンズガーデン、ちょうどお客さんが拙著をお求めで、サインさせてもらう。『賀川ハルものがたり』(日本キリスト教団)。
14日、J堂。河原理子『戦争と検閲 石川達三を読み直す』(岩波新書)。
18日、台風の後、電車ダイヤ乱れているが、私は徒歩で無関係。ゴローちゃんと陳舜臣文藝館で『ほんまに』打ち合わせ。三宮ブックス訪問。
20日、百窓文庫でのりっち様拙著応援企画「平野とブックカバーを折ろう」イベント。朝日新聞の取材が入り、緊張しながらカバー折り。私は当日のリブロ池袋閉店のことにもふれた。お母さんと一緒の小学生男子が手に取った拙著サイン本は、「海の本屋 奥の院担当」で、私、少々罪悪感あり。でも、彼は熱心に読んでくれていた。
21日、J堂三宮店2度目のサイン本つくり。たくさん売ってくださり感謝。朝野店長に挨拶。さんちか店も置いてくれて、浦田店長にお礼。
23日、雑誌『SAVVY』(京阪神エルマガジン社)でしろやぎ市岡さんが拙著紹介。読売新聞神戸版では浅野記者による記事掲載。皆さんありがとう。J堂で小熊英二『生きて帰ってきた男』(岩波新書)。うみねこ堂イベントも正式決定、陳舜臣『日本人と中国人』(集英社文庫)。
26日、鵯越墓まいり。岐阜女子の古本屋徒然舎がブログで拙著紹介。お礼のメール。
28日、『サンデー毎日』南陀楼さんインタビュー記事掲載。百窓文庫でサイン本つくり。
 海文堂や私のことを知っている方が応援してくれるのは理解できる。見ず知らずの方々までもが拙著を“エコヒイキ”してくださっている。全国行脚してお礼を言わなければならないところだが、お許しください。皆さん、ほんまにありがとう。小林元店長が「本屋というのは、本を通して人と人をつなぐ仕事」と語っているが、私は今回、本によって人とつながっていること、つなげてもらっていることを実感している。
 30日、さんちか古書即売会。海文堂で長く平積みしてたくさん売った本、買う前に品切れになった『阪神間モダニズム』(淡交社)を見つけて喜ぶ。東秀三『足立巻一』(編集工房ノア)も。


猛暑なり「海の本屋」は大繁盛?

(奥のおじさん)

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2015. 7月 奥のおじさん(16)

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奥のおじさん さすらい月報(16)

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「梅雨」、うっとおしい季節であるが、私は原稿を終えてお気楽なもの。ゲラ再校に年表修正も残っていても、あの5月を思えば、楽勝の感。
 4日、J堂で『佐藤ジュンコのひとり飯な日々』(ミシマ社)を探すが、見つけられない。著者の既刊棚にない。検索機を操作するも該当書が出ない! なんでや~? 機械さぼっとるんか~? 文芸Hさんに訊ねたら、イラストエッセイのコーナーにあった。検索できなかったのは著者の名前表記の一部がカタカナになっているから。私は旧著と同じ漢字表記で入力していた。本書はミシマ社のWEBに連載していたもので、「海文堂書店」訪問記も掲載されている。夏葉社の新刊を探すがこちらは、ない! なんでや?! フレデリック・ブラウン他『街角の書店』(創元推理文庫)も探すが、これも見つけられない。本を探せない元書店員になってしまっている。検索機に頼って、その表示された場所に行くがわからない。在庫が14冊あると表示されているから、平積みか面陳列のはず。何度も棚を行ったり来たりするけどわからない。あきらめて、出直すことにする。紀さんで雑誌。
 7日、またJ堂、先日の『街角の書店』を再度探す。あった。なんと最上段に面陳。面陳って、目の高さあたりにするもんとちゃうん? 著者別の棚にも1冊差して置くのが親切というもの。思い通りにならない老人のいちゃもん。本書、書名に引かれて読む。書店が舞台の話ばかりと思っていたが、SFやファンタジーの〈奇妙な味〉のアンソロジー。清泉堂で西東三鬼『神戸 続神戸 俳愚伝』(講談社文芸文庫)発見。昨年東京で見つけた時は手の出ない金額だった。清泉堂Kさんの値付けは優しい。ありがとうございます。
 11日、J堂でコミック買って、レジにある『熱風(ジブリ)』をいただく。同さんちか店で雑誌。帰宅して気づく、朝日ビルディングで「神戸コレクター市」が始まっていたのだった。
 13日、J堂大阪堂島本店。黒田三郎『小さなユリと』、橋口幸子『いちべついらい』。夏葉社の本を買いにここまで来なくてはならないのか! でも、ここだと編集工房ノアのPR誌「海鳴り」をもらえる。ついでに〈本は人生のおやつです!!〉(以下、本おや)にも寄れる。店主Sさんとおしゃべりして、ギャラリー島田の拙著出版記念イベントチラシをお渡しすると、来てくれると即返事。竹久夢二『どんたく』(中公文庫)。
 14日、「神戸コレクター市」に。古本と模型・フィギュアなど販売。古本屋さんはおなじみの店主たち。大岡昇平『酸素』(新潮文庫)を見つける。トンカさんと記念イベントの話を少しだけする。J堂で宇田智子『本屋になりたい』(ちくまプリマー新書)。サンコウで佐野眞一「本ころ」が100円で出ていたので、買う。
 16日、歯医者さん行って、元町連合会に原稿渡し、紀さんで高橋源一郎『ぼくらの民主主義なんだぜ』(朝日新書)。
 18日、苦楽堂で読売新聞取材。何の? 拙著『海の本屋のはなし――海文堂書店の記憶と記録』。記者は去年海文堂イベントや『ほんまに』を取材してくれたAさん。ありがとうございます。ギャラリー島田でイベント打ち合わせ。
 19日、東京から長女帰省、大阪である女性歌手コンサートに行くため。『BOOK 5』17号、特集「古本即売会へようこそ!」をおみやげにもらう。
 20日、2週続けてJ堂堂島。安水稔和『竹中郁 詩人さんの声』(編集工房ノア)。〈本おや〉に行くと、先客あり。東京からの常連さんで、彼女が電車の中で見たことを話している。本を読んでいた人、しおりがないのかページの端を折っていた。彼女、「信じられない」と怒っている。さらに、その本が図書館の本とわかって「もうほんとに信じられない!」と激怒。愛書家である。〈本おや〉勉強会グループがギャラリー島田に遠征してくれるとのこと。河盛好蔵『藤村のパリ』(新潮社)。
 23日、紀さんで渡辺利夫『放哉と山頭火』(ちくま文庫)。苦楽堂Iさんと神戸新聞本社、H記者によるインタビュー。終了後、H記者と居酒屋。振り向いたら旧知の記者さんたちが呑んでいた。
 25日、J堂で古沢和宏『痕跡本の世界』(ちくま文庫)。くとうてんにギャラリー島田イベントで販売する『本屋の眼』搬入。
 26日、ギャラリー島田で『海の本屋のはなし――海文堂書店の記憶と記録』出版記念パーティー。私は仕事終わってから会場入り。サポーターの皆さんが準備をしてくださり、拍手で迎えてくれる。私、既に感涙。ここで初めてわが本を手に取る。司会は下町レトロYさんとトンカさん。島田誠さんの挨拶、中島教授が献杯(成田一徹さんと島田悦子さんに)と乾杯の挨拶。凄腕サポーター手配のケータリングサービスは心のこもった工夫で、船のイメージで料理を作ってくれている。海文堂OB,スタッフ、支援者、営業さん、書店員さん、古本屋さん、GF……、多くの皆さんが仕事もそこそこに集まってくださった。ゲストの挨拶は、記念展に出品してくれているアーティストたち、続いて私が指名した関西出版界のドン・Kさん、小林元店長、詩人・のりっち。その間、私はずっとサイン入れ。私は花束をいただき、ご挨拶をするのだけれど、司会者たちは泣かそう泣かそうとしよる。泣いてもいいんだけれど、おじんが泣いてもババチイだけやから。でもね、ほんまに感謝しています。ありがとうございます。
 27日、ギャラリー島田で同じく記念展に参加してくださった版画家・卯月みゆきさんと小説家・髙田郁さん、島田誠、福岡店長、私がトーク。髙田さんと卯月さんのファンの予約で満杯、立ち見多数。講演慣れしている髙田さんが上手に仕切ってくださり、お客さんも満足のご様子。終了後のサイン会、髙田さんのところは行列。私は「いつでもします、すぐします」と呼び込み。これが「格」の違いというものである。卯月さん、髙田さん、角川春樹事務所の皆さん、ありがとうございます。
 28日、私、在廊。本にサインするため待機。たくさんサインをいたしました。

 祝い呑め海の本屋の弔いじゃ  よーまる

(奥のおじさん)

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2015. 6月 奥のおじさん(15)

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奥のおじさん さすらい月報(15)

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新緑の五月、晴れやか爽やかな季節……のはずが、本を出す身には一切関係ございません。
2日、J堂で松原隆一郎『書庫を建てる』(新潮社)買って、拙著宣伝(まだできてもいないのに)も兼ねて人文Tさん、文芸Hさん、A店長にご挨拶。駅前店で社会Hさん、客注Hさん、初対面のF店長にご挨拶。Fさんは学生の頃三宮ブックスに来てくれていたそうで、そう言われれば見たことあるお顔。三宮ブックスで時間つぶして、苦楽堂で原稿受け取り、直し開始。まっかっかあ(赤)は当然覚悟の上であったが、赤どころか総天然色で直しの提案。何とか出版してやろうという編集者の思いが表れている。この時点ではその程度の認識だったが、実際やってみると、甘い! もだえ苦しむ原稿地獄。いつか冗談まじりに書ける日も来るだろう。何がおかしいといって、出版記念パーティー(6月26日)が先に決まっていて、出版をそこに合わせなければならないという現実。
3日、高槻墓参り、久々に義兄夫婦と会う。J堂高槻店社会Hさん訪問。帰宅して直しに取り掛かる。連休明けに戻す予定が、いくらやっても進まない。日延べをお願いする。確認事項が次々出現して、F店長、K元店長、S元社長に再三連絡、大倉山図書館日参。原稿に幻覚が再三再四……、睡眠不足だからと思ったが、よく考えたら呑んでないのでアルコール禁断症状? その間にも苦楽堂はイベント計画。14日、何とかゲラを戻す。ブログを休んでいたので、心配してくれる人がいて、うれし涙。
15日、テレビで下町レトロ会長Iさんの「駄菓子屋」3日間のルポが放送される。近所の子どもたちの息抜きの場所、大きくなっても訪れる人たちがいる。
神戸大学医学部生協の島ちゃんから、『野呂邦暢小説集成』(文遊社)入荷の連絡。毎回島ちゃんに取り寄せてもらっているのだけれど、今回は版元が「いつも注文があるので」と先に送ってきてくれたそう。もちろん買います。版元のきめ細かい営業、ありがたく。
17日、K元店長がまたも資料を実家から運んで来てくれる。海文堂スタッフ・OBの皆さん、サポーターの応援に応えなければ、私は人非人である。中学同級生の社会運動家が農家の手伝いに行った日当(?)の新玉ねぎを分けてくれる。図書館で借りたい本の場所(棚分類)が分からず、司書さんに尋ねる。恥ずかしい。
19日、元町事務局に原稿渡し。J堂で小佐田定雄『米朝らくごの舞台裏』(ちくま新書)、今野真二『盗作の言語学』(集英社新書)。レジの人がニコニコしていて、最近珍しいタイプの書店員さん。トンカ書店に行くたび休みで、手紙残す。
本に詩人のりっちの作品を拝借することに。昨年の「海文堂生誕まつり」で出品してくれた「願海」を口絵に使わせていただける。キッチンさんの写真も提供いただける。見本もでき、原拓郎装幀、立派な本になる。本体表紙は成田さんの切り絵。豪華すぎて内容がかすむ。ジタバタしても仕方がないけど、問題は起きるもの、海文堂スタッフから意(異)見あり。
24日、トンカ書店で『ぽかん 05』(同編集室)、均一棚で夏目房之介『漱石の孫』(新潮文庫)と中村浩・鹿井浩次『本屋やめたいねん』(近代文芸社)。
ゲラ直し、年表がまだだった。F店長が索引作りに協力してくれる。F店長は出版記念パーティーの案内も制作、分担して送付。久々にくとうてん、『ほんまに』に取り掛からねばならないが、忙しいゴローちゃんが本に載せる地図制作してくれる。皆さんありがとう。
30日、パーティー案内状をあちこちにメール、封書投函、手渡し。著者みずから、祝ってとねだっている。喜びは分かち合いたい。三宮ブックス村田社長に原稿終了を報告して、蔵書から2冊貸し出してもらう。紀さんで家人と待ち合わせて、雑誌買ってお茶して帰宅。苦楽堂から印刷所入稿の連絡あり。
パーティー出席の返事が次々返ってきている。久々に会える人がたくさんいて、おじさんハッピー。GFの中に、結婚した人・もうすぐする人の報告があり、みんな幸せになってほしい。
本の宣伝。
平野義昌著、『海の本屋のはなし――海文堂書店の記憶と記録』、苦楽堂刊、四六上製、1900円+税。
一般発売は7月上旬より。ギャラリー島田での出版記念展「Partiality for Books 本への偏愛」で先行販売ができるかもしれません。

ギャラリー島田でのイベント。
6月27日~7月8日 「Partiality for Books 本への偏愛」 B1F会場
ギャラリー島田&海文堂書店ゆかりの画家さんたちが本への思いを作品にします。
6月27日~7月2日 「卯月みゆき展」 1F会場
髙田郁『みをつくし料理帖シリーズ』装画・原画展。
オープニング記念トーク、6月27日18:00より。髙田郁、卯月みゆき、福岡宏泰、私が出演。入場無料ですが予約必要。ギャラリー島田まで。
電話 078-262-8058  メール  (gallery.shimada@dream.com)

東京神保町の有名書店「東京堂書店」でのトーク決定。誰の? 私の。
7月5日16:00より。こちらを。ウソみたいな話がいつの間にか。
http://www.tokyodoshoten.co.jp/blog/?p=8458

本ができます。海文堂書店のスタッフ・OBが長年培ってきたお客さん、版元さん、取引先の皆さんとの繋がりでできる本です。苦楽堂さんの大きな力添えがありました。海文堂ファンの皆様、全国の本屋さん、読んでいただけることを願います。
表現が的確かどうかわかりませんが、私はお墓を建てられたと思っています。閉店後の返品作業を「墓石を積む作業」と書きましたが、その「墓石」は返品されてなくなりました。元町商店街のあの場所には「遺跡」は残っていますが、本屋の「お墓」はありません。

墓碑銘に「海の本屋のはなし」彫る  よーまる

(奥のおじさん)


2015. 5月 奥のおじさん(14)

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奥のおじさん さすらい月報(14)

 雨ばっかりの4月前半。1日夜、〈くとうてん〉でH記者、ゴローちゃんと「ほんまに」打ち合わせ。1月に亡くなった陳舜臣さんを特集することは決まっている。H記者のお知恵を頼る。
 甲南大学N教授から「大学紀要」掲載論文をいただく。大正初期から昭和にかけて、日本の芸術写真とイギリス絵画芸術との関係について論じるもの。神戸で活動した写真家も登場する。「ひょうご部落解放」2014年冬号届く。特集「震災から20年、被災地からの発信」。私は本の紹介を担当、池川玲子『ヌードと愛国』(講談社現代新書)。
 山口県周防大島みずのわ出版・つちのわ物産から新刊案内メール、臼田捷治『書影の森――筑摩書房の装幀1940-2014』。立派な本、すぐに予約。
 7日、苦楽堂Iさん、インタビュー録音おこし原稿を届けてくれる。私のメモと記憶力のエエ加減さを思い知る。書き直し。荒蝦夷Hさんよりメール。3月仙台で開催の国連防災世界会議の記念イベント「ひとのちから」、加川広重巨大画「雪に包まれる被災地」を展示し、その前でさまざまなパフォーマンスが披露された。そのなかで、昨春神戸新聞に掲載された東北と神戸の被災者による往復書簡を朗読。Hさんと私のセットも。言うてもろたら私が読みに行きまんねんや~。
 8日、【海】スタッフインタビュー、最後のひとり終了したものの、文章化は中止。そういうこともある。K元店長に再度資料拝借のお願い。
 11日、大忙し。午前中サンボーホールの「ひょうご大古本市」、〈街の草〉棚からささっと今東光『青春の自画像』(サンケイ新聞社出版局)と島京子『神戸暮らし』(編集工房ノア)を選んで、田辺眞人園田女子大学名誉教授の講演「神戸の歴史から――大空襲70年・阪神淡路大震災20年」を拝聴。近代神戸の自然災害と人災=大空襲について。午後、家人と落語「桂吉弥」朝日ホール。大阪に出て〈Caloブックショップ&カフェ〉で開催中の「イシサカゴロウ展 Reblog」。呑み仲間たちが待っていてくれた。『箱庭02 プラトン社 大大阪のモダニズム出版社』発見。JR桃谷駅に移動して呑み会。Calo店主、ゴローちゃん、東方出版Iさん、クッスー、解放出版社Tさん、ご隠居Kさん、しろやぎさん。
 12日、K元店長、実家から車で資料を届けてくださる、ありがたく。午後、灘区の美術館・BBプラザ「神戸の歴史とアートの旅」。記念講演は田辺名誉教授「古典からモダニズムまで」。連日良いお話。来賓席に場違いのチャライ兄ちゃんが座っていて、どっかの市長。
東京の古書M堂から『野呂邦暢 古本屋写真集』(盛林堂書房)が届く。
 14日、〈くとうてん〉行って、苦楽堂にK元店長の資料を届ける。束見本でき、内容を伴わせなければ。
雨が上がったと思えば、初夏の日射しで、家人は春服着る間がなかったとぼやいている。職場の雑草はすぐ伸びる。
 16日、元町事務局に原稿を届け、J堂で石橋毅史『口笛を吹きながら本を売る』(晶文社)、神保町岩波ブックセンター・柴田信さんに聞き書き。こういう本が出ると私の本は出す前から沈没する気分になる。足立巻一『やちまた 上・下』(中公文庫)、本居宣長の長男で盲目の国学者、動詞活用の研究をした人の評伝。著者の人生が重なる。元町駅前で「ビッグイシュー」。鎌倉のIさんから絵はがき、休職から復帰の知らせ。ブラブラ遊ばせておくわけにはいかない人、よかったよかった。
 未来社Mさんが「人文会ニュース」を送ってくださる。クマキからは「本と本屋とわたしの話(8)」、彼女の俳句吟行エッセイ掲載。廃人ちゃう俳人になった秋の一日を書く。
24日、『口笛を吹きながら~』の石橋さん来神、元町でF店長とともにインタビューを受ける。本屋がなくなって困ったか? 私たちは、まず仕事がなくなり、仲間がいなくなり、本がなくなり……。町の人たち、お客さんたちはどうだろう。
 25日、長女が帰省、我が家今年の重大ニュース第一位決定の重大発表。家族一緒に元町に出て、WAKKUN個展「てがみ」。同名の絵本を出版、それをWAKKUNが朗読してくれる。いつものように鑑賞者とおしゃべりしまくりの賑やか展覧会。絵本購入。続いてギャラリー島田「川島猛展」「松田一のデッサン おふくろ展」。松田さんが画集にサインをしてくださる。食事して、元町まで戻ってバー。お客さんもカウンター内も若者ばかりだが、こっちにも若いのがいるから許してもらう。
 26日、ぼーっとしていたら、家人が急に思い立って鵯越墓参り。雑草はいつもより少ないが、蜂来襲で早々に退散する。午後、灘区ワールドエンズ・ガーデン、「『次の本へ』トーク 古川日出男×松原隆一郎〈神戸と東北――2つの被災地を考える本の話〉」。古川は1966年生福島県郡山市生まれの小説家、同市「ただようまなびや 文学の学校」代表。松原は56年神戸市東灘区生まれ、経済学者で武道家、阪神淡路大震災で妹さんを亡くされた。年齢も職業も違う初対面のお二人が、復興、記憶の継承について、文学、社会経済、歴史の話を交えながら対話。
私、お二人の著書を読んでいない。不明を恥じる。落ち着いたら真っ先に、とサボリ文句。でも、読む本は決めている。
 28日、歯医者さん行って、雑用であちこち回って、苦楽堂で仕事のジャマをする。帰り道、八百屋さん、スーパーを覗くが、雨のせいで野菜不作、高い。夜は〈くとうてん〉で出版記念イベント実行委員会。〈くとうてん〉メンバー、トンカさん、下町レトロYさん、F店長。毎回書いているが、本ができる前にいっぱい決まることがある。もうプレッシャーなんか感じない。いちいち感じておられない。
 29日、ギャラリー島田で前日の会議の報告と確認。イベントについては後日詳しく発表されるが、すでにギャラリーの通信で出版記念展開催の予告あり。小説家とF店長&平野トークがいつの間にか決まっている。勝手に決まるのだから軽いものである。期待せぬように。
 30日、〈紀〉で家人の雑誌。先日のトーク会の古川新刊がある。ちょっと先に延ばすことにする。

あれこれと事は進みぬ草ははふ  よーまる

(奥のおじさん)

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2015. 4月 奥のおじさん(13)

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奥のおじさん さすらい月報(13)


3月1日は母の13回忌。思い返せば、【海】面接の翌朝だった。不肖の長男は職に留まれず、今その記録を書いている。
東京からリブロ池袋閉店の噂が流れてくる。にわかには信じがたく。J堂で辰野隆『忘れ得ぬ人びとと谷崎潤一郎』(中公文庫)。
 3日、仕事の一環で消防署の救命講習受講。5~6名ずつに分かれるのだが、私の入れられたグループは皆20歳代。女子3名と男子1名、おじん1名。担当の消防士さん、気は優しくて力持ちタイプ、面白く話をしてくださる。受講者に次々質問、私、精一杯ボケをかますのだが拾ってくれない。心肺蘇生法の手順をわかりやすく講義、救急車が到着するまでに素人もできることがある。その現場に立ち会ったら、想像するが自信なし。
同日、税金の納入日をすっかり忘れていて、帰省中の娘に借りてあわてて郵便局納入。リブロのことは事実だった。旧親会社が合併やらなんやらでライバルグループになってしまっている。
 5日、クッスーが20日に呑み会したいと言うてきて、急きょ「明日本呑み会」、赤松酒店予約。ゴローちゃんと『ほんまに』次号打ち合わせ。7日、そごう〈紀〉で家人と待ち合わせ。雑誌買って、ブラブラ。
 8日、山陽電鉄で姫路。何年ぶりだろう、駅・駅前は様変わりしている。IさんとF店長インタビュー。喫茶店でコーヒー頼むと、豪華なモーニングセット付き。イヤシンボは注文してしまう。終了後、Iさんは姫路文学館、F店長と私は昼から一杯。駅前の商店街に唯一残るO書店で『椎名麟三 自由の彼方で』(椎名麟三を語る会)。J堂姫路店にYさんを訪ねるがお休み。
 10日11日は仕事研修、ラッシュアワー大阪、F店長も一緒。12日ギャラリー島田、難航している【海】スタッフインタビューに力添えしてくださる。

 14日、高槻墓参り。親戚6人と昼ご飯、小4女子がクラスの恋愛事情を話してくれる。15日、家人は友人とランチに出かけ、私はJ堂、途中まで一緒散歩中、中学同級生と遭遇、写真を撮られる。しりあがり寿『あの日からの憂鬱』(KADOKAWA)、古川緑波『苦笑風呂』(河出文庫)、PR誌いただく。
 17日、元町事務局に原稿を届けて歯医者さん。午後、大倉山の廣源寺「豊田和子仏画展」(くとうてん主催)。和子ちゃんは1929年生まれ、【海】で原画展を開催してくださり、本をたくさん売らせてもらった。記念のトーク会があり、70年前の体験と仏画との出会いを語られた。最初の仏画「不動明王」は神戸大空襲での炎の記憶だった。市民は焼夷弾から逃げることを許されていなかった。悲痛な体験を語ることは辛いことでしょう。聴衆は胸打たれる。このお寺には楠木正成一族の碑があり、遺品も保存されている。会場で元バイトIさんがお手伝いしていて懐かしく。
 19日、「ほんまに」特集相談でゴローちゃんと高架下芸術家訪問。夕方、K堂事務所で【海】スタッフYインタビュー。やっぱり知らない話が出てくる。毎日100通以上来ていた迷惑メールが止まっている。私が何をどうこうしたわけではない、第一できない。知らないところで何かが起きているらしい。
 20日「明日本呑み会」15名出席。いつもよりこじんまりだが、女子率高し。しろやぎさんから投稿した雑誌と新聞コピーいただく。J堂のHさん3名揃い踏み、詩人さんと営業Iさんも久しぶり。F店長ももちろん出席。
 21日は東灘区岡本で『岡本わが町』(神戸新聞総合出版センター)出版記念会。N甲南大学教授が記念講演。地域住民が語る「岡本」の町のこと。グローバリゼーションの波は小さな地域にも押し寄せてくる。経済合理性、「便利」「豊か」という力は、町それぞれが持つ歴史や文化を呑み込み、私たちの多様な生活は失われてしまうかもしれない、そんな危機感を持つ。ああ、またF店長と一緒。

 22日、日曜日の午後しか外出できないゴット氏インタビュー。インフルエンザから立ち直り、ちゃんと準備してきてくれた。終了後居酒屋で一杯。ツインズ均一棚で松本哉『荷風極楽』(朝日文庫)。

 24日散髪して買い物。〈くとうてん〉で「ほんまに」打ち合わせ。H記者に協力を仰ぐことに。
 家人は毎月月末に家出、今回は上京。26日ギャラリー島田でDM発送手伝い。既に社長は〈出版記念展覧会〉の準備をして、パーチーの日も決めている。また実行委員会を召集してもらわなければならないが、大前提は〈本〉。
 27日児童書Tインタビュー。忙しい中、時間を作ってくれた。「児童書は30年読み継がれてようやくロングセラーになる」。やはり児童書のことははずせない。Iさんから『震災学6』(東北学院大学・荒蝦夷)をいただく。
 28日、高架下を流して、J堂駅前店。三宮店から社会科学Hさんが異動してGFが増えているはずなのに、知り合い見当たらず。清泉堂で松本哉『女たちの荷風』(ちくま文庫)見つけ、うみねこ堂で『日夏耿之介詩集』(新潮文庫)。

 29日インタビューダブルヘッダー。北区鈴蘭台で外商H、「なんで鈴蘭台なんや?」。彼の最寄り駅ではなかった。外商の事情はほとんど知らない。Hの「【海】のことはそろそろ終わりにせなあかんな」の言葉が重い。元町に戻りバイトK君、今は別の本屋さんで活躍している。【海】での経験は彼に役立っているだろうか。立っているらしい。
 31日、駅前店、また知り合い見えず。〈紀〉で雑誌と色川武大『友は野末に』(新潮社)。知り合いの古本屋さんに近々出る本を予約。入荷予定数最後の1冊と連絡あり。江戸から宅配便、『BOOK5 #16 二足のわらじ』他、紙もの着。

桜愛で足下の雑草毟り取る  よーまる

(奥のおじさん)

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2015. 3月 奥のおじさん(12)

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奥のおじさん さすらい月報(12)



 寒うい2月。絵ハガキ文通Iさんから寒中見舞い。ゴロー画伯イラスト入りで返信。
お江戸から本が届く。大屋幸世『百円均一本蒐集日誌』(日本古書通信社)。近代文学研究者が毎日の散歩で集めた均一本だけについて書く。研究書は研究書で蒐集する人。愛読タウン誌「銀座百点」も同梱でうれしく。
 「【海】の本」について、これまで【海】サポーターのツテで編集さんふたりに見てもらってボツだった。私や関係者が直接お願いをしていなかった。親しい営業さんに読んでもらっている。出版できるかどうかの検討もしてくださるだろうと思う。【海】関係者は早く出すべきという意向。私から頼める人に頼んでみた。Iさんが手を挙げてくださる。お任せすることになった。大幅な修正と追加が必要。何より「出版することの覚悟」を確認される。呑気に構えていられない。先の営業さんにお断わりとお詫びをする。
 そごう〈紀〉で雑誌を買って、PR誌いただく。J堂で金子國義『美貌帖』(河出書房新社)。絵はよく目にするが、その人となりについてはほとんど知らない。
 7日、友人夫妻と法善寺でごはん。若山牧水ゆかりの店。締めは池波正太郎が愛した喫茶店でコーヒーとホットケーキ。ミナミは常に若者や旅行者で賑やだが、一筋入ると昔の浪花の風情が感じられる。
 元町駅前で「ビッグイシュー」。〈紀〉で「じんぶん大賞」冊子もらう。J堂4階で『プリニウス第2巻』とPR誌。5階社会科学Hさん(同じイニシャルが今回4人)の休憩にご一緒してお茶、私もよく知る人の結婚式写真を見せてもらう。クッスー&シロヤギとの「ほんまに第16号」持って古本屋ツアー話も。エエカゲンなゴロー地図でさぞ迷ったことでしょう。ほんまにゆるい雑誌であることよ。神戸駅キオスクで雑誌。
 11日、テレビ朝日「報道ステーション」で加川広重巨大絵画「フクシマ」紹介。本人インタビューはなく、映像とキャスターの饒舌解説だけ。
 「【海】の本」、編集Iさん始動。【海】スタッフに取材お願いの連絡。
 元町商店街事務局で140周年記念本『神戸の良さが元町に』と文学資料をいただく。〈くとうてん〉でゴローちゃんと「ほんまに」次号の話。
 J堂、『辻征夫詩集』(岩波文庫)。俳諧辻詩集というのがある。

「耳朶」
 熱燗や子の耳朶をちょとつまむ
(このあと、お子さんとの会話ともう一句)

 東北の大学生協事務局Iさんから生協職員の手記『東日本大震災』と「季刊読書のいずみ」を送っていただく。ありがとう。
 元町をフラフラしていたら顔見知りの服屋さんとバッタリ。話しながら歩いていると、うみねこ堂Nさんが微笑みながら追い越して行く。服屋さんとお店の前で別れてNさんを追いかける。うみねこ堂、本年最初の訪問。Nさんに神戸の作家について質問。本を探してくれる。
 19日、今までなかった迷惑メールが続々と入ってくる。削除するだけでも迷惑。大倉山の図書館に行くが年に4回の館内整理日で休み。先々月もこれに当たった。
 21日午前中、図書館。読みたい本はあるが、今借りても読めないのはわかっている。J堂で金時鐘『朝鮮と日本に生きる』(岩波新書)。文学Hさんと今年初めて話す。いつも忙しそうで、声をかけられない。うみねこ堂、早速本を探してくれたので訪問。Nさん、先客と本談義が弾んでいる。横溝正史のご子息が亡くなられて、お悔やみに上京する由。そんな話をしているうちに、取材でK元店長と待ち合わせ遅刻。時間の感覚がずれている自覚はあったが、働き出して取り戻したと思っていた。不覚、ごめんなさい。2時間お話聞いて、Iさん共々赤松酒店。
 「月刊みすずアンケート特集」が届く。常連執筆のFさんの名前が目次に見当たらない。おかしいなと思ってページをめくった。彼と思われる人が書いているけど、名が違う。苗字の一字、一画多くてすっごい誤植。
 24日は高槻市で文芸Kに取材。ちゃんと質問についてまとめてきてくれた。彼女も熱が入って、あっという間の3時間余り。彼女とはこの町の本屋で1年だけ一緒に働いたが、ほとんど関わることがなかった。当時の店長が大事な新入社員をアホな野郎どもから守っていた(?)。彼女の軌跡が少しわかった。新米の頃、現在J堂の入っているビルが駅前再開発でできた時、大阪の大書店が進出してきて緊張したことを思い出す。数年で撤退しはった。高槻には墓があるのでたまに来ているが、まだJ堂高槻店は訪問しておらず。呑み会仲間のHさんがレジにいたので挨拶。
 26日、休みで読書。夕方、レジIと実用K取材。編集Iさんから確認念押し電話をもらっていたのに、うっかり。気づいたら5分前、着替えもせず(着替えてもたいして変わらない)小雨の中を自転車で走る。また遅刻。迷惑ばっかりかけている。取材は予定の時間を超える。私も知らなかった意外な話がゾロゾロ出てくる。店のことを知っているようで知らない、仲間のことも。Iさんがうまく引き出してくれる。
 28日、トンカ書店も今年初めて。10周年を迎え、イベントいろいろ計画。鶴見俊輔『家の中の広場』(編集工房ノア)。家人リクエストの山手のパン屋で並ぶ(並ばないと店内に入れない人気店)。J堂駅前店、元同僚Hがレジにいるのだけれど、忙しくて残念。〈紀〉にまわって家人の雑誌と自分の「SIGHT」、それにPR誌をいただく。目の前で奥様方が何人も割引特典付きのランチ案内本を購入している。
 PR誌は2誌だけ直接購読しているが、いただけるものは本当にありがたい。片道15分ほどの通勤電車内必携、休憩時間は新聞、ラジオ、テレビないのでよく進む。在職時代は飛ばし読みだった。もったいないことをしていたと思う。


粕汁や休暇の子の頬ほんのりと よーまる

(奥のおじさん)

2015. 2月 奥のおじさん(11)

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奥のおじさん さすらい月報(11)



思いのほか年賀状をいただく。家人が「ちゃんと出しなさい」と、私の写真で簡単に年賀状を作ってくれる。「こんなん恥ずかしいて出せん!」くらいのドアップ写真。小さく小さくして寒中見舞いにする。そやのに家人、「ほんまに出したん? よう出すわ!」と呆れよる。ハガキは後にゴローちゃんのイラストに変更。
 本年1冊目、木内昇『櫛挽道守』(集英社)、じっくり読み、満足。
 5日、仕事初め。帰り、板宿途中下車して井戸書店にご挨拶。『ほんまに』『路地裏に綴るこえ』ともに売り切れとのこと。〈くとうてん〉になり代わり御礼。須磨区役所発行の『須磨の歴史散歩』と『須磨の近代史』購入。
 6日、〈くとうてん〉に原稿、新年挨拶に伺う。ゴローちゃんは『ほんまに』次号特集に頭を痛めている。考えていた〈ミニコミ&小出版社〉は、『一度は読んでほしい小さな出版社のおもしろい本』(三栄書房)の出現にガツンとやられてしまい、ノックダウン。
 阪神淡路大震災20周年事業「加川広重 巨大絵画が繋ぐ東北と神戸2015」(10日~18日、以下「加川プロジェクト」)のボランティア当番表が事務局から届く。仕事のない日は会場でチョロチョロする。
クッスーからは開催日の迫った「宴会」案内が来るが、私、スケジュール調整がたいへん、ということもなく参加の返事。ゴローちゃんに名刺を作ってもらう。
 9日、仕事終って「加川プロジェクト」準備のため会場〈デザイン・クリエイティブセンター神戸KIITO〉(元は神戸港から輸出する生糸の検査場)。期間中、荒蝦夷Hさんが「東北出版社刊行の震災本」について講演に来る。その本90冊を展示。会場では販売せず、J堂三宮店で売ってもらう。F店長、セ~ラ編集長、ゴローちゃんも手伝ってくれ、ちゃっちゃと終わる。F店長と呑みに行く。
 10日「加川プロジェクト」開幕。宮城県出身・加川広重が描いた巨大絵画「フクシマ」(5.4m×16.4m)展示をメインに、その絵の前で音楽演奏、舞踏、能、建築・まちづくりの講演と討論など、さまざまなパフォーマンスを行なう。「福島第一原発神社」他震災をテーマにした造形作品展示、複数の写真展、被災地模型復元、ドキュメンタリー映画上映もある。
 オープニングはトロンボーンアンサンブルによる「A SONG FOR JAPAN」、感動の演奏。涙を拭う実行委員たちの姿が目にとまる。「ようやく開幕することができた」というのが彼らの実感でしょう。準備にたいへんな苦労があったのねと、暇人ボランティアは想像するのみ。「始まったばかり」という気合いもひしひしと伝わる。 山形から来演の現代舞踏家Mさんはトタン板出すやら水かけるやら。バレエ、ダンス、華やか。福島県飯舘村農業委員会会長が講演。
私は早めに退場して、大阪千日前で呑み会。取次・大阪屋の新年互礼会〈おでんの会〉の流れで、毎年出版社営業さんと書店員が多数集まる。現役でもないのに昨年に続いてノッコノッコ出席。皆さん暖かく仲間に入れてくれる。「加川プロジェクト」PR。新GF、続々登録。
 11日、「加川プロジェクト」でHさん講演。前夜PRの成果あり、営業さん1名、書店員1名、わざわざ来てくれる。閉館後、出演者と協賛者、スタッフでパーチー。Hさんは加川さんはじめ東北からお越しの方々と懇意。東北人と神戸人で呑んでいる不思議なパーチーに参加している。終了後、HさんとF店長、ゴローちゃんで二次会。
 会期中、うまい具合に仕事は2日だけで、案内やら物販、映画係。
 13日、元町商店街に原稿を届ける。久々に事務局長さんに会えたのだが、夫人の介護のため退職される。【海】がなくなって一番に原稿を書かせてくださった。
 17日、元町駅前で『ビッグイシュー』。毎日新聞が〈震災20年〉で号外配布。三宮ブックスM社長が「加川プロジェクト」に来場、『阪神・淡路大震災 20年のあゆみ』(兵庫県書店商業組合)をいただく。F店長も私も寄稿している。女優Tさんがいらして、トークと朗読。私、控え室で後ろ姿拝謁。
 20日、大倉山図書館。林喜芳『神戸文芸雑兵物語』(冬鵲房)閲覧。夜、明石で呑み会、H記者、みゆきんぐ、ゴローちゃん、F店長。
 21日仕事帰り、高速神戸改札前に神戸新聞号外貼り出し、陳舜臣さん逝去の報。私なりに追悼。周防大島・みずのわ一徳から、島利栄子『親なき家の片づけ日記』届く。同島の観光キャンペーン用の袋に入っている。「瀬戸内のハワイ周防大島 Aloha!」のロゴ。
 22日、みずのわに送金。三宮の〈BF〉で家人の雑誌と、天野祐吉『笑う子規』、後藤繁雄『独特老人』(以上ちくま文庫)。雨を避けて〈さんちか〉に降りたら「さんちか古書大即売会」初日。すっかり忘れていた。心もお金も準備できていない。とりあえず「神戸本」3冊。J堂でPR誌もらって、ヤマザキマリ、とり・みき『プリニウス(1)』(新潮社)。
 23日、尼崎で元旭屋書店のUさん追悼の呑み会。昨年10月に亡くなったそう。かつての〈旭屋〉を牽引した人物の一人で、雑誌でコラムを担当した。他店の書店員(ほとんどがOB)も彼を尊敬、慕い集まった。東京からの人も含め20数名出席。
 荒蝦夷Hさんに書店組合の『阪神・淡路大震災20年』をメール便。
【海】の本原稿を読みたいと言ってくれる営業さん二人にメール。
東京の娘に本を依頼。神戸で買えない本がある。
軒上泊『べっぴんの町』(集英社文庫)を〈ツインズ〉均一棚で。
『ひょうご部落解放』原稿送付。4回目でかなりクダけてしまった。
 29日、三宮ブックス。児童書Tと出会う。彼女、仕事のかたわら三宮ブックスの協力で児童書を顧客に販売継続、幼稚園での読み聞かせも。相変わらず多忙。
朝日新聞夕刊の人気コーナー「勝手に関西遺産」が10周年で記念冊子をもらえるそうなので、申し込み。
 30日仕事帰りに神戸駅〈キオスク〉。家人に頼まれた雑誌を買うだけなのに、本屋に寄るというのはウキウキするもの。【海】顧客だったFさんと遭遇。購買量が激減したそう。ごめんなさい。
 31日、ギャラリー島田でDM発送作業。島田社長と【海】の本について話し合う。夜は垂水で【海】K元店長とF店長とで呑み会。今は同じ会社勤務という数奇(?)な運命のおっさん3人組。話題は仕事のこと。ああ、悲しき仕事人間! あ、本の話もした、と思う。

時空超え神戸のまちに「フクシマ」聳ゆ  よーまる

(奥のおじさん)

2015. 1月 奥のおじさん(10)

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奥のおじさん さすらい月報(10)


 11月末、ギャラリー島田の「石井一男展・須飼秀和展」。初日は開廊前から行列ができ、時間を早めたうえ、入場制限したそう。人手が足りないというので、訳もわからぬのに会場お手伝い。猫の手どころか「おっさんの手」。ギャラリー所蔵の本『兵庫の素顔』(朝日新聞神戸支局編、海文堂書店発行、1977年)を借覧。
 師走。J堂レジで元町老舗社長と遭遇。
「あんたとこがなくなったから本困ってんねんでー。○○さんはどこにおんの? Fさんは元気?」
と矢継ぎ早にお尋ね。わかっていることはお伝えする。この方は元町生まれ元町育ち、【海】閉店が決まった後、毎日のように「やめんのー? やめんのー!」と言って来られていた。
池川玲子『ヌードと愛国』(講談社現代新書)、永江朗『「本が売れない」というけれど』(ポプラ新書)。
 8日からパートタイム就職先の研修が始まるので、身辺整理。図書館とギャラリーに本を返却、原稿送信、神大生協・島ちゃんに本を注文。
 研修は大阪で4日間、神戸支店で1日。ずっとF店長といっしょ。そうなんですよ、同じ会社に勤めるのですよ。何十年ぶりかのラッシュアワー通勤。2日目の帰り、元町駅で共に途中下車して「赤松」。うみねこ堂・Nさん、やまだ書店・Yさん、風来舎・Iさんの“中年ロックバンド”メンバー、N教授、K放出版社・TさんとYさん。何の因果で野獣たちと呑み会せにゃーならんのじゃ!? 気の置けない人たちとわあわあ言うて、就職報告。
5日目終了後、久々に本屋、神戸駅の〈キオスク〉で雑誌と髙田郁文庫。
【海】の本原稿が沖縄から戻る。やっぱり「ボツ」。次にさすらうところは未定。
 NRくららさん、電話とメールで愛の交信。
 13日、乙仲通に新しい本屋さん開業、〈スウィートヒアアフター〉オープニングパーティー。初出勤のF店長とセ~ラ編集長と出席。店主Mさんは研究者の雰囲気、品揃え硬骨。新刊と古本を扱う。人文社会中心。アマゾンに出荷拒否している版元のコーナーがあり、短歌コーナーがある。入口右壁面は若い芸術家に開放。出席者は恩師、学友、本と芸術でつながる人たち。おじさん趣味で申し訳ないのだけれど、美しい人ばっかり。どうしてこういう時にゴローちゃんは来ていないのか? 絵のモデルに困らんぞ! 「恐るべし! スウィートヒアアフター!」 
F店長が『ビッグイシュー』の「古本パワー特集号」をくれる。
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〈くとうてん〉で『神戸港 昭和の記憶』(神戸新聞総合出版センター)拝借、卓上カレンダーをいただく。『ほんまに』が雑誌で紹介されるそう。よかったよかった。そごうの〈紀〉さんでPR誌もらって、手帳を購入。毎年「書店手帳」や「能率手帳」の貰い物があったのに。何年ぶりかで自分で買った。
 年末選挙。予想通りの低投票率。ずっと思っていることだけれど、現政権には悪知恵者がついていると確信。調子に乗るな! 
 15日、パート初出勤。その後、月水金の勤務で、休みの前日と休日の繰り返し。気楽と言えば気楽なのに、なまくらが久々の労働でカゼ。勤務地は須磨。風光明媚で、文化遺産もあちこちに。「山本周五郎」ゆかりの場所もある。暖かくなったら散歩が楽しみ。屋上に上がれば須磨の海が一望できる。寒いし危ないから毎日は上がれない。
休みの日に図書館に行ったら、「館内整理」で休み。神大生協、『野呂邦暢』(文遊社)届く。
 20日、家人と〈三宮ブックス〉。パート勤め報告して、ワインと付録の残りをもらって帰宅。
 年末年始用に予定している本をあちこち探すが、ない。J堂にもない。文芸Hさんに文句言うたろ、と探すが見当たらず。〈駅前店〉でようやく発見、木内昇『櫛挽道守』(集英社)。『本屋会議』(夏葉社)も入っていたので購入。知り合い書店員の顔が見えず、静かに退散。元町駅前で『ビッグイシュー』。
 23日、鵯越の墓。お彼岸以来で草茫々。カゼ悪化して、昼から沈没。
 神戸新聞Mさんから留守電、東方出版Iさんからメール。本屋業界の大先輩が亡くなった知らせで、年明け「追悼会」の案内。
未来社Mさんから「人文会ニュース」。版元と本屋の皆さんの健闘、それに参加できない無力。
〈くとうてん〉で神戸新聞書評コピーをもらう。同社の「震災関連本」=夭逝した若き美術家の遺稿集。評者はF店長、新聞には今までよく載っているけど書評は初。彼、若い時は「書評誌」同人だったのだよ。
 元町古本散歩。〈ツインズ〉で山本周五郎2冊、〈マルダイ〉で野坂昭如。
 仙台ジュンコさんから東北写真集『オモイデピース』(非売品)が届く。彼女表紙担当、変わらず活躍中。もはや“巨匠”? くららさんからは「NR新刊重版情報」。私、『ほんまに』宣伝兼ねて「書店員さんへのラブレター」寄稿。
 仕事は29日最終。本屋まわりは30日で終わりに。〈さんちかJ堂〉で『小さな出版社のおもしろい本』(三栄書房)。知り合い見つからず。おとなしく退出。
 東京みやげは“紙もの”。三省堂書店のブックカバーは神保町地図で、出版社・古書店・新刊書店の名称入り。神保町の喫茶店「ラドリオ」のPR紙はカバーに利用できる。それに「日本画」のカレンダー。
 働きだして“さすらい”が減る。仕事は本と関係がないのでここに書ける話題がない。つながりは今のところ見つかりそうもない。

新年の楽しみ本を撫でまわす  よーまる

(奥のおじさん)


2014. 12月 奥のおじさん(9)

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奥のおじさん さすらい月報(9)

 10.31、神保町ブックフェスティバル出陣。失業者の分際で2ヵ月連続お江戸。
まずは『ほんまに』販売拠点・NR事務局でくららさん母子と対面。遠出の予定なのに時間を捻出してくださった。野獣派・深さん安さん山さんとお昼ご飯。皆さんありがとう。
本郷から御茶ノ水、ニコライ堂、古書会館。「本多正一の写真・仕事展」を見て、即売会場。旅行かばん提げたまま入場してお客さんに注意されたことは報告済み、改めてマナー知らずを反省。竹中郁『ポルカマズルカ』。
文庫川村とキントト文庫で「カラーブックス神戸本」を見つける。靖国通りのワゴンを冷やかして、東京堂で長女と待ち合わせ。仕事を終えて妻も上京。長女手製栗ご飯。
 11.1、雨でブックフェスティバル中止。ちょうど始まったばかりの、と言うより亡くなったばかりの「赤瀬川原平の芸術原論展」、千葉市美術館に。東京より東に行くのは初めて。ぶら下がり型のモノレールも初めて見た。悪天候なのに観客多く、皆さんが芸術家に見える。展示作品多数。ネオダダ、千円札、櫻画報、小説、トマソン、老人力に新解さん……、常に前衛であった。東京に戻り、長男も交えて晩飯。
 11.2、家族鎌倉、ひとり神保町。軍資金と相談しながら行ったり来たりの放浪徘徊。明大通りでカレーを食べて、行ったり来たりの楽しい散歩。すずらん通りワゴンでは法蔵館Kさん店番ご挨拶。他にもちらほら顔見知り、忙しそうで声かけず。
家族と渋谷で待ち合わせ。時間来るまでM&J渋谷。『ほんまに』面陳2ヵ所感謝。ウロウロするだけ申し訳なく(有り金きれいにスッカラカン)。ビジネス書のコーナーに“社会派ブックレット”がずらりと並び、感心感心。テレビでなじみの大交差点渡り、ハチ公前。あまりの人数、家族に私を探してもらう。
 11.3、本はいっぱい買ったので(無一文)、家族につき合い銀座散歩。おみやげと弁当持って帰神。
「明日本呑み会」開催決定、赤松酒店予約お願い。文具店からセ~ラ編集長に【海】販売「柳原良平グッズ」問い合わせ、旧担当ゴット氏に詳細尋ねる。
文紀書房で『血と薔薇1』(天声出版)。これで3冊揃い。実は上京前に見つけていたのだけど、神保町遠征で我慢。運良く残っていた。代わりに週末古書会館即売会辛抱。
 11.8、苦楽堂『次の本へ』刊行記念トーク「石橋毅史・北沢夏音」in灘ワールドエンズ・ガーデン。ふたりが語る読書体験はそれぞれの節目でもある。『次の本へ』と山本周五郎2冊。
 うみねこ堂でモーム『コスモポリタン1.2』(新潮文庫)。雑誌連載の掌篇。ちょっといい話と思っていたら、ブラックな話や考え込む話も。様々な人間模様国際版。
 フリー編集さんを通じてお願いしていた「【海】の本」出版について、某社よりボツの返事。理由はいろいろあって、いずれもそのとおりのご指摘と思う。でもそういう本やねんもん。N社Sさん紹介の編集者(在沖縄)に送ることに。原稿もさすらう。J堂でちくま文庫・田村隆一。
 11.13、「明日本呑み会in赤松」は25名参加。部外者が声をかけても集まってくれる呑んべたち、ありがとうさん。元町原稿届け。“花隈”の人が続く。
 11.15、神戸探偵小説同好会主催「横溝正史生誕地碑建立10周年記念イベント、北村薫・有栖川有栖対談」、生誕地近くの東川崎地域福祉センターにて。毎年この時期にイベント開催。中心人物はうみねこ堂・Nさん。戦争中、横溝が疎開していた岡山県倉敷市真備町から観光PR の方々が参加。ここで金田一耕助シリーズ執筆。同地には「歴史館」があり、疎開宅や文献資料が展示され、毎年いろいろイベントがある。横溝の盟友・江戸川乱歩のお孫さんも出席。対談はテンポよく、それぞれの横溝&読書体験を語られた。北村さんが貴重な横溝インタビュー CDを聞かせてくださる。上京のいきさつ、東京での生活など、標準語で話そうとしながら、力が入ると関西弁イントネーション。GFクッスーが一緒。聴衆80名超、皆さん探偵小説の愛好家。多分、いや絶対私が一番の門外漢。存じ寄りの皆さんにご挨拶。本の販売はJ堂A店長と刈り上げ娘Hさん。私、カバーかけでおじゃま虫。帰りにクッスーと生誕地碑を見学して、元町エメラルドブックスでお茶。帰宅したら名古屋のSさんから『本の雑誌』12月号が届いていた。彼女、2本執筆。深謝。
 11.16、トンカ書店に寄ると、偶然幸運トンカさん出勤中。均一棚から『放哉評伝』(春陽文庫)。『ほんまに』追加注文受注。わては営業マンか?
 古書倶楽部で『神戸史話』(創元社)。〈くとうてん〉で夭逝した神戸の芸術家・佐野由美の復刊本『路地裏に綴るこえ』をいただく。古い写真集『明治大正 神戸のおもかげ』(中央印刷)を借覧。
 11.21、所用で神戸に出て来たF店長と昼酒、赤松。テレビで衆議院解散のニュース、お客さん複数から「大義ない!」と批判の声があがる。街の声は正しいと酔っ払いは思う。浮き足立っている与党の人たち、「万歳」のタイミングを間違っておる。
 11.23、連休のうえ紅葉シーズンで電車も町中も超満員の京都。知恩院近くのカフェで昼飯、意外にすいていてゆっくり気分。大谷本廟おまいりして、鴨川べりを歩いて五条から四条まで。お弁当を開いているカップルや家族連れ多数。手元不如意本屋巡りなし。いつものとおり漬物買って帰る。

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 久々大倉山中央図書館。これまた久々貸出し、新刊コーナーで見つけた『小村雪岱』(東京美術)と『戦争の教室』(月曜社)。郷土文献コーナーで、林喜芳の詩集、西東三鬼『神戸・続神戸・俳愚伝』(講談社文芸文庫)を読む。午後三宮ブックス、近況報告。
 高倉健死去のニュース。高3クラブ活動卒業で時間が余っても勉強するわけがなく、毎週土曜日新開地3本立て。健さん、鶴田オジキ、池部アニキ、緋牡丹お竜・藤純子……。正直告白、併映のお色気物が目当て。
 ここで報告するのも何だか場違い。12月第2週から勤め決まり。週3回のパートタイム、本とは何の関係もない仕事。無職生活1年余り、もう「元書店員」と名乗れない。原稿仕事があと3本くらいあればなどと、甘い考えがずっとあった。ほんまに甘い!
 原稿、ブログ、あっちこっちのお手伝い、これまでどおり続けるつもり。ではではよろしくお願いします。

カッコ悪いやん甘いやんみかん頬張る  よーまる

(奥のおじさん)

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写真は、大谷本廟の紅葉、周防大島みかん(みずのわ出版別称「つちのわ物産」より)。

2014. 11月 奥のおじさん(8)

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奥のおじさん さすらい月報(8)

 秋晴れの午後、古本者Tさんとうみねこ堂書林で待ち合わせ。フリーの現役編集者でもあり、「【海】の本」でお世話をかける。
 J堂で見つけた『すみだ川気まま絵図』(松本哉、ちくま文庫)は新刊案内では注意を惹かなかった。店頭で見て、著者が神戸出身の編集者で永井荷風研究者、同名の子息が著名な社会運動家と知る。父のペンネームを子息につけたのか、子息の名前をペンネームにしたのか? 私は「すみだ川」に縁もゆかりもないのだけれど、この川に徹底的にこだわっている著者の姿に感銘を受ける。対象を深く追究、それも楽しみながら。文章と絵も面白い。たびたび付き合わされた幼い子息は少し迷惑だったかもしれない。
 古書倶楽部で元南蛮美術館館長・荒尾親成の本『神戸に来た史上の人々』(中外書房)、著者が幼い頃の思い出(明治のこと)を綴ったエッセイがいい。
 日曜日の昼間しか外出できないゴット氏のために、やむを得ず(・・・・・)昼酒に付き合ったF店長と私、ミュンヘンでビールビール。ゴット氏とは1年ぶり。オッサン3名、積もる話はおバカ話。
 当日の神戸新聞にお正さん(H記者)が私のことをコラムに書いてくれていると、店長が切り抜いて持って来てくれた。私の名刺「携帯不携帯」を枕にした文明批評。「便利過ぎるものは、時に危ない」かもしれない。お正さんは携帯電話も使うし、ペットボトルのお茶も呑むが、本だけは町の本屋で買う、と締めくくる。「そうしないと『気色悪い』からだ。」
 私、「携帯不携帯」で何か書けそう。
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 J堂で安住洋子『遥かなる城沼』(小学館)、尼崎生まれ枚方育ちの時代小説家。非凡な弟・妹を持つ平凡な長男が、信義を重んじ役目を精一杯勤めることも大切と、自らの「青龍」に目覚めていく。
 文紀書房で田中康夫ちゃんの『神戸震災日記』(新潮文庫)。
 散歩中、板宿・井戸書店Mさんに会って路上で『ほんまに』販促、扱いOKで改めて営業訪問することに。
 詩人のりっちからメール、署名1文字「の」がそこはかとなく良い。「ののひと」「ののかた」という感覚。「よ」とか「ひ」はなんかダメ(あくまで個人的意見です)。
 高架下古本めぐり、陳立人『チャイナタウンヨコハマ』(徳間文庫)他神戸本4冊1100円。
 家人と映画「蜩の記」。事前の予想では絶対泣くと思ったけど大丈夫だった。
 俳人Yさんの個展「わたしの本展」(歩歩琳堂)、世界に1冊しかない手づくり本が数々並ぶ。すみません、私、「装幀」展と想像していた。
 トンカ書店で林芙美子『放浪記』(新潮文庫)。男とケンカして夜行に飛び乗り、湊川神社に来て海岸通りの旅館に泊まって瓦煎餅買っている。トンカさんは産休・育休(女の子誕生、祝福を)で店番ご主人と初めてお話。
 朝、区役所行った帰りに古書会館の近くを通ったら見覚えある大柄&小柄な人影。AさんとNさんとしばし立ち話。午後、元町商店街に原稿を届けて、三宮ブックス。帰途、清泉堂で東山魁夷『泉に聴く』(講談社文芸文庫)。
 セ~ラ編集長と板宿・井戸書店二人っきり営業、と思ったら、ゴローちゃんも一緒であった。私はアホ話するだけで、営業は彼らにお任せ。
『ひょうご部落解放』(ひょうご部落解放・人権研究所)の本紹介ページ担当中。夏号(刊行遅れぎみ)が届く。表紙・WAKKUN,私のお向かいページはトンカさん。
J堂をうろついていたら、映画センター・Uさんと遭遇。お茶をごちそうになる。
 神戸新聞ブッククラブ主催「高田郁講演会」。「みをつくし料理帖」完結、今だから言える執筆秘話の数々。聴講の皆さんは熱烈なファンばかりで、高田さんが語るエピソード一つ一つに頷いておられる。最後の質問内容もコアなもの。司会のアナウンサーさんも高田さんも話の中で【海】のことに触れてくれた。ありがとうございます。F店長、シロヤギさんと一緒に特別席(普通の椅子、関係者席)にすわらせてもらい、懇親会にも参加。マンの悪いことに、この日は阪神虎団が日本シリーズ出場を決定し、飲み屋は虎応援でやかましいこと。鯉団・燕団はおとなしくするしかない。書店組合幹部Nさんより「震災記録」寄稿依頼。
 仁川競馬場で開催「関西蚤の市」。二日酔いの体にムチ打って阪急電車。京都「はんのき」Nさんのところでコーべブックス『罰せられざる悪徳・読書』発見。大阪「本は人生のおやつです!!」Sさんと岐阜「徒然舎」Yさんが隣同士で賑やかなこと。私も同じくキャピキャピ「トンカ赤ちゃん話」。この赤ちゃんは古本業界で一番有名な赤ちゃん。私、漫画「あぶさん」と一緒、酒飲み過ぎで体力が持たない。散策はあきらめ、そうそうに退却。
 N葉社Sさんから電話。Nさんに原稿送信。元町をぶらついていたらまたもUさんと衝突。
 J堂で木畑洋一『二〇世紀の歴史』(岩波新書)。古書倶楽部で『金山平三全芝居絵目録』(朝日新聞東京本社)。
 ギャラリー島田でDM手伝いして、「【海】女子部」呑み会に出陣。F店長と待ち合わせまでちょっと時間があったので、阪急三宮駅下のBFに入ったら、店長も入って来て、お互い指差して「他に行くとこないんかいな!」。呑み会は楽しく嬉しくですが、女子部のみんなはどうだったか? 次回のお呼びは……? 店長と立ち飲みで締めて解散。
 NRくららさんから電話。神保町のおまつりに上京するのかしないのか確認。行きたいのはヤマヤマなれど、あたしゃあーしがない無職人、交渉のうえ返事をすることに。
 J堂で永田和宏『現代秀歌』(岩波新書)。古書倶楽部、『神戸新聞の100日』(プレジデント)、『アサヒグラフ東山魁夷』。
 西宮で「立川談春」。
『ほんまに』他〈くとうてん〉出版営業おじゃま虫で尼崎・三和書房、J堂三宮店。いつもどおり私はアホバカ話しているだけ。
 文紀書房、「アサヒグラフ村上華岳」「同 橋本関雪」。探していた本がそこにある! しかし……、次来る時まであってくれと、祈るオッサンでありました。
 東京行きOK出ました。

 風寒し本に伸ばす手引っ込める   よーまる

(奥のおじさん)

2014. 10月 奥のおじさん(7)

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奥のおじさん さすらい月報(7)

 9月末までに『【海】の本』を書き上げると啖呵を切ってしまったのだから、ウソでもでっち上げなければならない。7月の初め、未知の【海】OBに昔のことを尋ねる手紙を出していた。体調がお悪いと聞いたので半ば諦めていたところ、9月に入ってお返事。うれしく、ありがたく。
 J堂で中公文庫新刊『日本歓楽郷案内』、世が世なら〈奥の院〉で紹介する本、神戸のことも記述あり。著者・酒井潔は大正・昭和の性風俗研究家でオカルト研究家。
 元町・文紀書房、『村上華岳』(京都新聞)、花隈の日本画家。本書は個人コレクションをまとめたもの。
 『【海】の本』原稿にまだまだ足りない事がある。トンカ&下町レトロに質問メール、「孤高の平野に愛を~」。「愛の言葉」が返ってきた。
 J堂、『ロッパ食談』(河出文庫)、「神戸」の項あり。
トンカ書店で〈島京子〉2冊見つけるが、いつものフトコロ事情で1冊だけ、『竹林童子失せにけり』(編集工房ノア)、富士正晴他、「ヴァイキング」同人たちのこと。
 うみねこ堂で横尾忠則の文庫(角川)。『血と薔薇』(天声出版)3冊セットがあるけれど、手が出ない。
 J堂で変な本、『ベスト珍書』(はまざきかく、中公ラクレ)。この人は毎日の新刊書のリスト(全国流通しない本も含む)に目を通して“珍書”探し。
 朝、F店長から電話、ロードス書房・大安さん逝去。7月の〈市〉取材で会って、いつもの“辛口”でお元気そうに思っていた。ご冥福をお祈りします。
 J堂で女性雑誌買って、トンカ書店で谷崎『鍵』(中公)。〈島京子〉は売れてなくなっていた。いつものドジ。トンカさんと大安さん思い出話で湿っぽくなっていたら、【海】顧客Sさん来店。一緒に乙仲〈苦楽堂〉襲撃、F店長が原稿読み合わせ手伝い中。ワーワー言うて〈くとうてん〉に移動、話し込んでしまって、Sさん仕事に遅れてしまう。
 ちんき堂でお茶をいただいて、『兵庫県古書組合10年(1986~1995)略史』。震災記録も収録。
古書倶楽部で『金山平三』(日動出版)、この人も花隈の画家。
 文紀書房、田宮虎彦の短篇集『悲恋十年』(弘文堂)、またも悲しく辛い少年時代を題材にした作品収録。
 京都二条ブックカフェ〈ユニテ〉「林哲夫個展」。絵、コラージュ、オブジェ展示の他、雑貨と蔵書販売も。私は谷崎の文庫2冊、家人はコラージュと古本1冊。F店長とのそもそもの馴れ初め話を聞く。「パリ随想」冊子をいただく。
 バスで善行堂。「夏葉社まつり」の話やご近所から出火の話。『BOOK5』、金子光晴文庫本など。バス停手前のおっしゃれーなカフェで休憩。河原町〈メリーゴーランド〉を覗いてから、漬物買って帰宅。
『【海】の本』、気になることがあって大倉山図書館で古い電話帳出してもらう。他にも分からぬことを周防大島・みずのわ一徳に質問メール、不明で京都・林哲夫に転送され、さすがさすがの見事に怪傑黒頭巾! 早合点して書かなくてよかった。皆さんに感謝。
F店長、クマキにも質問メール、「憐れな平野にお恵みを!」。すぐに「お恵み」が戻ってきた。
 『ほんまに』第16号完成の報、ゴローちゃん東京遠征に間に合った。
 J堂2階で“刈り上げH嬢”に〈鉄筆文庫〉の在処を尋ねる。新出版社の第1作。大手のような派手な宣伝、販促なし。白石一文『翼』。【海】イベントに協力くださったI女史が本体の絵(カバーではない)を描いている。社是に「魂に背く出版はしない」と掲げる。応援したい出版社。
 うみねこ堂で【海】質問。「けなげな平野にお志を!」。五味康祐『麻薬3号』(文藝春秋)。「お志」返信あり。
 とりあえずというか、ようやくというか、『【海】の本』原稿出来。もちろん、まだまだ訂正やら加筆していく。“出版”までの道は遠い。ギャラリー島田で雑用手伝い。
 トンカ書店寄ってお腹の具合(もうすぐ予定日)を尋ねて、文庫1冊。attachment01.jpg
 9.26(金)、東京恵比寿amu「町には本屋さんが必要です会議~海文堂書店100年~」出演のF店長・ゴローちゃんに同行、3人珍道中。平野は『ほんまに』販売係。
 やはりトークはF店長。入社から新米時代、バブルギャラリー、阪神淡路大震災、K店長・S社長退職、店長就任、新体制での苦悩、閉店のことなど、現場責任者がありのままを。もちろんまだ言えないこともあるだろう。それでも笑い話を交えながら語った。
 ゴローちゃんは、強力な協力者として、顧客として、【海】との関わりを話す。特に、“天敵”アカヘルとの抗争(?)は、憎さも憎し微笑まし。
 会場は満員。ご参加の皆さん、お忙しい中、ありがとう。町本会の島田さん・空犬さん、写真提供のキッチンさん、会場amuの皆さん、お世話さま。
 お江戸のGFたちに会えてうれしく楽しく。でもね、あんまりハシャギはしなかった、と自分では思う……。
皆さん、またお会いしましょう。
 娘のところに泊まるので、別行動。翌日は谷中散歩して、往来堂書店寄ってご挨拶。神保町に出てラドリオでお茶、本屋は寄れず。新宿で家族と待ち合わせ、時間まで紀伊國屋書店。3日目、世田谷文学館「日本SF展」最終日。東京駅まで行ってKITTE「マルノウチリーディングスタイル」。お弁当買って帰神。

一年が過ぎても変わらぬ月明り  よーまる

(奥のおじさん)

2014. 9月 奥のおじさん(6)

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奥のおじさん さすらい月報(6)

 8月の始まりは塩屋「旧ジョネス邸」の蔵書見学。貿易商ジョネス氏の邸宅だったが戦争の影響で帰国、顧問弁護士が引き取った。
 大正期、塩屋は居留地や北野町に住む外国人たちの別荘地だった。地元の人たちが保存運動をしている(「塩屋百年舎」「旧ジョネス邸を次世代に引き継ぐ会」)が、風光明媚で交通の便も良い場所、所有者が住んでいるわけでもない。解体され、跡地はマンションというのがお決まり。「旧ジョネス邸」も既に解体されている。同会が部材などを保管し、活用法を考えている。蔵書もそのうちの一つ。【海】の顧客だった同会のNさんがF店長に蔵書について意見を聞きたいとのことで、古本屋Yさん、古本者N教授に私も野次馬同行した。所有者は亡くなって久しく、遺族は皆独立して別にお住まいで、長い間放置されていた。蔵書はたくさんあるが、素人目にも保存状態は良くない。古本プロははっきり「本としての価値がない」ことを告げた。会の皆さんも予想されていたようで、法律関係書は某大学に引き取られていくそう。「会」についてはこちらを。
http://jones-shioya.tumblr.com/newspaper

 私は役立たずで、作業終了後の“お疲れさん会”が目当てみたいなもの。「会」の皆さんと垂水駅まで出る。かつて成田一徹さんが切り絵にした散髪屋さんがある。駅前の寿司屋さんで乾杯。まだ日は高い。妙齢のご婦人が一人でお寿司つまんで一杯やっていらっしゃる。カウンターにももう一人いらっしゃる。垂水の〈女一人酒〉、ええやん。
 日が暮れて場所をかえたら、「会」のお仲間や我らの呑み仲間が集まってきて人数ふえている。さて、私、今日は何しに来たのかな?
 2日(土)大阪谷町4丁目、友人と家族ぐるみで会食。友人の末っ子がハワイで挙式したばかり。花嫁の父はアロハシャツだそう。彼はそのアロハを着ていた。
 4日(月)うみねこ堂で神戸本1冊、いつも安っい本ばかり選んでいる。
 この週は、「【海】100年誌刊行委員会」の話し合い、機関紙原稿校正。
 8日(金)『ほんまに』のF店長対談、お相手は漫画家Mさん(古書波止場でレジしていた)、撮影ゴローちゃん。仕事がすんだTさんも参加して賑やかに。
 本は、J堂で『親子の時間』(夏葉社)、〈さんちか古本市〉で“足立巻一”他神戸本5冊。お金が足りず、1冊取り置きを願う。本を買ってしまうと冷奴が買えなくなるのだよ。ちょっと前には、本を買うとキャベツが買えないという事態になったことがある。因縁というか、その「買えなかった本」は同じ本。出会うことの奇跡、というかお金不足のドジ再び。
 J堂のさんちか店に新店長Uさんがいた。
 週末台風でボロ家雨漏り。
 11日(月)J堂4階でグレゴリ青山『薄幸日和』。2階で高田郁『天の梯』、レジに行こうとしたら映画センターUさんと鉢合わせ。先に会計。レジ嬢が高田講演会の申込書をくれる。抽選なので、「アナタの名前を書いたら当りますか?」と冗談叩くも、聞こえなかったのか無視なのか? 忙しい人にいらんこと言ってすまなんだ。そのうえ、本をもらうのを忘れた。レジ嬢が追いかけてきてくれた。気持ちはUさんとお茶飲む方に行っていた。
 Uさんとはうみねこ堂開店の日以来。積もり積もった無駄話で時間が過ぎる。彼女、台風の最中映画上映巡業していたそう。
 高田新刊、また【海】の名がある。それも最後の最後に。読後のさわやかな涙が号泣になってしまった。
kmogawa.jpg世間はお盆。12日(火)は実家にお供えを持って行って、13日(水)は妻の実家墓まいり。15日(金)京都大谷本廟、ついでに下鴨納涼古本即売会。どっちがついでか? 神戸の古本屋さん3人にご挨拶。皆さん〈さんちか〉から引き続いての市、泊まり込み。天気が心配。文庫本2冊だけ。以前長谷川義史さんがテレビで街歩きしていた商店街で遅い昼食。16日(土)親戚御一行5名来訪。自家製農作物のおみやげをいただく。
 18日(月)世間様は盆休み明け。こちとらフリー(失業と言わんかい!)、ずっと休みでい! J堂で内田樹『憲法の「空語」を充たすために』と『ドカベン』。隣のレジにいた顔見知りのGF(この表現変だ)が微笑んでくれる。お話ししたいけれどレジに留まるわけにはいかない。午後、元町の原稿を届けて、ハーバーランド神戸新聞社。H記者が高田郁さんにインタビューで、その後の呑み会目的。神戸港一望の社員食堂に、同社の高田ファン、近在一般ファン、少し遅れてしろやぎさん集合。他にもあちこち声かけしたけれど、日が悪かったのか都合つかない人多く。高田新刊未読の人のために、著者率先してあらすじばらしの意地悪。思い思いにデタラメ言って、「それはもう時代劇ちゃう!」という話まで。高田さんから「100年誌刊行委員会」にカンパ。ありがとさんです。サボリ親父の胸に“使命”の槍が突き刺さる。
 19日(火)からサボリ親父は皆さんのご期待に応えるべく(?)原稿に専念の毎日……ポーズだけ……外出は控え、本屋にも行かず、本も開かず、ただノートに向かう、汗を流す。よってしばらく私の手帖は空白が続いている。神大医学部生協シマちゃんに頼んでいた『編集少年寺山修司』(論創社)が届く。高田新刊を読んだGFたちから感想メール。
 27日(水)久々に三宮。J堂駅前店Iさんに会って、苗字の漢字確認、「本」に登場するかも。三宮ブックス村田社長、Tさんと歓談。
 29日(金)ギャラリー島田社長に途中原稿を見てもらって、DM発送手伝い。
 30日(土)高架下、元町古本屋さんまわり。探していた今東光と足立巻一など文庫3冊、単行本1冊。J堂、頼まれていた重たい雑誌買って帰宅。

 墓まいり足を伸ばして古本市どちらがついでか罰当たり者  
 親不孝墓参口実本漁り よーまる

(奥のおじさん)

2014. 8月 奥のおじさん(5)

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奥のおじさん さすらい月報(5)

 あっつ苦しい7月、あっちウロウロこっちチョロチョロ。
 5日、高槻墓参り。午後は阿倍野のアカヘルとシロヤギさん訪問。シロヤギさんから事前にNR・S社のYさんが法事で帰ってきはるのでひょっとしたら会えるかも、の情報。でも、彼の実家は“青丹よし奈良の都”ゆえ時間的に無理だろうなと思いながら、ゴローちゃんとアカヘル・スタンダードで待ち合わせ。なかなか来ない。当ブログご覧の皆さんはご存知のように、私は“ケータイ不携帯”の身。急な予定変更不可、突発的事故対応不能。私と付き合うには“覚悟”が必要。
 私も1度来たことがあるのに迷ってしまって10分遅刻。それから30分ほど待って公衆電話を探す。最近はコンビニでもないところの方が多い。たまたま事務所ビルにあるのが見えたので拝借。ゴロー(もう呼び捨て)に電話すると、何とカゼひいて朝クスリ飲んで寝て寝過ごした由、環状線の車中であった。
 ゴローちゃんスタンダード到着、アカヘルと面談。シロヤギさんと共同開催“N葉社Sさんの著書発行記念あしたから出版社フェア”を取材。

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 続いてシロヤギさんの(喜)に。こちらはあちらより断然“力”が入っていて、全ての本に手書きPOPをつけて展開。シロヤギの勝ち~! 圧勝~!
 フェアの本を買うとSさん“ボツ原稿”のコピー前編をスタンダードで、後編を(喜)でもらえる。阿倍野は有名店が多い激戦区だが、本屋それぞれで工夫して、読者は好みの本を探して、あちこち回ることができたらいいと思う。どっかの“一人勝ち”なんて面白くない。いい本の町ができるはず。
 ゴローちゃんがもう1回アカヘルに会いたいというので、再度スタンダード。しゃべっていたら奈良Sさんが振り返った。法事の場所は大阪市内だったそうで、会えた。一句できた。

くされ縁 切って帰ろう 夏夕日  よーまる

スタンダードで本1冊、ハンカチ2枚購入。
 7日、灘区の古本屋さん「ワールドエンズ・ガーデン」訪問。閉店後、若手店主たちに集まってもらって「ほんまに座談会」。セ~ラ編集長とゴローちゃん。古本屋さん1人欠席で、男女2名ずつ。古本屋開業の経緯、店名の由来、共同イベントなど楽しそうだが、小さな商いの苦しみもある。古本業界は新しい人たちの参入で活気があるように見えるが、やはり厳しい。 ある団体の機関誌夏号の原稿を渡しているのに、ようやく春号が届く。4ヵ月遅れ? 当然夏号も大きく遅れるだろう。以後は季節を表わすようなことを書けない。
 10日夜、元町凬月堂の寄席。
 11日大倉山図書館で調べ物。夜は〈海文堂生誕まつり スタッフ打ち上げ〉という名の大宴会、赤松酒店。1ヵ月ぶりに会う人多数。いつもの呑み会メンバーも参加。古本屋志望の青年が皆に自己紹介。
 ブログネタの本がなくて、古本屋さんで”神戸本”を探して回っている。それなりに見つかるが足りず、[くとうてん]で戦前の劇場主の評伝、三宮ブックスM社長に本屋関連本など、詩人さんには“神戸詩集”を借りる。
 詩人さんとギャラリー島田で待ち合わせして、DM送付手伝い。楽しいデート。
 19日、また落語。長男が早めの夏休みで帰省、いつものように連続呑み会して、戻って行った。
 22日、年金申請。指示通りの書類を持って行ったのに、最初からうまく行かない。こちらもお役所仕事はスムーズに行くとは思っていないが、一番に必要な書類「AもしくはB」で「A」を提出したのに「B」を出せと言う。“論理”は通用しないのか。私、「ここでつまずくとは予想していませんでした」と皮肉。これまでの申請者はどうしたのだろう。当然文句を言うはずで、それが窓口で周知されない。
 午後、気を取り直して「ほんまに古書組合」取材。セ~ラ編集長&ゴローちゃん。初めて“市”を見学。皆さん“真剣勝負”。狙う本が同じこともあれば、違うこともある。1冊だけほしくても束で買わなければならない。当然不要の本が出てくる。捨てる本もあるそう。
 顔見知りの店主さんたちにご挨拶。皆さん一国一城の主、一家言お持ち。それでも親切に話をしてくださる。遠く岡山や四国からもいらしている。
 Yさんインタビューに同席。古本商売の奥深さとベテランの包容力に感心。「かかってきなさい」、でも「頼ってきなさい」。
 M社長から電話。元コーべブックスの先輩が亡くなっていたことがまたも判明したそう。ついでに別の本を借りに行く。
 J堂で中島らもの復刻本購入。そろそろご命日。大阪では記念イベントあり。

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 26日、自分の家の墓参り。山の中、崖崩れで一部通行不能。行きはタクシー、帰りはふもとまで歩き。いつもよりひと山余計に(まわり道ですむことですが)歩いたことになる。
「ほんまに」の担当原稿を仕上げて送信。
 31日、ハローワーク認定日。給付延長してもらえる。この期間中に何とか「海文堂の本」の文章部分をやっつけねばと決意表明、してすぐに後悔。ああ、もう逃げられない。逃走資金はいっこもこっちに来ないし。計画が甘かったか? 
 夕方、「ほんまに古本屋中堅さんインタビュー」に同行。深刻に業界のことを考えている世代。
 遠方のGFから絵ハガキやらメールやらが届く。まだ忘れずにいてくれる。

(奥のおじさん)

2014. 7月 奥のおじさん(4)

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奥のおじさん さすらい月報(4)

 5月25日J堂三宮店での「白石一文サイン会」に並びました。新刊『神秘』(毎日新聞社)刊行記念です。昨年5月の『快挙』(新潮社)で、【海】のことを書き入れてくださったことのお礼と、せっかく書いてくださったのにあえなく閉店してしまったことのお詫びを申しあげました。白石さんと親しいギャラリー島田社長が「一緒にイベントをする仲間」と紹介してくれました。

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 5月31日から6月11日まで、ギャラリー島田での“海文堂生誕まつり”イベントに常駐していました。久しぶりの「いらっしゃいませ~」でございました。イベントについてはブログでグダグダ報告していますので、そちらをご覧ください。100円古本市が好評で、主催者である私たちは他の人の本を買うのは遠慮しておりましたが、エエ本が出ています。特にF店長は“二度目の身辺整理”らしく、どさっと放出しています。最終日に“神戸震災本”を1冊買いました。
 6月14日神戸文学館。セ~ラ編集長、ゴローちゃんと現地集合です。今東光、稲垣足穂、竹中郁らを輩出した “原田の森” 、関西学院発祥の地です。近くなのに、しょっちゅううろついているのに、入館するのは初めてです。神戸ゆかりの文学資料常設のほか図書を閲覧できます。「賀川豊彦詩文抄」という立派な冊子をいただきました。
 今回の目的は、企画展「神戸洋菓子を愛した文人たち」の記念講演「漱石の場合は」聴講です。講師は古書店ロードス書房の大安さん、漱石研究家でもあります。漱石の神戸訪問、兵庫県人との関わり(特に兵庫の禅僧との書簡からあるお菓子のこと)を語るものでした。
 会場では、文化人が書いた神戸のお菓子についての文章を紹介していました。
「小さな工房での生産から始まり、一大産業にまで成長した神戸洋菓子。文学の窓から、その足跡をたどってみましょう」と、案内パンフレットにあります。
 菊田一夫や林芙美子が元町の煎餅を、谷崎潤一郎がドイツ菓子を取り上げています。堀辰雄、田辺聖子、古川緑波、淀川長治も書いています。焼き菓子の型、菓子店のマッチラベルやメニュー、写真も展示されていました。
 帰りにJR灘駅で3人お茶を飲んでいましたら、隣席の年配ご夫婦の奥様が話しかけてこられます。私と編集長を見て「きょうだい?」と聞きはります。あまりに編集長がかわいそうなので、私が「親子ですねん」と答え、ゴローちゃんは娘にプロポーズするダメ男という役柄で、奥様の身の上話を拝聴いたしました。
 22日、市立博物館の「ボストン美術館 北斎」最終日、入場券売り場で並んでいます。中に入っても入場制限していますし、会場内に入れても長蛇の列が動きません。皆さん、食い入るように鑑賞しておられます。バスツアーの団体さんもおられるのでしょう。浮世絵はひとつひとつの作品が小さいものですから、大量人数の観覧は無理があります。さーっと見て退出、「子供のための鑑賞ガイド」という冊子をもらって帰りました。
 前後します。21日は『ほんまに』の原稿依頼でゴローちゃんと京都“珍道中”。京都では何かしら“失敗”があります。古都魔界ミステリーでしょうか? それともヨソ者は嫌われているのでしょうか? 今回はどっちかが待ち合わせ場所を間違え、さらに切符を紛失しました。前回は何でしたか、確かゴローちゃんがスマホを忘れて、私のあやふやな記憶に頼るも明らかに根拠のない自信で目的地にたどり着くのにかなりの遠回りになって……、寒い京都営業行脚でありました。
 善行堂さんに原稿をお願いして、いろいろアドバイスをもらって、買ったのは『稲垣足穂詩集』(思潮社)。なかなか出会えなかった本です。神戸ではあまり目にしない“コーべブックス”本を4冊も発見したのですが、私には高すぎて手が出ません。珍しい中公文庫もありましたが、これは次回にしようとバス停に向かったのでした(いつ来るねん、そんなもん残っとるかい!)。
 出会えないといえば、編集工房ノアの新刊です。神戸在住の島京子さん(GF)の『雷の子』を三宮で見つけられません。私の探し方が下手なのでしょうか? ある大型店で注文をお願いしたら、やんわり断わられました。嫌がってはるのを無理にとは言いません。ノアの本はJ堂大阪本店に揃っています。日曜日、堂島に向かいました。帰りに阪神百貨店前とカッパ横丁の古本屋さんをウロウロして阪急電車。買える値段の本がありませんでした。ごめんなさい。
 元町の神戸古書倶楽部では神戸本、『兵庫県文学読本』(のじぎく文庫)がありました。
 新刊本でいつもお世話になるのはJ堂三宮店ですが、駅前店も時々まいります。講談社文芸文庫が多くあります。金子光晴と山之口貘。三宮店では全国の書店員から親しまれている夏葉社Sさんの著書『あしたから出版社』(晶文社)をいただきました。J堂だけではないのですが、最近は「ポイントカードお持ちですか?」と尋ねられます。すみませんが、私、持ちません。
 「古書うみねこ堂書林」のNさんは探偵小説の専門家で、門外漢の私は肩身が狭いです。でもね、神戸本が手に入ります。小松左京と中島らも、毎回安い本で申し訳ないです。
 11月にNさん中心の“横溝正史研究会”イベントがあり、本の販売についてメッセンジャー役を仰せつかりました。大層なことではないのです。J堂文芸刈り上げ娘Hさんに概要を伝えて、あとは当事者にお任せするだけのことです。著名作家お二方の講演が決定しているそうです。

 雨読せず刈り上げ娘に本を問う  よーまる

(奥のおじさん)

2014. 6月 奥のおじさん(3)

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奥のおじさん さすらい月報(3)

 五月連休、京都大谷本廟に妻とおまいりして、昼食後別行動です。私は“みやこめっせ”の古書大即売会に向かいました。初めて来ました。会場は大きな本の森です。愛書家たちが集まっています。既にカゴ一杯に収穫している人、脇に抱えてほのかに微笑んでいる人、獲物を凝視して殺気を放っている人……、初心者は皆さんのおジャマにならぬよう棚を見て回ります。目に付いた本をすべて買えるわけではありません。懐具合と相談して、2~3冊、5000円までと決めております。約2時間滞在しましたが、それでも会場を一周できません。足穂本を2冊、予算内で見つけることができました。
 西にまっすぐ進路を取って三月書房を目指します。ちょうど出版社の人がいらしていて、店主さんと『吉本隆明全集』の話をしてはりました。常連さんたち(想像)が静かに本を選んでおられます。外国の方が問い合わせをしてはりました。私は編集工房ノアの本を買って、同社の年1回のPR誌「海鳴り」をいただいて幸せな気持ちです。毎年【海】でも配っていたのですが、ああいうことになってしまいましたから、今年は出会えないかもしれないと思っておりました。庄野至、山田稔、萩原健次郎、天野元……、また読むことができました。こちらでも足穂本を入手してお店を出ました。
SANGETU.jpg三月書房(ブックカバー)
 妻との待ち合わせ場所・錦市場に向かう途中、市役所前ではフリーマーケット開催中で、冷やかします。こういう場所に出入りしたことがないのですが、「こんなもん売れる~?」というような家庭内不用品が並んでいます。値打ち物もあるのでしょうが、これも初めての場所です。
 さて、妻と再会、錦市場は観光客で超満員です。市場巡りは断念し、漬物だけ買って帰途につきました。
 翌週は大阪の“女子の古本屋”「本は人生のおやつです!!」(通称“本おや”)の“書店員による古本市”最終日を覗きました。トンカさん、ゴローちゃんと現地集合です。変な組み合わせです。
 現役書店員たちが愛読書を放出しています。個性が出ています。お好きなジャンルがわかる人、「出し慣れているな!」という人もいますし、カバーを全部外している人もいます。
売れ行き好調で、何度も補充されたそうです。特にJ堂Fさん出品の難解思想系が人気と“本おや”さんがキャピキャピと説明してくれました。
 彼女、元は新刊書店にお勤めだったそうで、新刊本にも力を入れています。仕入れの条件はたいへんだろうと想像します。
お客さんたちに「この本、私も大好きです~」などと話しかけてはります。楽しい雰囲気です。私たちが見学していた時には、若いファミリーがいらして、お子さんたちも熱心に絵本を選んでいました。
 私はいつも頓珍漢な質問をしてしまいます。
「あのう、私はいつもヨコシマな気持ちでトンカさんに行くのですが、こちらにはそういう奴らは来ますか?」
〈何を言うてんねんやろ、このオッサン!〉
「要するにですね、店主さんとお近づきになりたいとヨコシマな下心を持って……」
〈アホかいな、こいつ!〉という反応もなく、〈キャハハ!〉とかわされました。
 同行ふたりもきっと呆れたことでしょう。はなから取材は彼らに任せています。庄野潤三のかわいい本を選んで失礼しました。ギャラリー巡りのゴローちゃんと別れて、トンカさんとJR快速電車。
 トンカさんでも他の古本屋さんでも同じでしょうが、彼らは大きな金額のお商売ではなく、一人で目の届く、気配り心配りができる規模で、“本“の商売を営んでいます。何より楽しんで日々仕事をしています。もちろんご苦労はあるでしょう。
 新刊本屋は規模が大きいほど当然物量がふえ、売上げを追求しなければなりません。それに経費削減も重要なことです。現場の人たちの仕事量は膨大でしょう。お客さんとの対面はレジと問い合わせに答えるくらいです。その問い合わせも最近はお客さんが自ら検索機で探すことになっています。書店員に尋ねれば親切に教えてくれます。でもね、彼らはとても忙しいです。【海】みたいにお客さん(友だちなのか?)と本の話をしているわけにはいきません(半分は冗談言うて、あとは呑み会の相談してました)。
【海】のイベントにつきまして。【海】は継続していれば、今年が創業100年に当たりました。5月31日から6月11日、OBが支援者の皆さんの力を借りてギャラリー島田で「海文堂生誕まつり 99+1」を開催しました。目玉は、海文堂ギャラリーとギャラリー島田ゆかりの画家さんたちの作品展示と販売です。わざわざイベントのために描き下ろしてくださった作品も並びました。キッチン・ミノル撮影『海文堂書店の8月7日と8月17日』写真、鈴田聡撮影「最終日」の写真、【海】OB提供の古い写真と資料を展示しました。記念のポストカード9種類を販売、スタッフ蔵書古本市、新刊本販売、さらに100円カフェも。収益金は将来の“海文堂の本”制作費の資金といたします。カンパまでちょうだいしました。気の早い人は予約までしてくれています。トンデモナイあわて者です。
 で、本はいつできるんか~? 
 すべて私の“ヤル気”にかかっております。日に日に皆さんの期待が重圧となって、私の痩せた胸を押しつぶしてきます。心なしか心臓を掴まれているような感覚もあります。
 どうか皆様、大きな広い心で、余裕を持ってお待ちいただきますよう、お願いする次第です。

 本を待つ雲を掴むが如きかな  よーまる

(奥のおじさん)

2014. 5月 奥のおじさん(2)

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奥のおじさん さすらい月報(2)

 第1回はWeb連載話があった1月に書いたものなので(ヒマだからすぐやる!)、季節感が合っていませんでした。今回は4月の出来事です。
 4月18日、大阪美女のブックカフェ“Calo”さんが開店10周年記念イベント「書店員ナイト」を開催されました。通常のイベントは自店でされるのですが、今回は人気作家の対談もあり、心斎橋のスタンダードブックストアが会場となりました。その作家というのは西加奈子と津村記久子、彼女たちは大阪出身四大美女作家であらせられるそうです。関西出版界ご隠居Kさんに「田辺聖子はまだ入りまっか?」と尋ねたところ、アホか!? というお顔で、「柴崎友香と川上未映子や」と教えてくださいました。大いに納得した次第です。
 閑話休題。スタンダードブックストアといえば、【海】のアカヘルが阿倍野店に勤務しています。そのアカヘルも今回しゃべるというので、私めも参加したわけです。
standard_bookcover.jpgスタンダードブックストア(ブックカバー)
 心斎橋と言っても私は行ったことがない場所ですので、GFヨーコさんとクッスーと待ち合わせです。会場にはテレビ取材も入り、参加者は150名を超えています。【海】最終日を密着取材してくださったベッピンA嬢はじめ編集プロの「140B」の皆さん、それに顔見知りの営業マンがたくさん見えています。東京からも来てはります。わが愛しのGFたちも勿論たくさんです。さすらって来てよかったです。
私、アカヘルはてっきり“前座”で、早い出番と思っておりましたら、22時半頃ということでした。間が持たないので、ご隠居、Iさん、Tさん、Nさんとゴローちゃん(おっさん集団)で一旦外に呑みに出ました。
アカヘル、元気でした。聞き役の編集氏が本屋遍歴、古本話を引き出します。当然【海】のことにも触れるのですが、深くは語りません。「昔ながらの普通の本屋でしたよ」くらいの話でした。彼はもうスタンダードブックストアで重要な役目をしています。【海】の経験が彼の本屋人生に役立ってくれることを、一緒に働いた者として望みます。私みたいな“老いぼれ”はいつまでもグダグダ引きずりますが、彼はこれからも本屋で食って行くのですから、前を向いて歩くべきです。
読者の皆さん、大阪阿倍野に行かれることがありましたら、アカヘルの新しい職場と棚を見てやってください。
プーおじさん生活も早5ヵ月余り、本を買う量がだんだん減ってきました。経済的理由によるものです。古本屋さんの均一棚を見ることが多くなっています。“読書人”を名乗る勇気はありませんし、系統立った蒐集をしているわけでもありません。ダラダラ本の背を眺めているだけです。それでも好きな作家の本を100円・200円で入手すると、ニヤニヤしています。先日も詩集を見つけました。安い理由は先の持ち主が鉛筆で線引きだらけにしているからでしょう。家に帰って、消しゴムゴシゴシできれいになりました。机の上とズボンはカスだらけになりましたが。古本屋さんも本屋と同じで、時々覗いていると出会えるものです。何となくですが、そんな喜びを感じられるようになりました。
うれしいことと言えば、南京町西門のそばに新しい古本屋さんが開業されました。「古書うみねこ堂書林」です。【海】の顧客でアドバイザー、探偵小説研究家でもある野村さんのお店です。元町の新名所としてご愛顧くださいませ。
そして、“女子の古本屋”Tさんが懐妊報告をくださいました。胎内写真まで見せてくれます。私、親しい友人のお子たちに、「おっちゃんはあんたがお母さんのお腹の中にいる時から知ってるねんで~」と言ってきました。口がすべって、「お父さんの××にいる時から~」とアブナイこともくっちゃべりしました。おっさんアホです。でもね、今回はヨソサマのお子なのに、文字通り“お母さんのお腹時代”を知る赤ちゃんです。私のお気楽な脳内は、もうこの女の子(勝手に決めています)をおんぶして、そこらを徘徊している映像が流れています。さすらいの“シッター”です。
“誕生”があれば“喪失”があります。
 まず、仙台のわが娘みたいな書店員さんが退職しました。才能のある人なので、いろいろなところで活躍してくれることでしょう。「卒業」と思うことにします。
もうひとつ、M出版のY社主からの知らせで、コーべブックス時代の先輩Mさんが2月に亡くなっていたことがわかりました。支店にいた新米の私に、「この本読んだか?」「これエエで!」と会うたびに推めてくれました。ちょうど訃報があった大西巨人を教えてくれたのも彼でした。一緒に呑みました。豪傑の母上が健在だった頃に実家に泊めてもらいました。彼は他店の人たちとも積極的に交流し、そんな場所に連れられたこともあります。彼が姫路の本屋に移ってからは会う機会は減りましたが、【海】に時折立ち寄り、「こんなフェアやるか?」とヒントをくれました。沢山本を読んで、左巻きで、酒好きで、話し好きで、山に登って、俳句詠んで、呑んべで、本好きで、人が好きで、グデングデンで、体いかれて・・・・・・、ちょっと見怖そうやけど優しいて。結局呑み過ぎて逝ってしまいました。
 知り合いの方たちに連絡しましたら、皆さん思い出を語り悼んでくれました。長い付き合いの営業マンが愛情込めて“コーべブックスの三バカ”(3人いたんですよ、彼がひとりで三バカではないですよ)と呼んでいました。
 5月31日から6月11日まで、北野のギャラリー島田で「海文堂生誕まつり 99+1」を開催します。縁のある美術家の方々が作品を展示販売してくださいます。記念の【海】絵ハガキを作成販売しますし、『ほんまに』他の出版物も販売します。土日限定で古本市もいたします。懐かしい写真・資料を見ていいただきます。暇な福岡店長と私はほぼ毎日おります。他の元従業員もできるだけ顔を出します。どうぞ北野までいらしてください。

 風薫るのたりのたりの子守りかな  よーまる

(奥のおじさん)

2014. 4月 奥のおじさん(1)

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奥のおじさん さすらい月報(1)

「プーおじさん」を名乗っていましたら、GFに、「はちみつの壺を抱えていそう、ビールジョッキかな・・・・・・」といじってもらえたので喜んでいます。
 寒い日が続いております。カゼ、大丈夫ですか。
 ヒマなので、ブログやら何やら書きなぐっております。そのうえ「くとうてん」S社長とゴローちゃんが「何か書け!」と言うてます。本屋でなくなったゆえ『本屋の眼』は詐称となります。浪々の身ではスケベネタも発掘できず「奥の院」も使えませぬ。
 その業界部外者を新年呑み会に誘ってくださったのは大阪T出版のIさんとKさんです。
「どのツラ下げて・・・・・・」。
出欠を思案いたしました・・・・・・、すぐに「参加」の返事を出しました。 新春、久々の難波千日前です。早めに出かけて、“料理書専門店”波屋書房に行きました。お店の前は通ったことがありますが、入る勇気がありませんでした。
「ヘンナノ!」と思われるでしょうが、「買う本あるやろか」と怖かったのです。お店の人が「いらっしゃいませ」とお辞儀までしてくださいます。「食エッセイならあるやろ」、「大阪文学はどうや」と探しました。いらぬ心配です。大阪ミナミです。「落語本」がたくさんありました。
 買った本は、小佐田定雄編集『青春の上方落語』(NHK出版新書)、大師匠「四天王」の弟子・孫弟子6人が修業時代を語ります。司会・俳優として超人気者の笑福亭鶴瓶、実は「落語家」の仕事もちゃんとしています。師匠・六代目松鶴との出会いは落研の先輩と行った京都での落語会、松鶴は高座に出るなり客席を見て、「あの坊さん(お客)の顔見たら落語忘れてもた」と、オチだけしゃべって引っ込んでしまいました。
次は市民寄席、「腹を抱えて」笑いました。
「それからは松鶴で頭がいっぱいになって・・・・・・」
 一年後、寄席で弟子入り申し込みをしようと寄席に行きますが、怖くて声をかけられません。また一年後、師匠宅を訪ねますが、奥さんに留守と言われます。鶴瓶は若い時はアフロヘアです。家の中から奥さんの声がします。
「なんや来てるで、ややこしい頭のんが」
師匠は家にいました。時間をおいて再訪問、今度は家に入れてくれました。でも、「親の承諾を」と言われて、父親を事情も説明せず連れて行きます。師匠から入門許可はもらいますが、帰り道父親は怒ります。
「芸人みたいなもんになって、どないすんねん!」
兄が口添えしてくれます。
「勉強あかんねんから、行きたいとこへ行かしたらええがな」
 よかったよかった。
 さて、波屋書房のブックカバーを紹介します。
波屋.jpg
デザインは大阪文学の「藤沢桓夫」です。馬車の絵は藤沢らの同人誌『辻馬車』にちなむものです。波屋書房が発行元でありました。私、「このカバーに憧れていました」と申し上げて退出いたしました。
 続いて待ち合わせ場所であるジュンク堂千日前店です。ここで買う本は決めていました。同店難波店店長・福嶋聡『紙の本は、滅びない』です。彼は本屋業界を代表する論客です。 
http://www.jimbunshoin.co.jp/rmj/honntocomputer-index.htm

佐野眞一の、[本というモノは、コンテンツにとって非常に便利な「乗り物」なのだ]という言葉を引いてこう書きます。
――今やぼくたちは、問いの方向を180度変えなければならないのではないだろうか? 「なぜ、本が売れなくなってきたのか?」から、「なぜ、今でも本が売れるのだろうか?」へと。――
 いよいよ呑み会です。正月恒例の取次会社新年挨拶会の流れで、人文系版元営業マンと書店員が集まります。毎回参加者は50名を超えます。
 私、ベテラン書店員N姉と抱擁、再会を喜び合いました。他の皆さんも暖かく迎えてくださいました。アカヘルのニュースも教えてもらいました。感謝感謝です。
 私、この日のためにパソコンとコピー用紙で名刺を作ってまいりました。「携帯不携帯」がウケました。
 愛らしい書店員、可憐な営業ウーマン、暑苦しいムサ苦しい営業マン・・・・・・、入れ替わり自己紹介をします。書店員同士の結婚も報告されました。めでたしめでたし。
 恥を忍んで告白します。昨年の会で、私、「紙の本は大丈夫です」とエラソーに申しました。確かに「紙の本」は大丈夫です。福嶋さんも書いています。でもね、私の発言は「妄言・戯言」です。「本」より先に【海】がなくなってしまいました。
 今年は反省して大口叩かず、
「『ほんまに』買うてください、お店に置いてください」
「泣きの営業」に徹しました。

 営業はえびす顔でと教えられ  よーまる

(奥のおじさん)